研究誌 「アジア新時代と日本」

第96号 2011/6/5



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 原発事故が問う日本のあり方の転換

投稿 最新の情勢と朝鮮経済

インタビュー 「国賠ネットワーク」 世話人 土屋翼さん おかしいことをおかしいと言える社会に

世界短信




 

編集部より

小川淳


 5月29日、丸岡修氏が亡くなった。享年60歳。ハイジャック防止法違反で無期懲役の判決を受け、八王子医療刑務所に収監中だった。
 拡張型心筋症という難病で、呼吸困難と胸痛に苦しみ、それを和らげる何らの医療措置も施されることなく独房に放置されての死だったという。八王子医療刑務所は拡張型心筋症などの治療できる施設ではなく、丸岡氏の場合は外部の専門病院での治療が必要だった。そのため弁護団は6次に渡って執行停止の申し立てを行ったが、全て東京高検によって却下されている。
 刑訴法482条は、刑の執行によって生命を保つことが困難な場合は刑の執行を停止できるとしている。危篤状態にあったにも拘らず、高検は外部での治療さえも許さず、死に至らしめた。まるで戦前の特高を思わせるような仕打ちであり、冷酷さだ。しかし検察の非道を報じた新聞は一つもなく、「病死」と小さく報じただけだった。
 私自身は丸岡氏と面識があったわけではない。ただ氏の獄中からの手紙は通信などで目にする機会も多く、身近な存在だった。アラブ赤軍の闘士といえば世間一般では過激なテロリストのような印象を持たれるが、まるで違う印象を私は持っている。大らかで、人間愛にあふれ、ユーモアがあって、それでいて社会に対する眼識は人一倍鋭い人だった。獄中にいながらあれほど的確な文章が書ける人はそういるものではない。
 だからこそ立場を超えて多くの方が氏を支え、力を尽くし、とりわけ最後の数日は多くの方々が奔走した。その姿には胸が熱くなった。国(検察)は彼をテロリストとして処遇したが、丸岡氏を知る人は誰もそうは思っていない。
 葬儀は大阪の妹さんの自宅でしめやかに執り行われた。
 遺族には昔の闘士や仲間が参列するのには抵抗があったかも知れない。しかし通夜の席では酒が酌み交わされ、丸岡氏の昔話の花が咲いたという。
 葬儀に参列し花を手向ける事くらいしかできなかったが、「人が人らしく生きられる人間の国を」という、氏の遺志を引き継いで行きたいと思う。
 6月19日、京都では、お別れの会(京都教育文化センター)が計画されている。多くの方に参席していただければと願っている。



主張

原発事故が問う日本のあり方の転換

編集部


 3・11から三ヶ月近く、未だ10万人に上る避難所生活の人々を数えている。そうした中、第二の敗戦とも言われる東日本大震災は、日本のあり方そのものに関わる問題を提起した。古い日本から新しい日本への転換が問われている。
 中でも原発事故はその象徴のような問題だ。

■原発に「安全性」などない
 先のG8サミットでは原発の安全性を高める問題が重要議題の一つとされた。原発推進派の米仏と見直し派の独伊の中にあって、原発事故当事国、日本の菅首相からは原発の安全性そのものを問う根本的な問題提起はなされなかった。
 そもそも原発に「安全性」などない。今回の福島第一原発事故はその真実を改めて明らかにしたのではなかったのか。
 何よりもまず銘記すべきは、原発運転が持つ本質的危険性だ。それは、「原発はそれ自身の本質において潜在的に危険であり、それ故に大事故を防ぐための安全装置がすでに整っているかどうか、たえず問い続けなければならない」という「スリーマイル島における原発事故に関する大統領委員会報告書」(1979)に示されている。
 核反応が生み出す破壊的エネルギーを制御しながら電気を取り出す原発は本質的に過酷な状態に置かれている。各種配管に多発するひび割れやピンホール、「減肉」などの損傷、燃料棒の破損、等々、事故発生の可能性は極めて高い。3、4年で運転状況が急速に悪化し、設備利用率が下降の一途をたどる原発の現実がその何よりの証拠だ。
 それにも増してさらに深刻なのが、原発運転によって生じる使用済み核燃料の処理問題だ。
 百万キロワットの原子炉からは、1年で約1トンの使用済み核燃料、"死の灰"が生まれる。広島型原爆千発分だ。まず、それの再処理工場への運搬が問題となる。次に、再処理工場でのウランとプルトニウムへの分離と貯蔵だ。さらに問題は、この過程で生じた放射性廃棄物の処理だ。ストロンチウム90やセシウム137などの高レベル廃棄物は硝酸溶液のかたちでタンクに入れて水冷管理され、他の気体廃棄物は排気筒から大気中へ、また処理しきれない低レベルの液体廃棄物は放水口から海水中へ放出される。
 ここで問題は、これら放射性廃棄物が他のゴミのように焼却炉で燃やせばなくなるというものではないことだ。煮ても焼いても毒性は消えず、ただ半永久的なその寿命がつきるのを待つしかない。だから、低レベル廃棄物による大気汚染、海洋汚染も問題だが、それにも増して高レベル廃棄物の貯蔵が問題になる。たまり続ける廃棄物の処理方法が見つからないまま、貯蔵場所確保の困難性など、その危険性は果てしなく高まっていく。
 運転や再処理を通じて原発から放出される放射能は、大気や水、そして何よりも、プランクトンから小魚、エビ、カニ、そして大きな魚へといった「食物連鎖」を通じて人間の体内に取り込まれ、半永久的に細胞に作用し続けて癌や遺伝子障害、等々を引き起こす。人間の五感に感じない、どんな手段をもってもその毒性を消せない、いったん体内に入るとそこに住みついて離れないなどの特徴を持つ放射能の恐ろしさは、それだけでも、原発の非人間的で本質的な危険性を示しているのではないだろうか。

■原発は古い日本の象徴だ
 スリーマイル島やチェルノブイリだけではない。表沙汰にならなかった大小数多くの事故まで含め、原発の比類ない恐ろしさ、本質的危険性は、これまで十分に認められてきた。
 にもかかわらず日本政府が原発にしがみついてきたのはなぜか。その理由として、これまでコストの低さやクリーンさが挙げられてきた。また、燃料にプルトニウム239を用い、燃やしたプルトニウム239よりも新しくできたプルトニウム239の方が多くなるという「夢の原子炉」、高速増殖炉に未来の無尽蔵なエネルギー源としての期待がかけられた。しかし、今日、そのいずれもが否定されている。原発のコストには建設費や金利、燃料費、運転にかかる経費などの他に、廃棄物の処理と永久管理の費用、そして事故が起こった際の補償費まで必要だ。今回の原発事故は、コスト、クリーンなど、まやかしの「原発神話」を完膚なきまでにうち砕いた。そして「夢の原子炉」は夢と消えて久しい。高速増殖炉実現の可能性は限りなくゼロに近く、小出裕章さんが言うように、原子力は、石油の数分の一、石炭の数十分の一という大変貧弱なエネルギーにすぎない。
 もはや日本政府が原発にしがみつく理由は何もない。まして日本は地震大国で、いま地震の活動期に入ったと言われている。世界中で真っ先に原発をやめるべき国、それが日本だ。だが、先のG8で菅首相は、原発への明確な態度表明を避けた。と言うより、原発推進派、米仏を擁護した。その背後に米国の力が働いていたのは容易に推察できることだ。
 米国は、菅首相を動かし、原発見直しの趨勢に歯止めをかけようとした。問題はその目的だ。
 原発は原爆と密接に結びついている。原爆製造の副産物として原発が生まれた。原爆の原料であるプルトニウムは濃縮ウランを原子炉で燃やしてつくられる。その時生まれるエネルギーを発電に利用するよう開発されたのが原発だ。米国は原爆を大量製造しながら、自らが開発した軽水炉原発で電気を生産する一方、自国産濃縮ウランと軽水炉を世界各国に売りさばいた。
 もちろん、これは単なる金儲けではない。何よりも、「核による覇権」、「原子力による支配」に他ならない。米国は、核を世界制覇の道具にしたばかりでない。原子力というもっとも破壊的で非人間的なエネルギーそのものを、世界支配のため、政治、軍事、経済すべての分野で総合的に利用するようにした。
 その米国による覇権のために、日本は世界最初の被爆国にされ、幾層にもプレートが重なる地震最多発の地盤の上に54基もの原子炉がつくられた原発大国にされた。米国の覇権のもとに生きる米国のための日本、この古い日本にあって、原発はその象徴のような存在ではないだろうか。

■エネルギーの世代交代と新しい日本
 福島第一原発事故を受けて反原発の闘いが新しい発展の段階を迎えている。それは、火力や原子力など旧来のエネルギーから風力や太陽光など再生可能の自然エネルギーへの転換、エネルギーの世代交代と結びつき一段と強化された。
 この世界的範囲で大きなうねりを見せる壮大な運動は、だが、単なる環境問題解決のエコロジー運動でも単純なエネルギーの世代交代でもない。政治や経済、ひいては国や世界のあり方、文明のあり方まで含む時代の巨大な転換がそこから見えてくるのではないだろうか。火力や原子力から風力や太陽光への転換は、汚染からクリーン、持続不能から持続可能への転換であるばかりではない。それは、核兵器とともに、原油やウランを握り独占しての覇権から世界中どの国にでもある風や水、太陽光、地熱などを活かしての自主・自立へ、大都市集中から地域循環、地産地消の全国的発展へ、等々、世界のあり方、国のかたちなどあらゆる領域での転換を引き起こしていかずにはおかない。
 この歴史的転換の時代にあって、エネルギーの世代交代は世界的範囲で大きく進展している。この10年間で自然エネルギーの増え方は爆発的だ。風力発電市場は毎年30%増加し、2億キロワットを超えた。太陽光発電市場も年率60%増加と近年急成長だ。原発市場が4億キロワットであるのを見てもその変化の様は著しい。
 この自然エネルギー成長の裏には、固定価格制度による自然エネルギー電力の買い取りや送電線への接続の保証がある。タイのタクシン元首相の変わらぬ人気の秘密の一つに太陽光発電買い取りによる農家の収入増があるのは注目すべきことだ。
 これと対照的なのが日本の自然エネルギー市場の低迷だ。環境エネルギー政策研究所所長、飯田哲也さんが言うように、日本のこの市場は四面楚歌状況だ。電力会社による発送電の独占、縦割りの硬直規制、社会的合意の不在、貧しい支援政策など、数々の制約に苦しめられる自然エネルギー市場の困難は、原発市場への政府の手厚い保護と相まって、日本の国策がどの方向を向いているか白日の下に明らかにしている。
 原発事故は、古い日本の産物である東日本大震災の中でももっとも顕著なその象徴だ。この深刻な世界的大事故を根本から克服し、エネルギーの世代交代を実現するためには、米国のための古い日本から国民のための新しい日本への転換が切実に問われている。それは、震災復興の闘いで中核的位置を占めるようになるに違いない。



投稿

最新の情勢と朝鮮経済

株式会社京都総合研究所 佐々木道博


 前回に、つづいて朝鮮経済の現状についての少し詳しく触れたいが、その前に朝鮮半島を取り巻く情勢が大きく動きはじめているので、まずその点から述べたいと思う。
 本年5月は、6者会談再開に向けての外交が活発に繰り広げられた。昨年末、アメリカはいままでの「戦略的忍耐」の方針から「対話」への道へ方針転換した。これに応えて日本は、前原外相が、1月4日に、今年は日朝対話を進めると談話を発表した。
 そして1月19日、ワシントンで開かれた中米首脳会談では、胡錦濤主席とオバマ大統領は「対話による朝鮮半島の核問題の解決と平和システム構築、それに向けた相互協力に合意」したといわれる。5月9〜10日、ワシントンにおける第3回中米戦略経済対話でも、この合意が再確認されたという。
 そして、これを受け、アメリカのボスワース朝鮮問題代表が16日、韓国を訪問し朝鮮への食糧支援プロセスの開始を通知し、また一方で国務省は、ロバート・キング人権人道特使を、24日にピョンヤンに派遣したのである。そして、ロシアもこうした動きに対応し、5月17日フラトコフ情報局長―元首相をピョンヤンに派遣し金正日総書記と会談し、6者協議への協力を約し、5万トンの食糧支援と相互経済協力に合意した。
 これにつづいて金正日総書記が、中国を訪問し胡錦濤主席と会談し「今後の6者協議再開など対話を通じた平和的解決をめざし、障害を取り除くため意思疎通をはかる」ことに合意した。
 現在、その最大の障害とは、韓国李明博政権の反北姿勢である。また次の障害は、日本政府の反北姿勢であるが、これについても5月8日の「拉致国民集会」において、今までの制裁一辺倒の姿勢から日朝交渉推進へ大きく舵を切ったことで、今後政府としても日朝交渉の準備に入らざるを得ないであろう。いずれにしても多少時間を要しても対話の大きな枠組みは進んでいくと思われる。
 私も4月に池口恵観大僧正の訪朝団の一員として訪朝したが、このとき朝鮮側は最高人民会議常任副委員長ヤン・ヒョンソプ氏が出てこられ、池口大僧正と会談をされ、日朝間の懸案について話し合った。これは、5月28日のTBS報道特集でも詳しく報道された。これには、大きな反響があり日本国内でも、いままでになかった前向きな動きと成ってきていると確信させるものである。
 以上、この1ヶ月の動きを見てきたが、日本では震災報道と原発報道ばかりで、(しかもウソばかり)朝鮮半島情勢が影に隠れがちであったが眼を見張るばかりの急速な動きであった。
 さて、本論の朝鮮経済の現状の分析に論をもどすが、この一年間の動きを時系列で確認しておく。
 まず、2010年3月に、ソ連崩壊以降92年から生産停止していたビナロン工場が再稼動した。このビナロンは、イ・スンギ博士が京都大学に在籍中に開発された石炭から造られた繊維である。この時京都大学では、桜田博士がビニロンを同時期に開発された。
 このビナロン工場は、大コンビナートで肥料工場、化学製品工場などを併設し、肥料だけで年間60万トン生産可能で朝鮮の農業に革命的な変化をもたらしている。農業生産年間600万トンが可能となり、これで今年の収穫から食料問題がほぼ解決したといわれている。繊維製品も輸入に頼る必要がなくなった。
 コークスを使わず製鉄を完成させた「チュチェ鉄」に続いて、自国で採れる資源をもとに自前の科学技術で開発したことは、金正日総書記も「核兵器を開発したことよりも意義がある」と絶賛したそうである。
 次にIT産業について触れておきたい。昨年の2月の段階で携帯電話の普及が10万台と書いたが2010年末に、オラスコム社の発表では、45万台に増加したとの事だった。そしてこの4月に現地で確認したところ70万台まで普及し、毎月8万台のペースで増えてきているとの事である。年内には130万台以上、今後数年で朝鮮の全世帯の600万台に達すると経営主体のエジプトオラスコム社は見ているようである。
 次に、電子図書館について触れたい。2006年金策工業大学に、はじめて電子図書館ができたが、昨年金日成総合大学に本格的なものが出来た。この電子図書館は、わが国の東大、京大にもまだ存在していないデータベースを完備し、昨年10月開館6ヶ月で、すでに20テラの容量の論文、冊子、書籍など約200万冊をスキャニングし、自由に使えるよう整理されている。他の大学や企業、工場の研究者がいつでも検索できるシステムとなっていた。
 今年、アメリカのハーバード大学の研究者が此処を訪れ、わが国にもないシステムが構築されている、と驚いたという新聞記事も出ていた程である。ことIT産業に関しては、昨年アメリカのマイクロソフトに対抗して、朝鮮はドイツ企業と合弁で、新しくレッドスター赤い星というリナックスOS−基本ソフトを開発し世界に売り出した。 これは、業界では、大きな話題にもなったのである。まだアプリケーションソフトが、20アイテム程度で普遍性に欠けるが、マイクロソフト2003年XPレベルに達しているとプロの間では、評価されていると言われている。
 この様に、朝鮮では、自前の科学者をどんどん育成し、自国の資源を最大限活用し、国づくりを進めている。これが彼らの言う自主、自立、自衛の国家建設の方針である。
 ソ連、東欧の崩壊でシベリア鉄道もストップし、エネルギー不足に悩まされ、機械のメンテナンスもできなくなり、工場の稼動率が30パーセントまで落ちた90年台、そこへ2年連続の水害で経済は大打撃を受けたのであった。まさに90年代の後半は崩壊の危機に直面していたのである。
 こうした時期に金日成主席が亡くなり、国民の悲しみは一層大きなものであった。その後3年間喪に服した金正日総書記は、この事態に立ち向かい、先軍政治を前面に立て国防を第一に考え、そして第二に人材育成人づくりに邁進したのであった。愛国心と親孝行を教育の中心に置き、国の為に一心団結の精神で尽くしていく子供たちを育てて来た。
 そうした人材育成と教育の成果が、今日の朝鮮の復活につながっているのである。
 経済問題では、あと2、3点触れておくならば、対外貿易についてである。2000年には、20億ドル程度であったが、2010年には、80億ドルに4倍増となっている。アメリカ、日本などの経済封鎖制裁のなかでの大きな伸びである。
 特に中国との貿易は、2001年7億ドルが、昨年35億ドルになった。2006年の核実験以降、貿易は一時停滞していたが、一作年から急伸し始めている。今年は対中貿易だけで60億ドルに迫る勢いである。対韓国との貿易も、これだけ関係悪化の中でも20億ドル前後を維持している。
 開城の工場団地に、韓国企業120社以上が進出して生産を行っているが、朝鮮の労働者4万6000人以上が働いている。今後南北関係が好転すればすぐに10万人態勢になると予想される。
 さて、こうした経済をおおまかに見てきたが、現場では、各地に大きな規模の食品加工工場や果樹園―大同江果樹園は1000ヘクタール規模―など、地元の人だけでなく軍隊を大規模に動員し、次々につくっている。
 またヒチョン水力発電所2号機も建設中で、今年完成する予定であるが、この発電能力も約40万キロワットである。同じ水系に、あと数ヶ所発電所を作り、200万キロワットを目標にしていると聞いている。
 この他、タイル工場や銅線工場などいくつも視察したが、CNCと呼ばれるコンピュータ数値制御で中央管理された最新鋭の工場にすべてが変わりつつあるということが、最大の変化であるといえるだろう。
 2012年の強盛大国の扉を開くという目標はすでに達成されたと見てよいが、それよりも各国 中でも中国、EU各国が狙いをつけているのは、朝鮮の地下資源である。
 韓国政府の調査によると、日本円で約600兆円の金属類他の資源があるとされている。この他にも、世界のウランの約半分が朝鮮にあるとされているし、海岸沿いからは、石油資源が発見され、中国企業と合弁で開発されていることも報告されている。アメリカも水面下でどんどん朝鮮経済に入りこんできていると言われている。
 紙面に限りがありので次回は、中朝同盟の復活と政治経済面における大きな影響について論じてみたいと思う。


 
インタビュー 「国賠ネットワーク」 世話人 土屋翼さん

おかしいことをおかしいと言える社会に

聞き手 小川淳


 国家賠償裁判とは、一個人が国家を相手に、公権力の違法・不当な行使を糾し、謝罪や賠償を求める訴訟をいう。逮捕、拘留、捜索、起訴・・・これら公権力の行使は、時として過ちを犯す。だからこそ、その監視機能と人権の回復や補償を法律は定めている。
 「何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体にその賠償を求めることができる」(憲法第17条)。「国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」(国家賠償法第1条)。
 しかし、この法制度の理念は、いまもって実現されてはいない。「国賠」とは、損害に対しての金銭賠償にとどまらず、個人の人格を無視され、人権をずたずたに引き裂かれたことへの「尊厳の回復」という大切な意味を持つ。裁判過程を通じ国家の犯罪を明らかにし、加担した公務員や行政当局を裁くことが、権力犯罪の再発を防ぐ歯止めになると考えるからだ。

―「国賠ネットワーク」は1990年に創設され、さまざまな人権侵害の闘いの支援や情報交換、裁判技術の経験交流、相互の傍聴、緊急の抗議行動やアピール、国連人権委員会へのカウンターリポート提出などを行っていると聞いていますが、どのような経緯からネットワークを作られたのですか。
 71年11月の沖縄の返還闘争でゼネストのときに火炎瓶を投げられて火達磨になった警官を火の中から引き出して助けた松永さんが殺人罪で起訴された事件があった。一審は有罪だったんですが、二審は無罪になった。無罪になった後、無罪だけでは許さないということで国家賠償訴訟を始めたんです。国家賠償では一審、二審も勝ったんですよ。これは日本では始めての事件でした。一審、二審で勝って、向こうが上告して最高裁へ行ったんですが、最高裁から差し戻された。差し戻しは「負け」です。ただ待っているだけは嫌だからネットワークを作ろうという話になった。「土田日石ピース缶事件」で起訴された人たち18人のうち国家賠償をやった人が6人、そして「総監公舎事件」の被告の人たち。甲山事件の山田悦子さんなど、不起訴になった後、国賠が勝ちそうになったら再逮捕、起訴された。甲山の国賠裁判は開店休業になった。刑事裁判で有罪になれば国賠訴訟は負けるし、刑事裁判が無罪になれば国賠訴訟は勝つ、そういう関係です。これらの被告たちと90年にネットワークを作った。

―国賠の人たちは国賠訴訟に関わった方が多いと聞いていますが土屋さん自身は逮捕起訴の経験はないんですか。
 僕自身はない。東京で大学を終えて65年に資生堂へ就職し会社では組合をやるようになった。組合は上部団体がなく、ポツダム組合(日本の民主化政策の一環としてGHQが作った組合)の一つでした。70年に松永さんが「救援」や「話の特集」に書いた記事を読んだのがきっかけで支援に関わるようになった。僕は一度も党派に入った事がないし、松永さんも染色家だったから組織も党派も組合もなかったから大変だろうなと思って支援に関わったわけです。発足時の交流会には120人くらい集まった。いまは70人くらい。しかし、なかなか勝てないし、刑事裁判と違って緊張感がない。提訴すること事態も技術的な問題があって、訴状や請求の趣旨とか難しい問題もある。

―日常的な活動としては何をされているのですか。
 隔月にネットワーク通信を発行し、月に一回会合を行っている。富山の「氷見事件」では国に情報公開させていますが、そういう裁判闘争の戦術や対策を研究したりしています。
 今一番多いのはホームページを見て連絡してくれる人ですね。もう一つは「救援」に掲載された交流会やりますという広告記事を見て連絡をくれる人もいる。例えば獄中処遇について国賠やりたいとかの話がある。なかなか勝たないから弁護士がやりたがらない。たとえ勝ったとしても賠償額は多くない。「自衛艦たちかぜ」(上官のいじめを苦に自殺した自衛官への損害賠償事件)の裁判は、請求は1億3千万で賠償は440万円の判決だった。上官のいじめとかあったとは認めたが自殺との因果関係は認めなかった。

―今ネットワークが一番力を入れている事件はなんですか。
 富山の「氷見事件」ですね。一審判決で有罪確定した事件です。被告の柳原さんは強姦と強姦未遂事件で有罪になって2年1ヶ月刑務所に収監された。出てきたら真犯人が分かって無罪が確定。それの国賠をやっている。国選弁護人は冤罪にもかかわらず示談金まで払っている。富山県の副会長の当番弁護士が面会に来たとき、柳原さんが「私はやっていません」と言っても、聞こうともせず、被害者には200万円、未遂人には50万円の和解金を払って解決しようとした。本人は厳しい取調べをうけて弁護士は二回位しか来ず、裁判では自供、控訴も出来なかった事件です。

―社会的に見れば足利事件や布川事件など冤罪事件がクローズアップされてきている。日本社会の国家犯罪や冤罪に対する厳しい視点は少しは強まってきているようにも見えますが、「国賠」の闘いを通じて、前近代的な日本の司法のあり方は昔と変わっていないと思われますか。
 大きな冤罪事件がきちんといくつも勝っていかないと日本の司法は変らないでしょうね。日本の一人ひとりが壊れてきている。人権意識がないのはもちろん、共同規範意識が弱くなってきているという意味で。国とか権力に対して闘うという意識は少しも高まっていない。労働組合が一番良い例ですが、お金になることしかやれないし、人権なんかをやっている組合はほとんどない。階級的な闘争があればともかくも基本的にはお願い交渉になっている。今はどこの組合も反合理化闘争なんて言わないでしょう。合理化して利益を上げておカネを下さいという運動になっている。原発も儲かるから推進している。資本主義社会はおカネを使うことが良い事なんですね。そういうことに組合は反対できない。JALなんかでもいま裁判を起しているけれども、労使も濡れ手に粟で良い思いをしてきたわけでしょう。地方空港ができることにJALの組合がしっかり反対していれば少しは良かったはずです。カネを使うことに意義がある。国の借金約1千兆円は体制を支えるために使ってきた結果ですよ。そういう階級性のある闘いを組合もできなくなってきている。

―日本の司法制度や監獄の前近代的で強権的なあり方は国連人権委員会でも問題視されるように際立っています。なぜ改善されないのか、どこに問題があるとおもわれますか。
 砂漠の思想と森林の思想という見方があります。砂漠では自分で動かないと食料が手に入らない。一方、森林はじっとしていても食料が手に入る。そういう基本的な違いがあるような気がする。日本という島国は非常に保守的でも生きていける。そういう日本の風土的な影響がまずあると思う。限りなく一民族に近い、外敵も少ない、言葉も通じる。国境意識がなくてなあなあで仲良くやっていける。そういう風土が社会の中にも企業の中にもある。会社の社員旅行とか、上司が仲人をするとか、上司がゴルフをすればみんなゴルフをやるとか、そういう家族主義的な風土、日本的集団主義、そういう部分はあるような気がする。

―世直しのためにも「国賠ネットワーク」の意義は小さくない。もっと「国倍」の運動が広がれば世の中はもっと明るくなる。そんな気がしますが、今後の展望についてはいかがですか。
 国賠訴訟を頑張ってやって一つずつ実績を作っていく、それだけでは世の中は変わらない。変るためには文化革命が必要だと思っている。集団主義とかそういう意識変革をしていかないと。おかしいことをおかしいという当たり前の意識変化が生まれればもっと住みやすい世の中になるだろうと。おかしい事はおかしいと現場の人が言えれば変らざるをえない。10年生産を止めても困らないほどモノがあふれている。ドンキホーテなんかに行くと目がくらくらしますよね。ネクタイなんかは10本のうち1本売れれば元が取れるそうですね。だからお金に膝まづかない文化革命が必要じゃないかと僕は思う。
 労働組合がしっかりすることです。人権とか差別とか、自分の会社が作っている製品に関して労働者が子供に堂々と言えるような世の中にすれば少しは変るはずです。

■ 国賠ネットワーク 連絡先 〒235-0045 横浜市磯子区洋光台4-26-18 Tel: 045(831)4993



 

世界短信

 


■世界を脅かす食料浪費問題
   国連食糧農業機構が発表した報告書によると毎年、世界的に10億トン以上の食料品が捨てられている。この量は世界的な飢餓を救うに足る量である。
 機構の資料によれば毎年捨てられる食料品の量は生産量の3分の1を占める。その原因の一つは生産し保管する下部構造が整ってないことで、特に発展途上国でひどい状態だ。これによる損失は6億3000万トン。もう一つの原因は、発展した国々での浪費。これによる損失は7億トンだ。
 専門家の見解は、この問題解決には食料品に関する習慣を変えねばならないということだ。
 ロシア科学院経済研究所農業関係課長ボリス・プルキンは「発展した諸国では、人々は必要以上のものを買うのが習慣になっている。商店の経営方式がそうなっている。例えば、3キロ買えば値を下げますというようなことだ。最近、EUが節約措置に踏み切った。売れ残った商品は大幅値下げするとか慈善団体に送るとかだ。売るためではなく、必要以上は買わないようにという原則が導入されている。また輸入品ではなく国産を重視するようになっている」。
 専門家が提起する二番目の方途は発展途上国が食料輸出体系を改善し農民が購買者と直接連結することだ。こうすれば保管と輸送での損失を半減させることができる。
 プルキンは、さらに次のような方途を提案している。「私は輸入を減らすべきだと考える。発展した国々でも必要な食料品を自分で生産すべきだ。果物のような輸出作物を減らし、穀物、豆、ジャガ芋のような基礎食物を多く栽培すべきだ。そして発展途上国を財政的に支援すべきだ」。
 専門家はこうした措置を至急実行すべきだと見ている。それが遅れれば世界的な飢餓が発生し、より悲惨な事態が起きうるからだ。北アフリカ情勢が不安定なのも食料価格の上昇がその原因だ。

(ロシアの声)

■ASEANがより大きな役割を果たすために
   ASEANにはタイとカンボジアの国境紛争、インドネシアとマレーシアの海上国境紛争がある。世界はASEANが役割を高めるためには、こうした問題を自身で解決すべきだと見ている。
 ASEANは、こうした問題解決のために「ASEAN人道主義センター」を創立してASEAN海洋フォーラムを運営し、2年前に「ASEAN政府間人権委員会」を設立するなど多くの成果をあげてきた。
 今年の議長国インドネシアはタイ、カンボジアの国境問題解決に意欲を示しながら、こうした問題の解決には話し合いと外交が優先されねばならないと強調している。
 カンボジアは紛争地帯へのインドネシア監視員の展開を受諾した。これがジャカルタで調印されれば国境問題を地域の力で解決する道が開けるだろう。
 インドネシアとマレーシアの海上国境紛争の解決も話し合いによる外交努力が続けられている。
 インドネシアのユドヨノ大統領は、まずASEANは、信頼関係を強化すべきであり、それに基づいて共同行動できる能力を高めるべきだ。その上で近隣の重要大国との関係を深めねばならないと述べている。
 インドネシアはASEANが少なくとも東アジア区域で、その存在感を高めることに自信を見せている。

(新華社)

■東アフリカの5カ国が送油管建設計画を討議
   5月、東アフリカのウガンダ、ルワンダ、ブルンジを連結する送油管を建設する計画が討議された。ケニアなど5カ国は建設の調査のためアフリカ開発銀行から60万$の支援を受けたと発表。
 東アフリカ共同体のこの計画はケニアのモンバサとウガンダに建設される製油工場で生産される石油輸送を目標にしている。ウガンダで最近、大きな油田が発見され来年から生産を始める計画だ。

(VOA)


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