研究誌 「アジア新時代と日本」

第259号 2025/1/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

視点 米覇権終焉への予兆に満ちた2025年が始まった

時評 感染症を中国へのヘイトに利用するな

時評 尹錫悦の悪あがき

寄稿 新春座談会 どうなった交野、どうする交野(4)

エッセイ 変化と成長の確かな一歩を

案内 第9回・未来アジア学習会




 

編集部より

小川淳


 2025年、日本は分水嶺を迎える
 新年、2025年の日本の展望について考えてみたい。
 「民主主義VS専制主義」あるいは「米覇権勢力VS非米反覇権勢力」、または「西側諸国VSBRICS」、分け方は色々あるが、今や世界が二分化されているのは間違いない。人口数や貿易量、資源、エネルギーにおいて、すでに前者を後者が凌駕しつつあることも指摘しておきたい。
 さらに言えば、その西側諸国、「民主主義」陣営の中でも、リベラリズムの凋落と反EUを掲げた新たなファースト政党が台頭し、ドイツやフランスでは政権崩壊の危機にある。ここ欧州でもファーストか反ファーストかの二分化、二極化が進みつつある。
 一方、日本はどうか。二分化された世界とは無縁に無風状態が続いている。とりわけウクライナ紛争以降、日本は反ロシア、反中国一色といって良い状況になった。元来は反米リベラルな勢力(いわゆる立憲や共産党などの野党勢力)も台湾問題では反中国一色となり、ウクライナ以降は反ロシア、ウクライナ支持一色になってしまった。
 「日米韓対中ロ朝」の対決が鮮明になる東アジアで、日本の「反米リベラル勢力」は完全に「反中ロ朝」へと組み込まれてしまった。政界もメディアも野党リベラルも大政翼賛的に米国支持一色となっている。
 一国での覇権維持が不可能になったアメリカにとって、対中戦争の鍵を握る日本との同盟は死活的だ。そのための日米の一体化は対中戦略の要となる。岸田政権下での敵基地攻撃能力の容認と日本列島のミサイル基地化もそのためのものだ。
 しかしアメリカが仕掛ける対中戦争に日本を参戦させるにはまだ大きなハードルがある。まずは強固な政権を築かねば戦争はできないからだ。今のような少数与党の政権基盤の弱い石破政権ではなく、それに代わる強固な政権を築かねばならない。反ロシア、反中国一色の大政翼賛的な今の日本には、その条件が整っている。野田立憲と石破自民党との「大連立政権」も決して「夢物語」ではない。日米安保を支持し、日米同盟強化に基本的に賛成している野田氏は石破首相とも考え方が近く野田立憲となら自民も連立に踏み込む可能性は十分にあり得る、そう見る識者は少なくない。
 その分岐点となるのが今年の参議院選挙であり、ここで自公が過半数を割り、しかも立憲が単独で過半数を取れないなら、大連立は現実味を増していくだろう。
 そのような悪夢を阻止するためには、時代の趨勢に合わず、敵対する石破政権の政治がいかに矛盾に満ちたものであり、日本国民の意思と要求に反しているかを明らかにし、そうした世論をつくり出すのに寄与できればと思う。そのための一石を投じていきたい。



視点

米覇権終焉への予兆に満ちた2025年が始まった

編集部


 「動乱の時代」が始まっている。とりわけ2024年は、米国中心の国際秩序が破綻と崩壊を露呈した一年となった。

■歴史的大転換の年
 「おそらく100年後の歴史の教科書には2024年は歴史の大転換であったと称されることになるであろう」(石破首相 12・12朝日新聞)。
 2024年は歴史の大転換点ではなかったかと私たちも考えているが、石破首相のいう意味と私たちの意味は勿論同じではない。
 12月アメリカでは民主党が敗北し、大方の予想に反してトランプが大勝した。日本では総選挙で自民党が大敗し、自公は15年ぶりに少数与党に転落した。そして韓国ではユン・ソンニョル大統領が戒厳令を宣布し、現職大統領が国会で弾劾決議されるという異様な事態になっている。盤石と思われていた「日米韓」の三つの政権が昨年末、瞬く間に崩壊している。石破の所感はその危機感の現れであるだろう。
 これまで、政治体制を大きく動かす要因は、「左右の対決」と見られてきた。右か左か、保守かリベラルか。その背景にあったのがいわゆる米ソ冷戦であり、日本では自民党と社会党が政権を争ういわゆる55年体制というものだった。冷戦終息とほぼ同時に55年体制も崩壊したが、保守かリベラルかの対決という基本構図は現在に至るまで続いていた。しかし、今やこの戦後政治の基本構図が音を立てて崩れ、これまでの常識が全く通じない時代、未来が見えない時代となった。

■「保守かリベラルか」から「自国第一主義へ」
 これまでの常識が全く通じなくなったことを鮮明に示したのがトランプの大勝だった。
 民主党VS共和党の対決はいわゆる「保守対リベラル」の対決とされてきた。旧来なら非エリート層の白人やヒスパニック、黒人は民主党支持し、資本家や企業、富裕層やエリート層は共和党を支持した。ところが、今回の選挙では富裕層が左派ハリスを支持し、広範な白人非エリート層やヒスパニック、若者が右派のトランプを支持したように、旧来の左右の図式は全く当てはまらなくなっている。民主党の敗北は、「生活」とかけ離れた「自由」「人権」「公平」などの「理念」を掲げるだけで、人々が切実に求めているインフレや貧困、住宅などの「生活」問題への解決策は提起できなかったからだ。リベラリズムからアメリカファーストへ。グローバリズム破綻と米覇権の行き詰まりから、唯一の覇権国としての求心力と栄光を再び取り戻す、その切り札がトランプだった。
 欧州でも米覇権秩序の崩壊が一挙に進んだ。リベラルが退潮し、代わって台頭したのが、自国第一主義、ファースト政党だった。
 欧州議会選挙では、EUに懐疑的で自国第一主義的な政策掲げる「右派」や「極右政党」が躍進した。フランスではルペンが率いる「国民連合」が移民排斥やEU脱退などの過激な主張を封印してマクロン率いる与党連合に大勝した。
 ドイツでは「ドイツのための選択肢」(AfD)が第2党に躍進。社会民主党(SPD)主導の連立政権が崩壊し、今年2月の総選挙を控える。象徴的だったのが昨年9月のチューリンゲン州の州議会選挙で、88議席中、AfDが33議席を占め、緑の党、FDPは議席を失い、SPDはわずか6議席だった。
 イタリア政権を率いる「イタリア同胞」や、ハンガリーのオルバン、そして昨年11月、ルーマニア大統領選では政党も基盤もない親露派で無名の候補カリン・ジョルジェスクが1回目の選挙でトップに立ったが、この選挙は無効とされた。グローバリズムに異を唱える自国第一主義、ファースト勢力が席巻した一年だった。

■世界を二分する闘い
 世界を「民主主義VS専制主義」の二つに分断し、前者が後者を包囲、排除、孤立させる、この米覇権回復戦略は昨年どうだったのか。
 BRICSは昨年10月、ロシア西部のカザンで第16回首脳会議を開催し、36カ国が参加した。原加盟国の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)に加え、1月から枠組みに加わった4カ国〔アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプト〕を含む拡大体制となったBRICSとして、初めての首脳会談開催となった。
 首脳会議は「公正な世界の発展と安全保障のための多国間主義の強化」をテーマに、採択された共同宣言では、ドルに依存しない自国通貨での新たな決済システムの必要性を確認し、その導入の検討を継続することや、新たに「パートナー国」の制度を創設することが盛り込まれた。パートナー国は加盟国に次ぐ立場にあたる準加盟国に相当し、加盟国との経済協力や会議への参加に対する権利を持つ。パートナー国の創設は、グローバルサウスの結束力を高める狙いがある。パートナー国には13カ国(インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ、トルコ、アルジェリア、ナイジェリア、ウガンダ、ボリビア、キューバ)が候補と複数のメディアで報じられた。
 BRICS加盟国の人口は合計35億人と世界の約45%を占め、経済規模は合計28兆ドル以上となり、世界経済の約28%に相当する。
 覇権か反覇権かの世界史的攻防の中で、一極支配を謳歌した米覇権は、一歩ずつ確実に終焉へと向かいつつある。米覇権の終焉とBRICSの拡大、欧州におけるファースト政党の台頭が軌を一つにしているのはけっして偶然ではない。

■普遍的価値から多様性へ
 米覇権勢力が世界を二分するために掲げているのが、人権と民主主義、法の支配などいわゆる「普遍的価値」といわれるもので、それが普遍的と言われる所以は、人権や民主主義はだれもが反対できない、人類にとって最も普遍的な価値を持つものと広く信じられているからだろう。
 今世界はバラバラだけれども、いずれ世界は一つの文明に収斂していく。私たちはそのように信じてきたし、とりわけ日本人にはその傾向が強いように思われる。
 どのような国家や文明であっても、人権や民主主義は「普遍的」であり、適用されるべきものと固く信じられている。軍国主義やファシズムに苦しめられた歴史的体験を持つ日本人は、人権や民主主義の貴重さを他の国よりもとりわけ深く実感している。
 世界は一つの価値へ向かっている。人類がめざすべき文明は一つしかない。アメリカ主導のグローバリズムにはこの考え方が濃厚にある。普遍達価値を体現していくことがすなわち「進歩」であり、「文明」なのだ。そのような確信めいたものが私たちの中にも色濃くある。特に左翼や進歩的な人にこの傾向が強いようだ。
 この米覇権VS非米反覇権の闘いは、イデオロギーとの闘いでもある。では親米覇権勢力が掲げるこの普遍的価値イデオロギーに対して、反覇権勢力は何を掲げ、どう闘っていくのか。
 ひとつ参考になるのが、2023年プーチン大統領の「ヴァルダイ演説」だ。
 「国家文明の基本的な特質は多様性と自己完結性です。この2つが主要素だと私は考えています。現代世界にはいかなる単一化も異質です。各国家、各社会は独自の発展の道を自力で選ぶことを望んでいます。その土台にあるのは文化と伝統です。それは地理的条件、昔からの、また現代の歴史から得た経験、民族の価値観によって強化されています。これは複雑な合成であって、その合成の過程で独特の文明共同体が誕生していくのです。その不均一性と多様性が持続可能性と発展を保証する鍵なのです」。
 「それと同時に、文明は普遍的な構造ではありません。ひとつで万人を満たす文明などありません。それぞれが他とは異なり、文化的に自足しており、独自の歴史と伝統から思想・価値観の原則を汲んでいるのです。自分自身を尊重することは言うまでもなく他者を尊重することから生まれますが、他者から尊重されることも意味します。ですから文明は誰かに何かを押し付けるものではなく、同時に、自身に何かが押し付けられることも許しません。まさにこうしたルールを全員が守れば、国際関係の全参加者の調和のとれた共存と創造的な相互作用は保証されるのです」。
 世界は一つではない。唯一の価値など存在しないし、多様性にこそ価値がある。それぞれの独自の文化や伝統、歴史を持つ国や民族が誰にも邪魔されず、自らの意思で独自の国や社会を築くことができる。そのような覇権のない自由で多様性に満ちた世界を作っていく「新たな時代」が始まろうとしている。米覇権の終焉に向けて、激動の2025年を迎えている。



時評

感染症を中国へのヘイトに利用するな

古賀 滋


 フジ・サンケイの「中国嫌悪」はいつもヘイトスピーチのレベルであるが、年頭1月初旬の夕刊フジ広告は衝撃的であった。「中国感染症の恐怖」を煽る見出しが踊っていた。「中国でヒトメタニューモウィルスが大流行」「春節で90億人が旅」・・・その中国感染症にまるで日本が襲われるかの如き宣伝である。この極右新聞をテレビ各局も丸写しで報じている。実は完全なフェイクだ。まずヒトニューモウィルスは、フェイク好きのウィキペディアでも「2001年にオランダで発見」とある。中国原産でも何でもない。そしてオランダに限らず日本でも世界各国でも流行している。今はアメリカ・イギリスで流行っているとある。世界に広く存在するのだ。WHO(世界保健機構)の規則で、病原菌に国や地域の名前を付けてはいけない事になっている。フジ・サンケイと日本のマスコミはこれに違反している。さらにこれはインフルエンザや新型コロナとちがって死に至る病気でもないらしい。殆どの子どもが感染するが風邪とあまり変わらない症状や、無症状で終る人もいると専門家が言っている。とにかく手洗い、うがいなどを励行してください、との事だ。

◇ユッタリバカンス中国、ヘイトに精出す日本  中国人は日本の十倍以上人口があるので日本の正月やゴールデンウィークに比べて十倍以上の人がユッタリと国内・国外の旅行を楽しむが、訪日客は6年前の最高時で950万人、近年は250万人ほどである。何が「90億人」なものか! まるで病気をうつしに訪日するようなフジ・サンケイのデマ宣伝と裏腹に、彼らは平均2週間も滞在し、平均30万円をインバウンド消費してくれて、総計7599億円の経済効果を日本に与えてくれているのだ。あまつさえ、各地を大軍で観光したすえ「日本良いとこ」の印象を持って帰ってくれるお客さんなのだ。それをバイキンマンみたいに言う日本の報道は犯罪的であるし、日本の国益を大きく毀損するものだ。「中国で感染症が拡大」などと言うが、日本こそインフルエンザ、新型コロナ、もろもろの風邪や、ニューモみたいな感染症の宝庫だ。(欧米も!)その日本人が中国へ病気うつしに来たぞ!などと言う報道はない。中国の基本姿勢は、ありのままの中国をどうぞ見に来てください、である。日本のあらゆる政府・報道機関はただちに「中国こわい」キャンペーンを止めなければならない。左翼・リベラルもかなりの部分が中国こわい、を一緒に信じ込んでいる。悲しくも滑稽な現実に早く気付けよ、と私は思う。欧米にあやつられることなく現実を見て行動するのが日本のためである。全世界から北京空港へ飛行機が集まっているのを見れば答えは明らかだろう。中国は「平和な心で来るもの拒まず」だから偏見だらけの日本人が来なくても痛くもかゆくもない。偏見の少ない欧米の企業と人士と付き合って充分発展できるから。

◇豊かなお正月送りたければ  円安と物価高で日本のお正月もさんざんだが、中国を敵視し、一部の妄想者みたいに「中国と一戦」なんて本気でやればその瞬間、食卓から食材が消えたり、値段が高い高いと嘆くその何倍も野菜も魚も肉も高騰し、日本の人口の相当数が餓死する羽目になる。お正月どころでなくなるのだ。ニュートラルに中国・朝鮮などアジア諸国との善隣友好に励み,アジア新時代の扉を開く事こそ平和で一定豊かな正月を続ける唯一の道である。


 
時評

尹錫悦の悪あがき

古賀 滋


 韓国の尹錫悦大統領への弾劾決議可決は世論の勝利だった。
 最大野党「共に民主党」だけでなく与党からも12人の賛同を得て、弾劾決議が劇的な可決となった。これにより職務停止となったから以後の文では尹氏と書かせていただく。後は憲法裁判所で弾劾が成立する事を祈る。(韓国の同志と共に強く願う。)

◇危険人物尹錫悦
 何と朝鮮の軍隊との交戦もでっちあげて戒厳宣布に正当性を持たせようとしたり、朝鮮人民軍に挑発をかけて戦闘状態に持ち込もうとしたり、与党「国民の力」の反尹派、特に韓東勲代表や裁判官を逮捕しようとした事がバレて、造反議員が8人を軽く上回ってしまったのには私もいたく驚いた。しかし当然だろう。右翼政党の同志なのに尹氏に忠誠を尽くさないからと言って戒厳のどさくさに逮捕され、殺害され、朝鮮人民軍の仕業に見せかけるなど、仁義なきたたかいの最たるものだから。これには前科がある。

◇悪行繰り返して来た軍事独裁勢力
 1973年、KCIAと駐日韓国大使館一等書記官達の手で金大中さんを東京で拉致した時、朝鮮製の煙草を置いて朝鮮の仕業に見せかけようとした。事件発生まもなく、韓国政府の仕業と察知した日本政府(とそのバックにいるアメリカ政府)が警告して、金大中さんは拉致途上の朝鮮東海で海に投げ込まれるのを危機一髪助かったようだが、殺害が成功していたら朝鮮の仕業にされた可能性が強い。45年前軍事クーデター(粛軍クーデター)と戒厳令の中で逮捕され、死刑判決を受けた金大中氏は全斗煥政権から「朝鮮の手先となって内乱を企んだ」とでっち上げられた。

1・15 ついに身柄拘束
1・15 ついに身柄拘束

◇尹氏逮捕! 弾劾成立を!
 李承晩、朴正煕、全斗煥、朴槿恵らを支えた軍事独裁勢力は骨の髄まで勝共思想と朝鮮を叩き潰したい歪んだ信念があって、尹氏による今回のクーデターと戒厳令に至ったと思われる。それが失敗した今、タダでは済まない事ぐらい64歳の元検事なら分かるだろう、分からなければいけない! 最期まで戦うと意気軒昂だが内乱行為を裁く法律は韓国でも日本でも、いや全世界共通で極刑と決まっている。大統領警護処なる公務員を私兵として使い、星条旗を振り回す極右集団1万を動員して自分の身を守らせる低劣な悪あがきは失敗するだろう。失敗しなければ韓国民衆も韓国政治も世界中から笑われる。いや、もし無理やり戦争を誘発する愚挙が成功したらアジアに戦火が一挙に起こり、中国大陸も日本列島も火の海血の海、放射能まみれになり、世界の滅亡にもつながりかねない。
 尹氏の逮捕も弾劾も時間の問題だが、百万のペンライトデモを極寒の中で毎日がんばってくれている若者を中心とする韓国民衆に連帯する時である、アジアの平和のために。



寄稿 <新春座談会>

どうなった交野、どうする交野(4)

司会 吉坂泰彦(「みんなの交野」会員) 


司会―本日は皆さんに集まっていただき、2年少し前に戦った交野市長選挙について、また、その後の市長の活動について、フリーで話し合ってもらう、ということです。まず、企画を考えたSMさんから一言。初めての方もいるので、少し遡って説明してください。

SM―前の市長は、民主党の市会議員であったにもかかわらず、市政を民営化・民間委託して弱肉強食を進める新自由主義そのままの市政を続けていたのです。議会は、旧民主・維新・自民・公明の議員(計10人)に牛耳られ、共産3、プラス無所属2の意見は常に無視されていました。そこに、市民を二分する大問題が連続して二つ起こりました。その一つは、高齢者・障がい者にとって切実な足の問題、全国的にも誇れる福祉バスを廃止するという問題。二つ目は、2小学校と1中学を統合して、1小学校の敷地に小中一貫校を作るという問題です。通学する児童生徒とその保護者にはあまりにも唐突な問題でした。議会の多数意見だからといって、市民の意見を十分に聞かずに市政を進めるのはおかしいと思い、「みんなでつくる みんなの交野」をスローガンに運動を進めてきました。陳情を行い、「住民投票条例制定署名運動」を行いましたが、市長と市議会多数派に阻まれました。それで、当時市議会議員だった山本景さんを押し立てて市長選挙を戦ったのです。

H―しかし、誰も勝てると思っていなかった。自民・公明・立憲・維新を相手にして、こちらは私ら「みんなの会」と隠れ共産党だけ。しかし、選挙に入ると、自民党員の方が事務所に陣取っているし、維新支持者と思っていた方が山本支持であったり、一部の公明支持団体が裏で山本支持をしているということがわかってびっくりした次第。

M―私らが作って撒いたいわゆる「ヤバイビラ」も好評でしたねえ。なぜこれまでの市政がダメなのか、どうすれば良いのかを、そして市民みんなで交野を作ろうと、ビラとマイクで市民に直接宣伝したのが良かった。でも既成の神輿に乗った前市長派は、タカを括っていた。けど最後の方は、少し焦りみたいなのがあったなぁ。

司会―終盤に来て、私らは勝つと思いましたねえ。市民の反応が違った。そして921票差で勝利! 前市長派から酷い誹謗中傷を受けました。で、山本市長は、何から始めるのかなぁ、と思っていたら、10月議会に「小中生の3学期の給食費無償化」予算の提案でしょ! ビックリしました。そして案の定、否決!

H―市長は、これを上手く使いましたねぇ。マスコミ各社が「給食費無償化市長提案を否決」と報道したものだから、各政党本部に、交野市民からの抗議の電話が殺到したらしい。当然本部は、経緯は別として、交野の各支部を叱責した。結果、否決した2日後に、議会多数派は、市長宛てに、「恒久的な無償化を」と要望したという情けなさ。

SM―市長は、マスコミを上手く使ってるねぇ。「使用頻度の少ない公用車の売却」や「事務備品の簡素化」など。同時に、寄付なども活用している。最近は、市長の「小中生の関西・大阪万博への強制参加の問題提起」や「北陸新幹線の市内の地下通過反対」の意見が、近隣市民も含めて共感を得ているようだ。

司会―そりゃそうだけれど、選挙時の公約実現はどうなっているのかな? 「市民の足」の問題、「小中一貫校建設」の問題は特に。

M―「市民の足」の問題は特に気を使っているのが分かる。去年突然に京阪バスから市に、「令和7年3月22日から市内4路線の運行を止めます」と通告してきたらしい。減便の話は前からあったけれど、廃止とはねえ。その理由は、「運転手の確保が困難だから」だって。それだったら、福祉バスを残しておいて、何らかの工夫をして市内全域をカバーする方策もあったんと違うか!と思う。市長は新年の挨拶の中で、「意地でも路線バスを守る決意を固めた」と言っている。老人会なんかは大いに期待しているそうだ。

H―「小中一貫校建設」は業者との契約のために、残念なことに止めることができなかった。でも市の出費を極力抑えたと思う。当初70億と言われていた市の負担が、半分近くになったそうだし、他の小中11校の児童生徒の教育環境改善に金をかけたようだ。小学校低学年のクラス定員を30人以下にしたし、小6と中学全員の学校給食を無償化したりした。また、災害時に避難場所となる体育館の冷暖房化・トイレ改修工事・LED照明・机椅子をPC対応用に更新などを順次進めている。

司会―その他の施策では?

M―まず第一に、老朽化した市役所を移転せずに、耐震改修をはじめ、屋上防水・外壁補修・エアコン更新・トイレの大規模改修・LED照明に更新していくと、方針を明確にしたことだろうね。第二に、防災対策に力を入れている。学校体育館の冷暖房化もそうだし、トイレトラックやシャワートラックの導入を国の交付金プラス市民の寄付(クラウドファンディング)で行う。市の予算をできるだけ使わない、こんな発想、今まであった? これを見ていたら、維新の「身を切る改革」が如何に嘘っぱちかがよく分かる。

山本景市長と共に
山本景市長と共に

SM―それと、財政健全化を進めているということかな。前市長を含めて我々もある意味、財政健全化って言えば、市の予算を使わないで、業務を民営化したり委託したりすること、くらいにしか思っていなかったかも。前市長は、幼児園・給食センターの民営化・ごみ収集の一部委託などを進めてきた。30年前と比べ、人口が増えているが、市の職員数全体ではあまり大きな変動はない。しかし、正規と非正規の比率が逆転している。その状況で市長が1年目にしたのは、話が進んでいた放課後児童会(学童保育)の民間委託をチャラにしたし、非正規職員の報酬体系を改善したことだった。

H―もうちょっと挙げると、物価高騰対策と子育て支援策の充実かな。下水道基本料金の値下げ・国民健康保険料の維持・低所得世帯への支援・ボール遊び広場の整備・見守りおむつ定期便などなど。これまでの視点と違った見方で市政運営をしていると思う。

司会―最後になりますが、「みんなの交野」の会は、どの様になったのでしょう?  「市長の後援会として活動できれば良い」とか「市長の嫌う課題は取り上げない」という方が出てきて、会を抜ける方がいたとか? 今後どうなるんでしょうか?

SM―この会は、出発のときから、市長の後援会でも市議の後援会でもなく、自由な立場で国政・府政・市政への意見を述べ、応援するというものです。実際、市長選では1本化しましたが、市議選では無所属3人に分かれました。重点を置くところが違うということで良いのではないですか? どこそこの政党が支持している候補者だから支持するのではなく、「地域第1主義」で「市民が主役の政治」を進めるかどうかでしょ! 自民党かられいわまでの支持者がいるこんな会はめずらしいんではないですか?

司会―まだまだ色々とあるでしょうが、この辺りで締めたいと思います。今日は、ありがとうございました。山本市長が就任して2年5ヶ月が経過し、市議選の結果、与党議員も増えました。そして次の市長選挙が話題になるようになりました。私達は、「右か左か!」ではなく、「みんなでつくるみんなの交野」でまとまって、今後も進めていきたいと思います。



エッセイ

変化と成長の確かな一歩を

金子恵美子


 今年は巳年。脱皮して成長を遂げていく蛇にちなみ「変化と成長」が巳年の特徴とか。そして、「昭和100年」「戦後80年」という。だから何なの?という気もするが、わが国が大きな選択を迫られている時代的な節目の年であることは確かだと思う。
 これと同時に年末年始の新聞には「不確かさを越えて」「先行きの見えぬ世界」「ゆらぎ」「不透明」「あいまい」などなど数え上げればきりがないほど、「不確か」キーワードが目についた。
 確かに、SNSやネットには不確かな情報や意図を持った偽情報があふれ、とどまるところを知らない物価高、年金の先行き、老後の生活など、将来の生活の見通しが立たない生活、世界に目を向ければ終わりの見えない戦争、対立と分断、排除の深まり、何よりも、戦後、圧倒的軍事力とドル、「自由・民主主義理念」で世界を牛耳ってきた米国の衰退と「アメリカファースト」を掲げ「何をするか予測不能」と言われる異質な大統領の再登場。
 この「アメリカファースト」を掲げ、関税が「最も美しい言葉」と語り、同盟国にも露骨な米国の利益のへの服従を迫る大統領とどのように付き合っていくのか、ということを考えれば、「不確か」という空気が、米国に運命を預けているようなわが国日本に濃厚に漂うのも無理からぬことかも知れない。
 この様な中、石破新政権はと言えば、トランプ新大統領と電話で数分話したとか、会談を断られたとか、相手にされていない。また、自分の方からも1月の就任式後の会談を避け、2月ごろの初会談にするとか、戦々恐々の様子がうかがえる。
 元々親分子分の関係ではあると思うが、それほどに力の差があるということだろう。その為なのだろう。会談のための手土産づくりに余念がないように見える。
 1月9日、首相就任後、国際会議以外で初めての外国訪問となったマレーシア、インドネシアへの訪問。米国を頂点とした欧米中心のこれまでの国際秩序に不公平感をもつ国々(アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国々)は今グローバルサウスと呼ばれ、新しい国際秩序づくりを目指し注目されているが、マレーシアとインドネシアもその一員である。そうした動きの牽引力になっているのがロシアや中国が入る「BRICS」であるが、インドネシアは1月6日にこれへの加盟を決めた。中国を最大の敵国とする米国としては、インドネシアを日米陣営にひきつけ中国の影響から切り離したいというのが本音であろう。その「橋渡し」として動き、少しでもこちら側に引き寄せ、その手土産をもってトランプ氏との会談に臨みたいという卑屈な心根が透けて見える。
 「変化と成長」の年。相も変わらずのわが国日本。世界は大きく変わりつつあり、歴史的な転換の時代を迎えているということをしっかり見据え、アジアの一員であるという足場にしっかり立ち、何が日本と日本国民の利益であるのかという真の「自国第一主義」から出発して「確かな」一歩を刻む年にしていきたい。



案内

第9回・未来アジア学習会

 



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