研究誌 「アジア新時代と日本」

第257号 2024/11/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

視点 これでいいのか日本の進路

論点 「対米従属でない日米基軸」の真相

論点 これで地方を守り、発展させることが出来るのか

投稿 衆議院議員大石あきこ選挙裏話

時事雑感 もう少しで騙されるところだった




 

編集部より

小川淳


 自民大敗は大転換時代のうねりの一つ
 11月11日特別国会が招集され第二次石破内閣が発足した。総選挙では与党で過半数を制することができず、首相指名選挙でも決選投票に持ち込まれ、維新と国民の白票84票に助けられ、かろうじて政権維持を保つことができた。「少数与党」は94年の羽田内閣以来で、羽田内閣は少数与党の状況を打開できず、わずか64日で退陣に追い込まれている。
 自公の大敗北、そして「少数与党」となった第二次石破政権発足をどうメディアは見たのか。同日の主要紙3紙の「社説」を読み比べてみると、「朝日」は「空洞化した国会の機能を立て直し、与野党伯仲を選んだ民意に応えるのは責務」とし、毎日は「国会重視の政治への転換を」と書く。「朝日」も「毎日」も「数の力を頼みとして国会を軽視し異論を受け入れない『自民1強』のおごり」とし、自公敗北を古い政治体制からの転換の好機と受け止めている。一方「讀賣」は「気弱な政権運営では乗り切れず、政治を安定させるためには国民民主と正式な連立組む必要がある」とし、自公敗北への危機感が露わだ。
 政治学者御厨貴氏は「少数与党時代の新秩序」と題したインタビューで、内閣不信任案がいつ可決されてもおかしくない緊張感ある国会運営を自民党は一度も経験したことがないことを挙げ、55年体制からの転換の始まりと見ている。
 これまで自民党は与党の「数の力」を背景に、国益に直結する重要法案さえも与党内部の合意さえあれば国会審議は形式だけですませ、野党が反対すれば数の力で強行採決する。そのような政治手法を常としてきた。このような国会軽視が通用しなくなったのは確かだろう。
 だが、今回の自民大敗は、もっと巨大な時代的転換のうねりのひとつと見ることは出来ないだろうか。政治とカネ、宗教との癒着、政権の腐敗とおごり、日米同盟の深化と憲法の空洞化・・・戦後の自民党政治は何度も危機を招きながらも米国の後ろ盾を受けることにより、何とか生きながらえることができてきた。その米覇権がいまや衰退から終焉を迎えつつある中で、自民党政治も終焉を迎えているというのが真相ではないか。
 米一極支配の再生を狙った「台湾有事」がいつ起きてもおかしくない情勢のなかで、野党を巻き込んだ自公に代わる新たな親米与党連立が成立し、台湾有事に加担していくのか、それとも非自民の広範な国民の支持を得た戦争に反対する野党連合が生まれるのか。
いずれ遠からぬ時期に、憲法を変えて戦争をできる国にするのか、戦争に反対し憲法9条を守るのか。日本の国の形を変える選択は避けて通れないだろう。その闘いはもう始まっている。



視点

これでいいのか日本の進路

編集部


 戦後日本がたどってきた路程を大きく転換させる事変が連続した。総選挙と米大統領選だ。
 この二つの結果が日本の進路にとって持つ意味は何なのか、それに日本国民はどう対したらよいのか考えてみたい。

■総選挙によってもたらされたもの
 今度の総選挙は、これまでのどの総選挙とも異なるものだった。それは、一言で言って、戦後政治を終結させるものだったと言えると思う。
 今回の総選挙の大前提は、今年4月、岸田訪米に際し、日米首脳の合意として打ち上げられた「日米同盟新時代」だった。
 その根底には、米一極を中心とするハブ&スポーク状の同盟から「日米韓」や「日米豪」など格子状の同盟が折り重なったその中心に日米同盟が位置するという覇権国家米国と各国間の同盟のあり方の転換があった。この転換にともなって、経済や軍事などあらゆる領域に渡りこれまで米国と各国間で推し進められてきた指揮と開発の統合も「同盟として」のものに深められるようになる。自衛隊に来春新設される作戦統合司令部が米インド太平洋軍司令部の指揮権を一部移譲される在日米軍司令部と連携し指揮の統合を行うことなどは、その典型だと言うことができる。
 戦後、戦争をしない国として生きてきた日本が日米共同で戦争する国になる。これ一つとっても国のあり方の根本的大転換だ。そのような重大事がただの一度の国会審議もなく、日米首脳の合意として公表され、総選挙でも不問に付され、与野党一致、大政翼賛で日本政治の大前提にされた。ここに今回の総選挙の戦後政治を終結させる選挙としての第一の特徴がある。
 今回の総選挙が持つ戦後政治を終結させる選挙としての特徴は、第二に、これが戦後一貫して続いてきた自民党政治の終焉だったところにある。もちろん、15年前、自民党政治が一時途切れたのは事実だ。しかし、あの時と今回とでは訳が違う。今回は、自民党自体の瓦解と一体だった。
 「政治とカネ」の問題による最大派閥安倍派の崩壊。自民党総裁選で善戦した高市早苗の28選挙区を飛び回っての大奮闘も流れを押し止められなかった現実。そこには、自民党支持層の自民党離れ、その奥にある党の支持基盤、地方地域の崩壊と変質があったのではないか。実際、日米経済の統合にともなう地方地域の格差拡大と変貌、消滅の加速化が自民党の崩壊をもたらしたと言っても決して過言ではない。
 今回の総選挙の戦後政治を終わらせる選挙としてのもう一つの特徴は、新しい時代の要求に応えたか否か、そこに選挙結果の明暗がくっきりと現れたところにある。
 今回、野田立民が「政治とカネ」の問題を第一の争点にしながら、その最大の解決策として政権交代を掲げ、自公を過半数割れに追い込んだのは事実だ。しかし、立民自身の比例代表での得票率は0・6%増に止まった。これと比較し、躍進が目立ったのは、国民民主とれいわだった。議席増、比例代表得票率増、それぞれ、前者は、4倍、2・4倍、後者は、3倍、1・7倍だった。その要因が両者ともに経済問題を取り上げ、国民生活第一で闘ったことにあるのは衆目の一致するところだ。もう一つ、今回の選挙で押さえておくべきは、地域第一だったのではないか。「沖縄第一」でオール沖縄の共産、社民がそれぞれ1議席獲得したこと、「大阪第一」の日本維新が大阪全区を押さえたことは、その現れではないだろうか。その一方、今回の選挙で際立ったのは、公明、共産の凋落だった。比例代表得票は、それぞれ596万、336万と、前回比115万、80万の大幅減だった。両者に共通しているのは、支持者、党員の高齢化だ。時代の要求に合った新しい問題提起のないところには若者が育たず集まらず、若者のいないところには、人々を結集する力もエネルギーも生まれない。今回の総選挙は、改めてその真理を教えてくれたと思う。

■「トランプ」と戦後日本の転換
 大接戦と言われていた米大統領選は、トランプの圧勝だった。このトランプの再選が日本にとって意味するものは何か。それを知るためにも、今なぜ「トランプ」なのかが重要だ。
 今回の大統領選、このわずか1年足らずの選挙期間、バイデンからトランプ、トランプからハリス、再びトランプへと、誰を大統領に推すか、米覇権中枢の動揺ぶりは目に余るものがあった。
 その根底には、国と民族、集団そのものを否定するもうこれ以上はあり得ない最後の覇権主義、グローバリズムと新自由主義の破綻とそれにともなう米覇権の回復不能の行き詰まりがある。このどん詰まりからの脱出のため、米覇権が中国とロシアを相手に引き起こしたのが対中対ロ対決の「新冷戦」だった。「対ソ冷戦」の夢よもう一度と引き起こしたこの新冷戦が今、米覇権の終わりをかえって早めているのではないか。対ロ新冷戦から生まれたウクライナ戦争の敗勢をNATO軍を動員することで建て直し、その上で米中新冷戦に力を集中するのか、それともトランプの力で「敗勢」をなんとか取り繕ってからにするのか。米国の思い通りには行かない欧州覇権勢力内部での自国第一主義の台頭の中、米覇権は決心採択不能に陥っていた。
 もちろん、米大統領を決めるのは、米覇権中枢ではない。米国民だ。その米国民の間に異変が生まれている。かつての富裕層の党、共和党が貧困層の党となり、民主党はその逆になっている。白人労働者層だけでなく、黒人やヒスパニック、アジア系の貧困層にまでトランプ支持層が広がっている。そこには明らかに、トランプの「アメリカ・ファースト」がある。移民受け入れに反対し、関税を引き上げ、米国企業の外国企業への身売りや海外移転に反対しているだけではない。何より決定的なのは、ウクライナ戦争に米国が巨費を投じ支えることに反対していることだ。
 米覇権中枢の動揺が、まさにこの「アメリカ・ファースト」が米覇権に何をもたらすかにあったのは明らかだ。それが選挙戦終盤、ハリスの政治的無能を証明する、ほとんどのページが白紙の「カマラハリスの業績」の発刊を放置したこと、「ワシントンポスト」など有力米メディアがそれまで支えていたハリスへの支持を取り止めたことなどは、米覇権中枢がトランプの「ファースト路線」に梶を切ったことを示すものだった。
 総選挙と米大統領選。この戦後政治の終結と米覇権路線の転換がこれからの日本政治に何をもたらすか、それに日本国民はどう対すべきなのか考えていくことにする。

■問われる国民基軸の真の自主独立
 自公連合と各個バラバラの野党勢力。日本の政界地図は、衆院過半数を占める集団のないまま、今、こうなっている。そうした中、最大政党自民党による一本釣り、全野党連合、はたまた自公と国民の連立、等々、様々な多数派工作が右往左往しているように見える。
 だが、こうした多数派工作のすべては、何か馬鹿らしい見え透いた茶番劇であるかのように見える。なぜなら、今回の総選挙の大前提には、「日米同盟新時代」があったではないか。この大前提の下、すべての与野党が一つに連立する道筋は最初からつけられていたのではないか。
 その挙国一致、大政翼賛政権の首相や閣僚など構成がどうなるかは知らない。しかし、それが米トランプ新政権に呼応した「ファースト政権」、対中対決の日米基軸「自主独立」政権になるのはほぼ間違いないのではないか。
 事実、石破、野田の両氏は、自民、立民の党首選を前にして、ともに出演したテレビ番組で、日本の進路について、「対米従属の日米基軸」から「自主独立の日米基軸」への転換だと口をそろえていた。まさに今、その時がきたのではないか。これがトランプ新政権の下、ウクライナ戦争、中東戦争を終息させ、対中新冷戦に力を集中する新しい米覇権戦略にあって、その矢面に日本が自らの意思で自発的に立つようになるのが問題だ。
 この日本にとってこれ以上にない最大の危機を乗り切る上で問われていることは何か。それは、今回の総選挙ではっきりと示された国民の力による以外にあり得ないと思う。中国との対決、戦争に反対する国民の意思と力を総結集して真の自主独立を実現するところにこそ日本の活路はある。
 米覇権の下、米覇権に依って生きるところに日本の国益を見出す日米基軸に日本の真の自主独立などあり得るはずがない。国民のための、国民による国民基軸の政治の下でのみ日本の真の自主独立は実現される。
 そのために、今、何よりも切実に求められているのは何か。それは、今日、日本政治の大前提にされている「日米同盟新時代」について、全国民的な審議の下、その正否を国民皆の意思で決めることではないだろうか。



論点

「対米従属でない日米基軸」の真相
―「アジア版NATO」の検証―

吉田寅次


■石破茂「対米従属でない日米基軸」
 石破茂氏が自民党総裁の最有力候補と騒がれた今年6月、彼はあるTV番組での立憲代表有力候補の野田佳彦氏との対談で野田氏が「日米基軸」を自分の政権の第一原則に上げた時、これに賛意を示しながら「私は"対米従属でない日米基軸"です」と主張した。5月の別の番組では自己の国家観を「完全独立国家だ」とも語った。
 石破流の「対米従属でない日米基軸」や「完全独立国家」の巧みな言葉は「口に甘く身体には毒」、ではその「毒」は何か? 石破式与野党大連合・「変容」政権の危険な狙いを探る上でその真相を看破することは重要だと思う。

■石破茂「アジア版NATO」構想は「日米関係を損なう」だって!?
 総裁選で石破氏の打ち出した「アジア版NATO」構想が話題を呼んだ。しかし米国の外交安保専門家筋はこれを疑問視、「不可能」と一蹴した。これを受けてマスコミ界は「日米関係に不協和音が生じる」と一様に「懸念」を表明した。
 うがった見方をすればこういった「懸念」は「対米従属でない石破茂」像の宣伝に役立ったと見ることもできる。同じく米国の疑問を呼んだ「自衛隊基地を米国に設けることに伴う日米地位協定改訂」も話題になったがこれは「目くらまし」的なものだろうからここでは無視する。
 石破茂「アジア版NATO」構想を「不可能」と見る根拠は、NATOのような全欧州諸国を網羅するような軍事同盟は、「非同盟のASEAN諸国の存在するアジアでは無理」というものだ。
 しかし米中新冷戦戦略を掲げた当初から米国は欧州とは異なる形での「アジア版NATO」構築を追求している。
 トランプ政権末期に発足のクアッド(QUAD)は米日豪印を網羅する対中包囲網構想だが、これを軍事分野に拡大させるというのが「アジア版NATO構想」だと指摘されていた。
 いまアジア版NATOは「格子状同盟」という形で具体化されようとしている。

■格子状同盟=アジア版NATO
 このところ日本はインド太平洋地域でフィリピン、豪州などと対中共同軍事演習のための人員、物品搬入円滑化のための協定締結など「準同盟国」関係構築の動きを見せている。いずれ「準同盟国」から「同盟国へ」が追求されるだろう。
 こうした日本政府の動きの背景には米国のアジアでの同盟関係転換政策、"ハブ&スポーク状"同盟から"格子状"同盟への転換がある。
 "ハブ&スポーク状"同盟とは、ハブとなる中心の米国から伸びるスポーク(同盟)で各国がつながる、つまり米国が各国個別に同盟を結び、各国が軍事大国、米一国に依存する同盟関係を指す。
 "格子状"同盟とはインド太平洋地域の日韓、日比、日豪が格子状に重なるような同盟構造への取組を行うことだ。QUAD(米豪日印)やAUKUS(豪英米+日)もこの同盟構想に属する。
 格子状への同盟転換を小野寺五典・自民党安全保障調査会議議長は「いままではアメリカが後ろ盾になって"俺についてこい"だったのが、"みんなで一緒にやろうよ"に変わった」と表現した。
 「俺についてこい式の対米従属の時代」を終えて有志国、同志国が個別に日本と同盟を結び、これを格子状に重なる対中対決の集団的軍事同盟とする。これが米国のアジア版NATO構想だ。

■石破茂の真相「憲法より日米」基軸
 石破茂「アジア版NATO」はこの格子状同盟を念頭に置いたものだが、日本には難問題がある。
 格子状同盟のためには日本が韓国やフィリピン、オーストラリアなどと安保軍事同盟を結ぶべきだが「戦争のできない」日本の憲法9条が障害になる。韓国やフィリピン、オーストラリアにとっては、「日本も戦ってくれる」のでなければ軍事同盟を結ぶ意味がない。だから米国の望むアジア版NATO、格子状同盟構築のためには「憲法9条第二項、交戦権否認・戦力不保持」削除は避けて通れない課題となった。
 米国の「俺についてこい式対米従属」の時代から日米同盟新時代、「対米従属でない日米基軸」への転換の時代の安保策、アジア版NATOを担うという主張は憲法9条改訂を前提とした主張だ。 石破茂「アジア版NATO」は「国是・憲法より日米基軸」ということ、これが「対米従属でない日米基軸」石破茂の真相である。


 
論点

これで地方を守り、発展させることが出来るのか

永沼 博


 石破首相は、10月4日の施政方針演説で「地方を守る」として「地方創生2・0(バージョン2)」を掲げた。それは、どういうものか、それで地方を守り発展させることが出来るのか。

■「地方を守る」にもカネがない
 石破首相は「地方を守る」目玉として「地方交付金の倍増」を打ち出しているが、そこで指摘されていることは、財源問題。即ち「そんなカネがあるのか」ということである。
 岸田前政権は23年の訪米で、軍事費拡大、敵基地攻撃能力保持を米国に約束した。その額は5年間で43兆円だが、ミサイル開発で70兆円にもなるとか、米国の要求によっては、その額は際限なく膨らむのではないかとも言われている。
 そして、今年4月の訪米では、「日米同盟新時代」を謳い「グローバル・パートナー」であることを誓った。それは米中新冷戦の最前線に日本が立って、中国との軍事対決を進め、そのための際限なき軍事費拡大を約束したことを意味する。
 この4月、政府の財政制度等審査会の分科会で財務省が能登復興に「ムダな財政支出は避けたい」と発言したが、能登復興でさえ「そんなカネはない」という財政事情の下で「地方を守る」「交付金倍増」など人気取りの空言でしかない。

■外資依存でデジタル主権を放棄
 石破首相の地方政策で最大の問題はデジタル主権についての言及がないことだ。
 情報化時代の今日にあって、データは生命である。しかし、日本はTPP交渉で「国境をまたぐデータの自由な流通の確保、国内でのデータ保存要求禁止という原則」を受け入れ、20年に「日米デジタル貿易協定」でそれを法制化している。
 その結果、プラットフォームも地域のデータを集積利用するクラウドも、更にはAIやアプリ、それを利用するアプリストアなどもGAFAMなど米国のIT企業に独占され、日本は、「デジタル小作人」と言われる状態に陥っている。
 内閣発足の日に電話会談でバイデン大統領に「日米同盟の一層の深化」を約束し、所信表明演説で「(岸田政権の)3年間のご尽力に敬意を表します」と述べた石破首相に前政権が残したこの決定的な「負の遺産」を払拭する意志などない。
 元々、石破氏の地方政策は「外資依存」策である。17年に出版した「日本列島創生論」では「外資アレルギーからの脱却」を説き、「外資はハゲタカではない」と力説する。この外資が米系外資であることは言うまでもなく、デジタル化時代にあって、米系外資とはGAFAMなど米国巨大IT企業とそれに関連する企業に他ならない。
 安倍政権下で「特区」への外資導入策がとられ、その「選択と集中」で地域格差は拡大し、大多数の地方・地域は「地方消滅」の危機に直面した。
 その初代地方創生担当大臣として反省もなく、「地方創生2・0」と打ち上げるなど、無責任の謗りを免れないであろう。

■「日米同盟新時代」路線からの脱却を
 「日米経済を統合する」と公言したエマニュエル駐日大使が就任して以来、日本国土全体を米国の下に統合する日米統合一体化が進んでいる。
 今、マスコミなどが「成功例」として騒ぐ熊本菊陽町でのTSMC工場や北海道千歳市のラピダスの工場も、その基本技術は米国IBMの技術であり、そこに「九州半導体人材育成等コンソーシアム」など産官学の連携機関が作られ、新しい共同体が作られつつある。
 それは、米国企業が影響力を持つ「共同体」であり、そこに地方自治などない。地方制度調査会では「首長のいない自治体」も論議されている。
 石破首相は、産官学に金融、労働界、言論界を加えた「産官学金労言」の提携で「地方創生」を実現するとしているが、それは地方末端までの日米統合を挙国一致的に進めるものではないか。
 米IT企業に依存する地方政策で「日本の地方」として地方を守り発展させることなど出来ない。
 外資に依存するのではなく、デジタル主権を確立し、住民自治を強化した地域住民主体の地域振興策こそが、地方を守り発展させる。
 そのためにも「日米基軸」「日米同盟新時代」路線から脱却し「国民基軸」の政治を実現することが切に問われていると思う。



投稿

衆議院議員大石あきこ選挙裏話

古賀 滋


■実は大変だった舞台裏
    大石あきこさんは人一倍がんばる議員である。何度も倒れ、娘さんも「一時は不登校寸前」になる状態の中で3年間必死にたたかって来た。テレビ出演もNHK討論など、最近ではフジテレビにまで出て多数こなし、歯切れよく発言する姿勢が多くの市民の共感を得ていた。TBS幹部の地位を利用して伊藤詩織さんを泥酔させて犯したと言われる男や橋下徹氏から名誉棄損などで訴えられたが、勝訴した。そんな超有名人の攻撃を受けてもはね返し、れいわピカ一であるだけに巷の右翼系からも激しい攻撃を受けていた。外部だけでなく元スタッフが在任中に知りえた事項を漏らし、SNSなどでの攻撃に使用させるなどの卑劣な攻撃にもさらされていた。

■努力に勝る幸運なし
 実は国会議員は結構高給だから、政権党の大部分の代議士のように日頃何の活動もしないが、法案採決の時に賛成票を投じるだけの「陣笠議員」には家業にしたくなるほど「美味しい」職業と言える。しかし、大石議員は市民のための議会内外の活動に議員報酬を使いたおして、またれいわ新選組の政治活動も人一倍行って来た。デモだけでも1年に10回ほど主催する有様。内容も消費税廃止から、万博・カジノ中止、パレスチナ連帯など多岐にわたっていた。集会開催も多人数を集めるために秘書団とボランティアスタッフが何十人と共同で取り組む大仕事なのでその度に本人も周囲も疲れ果てるほどの大闘争となる。「陣笠議員」たちが豊富な企業献金で大量に雇う秘書の総力を上げる日常集票活動にまで実は手が回っていない。その内に降ってわいた、任期を一年残した党利党略突然解散により裸一貫で政治的戦場に立たされた大石議員とスタッフは内心青ざめていた。政治の常識から見れば「どないしたらこれで勝てるねん」の世界であった。自民が推す関西常勝の公明、大阪だけではあるものの圧倒的強さの維新、大石さんより必ず大量得票する共産党ベテランに挟まれ、危機一髪!そこへ参政党が乱入し、立憲民主も浪人中の元府議を担ぎ出した。それら全てから包囲殲滅されそうな大石あきこ。

■星火燎原(星のように小さな光でも努力によって広野を焼き尽くす大火となる)
 しかしそこへ一人一人は強力でない無数のボランティアが「大石さんとともに闘い、命かけて大石さんの再選を!」を合言葉に集まって来た。運転免許のある人は政策宣伝車の運行を申しで、集票があまり進んでいない現実を見た人は家々を毎日訪問する、あるいは延々、電話かけをする骨の折れる作業に黙々と取り掛かった。事情で動けない人は少額ずつの私財を差し出して選対を支えた。一番票を削る可能性があった立憲の「特攻兵」には種々の働きかけが行われ、告示直前に選挙区断念、比例区に回る事になり、これで最大1万の減票を阻止する事ができた。これが成功しなければ総投票の21万8295の一割21829を超えられず、国会へ戻れなかった可能性が高い。実は3年前も立憲の現職が直前に引退表明し、相当の票が流れ込んで来た。今回は共産党ベテランを上回る票も得た。

■本当の勝負はこれからだ
 れいわの3から9議席への躍進は単なる風や自然現象でなく、ボランティアの具体的決起を大石議員の血を吐くような努力により実現し、運を呼び込んだ所にある。
 大石あきこ議員と山本太郎率いるれいわ新選組の活躍を期待したい。各方面からの攻撃に負けず、「103万円の壁」なる矮小お粗末手品でなく、市民を救う道=消費税廃止を!



時事雑感

もう少しで騙されるところだった!

金子恵美子


 このところ、韓国発やウクライナ発の情報として<北朝鮮兵のロシア派兵><北朝鮮軍7000人以上が国境地帯に><北朝鮮兵に犠牲者>などなどの新聞記事やテレビ報道が出回っている。当初は、<事実確認できていない>という立場であった米国も、この5日には米国の関係者とウクライナ高官の話として<北朝鮮軍が初の交戦で相当数の犠牲者を出した>とニューヨーク・タイムズで報じた。
 ぼやけていてよくわからないが、テレビでは<ロシアの極東地域で装備品を受け取る北朝鮮兵>なる映像が流され、ネットでは<戦闘で唯一生き残った北朝鮮兵>として包帯で顔と頭をぐるぐる巻きにした兵士がベッドに横たわり、<攻撃に参加するよう強要された。まともな武器も与えられなかった><プーチンは負ける>などと<北朝鮮なまり>で話しているという動画が。確かな、はっきりした証拠がなくとも、このような映像や記事が報じられることで、多くの人はこれを信じてしまうだろう。
 実際、私自身、包帯巻きの動画はいかにも怪しく思ったが(実際これはフェイクであることが判明している)、朝鮮がロシアに兵を送るということはありうるし、事態はそこまできている(米欧覇権主義勢力と反米・非米勢力との戦いの端緒が切って下ろされた)と受け取っていた。
 しかし、物事はそう単純ではないのだ。
 友人から送られてくる情報や自分でも調べてみると、アメリカ、ウクライナ、韓国の政府は朝鮮兵がロシアへ派遣され、ウクライナで戦っていると主張しているが、これらには確たる証拠がない。そのように批判する人が少なくないのだ。

 「桜井ジャーナル」の11月2日付の記事には、このような内容が掲載されていた。

特殊作戦 部隊と書いてある
特殊作戦 部隊と書いてある
映画「イカゲーム」 赤丸がイ・ジョンジェ
映画「イカゲーム」 赤丸がイ・ジョンジェ
 あるウクライナのチャンネルはドネツクのセリドボ近くで捕虜になった「朝鮮兵の身分証明書」を公表したのだが、そこに貼られていた写真は韓国のベテラン俳優だった。Netflixで配信された韓国のドラマ「イカゲーム」で主演した李政宰(イ・ジョンジェ)だったのである。短期間で嘘が発覚することは明白だったが、アメリカの大統領選挙まで騙せればと思ったのかもしれないと言われている。
 アメリカの外交や安全保障分野を支配しているネオコンは2004年にウクライナで「オレンジ革命」を仕掛け、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行したのだが、ソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部と南部の住民はクーデターで成立したネオ・ナチ体制を拒否、内戦が勃発した。その内戦はアメリカ/NATOとロシアの戦いになり、(今日に至り、)ロシアの勝利は決定的だと見られている。
 米国は戦闘が続いていれば配下の有力メディアを利用して人びとに「勝利の幻影」を見せることで国民から責任を問われないようにしようと目論んでいるが、ウクライナ、つまりアメリカ/NATOの敗北が決まるとこれまで以上の窮地に陥る。ネオコンに支えられ、ウクライナでの戦闘を拡大させてきた民主党政権としては、11月の大統領選挙で負けられない。

 そうした状況の中で出されたのが、<北朝鮮兵のロシアへの派兵>であったと分析している。日本のマスコミもそれを垂れ流し、私たち国民はそれを信じていくという流れだ。
 「桜井ジャーナル」は次のように続けている。
 ウクライナ軍は兵士が足りず、市外で街を歩いている男性を拉致し、短期間の訓練で彼らを戦場へ送り込まざるをえない状況だ。そうした光景を撮影した少なからぬ映像がインターネット上を流れているが、ロシア国内でそうした光景は見られない。ロシアの兵力には余裕があり、ローテーションで交代しながら戦っているだけでなく、予備の部隊も用意されている。
 イギリスの国防大臣を2019年7月24日から23年8月31日まで務めた?ベン・ウォレスは2023年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘した?。徴兵年齢を下げる必要があるということだ。
 ウクライナの武器弾薬不足も深刻。これはアメリカ/NATOの兵器庫も空になっていることを意味している。
 アメリカ/NATOは核ミサイルを発射できるF-16戦闘機をウクライナへ供与し始めたが、操縦できるパイロットがほとんどいない。そこで白羽の矢が立ったのは韓国のパイロット。韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留している?と言われている。韓国政府は兵器だけでなく兵士もウクライナへ送り込まなければならなくなってきた。ウクライナへの援助の増額または変更に対する国内の支持はほとんどない。

 なんだ、送られていたのは朝鮮の兵士ではなく韓国の兵士だったのか。
 <北朝鮮兵のウクライナ戦争への動員><北朝鮮とロシアの深まる関係><国際情勢の悪化>などなど、考えてみれば情報源はウクライナ、韓国、米国だ。確固とした証拠もないのに、信じていってしまう怖さ。大手メディアでは決して報じない、ネットでしか見られない、別の情報を目にすることによって、はじめて頭に?が浮かび、再考に至った今回の一件。
 まだ、本当のところは分らない。ロシア・朝鮮側からのコメントは一切出されていない。しかし、<北朝鮮兵のロシアへの派兵>という報道が誰の利害に叶っているのかを見るとき、これが事実に反するフェイクニュースである確率は高いと、今の私は判断するのだが、こんな風に人はいとも簡単に騙されるのだ。
 <プロパガンダの秘訣とは、狙った人物を、本人がそれとはまったく気づかぬようにして、プロパガンダの理念にたっぷりと浸らせることである。いうまでもなくプロパガンダには目的がある。しかしこの目的は抜け目なく覆い隠されていなければならない。その目的を達成すべき相手が、それとまったく気づかないほどに>。ナチ政権の宣伝大臣を務めたゲッベルスの言葉である。
 戦争とプロパガンダは切り離せないものだ。大本営発表を信じ戦争へ突き進んでいった苦い経験、戦争をする国へと近づいていっている今日の日本。絶対に同じ轍を踏んではならない。今回のことを大きな教訓にしたい。


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