「台湾有事」ほど愚かな選択はない
石破政権が誕生するや否や衆院の解散が決まり、世間の関心は選挙一色に向かいつつある。今回の選挙が今後の日本のあり方を決めるうえで重要な選挙になるのは間違いないが、一方でほとんど話題にも上らないのが日本の「防衛問題」で、各党の選挙公約にも上っていない。岸田が「戦後の安全保障政策の大転換」と述べたように、今やものすごいスピードで自衛隊と米軍の一体化が進んでいる。9月発売の布施祐仁著「従属の代償」に詳しい。
とりわけ自衛隊と米軍の一体化が進んでいるのがミサイル部隊で、東シナ海をぐるりと取り囲むように宮古島から奄美までの南西諸島へ,射程100キロの「12式対艦誘導弾」の配備が進む。これと軌を一にして沖縄から北海道まで全国29か所で計画され、建設工事が進むのが「弾薬庫」増設だ。「弾薬庫」と言えば、あたかも弾薬などの貯蔵庫をイメージするが、それは大間違いで、大量のミサイルのための貯蔵庫である。
これから先、米軍との一体化の「鍵」となるのは、「敵基地攻撃能力保有」で可能となったスタンドオフミサイルの開発とされている。射程1000キロ以上、「敵」の脅威圏外から攻撃が可能な中距離ミサイルで、日本国内のどこからでも中国の沿岸部を攻撃することができる。自衛隊は1000発を保有するという計画で、すでに購入したトマホーク400基の配備も始まる。これほど多くの「弾薬庫」がなぜ必要なのかは、これら開発中の中距離ミサイル配備と保有のためと考えると分かり易い。この中距離ミサイルが対中戦略の「要」とされるのは、日本全土への配備が可能になるからで、アメリカから見れば日本列島は対中戦略の最前線基地として願ってもない位置にある。
このように見てくると、岸田政権下で進められた米軍との一体化は、日本全土の要塞化、ミサイル基地化である。もし「台湾有事」が起きれば、日本全土に配備された米軍や自衛隊の中距離ミサイルが中国の沿岸部に向かって飛び、日本全土が戦場になるのは避けられない。ウクライナが対ロシア戦争の最前線基地になったように、南西諸島だけでなく日本全土が最前線基地となる。つまり「日本のウクライナ化」である。
なぜ日本は中国を敵として戦わなければならないのか。はっきりしているのは「台湾の独立と自由」などでは全くない。アメリカの世界覇権を維持するためのものだ。アメリカは中国を米一極支配の最大の脅威としており、台湾を失えば覇権国としての地位を失う、米国が一番恐れているのはそこである。このままずるずると米国覇権の為に日本は中国と戦うのか。これほど愚かな選択はない。まさに「従属の代償」である。
視点
■「お祭り騒ぎ」だった二つの党首選
実施の順番を変え、連続的に行われた二つの党首選、立憲民主党代表選と自民党総裁選は、概ね「予定通り」、野田代表、石破総裁を選出して、その「お祭り騒ぎ」を終えた。
日本の政治を左右しかねないこの一大イベントがなぜ「お祭り騒ぎ」だったと言えるのか。それは、何よりも、この二つの党首選で、今、日本の進路、命運に大きく関わる「日米同盟新時代」が全く言及されず、争点として取り上げられることがなかったからに他ならない。両党、どの候補者からも、この重大事が問題にされることは、ついにただの一度もなかった。
この4月、岸田訪米に際し、日米両首脳の合意として提唱された「日米同盟新時代」は、戦後の日米関係をその根本から転換させる一大事変以外の何ものでもない。この間あらゆる領域に渡り進行してきた日米の統合を「同盟としての」統合に深め、日本を戦争しない国からする国に変えるこの大事変が日本の国会で一度も審議されることもなく日米首脳間で合意されたことが今回、二つの党首選で何も問題にされず、争点にもされなかったことは一体何を意味しているのか。それは、この党首選がともに米国言いなりの大政翼賛「お祭り騒ぎ」にすぎなかったことを雄弁に物語っているのではないか。
もう一つ、この二つの党首選が「お祭り騒ぎ」だったと言えるのは、これが次に続く解散総選挙のための宣伝戦だったからだ。事実、立民党代表選には、当選1回の女性候補が花を添えて立てられ、自民党総裁選は、これまで最多、9人の候補者が乱立して闘われた。その大勢多様の候補者たちが打ち揃って、全国を回りめぐりながら、やれ立会演説会よ、互いに対抗しての討論会よと、テレビ、新聞、ラジオなど、マスメディアに連日出演したのだから、それが総選挙に向けた格好の事前宣伝活動になったのは言うまでもない。それを裏付けるかのように、総選挙は、石破新総裁の第一声として、総裁選後わずか1ヶ月足らず、10月27日の投開票に決められた。
「日米同盟新時代」を不問に付した両党の党首選が総選挙目当ての宣伝戦だったとすれば、それを「日米同盟新時代」実現に向けた大政翼賛政権づくりのための「お祭り騒ぎ」だったと言っても、少しもおかしくないのではないか。
■転換する日本と世界、共通の趨勢
今回の自民党総裁選には、高市氏の躍進という見る人を驚かせる異変があった。
もともと選挙前から、石破、高市、小泉の3氏が抜け出ているとは言われていた。しかし、第一回目の投票で高市氏が181票と154票の石破氏を大きく上回ると予想した人は多くなかったのではないか。それも、高市氏への党員票が、党員に支持基盤を持つ石破氏の108票を超える109票だったのは予想を超えていた。
そこで問題は、この「高市善戦」の要因だ。それについて、テレビの解説は、「自民党を二分する『右』の進出」と分析していた。高市氏を推した安倍派を「右」と見、それが予想を超えて、自民党を二分する勢いだったと言うことだ。
その分析が当たらずとも遠からずなのは、今、石破新首相によって組閣、党役員人事や政策提案、総選挙に向けた公認等々がなされているが、そこに示されている。かつて安倍首相のことを「国賊」と言った村上誠一郎氏の総務相への起用、「裏金」問題など各種不正事件関連の安倍派議員の総選挙立候補の非公認、等々、少々露骨にすぎる安倍派攻撃、安倍派潰し、これでは、党が二つに分裂しても構わないと言っているようなものだ。
その一方、石破新首相が打ち出す政治で目立っているのが「日米地位協定の改定」など、「対米対等、自主独立」だ。これが「日米同盟新時代」にあって、日米同盟の「攻守同盟」化を求め、米国に従ってばかりいるのではなく、日本の主導的な役割を求める米国の意向に添っているのが重要だと思う。それが石破新首相のかねてからの持論、日本を戦争できる国に変える、憲法9条第2項の改定と一体であるのを忘れてはならないと思う。
そこで見えてくるのは、従来とは違った風景だ。これまで声高に「対米従属からの脱却」を叫んできた石破氏の存外「日米同盟新時代」に従順な姿と「対米従属の権化」のように言われる一方、米国への「面従腹背」を噂されてきた安倍派の「新時代」とは距離を置いた姿だ。これは、一昨年来となる東京地検特捜部による執拗な安倍派叩きとも重なる光景だと言える。
今回の自民党総裁選は、その安倍派が「日米同盟新時代」を担う石破氏を脅かす勢力としてその姿を現したものとしてもあった。
この「右」の台頭を目にして想起されるのは、この間、欧州諸国で時代の趨勢となってきた「極右」の台頭だ。ドイツのAfD、フランスの国民連合などは、今度新たに第一党になったオーストリア自由党などとともに、政権をねらえるところまできている。
そこで問題にしたいのは、この「右」と言う呼び方だ。「自国第一」の勢力を「国」を掲げているからと言って、「右」と言い「極右」と呼ぶのは正しいのだろうか。彼らは、そろってウクライナ戦争に反対しているように、一昔前の「右」とは違って、米覇権に反対している。昔、「左」に対抗し「国」を掲げていたのが「右」だったとすれば、今は、米覇権に反対し「国」を掲げているのがメディアや政界など、米覇権と一体の支配勢力から「右」と言われ、敵視されている。
こうして見た時、自民党内に台頭してきている「右」にも「国」を掲げ、米覇権に抵抗するという世界との共通性が見えるのではないだろうか。
■総選挙で問われる「自国第一」の道
ウクライナ戦争への支援に反対する欧州自国第一勢力の台頭は、この戦争での劣勢を「NATO対ロシアの戦争」で逆転しようとする米覇権の「戦争新段階」戦略と鋭く対立している。
それは、「日米同盟新時代」の下、日本を戦争する国に変え、対中国戦争の矢面に立たせようとしている米覇権に自民党内の反石破の「右」が同調しない構図と軌を一にしているのではないか。
そうした中、10月9日解散、15日公示で始まる日本の総選挙はきわめて重要だ。この選挙で野田代表率いる立憲民主党の主導で、政権交代を掲げた野党の選挙協力、289ある小選挙区の多くでの予備選挙とそれを通じての野党候補の一本化が図られる公算は大きい。その場合、与野党拮抗に基づく大政翼賛・与野党連立政権樹立への動きが出てこないと誰が言えるだろうか。
そこで気になることがある。それは、早くから「救民内閣」を掲げ、その下に野党が一丸となってすべての小選挙区での予備選挙と野党候補の一本化を図り、自公候補との一騎打ちを制して政権交代を実現すると言う青写真を掲げていた泉房穂氏のことだ。もちろん、今、彼がどう考えているか知る由もない。しかし、この構想の実現が困難になった条件で、彼の前には、禍をもって福となす道が大きく開けているのではないだろうか。
一つは、「日米同盟新時代」を問題にする道だ。与野党皆がこの懸案の問題に対して、大政翼賛よろしく避けて通ってきている今、敢えてそれを取り上げ、広く国民に問うことだ。そこにこそ、今回の総選挙を「新時代」実現のための総選挙からそれを破綻させ、救国、救民を実現する道が大きく切り開かれてくるように思う。
今回の総選挙を「新時代」を破綻させるためのものにする上で重要なのは、この「日米同盟新時代」自体を問題として取り上げながら、この「新時代」が憲法違反であることを広く国民に訴え、それをこの選挙最大の争点として行くことではないだろうか。
タモリ氏が提起した「新しい戦前」が人々の心をとらえ、多くの人々が「戦争」を肌で感じるようになってきている今日、憲法9条は日本の平和を守る武器として、それを護ることへの要求はかつてなく高まってきている。そうした中、日本を戦争する国にする「日米同盟新時代」は決定的だ。憲法9条は、米国に対しそれを拒否するためのもっとも強固な拠り所に他ならない。それを守るのか否かを掲げる時、これ以上に強力な争点はないのではないか。
禍をもって福となすもう一つの道は、自民党の「右」と力を合わせる道ではないかと思う。自民党総裁選にあって、高市氏への党員票が石破氏へのそれを上回ったように、国民の「日米同盟新時代」を懸念する思いは、自民党の「右」にも通じるものがあると思う。そこで、泉房穂氏が自民党の「右」と手を取り合う時、その政権交代構想はもっとも実現可能なものになると思うのだがどうだろうか。自国第一の台頭、米覇権の崩壊とともに、時代はこれまでの常識を覆すものになってきているのではないだろうか。
論点
■ゼレンスキー「最後の勝利のための4つの計画」は「NATO対ロシア」戦争の引き金
8月27日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「4つの最後の勝利計画」を発表、これを9月末の国連総会に合わせた訪米時にバイデン米大統領に伝えるとした。その勝利計画の第一はロシア領内のクルスク州への侵攻、第二は米欧供与の長射程ミサイルのロシア領内への攻撃使用許可を得ること、第三はロシアに外交的に戦争を終わらせるようにすること、第四はロシアに経済的圧力をかけることだそうだ。
このゼレンスキーの「最後の勝利計画」の核心は、第二の「ロシア領内攻撃への米欧供与の長射程ミサイル使用許可」を得ることにある。ゼレンスキーは「成否の鍵は彼(バイデン大統領)にかかっている」と米国の決意を促す強気を見せた。
これまで一貫して米欧はウクライナにこの「使用許可」を与えなかった。ロシアとNATOとの戦争に発展することを恐れたからだ。事実、このゼレンスキー発言を受けてプーチン大統領は「もし米欧供与の長射程ミサイルがロシア領内攻撃に使用されたなら、この戦争は新しい次元に入る」、すなわち「ウクライナとの戦争からNATOとの戦争の段階に入る」と強い警告を発した。
にもかかわらず米欧は慎重姿勢を変え「使用許可」にゴーサインをするかの空気が生まれている。
9月13日、バイデン米大統領とスタイマー英首相がホワイトハウスで会談、この問題を協議した。会談冒頭でバイデン大統領は「プーチンは勝利しない。ウクライナが勝利する」と述べたそうだが、会談内容は「支援は必要な限り継続する」とのみ公表された。この米英首脳会談を伝えたニューヨークタイムス紙は、「英仏が供与した長射程ミサイルでの攻撃を認める見込みだ」と報じた。
この不穏な空気が果たしてどう動くのか? 少なくとも現時点では9月24日の国連総会出席で訪米したゼンレンスキーに対して米欧はその回答に明言は避けた。10月に欧州でバイデン・ゼレンスキー会談が再び持たれるが、そこで米国がどう回答するかを世界は注視している。
いまなおゼレンスキーに明快な回答を避けている米欧、ここに時代の真相を読みとる鍵がある。
■進むも地獄、退くも地獄?迷走の理由
いまや「ウクイライナは惨敗必至」とウクライナ擁護の「識者」まで断言し始めている。
ゼレンスキー「4つの計画」のめざす「最後の勝利」、それは勝てないまでも惨敗だけは絶対に避けるというところだろう。これは「ウクライナ惨敗」だけは許容できないという米国の強い要求の反映であろう。
「ウクライナが惨敗」となれば、それは「米覇権秩序の瓦解は時間の問題」を世界にさらすことになる。となれば「ウクライナ戦争を終結させ対中対決に集中する」どころの騒ぎではなくなる。ゆえに敢えて「ロシアとNATOの戦争になる」危険を冒してでもウクライナ惨敗局面を少しでも好転させること、ここに米覇権死活の活路を求めざるをえない、そこまで追いつめられていると見るべきだろう。まさに「窮鼠、猫を噛む」だが、肝心の「窮鼠」、米国はまだ決断できないようだ。その迷いの理由は何なのか?
一言でいって「進むも地獄、退くも地獄」の窮地に陥った米国の窮状を示すものだ。「ロシアとNATOの戦争」は窮余の一手だけに何か勝算があるわけではない、一つの大博打に過ぎない。
また「ロシアとNATOの戦争」になれば欧州内の「極右」と言われる自国第一勢力の反対にあって戦争遂行も窮地に追い込まれるだけでなく、さらに国民の不満を背景に彼らが欧州各国の政治を握りかねない。特にその危険性の高まる独仏はNATOの基軸国家という点もロシアとの戦争をちゅうちょさせる要素だ。そして当然ながらグローバルサウスなど非米勢力の猛反対にあうのも覚悟しなければならない。
だからといって、これを恐れて何もしなければ、ウクライナ惨敗、米覇権秩序瓦解は避けられない。
進むも地獄、退くも地獄の絶体絶命のピンチに米国は陥った、このことが示すのは何か?
この進退窮まった米国覇権の窮状は、覇権の時代そのものの終焉は近いことを示している。これだけは明白だ。
論点
今、日本は、米国覇権を維持回復する米中新冷戦の最前線に立とうとしている。それが如何に時代逆行の愚かな政策なのか。8月と9月に日本と中国で行われた二つの「アフリカ支援」会議を比較しながら、そのことを考えてみたい。
■中国・アフリカ経済フォーラム
9月7日、北京で「中国・アフリカ経済フォーラム」が開催された。ここには全アフリカ54カ国のうち台湾と外交関係を持つエスワティを除く53カ国の首脳が参加した。
会議では、習近平国家主席が演説したが「今後3年間で、3600億元(約7・3兆円)の資金援助を提供する」と述べるや、アフリカの首脳たちから大きな拍手が沸き起こった。ボツワナのマシシ大統領は「アフリカ側は非常に興奮し励まされた」と述べている。
習主席は、「アフリカ支援」の具体策として、「10の行動」を提示した。その内容は、政府関係者の招待。女性や若者の職業訓練。10億元の緊急食料支援。疫病予防センター建設と公衆衛生能力向上。10億元の無償軍事援助。軍人(6000人)と警察官(1000人)訓練。アフリカ産農産物の輸入拡大。アフリカの「後発開発途上国」33カ国だけでなく世界の全ての「発展途上国」にゼロ関税待遇を与え中国の大市場を開放する、などである。
習演説で注目されるのは、グローバルサウスという言葉を3回も使い、グローバルサウス重視を鮮明にしたことだ。
中国とアフリカ貿易額は、22年には2576億7000万$(約37兆6486億円)を超え、米英を抜いた。この急激な貿易拡大は、中国とアフリカの経済関係がウィンウィンの関係、相互に利益をもたらすものであることを示しており、今後グローバルサウスとの関係もウィンウィンの関係として発展させるものになるだろう。
■日本の「アフリカ開発会議」TICAD
一方、日本では8月24、25日に東京でTICAD(アフリカ開発会議)」が開かれ、ここにアフリカの37カ国の外相が参加した。
今回の会議は来年横浜で開催されるTICAD9の準備会議として開かれたものである。
25日に発表された共同声明では、アフリカで活動するスタートアップ(新興企業)の支援に向けた環境整備、食料安全保障の確保に向けた協力、デジタル化支援、「女性・平和・安全保障」(WPS)の重要性などが明記された。
そして、最後に「法の支配の重要性が共有された」ことを強調している。
日本の「アフリカ支援」は、アフリカ諸国の根本的な自立のためのものではなく、あくまでも日本企業のためのもの、日本の経済的利益のためのものになっている。
それは中国の「アフリカ支援」がウィンウィンの関係として、その国の利益になる支援であることとは対比的である。
そして、「法の支配」の強調。
「法の支配」とは、米国覇権秩序に反する行為を「違法」として、「秩序遵守」を説くための用語である。日本はアフリカ諸国に米国覇権秩序に従うことを説いていくということだが、そこにも中国との対比的な姿勢を見ることができる。
■国を認めるかどうか
日本のマスコミは、「中国のグローバルサウス重視は米欧主導の国際秩序の変革を目指す中国にとって欠かせないパートナー」だからだと解説する。
しかし、「米欧主導の国際秩序」とは米国覇権秩序であり、その下で富を収奪され従属を強いられ国として自立することを否定するものであった。
米国覇権秩序の変革とは、どんな国も、国として認め、互いに尊重する、公平で民主的な新しい国際秩序を作ろうということである。
中国の会議で沸き起こった拍手と歓迎の言葉は、アフリカ諸国ばかりでなく、脱覇権・国尊重の新しい国際秩序を作ることへのグローバルサウスの熱烈な賛同の表示でもある。
それは、米国覇権の衰退を尻目に、世界の流れ、時代の流れとなっている。しかし、日本は与野党共に「日米基軸」堅持であり、挙国一致で、中国との軍事対決の道を歩もうとしている。それは時代の流れに逆行し日本を破滅させる愚かな道でしかない。
投稿
上訴断念するが有罪・死刑と思っていると強弁する検事総長。
袴田さん無罪判決上訴断念の弁を述べる畝本直美冷酷冷血検事総長の言を聞いてテレビにものを投げつけたくなった。割れたらいかんからトマトか卵の割ったのを。いやいやそんなことしたら妻に激怒されてしまうから思い留まった。袴田さんを有罪だと思っている(当然死刑だと)、しかし上訴しても上級審が認めてくれない可能性が強いから諦める、長年苦しめてやったからこれぐらいでカンニンしたろう。要するにそう言っているのだ。こんな人物がトップにいる検察も現場の警察も冤罪作りの名人、いや常習犯と言わざるを得ない。長年苦しめた? 無実の人間を58年だぞ!写真のように30才になったばかりのプロボクサーを夢見る味噌作り職人の青年を捕まえて半世紀以上凶悪犯の汚名を着せて、いつ処刑されるかと怯える恐怖を与え続けたのに。
■違法取り調べの数々と、無実の証拠の隠蔽(1966年〜2024年)
静岡県清水市(現・静岡市清水区)で起きた強盗殺人の容疑者として逮捕されてからの取り調べは最長17時間近く、日曜も含めて毎日、水も飲ませずトイレにも行かせず、房では夜も安眠させない。暴力もしょっちゅう振るったという。そこで得られた45通の調書は、違法性が明らかで裁判所が44通を証拠採用せず、1通だけの採用で死刑判決を言い渡したずさんさには驚く。それも3人の判事の内1人は無実だと考えたが2人の判事に押し切られ、意に沿わない有罪判決を書かされたと、後に告白しているし、後年、袴田さんの無罪を訴える書面を、再審請求を審理する裁判所に出す始末。ボクシング界も支援に乗り出し、ファイティング原田氏や輪島功一と言う超有名選手を始め、連盟として袴田さんを支援していて、名誉チャンピョンベルトを授与された。袴田さんを支援する与野党つまり自民党から民主党、共産党まで60人の議員連盟も出来た。
■二転三転の裁判
1審の静岡地裁 2審の東京高裁に続き、最高裁も有罪を言い渡したが、ここから弁護団と姉・秀子さんの闘いが始まった。1980年の死刑確定から何と34年後、2度目の再審請求で静岡地裁での再審開始が決まった。検察は執拗に妨害をかけ、高裁が再審を認めず。しかし最高裁がそれを覆し差し戻し、地裁で再審が開始された。東京高裁も今度はそれを支持し、再審が始まった。ここまでで事件発生から54年。またそこから4年の歳月が過ぎてしまった。世界最長の被収監者としてギネスブックに掲載されている。
■県警本部長は謝罪したが 歳月は帰らない 処刑された人も・・・
人生を楽しく生きるべき時代に58年の月日を浪費させられた袴田さんの青春は2億円の国家賠償が出たとしても帰らない。弟の支援と介護に人生を費やした、明るい姉・秀子さんの胸中はどうだろうか? そして重大なのはこういう警察・検察・裁判所の「司法暴力」に泣かされた人は無数にいるという事だ。死刑事件だけでも他に島田・財田川・免田・松山など4件が再審で無罪となっている。実はもっとあるだろう。水谷豊や沢口靖子みたいな人情あふれる刑事や検事が科学にもとづく公正な捜査をするドラマが無数に作られていて「冤罪を防がねば」と繰り返して言うので本当に笑える。捜査に間違いは無いよ、という裁判官向けの圧力ではないか? 多くの人がこれはヒドイ特別の事件だと思うかもしれないが、いつ、その犠牲者にあなたが選ばれるかわからない現実の方がよほど恐ろしいと思うのだが、どうだろうか。さあ、次は狭山再審、石川さん無罪の番だ!そして全ての冤罪被害者に光を!
学習会報告
前号の本紙でも紹介した「未来アジア学習会」が行われました。
8回目を迎える今回は、「第7回西日本地区中日友好交流大会での講演」内容の紹介と量子コンピューターや巨大風車による再生可能エネルギー、ドローンの民事活用など、世界の最先端を行く現代中国の現状が「日中友好ネット」の伊関要氏より報告されました。
また、特別報告として「台湾有事に備えた日本の戦争準備」が「アジア新時代研究会」の小川淳氏より報告されました。
「第7回西日本地区中日友好交流大会」での中国駐大阪総領事・薛剣(セツケン)氏の講演内容の紹介では、「Look at china、 go to chaina」という、今年領事館が打ち出したスローガンが紹介され、「百聞は一見に如かず、百見は一行に如かず」がリアルで客観的かつ全面的な中国をバランスよく認識でき、誤解や偏見を取り除き、相互信頼を増進させ、両国間の関係改善・発展に必要な環境を整えることができること、本質的には「認識」の問題の解決であるとし、その為の3つの視点などが紹介されました。
これは、自己の単一覇権にとって中国を第一の敵と規定した米国の政策に追随し、今や政治的プロパガンダの道具になり下がった「人権」や「法による支配」などで「中国の脅威」を盛んに垂れ流している日本の現状を踏まえての問題提起と言えるでしょう。
未来アジア学習会の様子 |
資料
(日本語字幕版)
この映画はフランスのジャーナリストであり国会議員でもあるアイメリック・カロンが現地のジャーナリストと連絡を取りながら、映像の確認、選別、日付の記入を行って制作された。これらガザのジェノサイドの生々しい映像に割り込むように、イスラエルの政治家たちの演説やイスラエル兵がSNSに投稿したビデオ映像などが挿入される。
この作品は、フランス国民議会で国会議員らを招待して5月29日初上映されたが、出席した国会議員はわずか17人。その後、カロンは、Les Mutins de Pang?eで無料公開している。
内容は文字どおり目を覆いたくなる凄惨なシーンの連続だが、これがジェノサイドの事実の一部であり、ここから私たちは目を逸らしてはならないだろう。公式サイトは「これらの映像は、民主主義国家において、自称 "世界で最も道徳的な軍隊 "が犯した戦争犯罪を記録している」「アメリカとEU、特にドイツ、さらにはフランスから大量に供給された武器で行われた犯罪である」とし、次のように書いている。
「見始めて最初の数分間で、この映画が止まってほしい、すぐに終わってほしい、犯罪が止まってほしい、銃撃が止まってほしい、すべてがなかったことになってほしいと願うだろう。 この映像を見て、誰がこれらの犯罪を否定したり正当化したりできるだろうか? 私たちは、毎日消化しなければならない大量の映像の中で、映像がもはやあまり重みを持たず、現実が平然と否定され、あるいは公然と軽蔑されることが正当化されるような悪意に、反対する言葉を見つけることができていない。戦争犯罪人とその共犯者たちは、自分たちが引き起こした死者だけでなく、歴史を通じて反ユダヤ主義の犠牲となった人々の記憶も汚そうとしている。これらの映像は、何よりもまず、これに歯止めをかける必要性を証言している。このような犯罪を支持し続ける人々、憎悪、復讐、非人間化の演説に直面したとき、言葉による一騎打ちに引きずり込まれるよりも、私たちはこの一方通行の映像という鏡を掲げたい」。
「アジア新時代と日本」編集委員会 〒536-8799 大阪市城東郵便局私書箱43号
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