研究誌 「アジア新時代と日本」

第228号 2022/6/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

視点 イデオロギーではない。国益だ

論点 日本は「東のウクライナ」・代理戦争国になるのか!

論点 IPEF、お付き合い程度で参加か

時評 20万筆達成祝賀!を維新終了に結び付けよう

学習会報告 日中友好は日本にとって最高の安全保障

資料 米国の思い通りに世界は回らない




 

編集部より

小川淳


 「防衛費GDP比2%へ」の無謀
 日経新聞の世論調査で岸田政権の支持率が前月から2ポイント上がり66%となり、政権発足以来の最高を記録している。他の世論調査でも政権の支持率の高い傾向が続く。この背景にウクライナ情勢が作用していることは間違いない。
 憲法をめぐる世論調査(神戸新聞)でも、日本国憲法の在り方について「考え方が変わった」と答えた人が過半数を超えている。非核三原則や核兵器保有については8割の人が「議論すべき」、「どちらというと議論すべき」と答えており、ウクライナ情勢を境に国内世論は一変した感がある。「防衛費のGDP比増加」に56%が賛成、「反撃力保有」に60%が賛成という結果も出ている。
 とりわけ危険な兆候といえるのが、ウクライナを機に米中対立と激化の焦点となっている「台湾有事」で、「日本と台湾は運命共同体」という声が高まりつつあること、そして もう一つが、「対GDP比2%」という防衛費増額の目論見である。
 高市早苗自民党政務調査会長は、参院選の公約として「防衛費をGDP2%水準にする」ことを掲げている。今年の日本のGDPは595兆円で(現在の防衛予算はその1%、5兆3千億円)、その2%は11兆円余り(1000億ドル)となるが、米国が7780億ドル、中国が2520億ドルであり、憲法で「戦力」を認めていない日本はロシア抜いて世界第3位の「軍事大国」となる。
 ではこの11兆円を何に使うのかが判然としない。例えば自衛隊員の規模を拡大しようにも現在でも定員割れが続いており、募集をしてもまったく人気がないのが実情で、2014年の強行された集団的自衛権行使容認により戦争に巻き込まれる危険性が高まり、自衛隊員募集を一層困難にしてしまった。
 可能性が高いのが、装備費の増額だが、例えば米海軍の最新鋭空母の建造費が艦載機を含めて2兆円、バージニア級の原子力潜水艦が1隻3000億円という。仮に毎年原子力空母1隻と原子力潜水艦5隻を発注しても3兆5000億円にしかならず、1%の増額といってもそれくらいとてつもない金額なのである。
 敵基地攻撃ミサイルを米国から購入するというとんでもない話もある。敵基地ミサイルを察知して叩くなど技術的にも不可能であり、まさに「机上の空論」と専門家からも一蹴されている。
 現在の防衛費と文教費はともに5兆3千億円レベルであり、先進国で最低レベルの文教費にこのGNP比1%を充てるだけで、強い要望がある大学無償化など即可能だ。もちろん1%から2%への転換は単なる「数字の問題」ではなく、「平和国家」から米国と運命を共にする「軍事国家」への質的転換を意味する。その本質を見余ってはならない。



視点

イデオロギーではない。国益だ

編集部


 ウクライナ戦争と「米英対中ロ新冷戦」、この激動の時代にあって、日本は、国民的意思による何らの決定もないままに、いつの間にか「民主主義陣営」の最前線に押し立てられてきている。先の日米首脳会談は、それを大きく促進するものだったのではないか。

■見えてこない参院選の争点
 参院選まであと一ヶ月余り、しかし、各政党間の日本の進路をめぐる路線、政策論議、その争点は見えてこない。この間行われてきた各種地方選挙でも、明確な争点が挙げられ、それをめぐる激しい闘いが繰り広げられることは絶えてなかった。あの沖縄でも、現時点における基地問題の争点化がもう一つなされないまま、経済、生活問題を前面に押し出した自民党推薦の候補が勝っている。
 一言で言って、日本のあり方、地方地域のあり方を根本から問う対決点、争点をつくることができず、選挙運動をそれをめぐる闘いとして展開することができていないということだ。
 なぜそうなっているのか。日本国民、地域住民が日本や地方地域の根本からの転換を求めていないからなのか。そうではないと思う。「改革」を看板にする日本維新の会が、何をする党なのか見えてこない立憲民主党を抑えて、野党第一党を窺うまでになってきているのは、そのことを示しているのではないか。

■「米英大本営」発表と大政翼賛の政治
 実際、今、日本には解決を要する深刻な問題が山積している。連日、万余の新規感染が出、収束の目処がついていないコロナ大感染、歯止めのかからない少子化の危機、「失われた30年」が解決されないまま迎えた円安の大波、等々。いやそれにも増して、日本にとってさらに深刻なのは、「新冷戦」、ウクライナ戦争、この米欧、中ロ対決戦の最前線に日本が押し立てられていることだ。
 しかし、この途方もない事態の進展の中にあっても、これらにどう対するか、深刻な闘いが生まれてきているようにはとても感じられない。維新の「改革」にしても、ほとんど変わらない自民党政策との差別化を図り、党としての存在価値を高めるところにその主たる目的があるようだ。
 なぜ、こんなことになっているのか。その根本要因を見た時、そこには、今日、日本政治が陥っている「大政翼賛会」化が見えてくる。
 ウクライナ戦争をめぐる国会の各種議決は、日本政治のその実態をあからさまに見せてくれた。「ロシアのウクライナ侵攻」非難決議、ゼレンスキーの日本国会でのオンライン演説に対するスタンディングオベーションまで予め定めた賛同決議、これら国会議決がれいわ新選組を除く全会一致で行われたのなどは、まさにそのことを示していると言える。この大政翼賛的な政治自体、決してウクライナ戦争に始まったものではない。すでに数年前から生まれていたと言える。崩壊の危機に直面した米覇権回復戦略としての「米中新冷戦」、その表面化と時を同じくして、日本共産党が中国敵視を表明するなど、左右の垣根を超えての翼賛政治がすでに姿を現してきていた。
 そこには、戦前戦中の「大本営」発表ならぬ、「米英大本営」発表があったと思う。「香港」「ウイグル」の民主化、人権問題、「台湾」への強権支配、そして「コロナ禍」収束のための強権発動、等々、中国の「専制主義」に対する批判が、「さもありなん」の情報に基づいて洪水のようにあふれ出し、保守と革新、タカとリベラルの枠を超え、中国を批判せずして人にあらずの状況がつくり出された。そしてそれが今、「ロシア、プーチンによる強権、暴虐」批判に引き継がれている。
 この「米英大本営」発表の下での政治が国の進路をめぐる政党間闘争よりも米英覇権の下での現体制肯定の大政翼賛政治を促すようになるのは、残念ながら十分にありうることだった。

■進行する分断と転換の時代
 米英覇権勢力は、今、世界を大きく二つの陣営に分断し、引き裂こうとしている。ウクライナ戦争と「米英対中ロ新冷戦」は、そのための格好の手段になっている。
 ウクライナ戦争でプーチン・ロシアをこの上ない悪徳暴虐の侵略者に仕立て上げた米英は、悲劇の主人公、ゼレンスキー・ウクライナをそれと勇敢に戦う正義の勇者として押し立て、その背後に米欧を中心とする国々を結集することによって、世界を米欧と中ロなど非米欧に分断した。
 一方、米英は、中国とロシアを力で現状を変更する「修正主義国」と規定し、自らの競争相手に位置付けながら、「米英対中ロ新冷戦」を引き起こし、世界を「民主主義陣営」と「専制主義陣営」、二つの陣営に引き裂こうとしている。
 この二つの分断は、ほぼ完全に重なっている。ウクライナ戦争でロシアへの経済制裁を実際に行っている国は、米欧日など33カ国、ウクライナに対しその背後から軍事・経済支援を行っている国もほぼ同じメンバーだ。これに対し、「米英対中ロ新冷戦」で「民主主義VS専制主義」に色分けした時、前者の中核が米欧日など覇権勢力であるのも、まったく変わらないはずだ。
 ここで、この分断の目的が崩壊の危機に瀕した自分らの覇権の回復にあるのは、米国自身自ら言っていることだ。世界を東西両陣営に分断して、ソ連側を包囲、封じ込めて崩壊させ、米一極支配を実現した夢よもう一度ということだ。
 だが、柳の下にいつもドジョウがいるとは限らない。特に今回、ウクライナ戦争という絶好の好機に、インドやASEAN、トルコなどに「民主主義陣営」を拡大強化することができていないことは米英覇権勢力にとって大きな誤算になっているのではないだろうか。
 一方、この分断は、時代の転換と一体だ。それは、経済のあり方のデジタル化、グリーン化に伴う、覇権のあり方の金融覇権からIT覇権への転換が進行する中、それをめぐっての米国による中国に対する分断、封じ込めであると同時に、それが米欧による覇権から中ロをはじめとする脱覇権勢力への政治的支配権の転換を促進するものにもなりうるということだ。
 言い換えれば、それは、経済のあり方、覇権のあり方の転換をめぐっての分断であるとともに、覇権から脱覇権へ、政治のあり方自体の根本的な転換を促進するものにもなりうることを意味している。これは、自分らの覇権の回復を狙う米英にとって、取り返しのつかない「誤算」だと言えるのではないか。

■日本の進路選択の基準は何か
 どちらにしても、今、分断と転換の時代にあって、その進行の中で日本の進路が問われている。
 だが、参院選を直前にして、進路をめぐる政党間闘争は皆無に等しい。それは多分に、国の進路選択の基準がイデオロギーにされてきたことと関連していると思う。
 実際、久しい以前から日本の進路はイデオロギーを基準に考えられてきた。自由主義か社会主義か、保守主義か革新主義か。そして今、それは民主主義か専制主義かと提起されている。
 ここで問題とすべきは、今、日本国民は、日本の進路選択の基準をイデオロギーに求め、「民主主義」に進路を求めているかということだ。
 民主主義、それも米国式民主主義は、今や世界的に民意を失って久しい。それは、世界的範囲での「二大政党制」の崩壊に示されている。
かつて無限の可能性を秘めた「個人の自由」「企業活動の自由」に、今日、どれほどの魅力があると言うのか。「搾取し収奪し独占し覇権する自由を保障する政治、1%のための政治」に成り下がった米国式民主主義に日本の行く手を託す人は少ないのではないか。
 米覇権が衰退し、それだけ人々の生活にとって、自分の国の果たす役割が大きくなった今日、自国第一主義台頭の中にあって、求められる国の進路選択の基準は、イデオロギーより何より、それがどれだけ国のためになるかどうか、国益第一になっているのではないだろうか。
 それは、先の仏大統領選の結果にも端的に示されていたように思う。ウクライナ戦争が勃発する中、米国による呼びかけに応えて、ロシアへの経済制裁を行うことにより、自国のエネルギーや食糧など物価の高騰を招くのに反対したルペン候補の意外な善戦は大きな示唆を秘めているのではないかと思う。
 ウクライナ戦争、「米英対中ロ新冷戦」の中、政治が「民主主義」一色に「大政翼賛化」されている今日、日本政治に問われているのはイデオロギーではない。世界の時代的趨勢を踏まえた日本の真の国益をどこに求めるか。そこにこそ日本国民が求める日本の進路選択の基準があるのではないだろうか。



論点

日本は「東のウクライナ」・代理戦争国になるのか!

吉田寅次


■「日米共同対処」合意が日米首脳会談「成果」
 「中国を念頭に置いて『共同対処』する認識を共有したことは大きな成果と言える」(自衛隊元統合幕僚長・折原良一、読売5/24)。
 この折原氏が成果と評価する日米首脳会談で合意された共同対処の第一は、岸田首相が「敵基地攻撃能力保有」、防衛費増額を表明したこと。
 その第二は、米国が日本への核による「拡大抑止」提供を保証したことだ。「拡大抑止」とは同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなし報復する態度を米国が示すことで「敵国」の攻撃企図をためらわせることを意味する。今回は「米国の核」を報復攻撃に使う保証を得られたということらしい。
 折原氏といえば岸田政権の国家安全保障戦略への政策提言を行う人物だが、彼が成果と評価する二つの日米共同対処の意味を考えてみたい。

■「核抑止100%の保証を得る」覚悟
 フジTV「プライム・ニュース」で河野克俊・前統幕長は「米国から核抑止100%の保証を得るべき」だとしつつ「それはただではすみませんよ」と国民に覚悟を求めた。
 この覚悟に関して小野寺五典・自民党安保調査会会長は5月27日、時事通信に語っている。
 「『核の傘』に入るということは、『核を使ってでも守ってください』ということだ。その覚悟(核を使う覚悟)が皆、すっと抜けている」と。
 この覚悟を日本国民が示す具体的形態として河野氏は、米国が求める中距離核ミサイル配備を受け入れることだと主張している。

■なぜ中距離核ミサイル配備なのか?
 中距離核ミサイルとは射程500km以上の戦術核ミサイルを指し、これを中国や朝鮮に近い日本に配備すれば米本土からの大陸間弾道弾発射の必要がなく米国が核戦争被害を受ける心配がない。米国が安全なら「核抑止100%の保証を得られる」というのが河野氏の計算だろう。
 昨年、米インド太平洋軍は「対中ミサイル網計画」として、日本列島から沖縄、台湾、フィリピンを結ぶいわゆる対中包囲の「第一列島線」に中距離ミサイルを配備する方針を打ち出した。
 「軍事作戦上の観点から言えば・・・中距離ミサイルを日本全土に分散配置できれば、中国は狙い撃ちしにくくなる」(米国防総省関係者)。米軍の本音は日本列島への配備だ。
 米国は2024〜25年にアジア配備準備完了を急いでいる。バイデン大統領の「拡大抑止力提供の保証」発言は河野氏のような中距離核ミサイル受け入れの「覚悟」を引き出したと言える。

■中距離核ミサイル発射は自衛隊が担う
 首脳会談で岸田首相が約束した日本の敵基地攻撃能力保有を上記の米国の中距離核基地日本配備計画と関連させるとその危険な本質が見えてくる。
 計画では米軍は自身のミサイル配備と共に自衛隊がこの地上発射型の中距離ミサイルを保有することも求めており、すでに防衛省は地上配備型の日本独自の中距離ミサイル開発を決めている。
 対中ミサイル基地としては沖縄、南西諸島にすでに自衛隊の短距離対艦・対空ミサイル基地があるが、これらが中距離核ミサイル基地になるであろうし、日本本土の陸自基地にも米軍が望むように「分散配置」されることになるだろう。
 これはまさに自衛隊が対中(朝鮮)の任意の「敵本土」攻撃能力を保有することとなる。
 これとの関連で安倍元首相の持論である「米国との核共有」論を見ていくと、有事には自衛隊の地上発射型中距離ミサイルに米国の核を搭載できるようにするための論理と言える。
 日本の敵基地攻撃能力保有と米国の「拡大抑止」提供の保証、この「共同対処」の成果とは日本が地上発射型中距離核ミサイルの対中(朝鮮)本土攻撃基地となる覚悟を示すことだと言える。

■日本の「東のウクライナ」・代理戦争国化
 プーチン大統領は、5月29日の演説で「ウクライナ戦争はロシアと米欧の闘いである」とした。ゼレンスキー政権下のウクライナは米欧の代理戦争をやらされているということだ。いま日本は対中新冷戦最前線として中距離核ミサイル攻撃基地を担う「覚悟」を迫られている。それは「東のウクライナ」化、米国の代理戦争国化の道である。
 そんな「覚悟」を迫る「日本のゼレンスキー」たちの暗躍を許してはならない。


 
論点

IPEF、お付き合い程度で参加か

東屋浩


■インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足
 5月23日、日米首脳会談でバイデン大統領は、インド太平洋経済枠組みの発足を宣言した。
 アジアには経済機構として、すでに環太平洋経済連携協定(TPP)と地域的包括経済連携(RCEP)、および中国主導の「一帯一路」があり、米国以外の国々が網羅されている。各貿易協定には関税の引き下げという優遇措置があり各国にとっての利点だが、米国は雇用の確保を求める労働者の反対もあって、「自国の家庭と労働者のために」(バイデン)関税引き下げを含む貿易協定は結ばないという立場を明確にしている。
 しかし、米国のインド太平洋戦略、すなわち米中新冷戦戦略において、日米豪印枠組み(クアッド)やオーカス(AUKUS)など軍事、情報面の機構がある一方、経済の機構がないのは弱点だった。そこで苦肉の策として主に安全保障にもとづく貿易の活発化を掲げた「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)をもってきた。その内容は@デジタル流通を含む貿易の円滑化、A半導体などのサプライチェ−ン、Bインフラ整備、脱炭素化、C税、反腐敗で協力するというものだが、これらは、中国包囲網形成のためにG5、G6などデジタル先端産業製品の中国排除の貿易秩序、中国に依存しない半導体サプライチェーン形成など、あからさまな米国の利益優先の内容となっている。

■日本はお先棒の役割
 この経済枠組みが成功するかどうかは、中国との関係が深いASEAN諸国が参加するのか否かにかかっている。米国が「IPEF」発足前の5月12日にASEAN首脳会議をワシントンで開催し、ASEAN諸国との連携強化にのりだしたのも、この目的達成のために他ならない。
 バイデン政権は東南アジア外交を軽視したトランプ前政権からの転換を図ろうとしているが、ここで「期待」されているのが日本だ。
 日本は昨夏より、「IPEF」構想の具体化において、上記4つのうちインフラ整備など一つの承認だけでも参加できるという包括的な仕組みを提案し、「米国の無理な注文をアジアで受け入れられる内容に調整してきた。」(経済産業省幹部)。
 その結果、米、豪、日、韓、印、ニュージーランド、フィージーの他、ASEAN諸国の内7カ国が参加する見通しとなった。しかしこれは、拒否して米国の嫌がらせを受けるより「お付き合い程度」に参加しておこうという色合いが強そうだ。
 ASEAN諸国にとって自国の発展のためには中国との友好関係の方がはるか重要である。アジア各国との経済関係でもTPPやRCEPで十分たりている。米国は自国の市場を開放せず閉鎖的なままであり、インフラ整備一つとっても米国が提供するのは1億5千万ドルで中国のそれの十分の一にすぎないのだ。
 日本が「橋渡し」に動いた今回の米国主導の「IPEF」へのASEANの参加だが、実際、あまり誇らしい成果をあげたとは言えないようだ。シンガポールのリー首相は来日前に日経新聞の取材に応じ次のように述べている。「今やアジアの多くの国にとって中国は最大の貿易相手だ。アジアの国々は中国の経済成長の恩恵にあずかろうとしており、貿易や経済協力の機会の拡大を概ね歓迎している。中国も広域経済圏構想『一帯一路』のような枠組みを作り、地域に組織的に関与している。我々はこうした枠組みを支持している」とし、「中国が繁栄して域内の各国と協調を深める方が、国際秩序の外で孤立するより好ましい」と中国排除をはっきり否定している。
 「IPEF」13カ国中7カ国を占めるASEAN諸国にとって中国はなくてはならないアジアの仲間であり、経済的パートナーである。「IPEF」の目的がインド太平洋地域における中国排除であるとするなら、それは機能せず、米国の対中包囲網つくりは失敗に終わるであろう。米国の覇権の力の弱まりは否めない。アジアにおいて米国が主導権を握る時代は過ぎ去ったといえる。
 また、リー首相がわざわざ「日本は戦後、侵略した国々と十分に和解しなかった」と指摘しているのは、日本の動き、すなわち米中対立をASEANに持ち込もうとする動きに釘をさしたといえる。日本が米国の手先になってその意図を仲介したり押しつけようとすれば、ASEAN諸国に反発されるだけだ。アジア外交は米国のための手先外交ではなく、日本とアジアの平和と友好のための外交にならなければならない。



時評

20万筆達成祝賀!を維新終了に結び付けよう

平 和好


〇荒唐無稽でズサン極まるカジノ公金建設
 カジノを大阪に誘致するために何千億もの税金(大阪市民税・府民税だけでなく莫大な国税も)を浪費してしまう、IRと称するカジノバクチ場建設を強行したい維新の会。大阪を牛耳る維新の会は何が何でもバクチ場を公金で作りたいらしい。総額は2千億とも3千億とも言われている。結局いくら掛かったか不明なオリンピックの例を見ても、さらにふくらんでしまう事がほぼ確実である。

〇あほう過ぎる経営計画
 大阪湾の離れ小島に地下鉄で満員のお客を朝から晩まで1万人以上送り込み、その人達が1万円以上の掛け金をすってはじめて、大阪カジノは「儲かる」。行ったお客が勝ってはならない。これは反対派が勝手に言っているのではない。維新府政・市政の指令を受けて、れっきとした幹部公務員が作った経営計画がそうなっているのだ。  まともな公務員なら破たん確実なバクチ場のために莫大な公金を使うなど構想しない。しかも黒字化できるのは何十年も先だと言う。その時に吉村知事も松井市長もいない。

〇住民投票要求署名20万筆越え!
 こんな馬鹿な妄想計画について是非を問う住民投票を求める署名運動が5月25日まで62日間実施された。あらかじめ登録された署名受任者しか署名を集められない、しかも受任者の住む行政区しか署名不可能、署名した日付に前後の間違いがあったら無効、ダブって署名できないなど厳しい法定条件のもと、有権者の50分の1=15万人以上の達成が危ぶまれていたが、はるか多数の20万人を超える署名が集まった。自主的に参加した市民の熱のこもった取り組みが成功したのである。選管の審査で無効にされる分を除いても成立は確実と思われる。素直に喜びたい。

〇犯罪そのものの維新政治
 同種の署名集めをした愛知では、県知事罷免を求める署名運動に維新の政治家が関与し、どこかから取り寄せた名簿を丸写ししたりして署名を偽造した。維新政治家は逮捕されたものの、その罰がどうなったかはさっぱり不明である。  その維新の政治家の不正や不祥事や疑惑が無数に飛び出している。ほんの一例だけでも尼崎市議(政務活動費使い込み)、馬場伸幸共同代表(政治資金報告書偽造、迂回献金)、清水貴之参議院議員(政治資金報告書偽造、迂回献金)高木かおり参議院議員(同)が明らかになっている。政治資金の専門家によるといずれも犯罪レベルらしい。維新が掲げる「身を切る改革」は、市民の身を切って集めた税金を維新の為に乱用する、が実態だ。

〇生活防衛は維新打倒から
 こんな維新に騙される人が多数なので、維新が政治を牛耳る事が阪神間で続いてきたが、ここへ来てやっと気づいた人も増えている。2度にわたる大阪市廃止住民投票に続く、維新の3度目の敗北である「住民投票要求署名20万筆達成」の成果を各種選挙、特に今月22日から始まる参議院選挙でさらに確実化しよう。西宮市長選・市議補選で維新の3人の候補が全滅する奇跡がこの春に起きた。自公より悪い維新の議席を少しでも減らさなければならない。それが、ただでさえ苦しい局面にある市民生活を破たんから救うのだ。 それにはナマクラな党ではダメであり、とことん闘う所に全力の支援を集中しよう。 住民投票実現への集会 6月19日午後1時〜5時 生野区民センター



学習会報告

日中友好は日本にとっての最高の安全保障

金子恵美子


 今年は日中国交正常化50周年。本紙でも紹介した「未来アジア学習会」第二回「日中国交正常化50周年記念学習会」が予定を上回る参加者をもって開催されました。
 会場には中国から日本に来て商売をされている若いご夫婦や、様々な形で日本と中国をはじめとするアジアとの友好平和を願う団体や人々が参加。講演に先立つ「中国音楽鑑賞」のひと時には、中国人ご夫妻が懐かしそうに歌を口ずさんだり画面に見入る姿が印象的でした。
 今回のチューターは「大阪城狛犬会」の伊関要さん。伊関さんは日中友好だけでなく、「平和の糧」や「1%の底力」の会などで、日本政府や大阪府・市より補助金や高校無償化、幼保無償化から排除されている朝鮮学校支援に取り組むなど、日本とアジアの友好・親善・平和構築のため、全身全霊を傾けて活動されています。今回の講演でもその熱い思いがひしひしと伝わってきました。以下、伊関さんのレジュメより抜粋します。

◇大阪城にあるこま犬が語る日中不再戦の決意
 大阪城西の丸北門前に一対のこま犬がある。実はこのこま犬、中国侵略戦争時の略奪文化財だ。1937年、日本軍は空爆侵攻した天津からこま犬を略奪し、凱旋勝利の戦利品として戦意高揚や青少年への軍国教育のために利用し、その後、大阪城に放置された。
 1983年、私たち日本の市民は、再び軍国主義・侵略戦争を許さないため、こま犬返還に声をあげた。こうした市民の声にこたえ、中国は1984年に「こま犬返還の申し出は日本人民の友誼の気持ちの表れである。」として、こま犬を改めて「友好の証」として大阪市に寄贈してくれたのだ。ところが大阪市が設置したこま犬の説明版にはこうした歴史的経緯が書かれていなし。そこで、大阪城狛犬会では、2014年、当時の橋下市長及び市会議長に「こま犬の正しい由来と日中不再戦の決意が明記された説明版設置を求める陳述書及び要望書」を提出した。しかし、大阪市はこの要望を理由もなく拒絶した。また、2015年には、大阪城にある「ぴーすおおさか」から南京大虐殺や「日本軍慰安婦」に関する展示を撤去した。まぎれもない歴史隠蔽だ。大阪城狛犬会は、歴史隠蔽を許さず、こま犬が語る軍国主義・侵略戦争の惨禍を後世に伝え、再び軍国主義・侵略戦争の誤りを許さず平和な未来を築く事を訴え活動中だ。

◇「暴支膺懲」から南京大虐殺へ そして中国侵略戦争
 こま犬が略奪された1937年、「暴支膺懲」(ぼうしようちょう・横暴な中国を懲らしめる)が国民的スローガンとなり、同年7月7日、盧溝橋事件、27日〜30日天津空爆・侵攻、こま犬略奪、12月13日南京占領、1938年2月にかけて南京大虐殺と続く。南京占領を祝う提灯行列に市民はこぞって繰り出し日本は戦勝祝賀ムードにつつまれた。こうして市民の熱狂的支持のもと始まった戦争はその後8年に及んだ。1945年、310万人の犠牲者と国土を廃墟にして迎えた敗戦。2000万人の中国人犠牲者を出した中国侵略戦争。日本軍国主義の惨禍は朝鮮、アジア全域におよんだ。市民が熱狂し、支持した戦争の悲惨な結末だ。

歌謡「団結は力」の場面

◇アメリカの戦争戦略に反対 日中友好とアジア諸国との連帯が平和を保証する
 今、ウクライナ戦争で日本を覆うウクライナ支持の熱狂は、85年前の1937年こま犬略奪当時を彷彿とさせる。「ウクライナ・ゼレンスキー大統領=善、ロシア・プーチン大統領=悪」の構図が世論を席巻する。「暴支膺懲」のもと「日本=善、中国=悪」の構図が世論を席巻し中国侵略戦争は「聖戦」と名を変え、市民は熱狂して戦争を支持した。85年前、侵略戦争を「聖戦」として市民を戦争支持に熱狂させた国は日本だった。今、民主主義の専制主義に対する「正義の戦い」として「ウクライナ戦争」と「台湾有事」をあおるのはアメリカだ。確かに、挑発に乗ってウクライナに侵攻したロシアに非はある。しかし、アメリカの戦争戦略は看過できない。アメリカは自らは安全な場所にあって、スラブ人同士をウクライナで戦わせる「ウクライナ戦争」、アジア人同士を戦わせる「台湾有事」。
 「正義の味方」として武器を販売するアメリカ。このアメリカの戦争戦略を糾弾しない限りウクライナ戦争の早期終結は望めない。アメリカの、戦争の火に油を注ぐ武器給与に反対しよう。そして、ウクライナ戦争に続けてアメリカがあおる「台湾有事」に断固反対しよう。平和を求める市民の声が、大阪城のこま犬を「略奪文化財」から「友好の証」に換えたように、アメリカ言いなりに中国と敵対するのではなく、日中友好そしてアジア諸国との友好連帯こそが平和を保証する。これが大阪城のこま犬が私たちに教える教訓であり、平和な未来を築く道だ。(大阪城のこま犬が語る歴史の真実―3月24日よりの資料)
 豊富な統計や資料をもって、かつての日本のアジア侵略戦争を省み、50周年のこの時にアメリカの戦争戦略(「民主主義VS専制主義=「米対中・ロ新冷戦戦略」に邁進する日本政府の愚かしさと危うさ、そうした中での市民連帯と外交の重要性を力強く訴える伊関さんの言葉は参加者の胸に大きく響いたと思います。私自身は、戦時に中国人民と連帯し、または身を挺して中国人民のために戦った「日本兵」がいた事や、戦後も日本がアジアの朋ではなく、欧米側の一員としてアジアに敵対するようになった要因として、先の戦争の敗因を「中国や朝鮮の人びとの反撃に敗れた」つまり、民族解放闘争という正義の闘いに敗れたという総括がスッポリ抜けて、物量的に圧倒するアメリカに敗れた戦争とのみ記憶・記録してきたところにあるという話が印象に残りました。
 日本とアジアの平和友好のために、日中国交正常化50周年を少しでも意味のあるものにするよう、ロシア、中国、朝鮮、ASEAN諸国などを敵にまわすような日本政府の振る舞いに断固反対し、アジアの一員としてアジアの朋としての日本の進むべき道を一歩でも前進させてゆきましょう!

 次回の「未来アジア学習会」は 「朝鮮半島情勢」について。講師は崔権一氏。8月20日(土)午後2時〜の予定です。



資料

米国の思い通りに世界は回らない

金子恵美子


 6月12日、13日とシンガポールで「アジア安全保障会議」が開催された。そこでの東南アジア諸国の発言である。
 ウクライナ事態を引き合いに「ルールに基づく国際秩序作りの歴史的岐路に立っている」と東南アジア諸国に連携を呼び掛けた岸信夫防衛相。南シナ海での中国の動きを念頭においたものだ。これに対してインドネシアのプラヴォ国防相は「植民地化され、搾取された経験は私たちの潜在意識の中に常にある」「大国間の競争の影響を受けてきたからこそ、私たちは全ての大国を尊重するように常に努力している」とし、大国として米国、ロシア、中国をあげ、中国については「常にインドネシアの良き友であり続けている」と言及。また、マレーシアのヒシャムディン国防相は「ASEAN諸国は、自分たちの進む道を自分たちで決める」と強調。その後の取材では「米国がどんな要求をするにせよ、それが米国のためだけでなくASEAN諸国の利益になると納得しなければならない」と述べた。カンボジアの国防省高官は「ASEANが米中のどちら側に立つことは望んでいない。中立であることがASEANの進むべき道だ」と発言。
 こんな国々を相手に、米国の意を受けた日本が橋渡し? 無理でしょう。


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