研究誌 「アジア新時代と日本」

第227号 2022/5/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

視点 加速する時代の転換と日本政治

論点 「食料高騰」が問いかけるもの

論点 岸田リアリズム外交の非現実性

時評 沖縄復帰50年を前に

講演会の呼びかけ 中国百年の歩み

資料 ウクライナ事態をどう見るか 米・NATOがたくらむ代理戦争




 

編集部より

小川淳


命を同じに扱う国になろう
 ロシアによるウクライナへの軍事行動が始まってから2か月。国外に避難するウクライナ住民は500万人を超え、日本でも受け入れが始まった。政府は4月1日には「避難民」受け入れを進める支援策を決定。具体的には難民の支援活動に取り組む公益財団法人が当面の滞在場所の提供や生活費の支援を行い、その後は支援の意向を示す自治体や企業などに引き継ぐ。また政府は入国ビザの簡素化や代表者の一括申請など認めるほか、新型コロナの陰性証明がなくても入国を認めることを明らかにしている。
 すでに820人が入国したという。ウクライナ「避難民」への支援の輪は、企業や自治体、個人にいたるまで、広範な広がりをみせており、日本(政府)はいつからこんなに外国の「避難民」に親切になったのだろうかと、皮肉の一つも言いたくなるほどだ。
 もちろん手放しでは喜べない。今回の受け入れはあくまでも例外扱いであることだ。90日間の「短期滞在」資格で入国させており、「難民」ではなくあくまでも一時的な「避難民」という名称を用いていることからも、ウクライナ情勢が落ち着けば帰ってもらうという立場だ。
 それでも今回の日本政府の対応は異例尽くしだった。誰でも疑問に思うのは、なぜウクライナ難民だけが例外扱いなのかという点だ。「難民」として日本への入国を希望して入国できず、申請中の外国人は多く存在する。あるいは在留資格がないという理由だけで、長期収容されている外国人も多数存在する。入管での不当な長期収容は人権侵害として国連から何度も指摘されてきたことだ。 現在収監中の人で、6カ月を超える人が半数、2年を超える人が2割を超えるという。2020年に日本で「難民」と認定された人はわずか47名、認定率1%という数字が示すように日本政府は「難民」に対して硬く門戸を閉じたままだ。
 今回の異例なウクライナ難民への支援が、米国との同盟関係からの政治的な判断で行われたことは言うまでもない。イラクやアフガニスタン、ミャンマーにも難民は溢れているが、それらの難民に対して日本政府はつねに冷淡な対応に終始してきている。
 もちろん、これまでかたくなに門戸を閉ざしてきた日本政府が、一時的な形であれ難民を受け入れたことの意味は小さくないし、これを一時的なものにせず、闘いを通して、日本が本当の意味での難民への人道支援につなげていく、そのきっかけになるのではないか、という意見もある。しかしより問題なのは、難民を生み出している最たる国アメリカに日本が追随・加担していることであり、アメリカから自立し、日本が難民を生み出さない国にいかに生まれ変わるかにあるのではないだろうか。



視点

加速する時代の転換と日本政治

編集部


 ウクライナ事態の勃発と進展を契機に時代の転換が一段と加速化されている。
 今、問われているのは、それに応える日本政治の根本からの転換ではないだろうか。

■露呈された日本政治の大政翼賛会化
 これまでも日本政治の大政翼賛会化は進んできていた。労働団体、連合の自民党大会への参加。国民民主党の今予算案への賛同。明確な政策的争点がないままに行われる国政選挙。  その本質において大政翼賛的な政治が続く中、その姿がくっきりと露呈されることになる歴史的事変が起きた。ウクライナ事態だ。
 ウクライナへの軍事行動に踏み切ったロシアに対し、なぜ踏み切ったのか、その意図や理由などまったく問うこともない非難決議、そしてそれを被ったウクライナの大統領、ゼレンスキーの支援要請のオンラインでの演説に対し、その内容を聞く前にスタンディングオベーションまで予め決めるといった対応、それらに対し日本国会は、唯一、そうした実のない議決や対応に反対したれいわ新選組を除いて、共産党まで含む全政党一致による無条件の賛意を表明した。
 ウクライナ問題に対するこうした日本政治の大政翼賛的性格の露呈は、一体どこから生まれてきたのだろうか。
 かつて大政翼賛会は大本営と一体であり、その政治は「大本営発表」に基づいていた。そして今、現代の大本営は「新冷戦」を強行する米英だ。事実、今の日本、特に「ウクライナ」があった後の日本は、「米英発表」で一色に塗りつぶされ、動かされている。

■ウクライナ事態と加速する世界の分断
 今、少なからぬ人々が、ウクライナ事態に時代の何か大きな転換を予感している。実際、進展するウクライナ事態は、時代の転換を大きく促進する可能性に満ちている。
 ウクライナ事態が引き起こす世界分断の加速度的な進展はそのことを示している。
 あの2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事行動直後、米英主導で行われた国連でのロシア非難決議は、賛成141,反対5,棄権35だった。それが4月7日の国連人権理事会からのロシア追放決議では、賛成93に対し,反対24,棄権58、それに無投票まで加えると100。さらに、その後行われたG20でのロシア制裁提議でも、米欧側は少数派に転落した。
 米欧が少数派になっての世界の分断は、ロシアへの政治制裁にのみ見られる現象ではない。経済制裁が引き起こす世界分断の凄まじさはそれをも超えている。ロシア産のエネルギー、食糧、原料などの取引停止、国際決済秩序、SWIFTからのロシアの締め出しなどといったこれ以上にない苛酷な経済制裁は、ロシアを、中国をはじめ非米主権国家群の側に追いやったばかりか、ロシア以上に米欧側に打撃となってその経済危機を増幅する結果をもたらした。
 ジャーナリストの田中宇さんによれば、世界人口79億人の中、米欧の支配領域内には10億人しかいないと言う。人口的には、米欧側は世界人口の8分の1しか占めない少数派に転落したということだ。
 こうしたウクライナ事態を契機に米欧側が引き起こした世界の分断は、米国による「米中新冷戦」を「米対中ロ新冷戦」へと二正面作戦化するとともに、「新冷戦」による「民主主義VS専制主義」の世界の分断を一段と促進する。
 この分断の加速化が、米国が引き起こした「新冷戦」当初の狙い通り、米覇権の崩壊から回復へと作用するか、それとも崩壊のさらなる進行、時代転換の加速化へと作用するか、それは、すぐれてウクライナ事態をめぐる軍事、経済、政治的戦いの如何にかかっていると言えるだろう。

■日本は「東のウクライナ」になるのか
 加速化する世界の分断にあって、そのどちらに付くのか、日本の立ち位置が問われている。
 これまでのように米欧の側に立つのか、それとも中ロなど非米主権国家群の側に立つのか。
 日本が米欧の側に立つ道が、今日、「米対中ロ新冷戦」の東の最前線として生きていく道以外であり得ないのははっきりしている。
 実際、日本はすでにこの道に一歩大きく踏み出している。それは、今年度外交青書において、これまでのロシアとの協力重視から、「北方領土、ロシアが不法占拠」などと対決姿勢を鮮明にしたところにも現れている。
 また、米国が先に発表した戦略文書、「国家防衛戦略概要」で、中国を「最重要な戦略的競争相手」、ロシアを「深刻な脅威」と位置付けながら、同盟国、友好国に対しては、連携による「統合的抑止」を要求しているのなどは、そのことを端的に示しているのではないか。実際それは、日本の軍事、経済、外交などすべての領域での米国のそれへの統合、組み込み、一体化を意味しており、すでに「西の最前線」、ウクライナにおいては、そのアメリカ化として実行されてきたものだ。
 今、「東のウクライナ」として日本に問われていること、それは、ウクライナがたどっている運命を直視することだ。米国が後ろから武器を供与しながら、その覇権回復のため、ウクライナに対ロシアの代理戦争をやらせて犠牲にしていること、この残酷な現実から日本は一体何を学ばなければならないだろうか。

■時代の転換に沿う日本政治の根本的転換を
 ウクライナ事態がどうなるか。この戦争で、ロシアが勝つのか、ウクライナが勝つのか、それとも、よく言われるように、アメリカの一人勝ちになるのか。それによって時代転換の少なくとも当面の方向が決められるようになる。米欧覇権の回復か、それとも中ロなど非米主権国家群の時代の到来か。
 ここで非米主権国家群の時代が中ロ覇権の時代にならないというのが重要だと思う。それは、朝鮮やベトナム、ASEAN諸国、イランやイラク、シリアなど中東諸国、キューバやニカラグア、ベネズエラなど中南米諸国、そしてアフリカ諸国など、苦難に満ちた民族解放の闘いで主権を勝ち取った国々、そして今も米覇権に抗し闘い続けている国々が中ロの属 国、植民地に逆戻りすることがあり得るのかという問題だ。そんなことはあり得ない。中ロもそうならないことを熟知しているのではないだろうか。
 その上で、ウクライナ戦争がこれからどうなるか、それは誰にも分からない。こうした時、日本は、自らの進路をどうするのか。展望が見えるまで、日和見を決め込むのか。それとも、覇権時代から脱覇権時代への転換に掛けるのか。日本国民の意思はどうだろうか。
 それは、日本国民自身、分からないのではないか。だが、それを垣間見ることはできる。先に行われたフランス大統領選はそれを示唆しているのではないかだ。あの選挙で特徴的だったのは、プーチンに近く、「極右」のレッテルを貼られたルペンの思いの外の善戦だった。米欧が今、力を入れるウクライナ戦争の成り行きよりもフランスの利益、自国第一の利益を優先することを求めた人々の思いの外の急増、そこに米欧のロシア叩きにもう一つ同調せず、それよりもウクライナ戦争によって困難になる自国の経済や国民生活を気に掛け重視する先進国国民の思いが反映されていたのではないだろうか。
 もちろん、米欧覇権に反対する闘いは困難を極めるだろう。日本の「新冷戦」最前線化、アメリカ化のため、国とテスラ、GAFAMなど官民一体となっての攻勢をかけてくる米国との闘いに打ち勝つのは容易ではない。
 その上、それは、日本政治の大政翼賛的動向との闘いでもある。「米英発表」に基づき、米覇権の庇護の下展開されてきた戦後政治から、「新冷戦」の東の最前線を担い、米覇権の回復を支える「新しい政治」への転換を標榜する大政翼賛政治との闘いは、一見困難を極めているように見える。
 しかし、これらは皆、所詮自らの生命を生き尽くした「古い勢力」の「古い政治」に他ならない。ウクライナ戦争の帰趨はいまだ定かではないが、ウクライナが「人間の盾」となり、米欧覇権の代理戦争をやらされている限り、その未来は決して明るくならないと思う。
 この大きな時代的転換の時にあって、そのもっとも基本的な趨勢を見誤ることなく、どこまでも米欧の覇権に反対し、脱覇権自主の道を突き進むことが重要ではないだろうか。
 そこにこそもっとも広範な日本国民の切実な意思と要求があり、戦後政治の根本からの転換を担う真に新しい政治勢力形成の無限の可能性も広がっているのではないだろうか。



論点

「食糧高騰」が問いかけるもの

永沼博


■深刻さを増す食糧高騰
 ウクライナ事態によって食糧高騰が深刻化している。ロシアとウクライナは小麦とトウモロコシの貿易量で、それぞれ30%、20%を占める。肥料もチッソ、カリ、リンの3大肥料の内、リンは1位中国でロシアは4位。カリは1位カナダだが、2位ベラルーシと3位ロシアを合わせればカナダを抜く。
 その地域が戦場になっており、国際決済秩序からのロシア排除など制裁による影響、先行き不安などが連鎖して、世界的な食糧高騰が起きているのだ。
 元々、穀物価格は上昇傾向にあった。その原因は、気候変動(干ばつや洪水)、石油高騰による燃料や農業資材の高騰、中国や中進国での生活水準向上による需要増大などである。そこにコロナ禍による輸送の停滞が拍車をかけた。そして今回のウクライナ事態の発生がそれに更なる追い打ちをかけている。
 こうした中、日本では、食の安全保障、自給率向上を求める声が高まっている。日本の食糧自給率はカロリーベースで37%(穀物だけでは28%)に過ぎず、172カ国中128番目、OECD加盟国38カ国中32番目という低さなのだ。

■危機感なき政府
   しかし政府の対応は、あまりに危機感に乏しい。2月に策定された「経済安全保障推進法案」には、食糧安保は一切なく食糧自給率の向上も触れられていない。農水省は輸入ゼロに陥った場合、「イモを食って凌ぐ」などと言う始末だ。
 何故こうなのか。それは日本の食糧政策が米国の食料戦略に従うものになっているからだ。世界一の穀物生産国・米国にとって食糧は覇権のための強力な武器であった。そして、その矛先は日本にも向けられてきた。
 1954年学校給食法で「パンと脱脂粉乳」による学校給食で子供にパン食を慣れさせ、日本は米国の小麦輸出の最大の買い手になった。現在、米国からの輸入がトウモロコシ81%、小麦51%、大豆69%と大半を占める。
 米国の食糧戦略の下で日本が食糧自給率を上げることなど許されない。TPP交渉でもコメや牛肉、豚肉、乳製品の輸入拡大という米国の要求を呑まされている。こうして米国に食を握られた日本は米国覇権の下に縛り付けられ、今では「米中新冷戦」の最前線に立たされようとしている。
 これまでは、「お金を出せば買える。それが一番安くて効率的だ」という論理が通用した。しかし、ウクライナ危機によって、それが通用しなくなっている。食糧価格は益々高騰していく。円安も急速に進み、「お金を出せば買える」状況ではない。
 食糧の自給率向上を説く鈴木宣弘氏(NPO法人「農の未来ネット」理事長)は、「不測の事態に国民を守るかどうかが独立国の最低条件」と言う。米国覇権を支えるために、敵基地攻撃能力保持や防衛費倍増などに浪費する余裕などない。

■米国依存からの脱却を考える時
 ウクライナ事態による穀物高騰は、食糧という暮らしと命に直結する問題をもって、今までのように米国に依存し、米国覇権の下で生きていくのか、それでよいのかを問いかけている。
 各国も食料確保に躍起となっている。インドを始めとする多くの国々も欧米のロシア制裁をしり目にロシアからの石油や穀物輸入を図っている。中国はロシア制裁に加わらず、大豆1億トンなど世界的な食糧確保に乗り出している。
 「背に腹は変えられない」こうした動きに米国も文句をつけられない。米国の覇権力は確実に低下している。ウクライナ事態を契機に起きている世界的な動きの中で、日本もこれまでの米国依存、米国覇権依存の食糧政策を見直す時に来ている。
 ウクライナ危機を奇貨として日本は食糧自給率を高め、食の安全を自らの力で確保する方向に政策転換しなければならない。自給率100%の米食を重視し、コメを飼料にし(こめ豚、こめ鶏、こめ卵は好評)、地産地消の自然循環型農業を発展させ、小麦やトウモロコシの生産も増やす。年間2500万トンにも上る食品ロスもなくす。
 安定した食糧輸入も必要だ。そのためには、どの国とも友好関係を保つべきであり、「米中新冷戦」の最前線になるなどと言ってる場合ではない。


 
論点

岸田リアリズム外交の非現実性

東屋浩


■リアリズム外交の展開
 ウクライナにおけるロシアの軍事行動が開始された翌日、岸田首相は国会で、「したたかで徹底的な現実主義を貫く外交を進めなければならない」と「リアリズム外交」を説いた。
 岸田首相の言うリアリズム外交とは、ロシアにたいする非難と経済制裁を欧米と一体となっておこなっていくものだ。その後もロシア外交官の追放など、対露外交を敵対的なものに一変させた。
 そして、3月インド、カンボジア訪問を皮切りに、4月林外相を特使としてポーランドに派遣、ウクライナ避難民受け入れ、ドイツ・ニュージーランド・スイス首脳の来日、連休期間でのベトナム・タイ・インドネシアと英国・イタリア訪問など外交活動を活発におこなってきた。これらを5月下旬の日本での「クアッド(4カ国枠組み)」会議開催、さらには12月の日本での「民主主義サミット」開催の成功へともっていこうとしているのは明らかだ。
 岸田リアリズム外交とは、一言で「新冷戦外交」だということができる。
 これまでの米国の陰に隠れていた「追随外交」から、米国の対中露新冷戦戦略に従い、その手先として積極的に動くというものである。つまり、岸田首相にとって米国に無条件に従うことが「現実的」であり、その手先となって懸命に動くことが「主体的」なのだ。
 その一見、華々しい「リアリズム外交」が大きな成果を約束するものだと、岸田首相は信じて疑わないのだろう。

■リアリズム外交の非現実性
 だから、対露制裁に消極的なインドやASEAN諸国にたいする外交を重点的におこない、ドイツなどロシアと経済関係が深い国とロシア非難でなんとか共同歩調にもちこもうとした。
 結果はどうだったのか? インドは乗らなかった。クアッド成員国でありながら、ロシアからの原油輸入をやめないどころか8倍に増やし、ロシア原油輸出を制裁以前よりも増大させるのに大きく貢献した。カンボジアやインドネシアなど東南アジア諸国も同じである。いくら日本が経済援助という「エサ」をばらまいても、日本の説得を聞き入れ米国の対露制裁に加わる国はほとんどない。
 国連の人権理事国からロシアを排除する決議は、賛成が多数だったが、反対と棄権、無投票に回った国は賛成国よりも多い。これが現実であり世界のすう勢だ。
 米国の覇権の力が衰退し、反覇権の自国の利益を第一とする勢力が圧倒しつつある。この現実を無視して、米国に従い、新冷戦戦略の手先となること、そのどこが現実的外交なのだろうか。

■何が現実の要求に合っているか
 外交はリアズム外交でなければならない。現実の要求に合ってこそ国益のためになる。問題は何が現実の要求に合っているのかということではないか。
 米国の対中ロ新冷戦戦略は、反覇権非米諸国を敵に回し、世界を分割していくがゆえに、かえって米国の孤立を招き、その墓穴を掘るものである。それに追随していくことは、日本自身の孤立化と破滅を招くものだ。しかも、米国は日本を始め同盟国との統合一体化を求めており、日本が米国の一州となり軍事経済的に徹底して下請けに使われるようになるのは目に見えている。
 とくに日本が対中新冷戦の最前線に立つことは、日本の滅亡を意味する。
 ウクライナは新冷戦の欧州における最前線となった結果、戦場となり国が荒廃し、人々が犠牲になっている。その原因は米国のNATO拡大という覇権政策にある。日本も中国を敵国とし日本全土を対中国攻撃基地にする最前線になるならば、その結果は日本が戦場となり、多くの国民が犠牲になるという可能性が高い。米国は太平洋の彼方にいて日本を中国と戦わせた方が、軍需産業を儲けさせ、世界を分裂させるうえでどれだけ利得があるか分からないからだ。ウクラナイの悲劇の教訓は、米国の言うがままになって自国を新冷戦の最前線にしてはならないということだ。
 この現実の要求は、日本が米国の手先となるのではなく、日米基軸外交と訣別し、非戦平和の理念を掲げどの国とも友好関係を結び、世界の平和と安全に寄与していくことではないだろうか。



時評

沖縄復帰50年を前に

金子恵美子


 この5月15日で沖縄は本土復帰50年を迎える。1952年のサンフランシスコ講和条約発効により日本は主権を回復する。同時に結ばれた日米安保条約でアメリカの基地と軍隊の駐留が許され、憲法よりも日米安保優先の政治が続いていることを見れば、この時の「主権回復」が、いかに頼りない、まがい物であったと言わざるを得ない。
 しかし、沖縄はこうした「主権回復」からにすら排除され、その後27年間、実質アメリカの施政の下に留め置かれ、基地と米兵による犯罪被害の犠牲にさらされ、本土との経済格差や差別など一身に受け続けてきた。
 琉球処分では琉球王国を廃され、自らのアイデンティティを踏みにじられ、第二次世界大戦では唯一米国との戦場になり県民の4人に一人が犠牲になった。その上の27年間のアメリカの施政。そこから解かれ、「祖国復帰」となったのが、50年前の1972年、5月15日なのである。
 そういう事もあり、テレビや新聞で「沖縄復帰50年」の特集を組んでいるのを目にするが、そこには当時の沖縄の人々が掲げた「祖国復帰」の文字が浮かんでいる。沖縄の人たちが「祖国」と呼んだ日本は、この50年間沖縄に対してどうであったのか。その答えの一つが、沖縄出身の青年によるハンガーストライキなのではないだろうか。
 ハンガーストライキを決行しているのは、沖縄県宜野湾市出身の一ツ橋大学院生の元山仁士郎さん30歳だ。9日から首相官邸前で座り込み、辺野古移設の即時断念、米軍普天間飛行場の数年以内の運用停止、日米地位協定の運用にかかるすべての日米合意の公開と民主的な議論を経ての見直しの3点を政府に求めている。岸田首相が要求を受け入れるか、ドクターストップがかかるまで自民党本部前などで座り込むという。
 何が元山さんを復帰50年を前に、こうした行動に向かわせたのか。
 「果たして沖縄は日本に復帰して良かったのか。むしろ良くなかったのではと言わざるを得ない。ハンストを決めたのはそういう状況を日本に住む人に問いたいから。沖縄を好きな人は多いと思うが観光だけではなく基地問題も一緒に考え、受け止めて欲しい」と記者の質問に答えている。また声明文では「50年前も現在も基地問題は変わっていないといっても過言ではない。果たしていつまでこの状況が続くのか。私たち沖縄の人々が抱える基地問題は、日本に住む人々に忘れられてしまったのだろうか」と訴えている。
 この50年を経て、沖縄の人びとはもう日本を「祖国」とは呼ばないだろう。「祖国」という言葉に込められている「大いなる懐」、受け入れ暖かく包み込み、生活の擁護者として生死苦楽をともに分かち合う自分の祖国(くに)とはあまりにもかけ離れた、むしろ冷たく、暴力的で、継子扱いの日本政府、そして遊びには来るが痛みを分かち合えない本土の人びとに対してどうして「祖国」「兄弟」という感情を抱けるだろうか。だが、沖縄の人々は誰の痛みを引き受け、誰の平和のために闘っているのだろうか。
 5月15日を迎え「沖縄の本土復帰とは何であったのか」を一番考えなくてはならないのは、私たち本土の人間なのではないかと思う。
 ウクライナの人びとの惨劇にはあれほどにも敏感に反応し、支援に動くのに、なぜ、自分の国の沖縄の基地と平和問題には鈍く無関心なのだろう。
しかも、沖縄の問題は支援ではなく、自分たちに代わって基地の過重負担を受けている沖縄の人たちに対する当然の行いなのである。
 日本が日米基軸で、アメリカの「民主主義VS専制主義」=「対中・ロ新冷戦」戦略に同調し進めば進むほど、沖縄の軍事的負担は重くなり安全は脅かされるようになるだろう。それは沖縄の人々の問題か。いや私たち自身の安全と平和の問題である。今こそ、もっと沖縄に目を向け、心を沿わせ、共に米軍の基地問題、日米の地位協定などなど、考え取り組んでいかなくてはならないと思う。沖縄復帰50年はヤマトンチュウとしてそのような決意を固める日にしたい。元山さんに限りない激励と連帯を込めて。



講演会の呼びかけ

中国百年のあゆみ

平 和好


■日本と中国
   中国共産党は昨年、創立100周年を迎えた。それは筆舌に尽くしがたい1世紀であった事は確かだ。特に日本が日清戦争で中国(清国)をコテンパンにやっつけ、莫大な賠償金を取り、領土を奪ったのが始まりである。続く日露戦争も主戦場は中国だった。乃木希典将軍・ステッセル将軍の終戦交渉で有名な旅順はれっきとした中国の地だ。二百三高地を訪ねる旅に参加したがそこでは「日本軍が無辜の中国良民2万人近くを虐殺した」と碑石に刻まれている。当時の欧米の報道機関も1万人ほどの犠牲、と言っていた。一方日本軍の正式な「発表」では1600、日本のジャーナリストは約6000と開きはあるものの、数千〜1万の中国人民が日露戦争の趣旨と無関係に殺されたのはほぼ間違いない。
 もちろんこれは端緒に過ぎず、その後中国侵略・植民地支配により2千万人以上の犠牲を1945年8月まで日本は中国に強いた。

■中華人民共和国成立!
 日本の無条件降伏後は直ちに国共内戦が再開され、国民党政権に欧米から最新の武器と軍資金が大量に供給されたが、人民の圧倒的な支持と、中国共産党の高いモラルにより中華人民共和国の成立が成し遂げられ、国民党蒋介石政権軍は抵抗を踏みつぶし(台湾住民の犠牲は数万〜10万、未だに不明)台湾を占領した。国民党統治は以後数十年、弾圧と白色テロルが吹き荒れる苛烈なものとなった。大陸全土を掌握した中華人民共和国は建国後70年あまり、そういう艱難辛苦を乗り越え、欧米日の度重なる介入や転覆策動をものともせず、社会主義建設を広大な大地に推し進めてきた。大日本帝国が破壊しつくしたあとの70年間の社会制度と経済の大発展は、現代の奇跡と言って良い。日本も大平正芳政権がケ小平路線にアドバイスや経済協力で貢献し、対中貿易で相互利益を莫大に上げた「功績」も率直に見ても良いであろう。訪中団に毎年参加して、「日本が特に戦前、大変な被害を貴国人民に与えてしまいました。」と語ると、いつも応接に出て来る遼寧省副省長さんが「もういいじゃないですか、これからは未来志向でお互い発展しましょう」と返すやり取りが続いた。

■今年は日中国交回復50周年
 その後、反中扇動と加害歴史の否認が日本の極右のみならず、有力政治家からも繰り返されても中国側は基本的に「鷹揚」な対応だ。何しろ世界中から北京空港に飛行機が乗り入れ、中国旅客機が世界中くまなく飛んでいく(欧米日の飛行路線は縮小の一途)、それに対応するため今までの広大な北京空港がさらに拡張されている。そして近々、アメリカのGDPを中国が上回る自信に満ち溢れている。軍事で世界制覇を一貫して狙ってきたアメリカと対照的に、平和な相互発展を地球規模で成そうとするのであるから、冷静に見れば「中国の勝利」はほぼ間違いない。
 中国との平和な関係が何よりの安全保障、と言う趣旨の講演会が6月4日に行われる。ご参加を呼びかけたい。社会主義建設は苦闘を伴うし、間違いもあったには違いない。しかし間違いのない国家はない、虚心坦懐に現代中国を見よう。



資料

ウクライナ事態をどう見るか 米・NATOがたくらむ代理戦争

李東埼、ジャーナリスト(モナリザ通信2022.5.8より)


 ウクライナ事態の根源は、NATOの東方拡大はしないというソ連解体時の米ロ政府間の約束を米・NATOが系統的に破って、ロシアの安全保障を脅かしてきたことが一つ、もう一つはウクライナでのロシア語族迫害である。東西冷戦終結時に12カ国だったNATOは今や30カ国に膨れ上がり、ロシアを半円形に包囲している。その半円形の後ろには独仏英伊が位置し、さらに米国が控えている。これらの強大諸国とロシアとの間の緩衝地帯として残されているのは、事実上ウクライナだけである。
 2021年12月、ロシアは米・NATOに一つの提案をした。ウクライナをNATOに加盟させず、外国軍事基地を置かず、攻撃型ミサイルも置かないということを、法的拘束力をもつ条約または協定という形で約束せよというものであった。これは、他国の安全保障を犠牲にして自己の安全保障を強化してはならないという、「安全保障の不可分性原則」を具体化したものであった。これを西側が受け入れていれば、今回のウクライナ事態は起きなかったであろう。
 ロシアをウクライナ進攻へと追い込んだ米国の狙いは何か。
 国際的には、同盟諸国を中ロから切り離して米国の統制力を強化する新冷戦構図の構築、ウクライナ戦場の泥沼にロシアを引き込んで国力を消尽させること、これである。国内的には軍産複合体と石油資本への利益提供と景気テコ入れ、深刻な社会分裂を外患で縫合、バイデン政権の支持率アップであろう。
 米・NATOは人道支援を装いながらウクライナ人を最後の一人まで戦わせ、あの国を廃墟にして金儲けをする代理戦争をたくらんでいる。米国はゼレンスキー大統領に、ロシアとの停戦交渉で一切妥協をせぬよう脅迫している。
 今回のウクライナ事態には前史がある。
 2014年、ヤヌコビッチ大統領がクーデターで追放された。きっかけは同大統領が、EU連合協定への調印を拒否したためであった。EU?への統合のために新自由主義的構造調整、政府資産の売却、米国が支配するIMF(国際通貨基金)による国家予算介入強化などの条件が示されていたからである。
 クーデターで入れ替わったポロシェンコ大統領はもともと、右翼の中では穏健な方だったが米、EUの圧力を受けて左翼政党の非合法化、言語マイノリティの権利はく奪など極端な政策をとり、全国の反対デモを極右勢力の暴力で解体した。ウクライナ国民の約2割を占めるロシア語族が多く住む東部のドネツク、ルガンスク地域の住民はこれに反発して住民投票で独立を宣言、クリミア地域は同じく住民投票でロシアと統合する事に決めた。
 ポロシェンコ政権はそれを認めず軍隊を送ったが、ウクライナ軍は内戦に消極的で士気が上がらない。米、EU、国内の新興財閥(オリガルヒ)をバックにした極右勢力はアゾフ、アイダー、ドニプロ、トルネードなどの名称をもつ民兵隊を組織して前線に送り込んだ。これら極右勢力は、先の大戦中にナチに加担してホロコーストを敢行した勢力の流れをくむ、いわゆるネオナチの連中である。これまで8年間に内戦で約1万5千人が殺されたとウクライナ政府自体が認めている。
 ウクライナ事態で民間人虐殺が騒がれているが、西側のメディアは東部地域住民の虐殺についてはこれまでも、いまもほとんど触れていない。
 現在のゼレンスキー大統領は2019年の選挙で、前職のポロシェンコに圧勝した。得票率73%。ポロシェンコは23%に過ぎなかった。
 ゼレンスキーは平和政策を訴えて当選した。ところが政権の座にすわるやポロシェンコと同じく内戦継続、NATO加盟を言い出した。彼は俳優出身で政治的基盤がない。ネオナチと言われる極右勢力は少数だが、米・NATOから支援や訓練まで受けて組織的に国家の保安機関に浸透し実権を握っているといわれる。平和政策をあえて実行すれば、命の保証はないのである。
 全世界の人民は「即時停戦、ウクライナに平和を!」の連帯行動をおこさなければならない。


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