研究誌 「アジア新時代と日本」

第184号 2018/10/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 日朝、今、日本の在り方が問われている

議論 「国」がキーワード

投稿 沖縄知事選で想う事

闘いの現場から ヘイト犯罪者を議会に入れるな

時評 ぼーとしてたらチコちゃんに叱られる、これは私たちの問題だ




 

編集部より

小川淳


 国土を守るために人工林の再生を
 今年は異常気象が続いている。夏の西日本集中豪雨に続き、9月に入って超大型の台風が毎週のように日本を縦断した。とりわけ21号は、私の住む神戸を直撃し、関西圏に大きな被害をもたらした。近年、台風の巨大化、発生場所の北上、勢力を保ったままの日本上陸という現象が頻発しているが、日本周辺での海水温の上昇が一因と考えられ、そうするとこれからも巨大台風は毎年のように日本を襲うことになる。一過性ではないということだ。台風に限らない。集中豪雨や地震、火山噴火など日本列島はまさに「災害列島」であり、今後、災害に強い国土をどう築いていくかが大きな課題となる。自民党などの唱える国土強靭化(コンクリート中心の防災)ではなく、たとえば国土の7割を占める森林、とりわけ放置されたままの人工林の再生などは愁眉の課題の一つだろう。
 今、その人工林再生へ、もしかしたらつながるのかも知れないと思われるのは、杉やヒノキなど丸太がここ数年、海外向けに売れ始めていることだ。2017年の木材輸出量は326億円、前年比37%の増加で、九州に限ると2012年以降約7倍と増えていて、最大の輸出国は中国(約40%)だ。中国は天然林の伐採が全面禁止となり、国内の木材需要を賄うには輸入(1億?)に頼るしかなく、地理的に近い日本、とりわけ九州産の丸太を買いあさっている。これは日本にとっても願ったり叶ったりで、日本の人工林の44%が杉で、輸出丸太の80%も杉という。これまで日本の人工林は60年をピークに価格が下落を続け、戦後直後から延々と植え続けてきた杉、ヒノキが手入れをされないまま放置されてきた。そのような荒れた山林は一度大雨が降ると一気に崩れ落ちる。国土の67%は山林であり、とりわけ山間部集落の荒れた人工林は大きな災害をもたらす危険がある。杉などが高価格で売れ始めると、山仕事が生まれ、間伐が進み、荒れた森が豊かな生態系を取り戻し、地域の活性化にも結び付く。
 安倍首相は三選を果たしたが、中身のある経済政策は何も打ち出せていない。オリンピックやリニア新幹線建設、大阪府に至ってはカジノ・リゾートや万博など高度成長期の旧態依然とした土建国家的発想のままだ。
 「限界が見えてきたアベノミクスがいよいよ機能不全に陥った時、先端産業で敗北した日本産業の悲惨な状況が一気に露呈していくだろう」(金子勝)。
 金額だけを見ると、自動車の輸出総額76兆円に比べると数百分の1に過ぎない木材だが、国土の再生と地域経済の活性化、生態系の回復など、金に換算できない価値を生む。埋もれた資源に光を当てる、そのような経済政策こそ、時代が求めているのではないか。



主張

日朝、今、日本の在り方が問われている

編集部


 日朝関係を取り巻く外的環境は大きく変化している。南北関係、朝米関係が様変わりし、東北アジアの地殻変動が音を立てている。
 だが、日朝の内的関係は旧態然だ。「蚊帳の外」に置かれたまま、日本の国としての存在も、日朝関係改善への主体的な行動も見えてこない。

■イデオロギーよりアイデンティティ
 9月朝鮮半島は、南北の首脳会談で熱く沸きかえった。両首脳が平壌の空港で抱擁し、歓迎の沿道には色とりどりの民族衣装の花が続いた。
 「戦争の危険の根源的除去」「朝鮮半島非核化再推進の動力確保」により朝鮮半島の「後戻りなしの平和」の道しるべを立てたと言われる「9月平壌共同宣言」。そして、大競技場を埋めた15万観衆を沸かせた文在寅大統領の演説と朝鮮民族の聖山、白頭山への両首脳揃っての登頂。
 大方の予想をはるかに超えた南北の融和は、世界の驚きと温かい歓迎を受けるものとなった。
 だが、わが日本においてはどうだったか。隣国の熱気とは裏腹の、それに反比例するかのような冷ややかな違和感が漂っていたのではないか。ますます息を合わせる南北両首脳の「二人三脚」を横目に、特に、政治家、識者たちの間では、「(文在寅は)一体どちらの味方なのだ」との疑惑の声が高まっているように見える。
 味方だったはずの「南」が「北」に引き寄せられていっている。あれほど敵視、敵対していた両者が和解、融和へと舵を切り、握手、抱擁までしている。「反共」のイデオロギーは一体どこに行ったのだ。と言うことだ。
 こうした考え、発想がいかに古くさいかは、今日、「イデオロギーよりアイデンティティ」が時代の基本思潮になる中、歴然としている。翁長さんが「オール沖縄」のスローガンとともに提唱したこの思想は、右と左、保守と革新の違いを超えて、「沖縄」や「朝鮮」など、アイデンティティで皆が一つになる、現代世界共通の思潮として、あのトランプすら口にしている。

■「同床異夢」で進行する東北アジア新時代
 去る9月25日、国連総会の演壇で米大統領トランプは、グローバリズムへの拒絶と愛国主義の尊重を言い、「理念よりも現実」を主張しながら、朝鮮の金正恩委員長を称揚する一方、イランを口を極めて罵った。
 なぜか?なぜトランプはあのような演説を行ったのか?それは単に「イデオロギーよりもアイデンティティ」ではない。「平和と繁栄へ」、東北アジアでの朝米の共同歩調。イスラエルやシリアをめぐり、西アジアで対立するイランと米国の関係。一方への称揚と一方への罵詈。それを言いながら、トランプは、米国の国益と各国の国益の「一致」を求めたのではないだろうか。
 実際今、トランプは、各国の国益第一(ファースト)を認めながら、それと米国ファーストとの一致を求めてきている。二国間のディール、「貿易戦争」はそのための一環だ。相手国が米国ファーストの押し付けに音を上げ、それを受け入れるしか自国の国益がないようにして行っているのだ。
 こうして見た時、トランプの国連演説の真意が見えてくる。グローバリズム覇権に代わる新しい米覇権、米国ファーストを各国ファーストにして覇権する「ファースト覇権」宣言に他ならないのではないか。
 「東北アジア新時代」実現に向けたトランプ・米国の執念は凄まじい。その真の目的は、「非核化」ならぬ、朝鮮経済の改革開放、市場化、アメリカ化にこそある。それは、「新時代」が実現してこそのことだ。だからこそ、東北アジア新時代は確実に開けて行く。米国の「ファースト覇権」の「夢」と南北朝鮮の平和と繁栄、統一への「夢」、この二つの「夢」を乗せて「同床異夢」に、「蜜月」の様相を呈しつつ、この上なく熾烈な覇権と脱覇権自主の闘いを内包、同伴し進展して行く。

■日本は「トロイの木馬」になるのか
 東北アジア新時代、「同床異夢」の闘いは、その本質に置いて、覇権と「国」の闘いだ。
 国と民族を公然と否定した究極の覇権思想、グローバリズムによる覇権が破綻した今日、米覇権の前には、各国の「ファースト」を認めて覇権する矛盾に満ちた「ファースト覇権」の道しか残されていない。史上かつてない型破りの大統領、トランプの登場は、その象徴に他ならない。
 分断70有余年、朝鮮戦争の終結も宣言できないまま、戦争と敵対の歴史を積み重ねてきた南北朝鮮、その和解と融和への願いは、かつてなく高まっている。今回の南北首脳会談への「南」での賛同が70%を超え、文在寅大統領への支持率が一気に20%高まったところに、それは端的に示されている。
 国と民族へのこの思いは、一人南北朝鮮だけのものではない。世界的に高まる自らのアイデンティティへの志向、自国第一、国と民族への熱気、そのもっとも熱い一環、それが南北朝鮮の和解と融和への思いだと言うことができる。
 覇権と「国」、このもっとも深く本質的な矛盾を内包し、「同床異夢」に、東北アジア新時代がその実現に向け、歩みを速めている。
 今日、わが安倍政権のこの問題に対するスタンスは明確だ。米覇権に追随する道しかない。日朝関係改善もそれに従うものとなるだろう。
 米「ファースト覇権」の確立にとって東北アジアにおける新事態の占める比重は大きく、そこで日本に期待される役割は小さくない。それは何よりも、経済と軍事だ。
 朝鮮経済の改革開放、市場化、アメリカ化にとって、アメリカ化された日本経済の対朝鮮浸透が持つ意味は大きい。一方、南北融和が進む中、日本を前線とする日米共同戦争体制の構築も、東北アジア、引いては世界への新しい米軍事覇権にとって切実なものとなっている。
 今、安倍政権の下進行する、経済と軍事、そして全社会的なアメリカ化構造改革が、憲法や防衛大綱、種子法や水道法の改正など幅広く、米軍基地再編などと一体に、朝鮮半島、東北アジアを睨んで加速化されているという事実が重要だと思う。それが「米国ファースト」と「日本ファースト」を一体化する米覇権新戦略の下、改元とオリンピックを連続的に迎える「新しい日本」「日米新時代」として喧伝されるのは目に見えている。
 日朝関係の修復とともに促進される日本経済の朝鮮浸透、それが朝鮮経済の改革開放、アメリカ化を目的とする米国による「トロイの木馬」の送り込みであるのはもはや公然の事実だと言えるのではないだろうか。
 東北アジアの大きな歴史的転換点にあって、日本が覇権か「国」か、どちらの立場を選択するかが切実に問われていると思う。

■日本のあり方自体が問われている
 安倍首相は、金正恩委員長からの「対話の用意あり」のメッセージを受けて、これまでの圧力一辺倒路線の転換を表明した。
 もはや、日朝首脳会談、日朝関係改善への運びに支障となるものは見当たらない。多少の遅れはあろうともそれは必ず実現されるだろう。だがここでも、「新時代」の「同床異夢」は同じことだ。
 問われてくるのは、安倍政権の対米追随路線を認めるのか、それとも認めず、日本独自の対朝鮮、東北アジア外交を選択するのかという問題だ。
 そこで何よりも求められて来るのは、時代認識の問題ではないかと思う。
 今、日本で朝鮮問題と言えば、それは、「拉致」とともに「非核化」だ。だがなぜ、米国を対象とした核とミサイル問題が日本にとって最大の朝鮮問題になるのか。最大はあくまで拉致問題だ。だがこれも、「出口戦略」が暗黙の了解になっているようだ。事実、今問題にされているのは、「何をもって朝鮮に対するか」だ。そこで誰もが言うのが「経済をテコに」、それ以外に日本の強みはないということだ。だが、それこそ「トロイの木馬」への道ではないだろうか。
 今日、東北アジア新時代にあって、日本にとって最大の朝鮮問題は、朝鮮にどう向き合うのか、すぐれて時代的な日本のあり方の問題だと思う。
 その最終的崩壊を目前にした覇権と全世界広範な民意が切実に要求する「国」が激しくぶつかり合う歴史の新時代にあって、日本は、「脱亜入欧」、アジアから抜け出、欧米覇権の側に付いた、この150年来の自らのあり方自体を深く総括する時に来ているのではないか。
 まさにあの時、判断の基準になったのが朝鮮を「悪友」と見たその評価だった。
 今、東北アジア新時代、南北朝鮮の「国」への姿勢にどう向き合うのか。日本のあり方が問われていると思う。



議論

「国」がキーワード

東屋浩


■今、国が問われている。
 「国のあり方」ではなく「社会のあり方」を重視する、例えば社会協同主義という考え方がある。立憲民主党の綱領も国のありかたではなく、社会のありかたに終始している。しかし、社会のあり方を決定づけているのは、国のあり方だ。国としての政策を明確にし、どんな国をつくるかによって、どんな社会にするかを展望することができると思う。
 とくに、今は国が問われている。
 今日、世界の趨勢が自国第一主義となっていることが、国が問われていることを端的に示していると思う。
 自国第一主義はEUのような各国の上にたつ機構に反対し、主権を守り自国民の意思で政治をおこなっていこうとする志向だ。
 周知のように2016年からイギリスEU脱退と、欧州各国での自国第一主義の台頭、アメリカトランプ大統領の当選、そしてシリアなど中近東における国の主権を守る闘いの勝利、カタルーニャ、スコットランド、台湾、香港、そして沖縄などのアイデンティティにもとづく独立志向、シールズの立憲主義を掲げての安保法制反対の闘い、2018年に入ってメキシコにおける自国ファースト政権の発足、さらにWTO、G7、TPPなどグローバリズム機構否定の動きと、自国第一主義のすう勢はとどまることを知らない。
 民族融和と統一の流れをつくった南北朝鮮も自民族、自国による運命開拓の道を拓いたといえる。朝米首脳会談により主権尊重を基礎にした平和と繁栄の東北アジア新時代がいっそう開かれていくだろう。
 自国が第一であり、国民が主権を握り国の政策を自分で決定していこうとすることは、押しとどめることのできない時代のすう勢だ。
 なぜ、国がキーワードとなっているのか?
 もともと、国と民族は人々のもっとも基本的な生活単位であり自らの運命を拓いていく運命共同体である。
 人々が自己の運命を拓くことができるかどうかは、自己の統一的な政治組織、国家をもつかどうかにかかっていると言って言い過ぎではない。国家は国民の生活と運命に責任をもつもっとも包括的な政治組織だといえる。国家をもたない民族が他国に翻弄されたり、消滅した例は数多い。
 現在、国が重要になったのは、まずグローバリズムによる国の否定が生み出した矛盾が吹き出したからだ。
 グローバリズムによる覇権は、国と民族それ自体を公然と論理的に否定するところに特徴がある。かつて立後れた国と民族を発展した国と民族が支配すべきとした植民地主義があった。その植民地主義も新興国の登場によって破綻した。その次にアメリカが掲げたのが、国と民族自体が古いものだとし、人類益、国際益をかかげ、国境を越えた人とモノ、カネの自由な移動を実現するというグローバリズムだった。
 その結果、国と民族を否定された人々は自己の共同体を失い、家族、地域、さらに学校や企業までかつてあった共同体がなくなり、すさまじい弱肉強食の競争にさらされ、国内的にも世界的にも富める者と貧しい者の格差が極端に拡大しってしまった。アフガン、イラクなどは宣戦布告もなしに国境を越えて政権を倒されていった。
 グリーバリズムで各国の主権を否定した典型として、EUによる欧州各国にたいする統制がある。EUは一定の基準をもって各国にそれを押しつけた。例えばいのししの被害を蒙っても動物保護の観点から捕獲できないで被害分を保証金として受け取るということになる。いのししを捕獲するかどうかをなぜ自国で決定できないのか。こうしたことが生活上、無数に出て、人々の不満が爆発していった。
 グローバリズムが各国国民の主権擁護の闘いとアメリカの覇権力の弱化によって破綻していくのは当然のことだが、さらにグローバリズムの本拠地である英米内部において自国第一主義が興った。覇権は他国・他民族を否定、蹂躙するだけでなく、自国の国家、民族まで否定する。その典型がアメリカ合衆国だ。
 各州が教育福祉などを責任もち、連邦政府は軍事と外交をおこなう。外交は世界各国にたいする支配を内政かのように処理するので国務省が管轄している。国防省は国を守るのではなく、世界支配を実現するアジア太平洋軍など各地域軍を派遣する覇権軍事を統括している。経済の要である中央銀行にあたるFRB連邦準備銀行(連邦準備制度理事会の下にある)は国立でない。アメリカ連邦政府は世界支配のための覇権の機構であり、国民の生活と運命に責任負う国家ではない。
 それゆえ、アメリカ国内で世界各地への派兵に反対し、自国産業を興すこと、移民を押えることなどのアメリカファーストのうねりが興ったのだ。
 内外における自国第一主義の潮流によって、もはやアメリカはグローバリズムによる覇権ができなくなった。
 自国のことは自国で決定するというのは、当然の要求である。グローバリズムの弊害と矛盾を克服する道は、まず国を国として確立し、国の主権を守り自国民の意思と要求にもとづき国の政治をおこなうことだといえる。
 現在、国がキーワードとなるのは、とりわけパクス・アメリカーナが崩壊し、アメリカの覇権に頼れなくなった各国が国として自らを確立するしかなくなったからだと言える。
 かつて、アメリカの強大な力を背景にしてグローバリズムによる覇権がありえた。
 しかし、アメリカの覇権力が著しく弱化し、世界の盟主としての地位を放棄したかに見えるもとで、日本や欧州各国はアメリカの力に頼ることはできなくなっている。アメリカの覇権のもとにいた日本などの国が、国として自らを確立せざるをえなくなったところに、現在、国がキーワードになっている根拠がある。

■トランプ「アメリカファースト」は新時代の要求に応えるように見せかけながら、実は「国」を否定するもの
 9月25日国連総会演説でトランプ大統領は再びアメリカファーストを強調した。朝鮮との首脳会談と米韓軍事演習の中止、イラン核合意破棄、パリ協定からの脱退、エレサレムへの大使館移転、EU、メキシコ、中国にたいする関税強化、国境の壁構築、移民制限などなど。これまでの世界の盟主としての地位を捨てたかのようだ。
 しかし、アメリカはけっして覇権をやめたのではない。グローバリズムによる世界支配が破綻し、アメリカの覇権力自体が弱化したので、新たな覇権の道を選んだだけだ。
 新たな「ファースト覇権」の特徴は、アメリカの国益を「ディール(取引)」と称して他国におしつけ、相手国を屈服させるものであり、露骨な他国否定だといえる。それを支えるのが世界一の軍事力、先端技術、金融と情報の掌握だ。
 しかし、覇権そのものに反対し主権を守る戦いはさらに前進し、アメリカが頼る軍事力や技術、情報もいつかは各国に追いつかれるだろう。
 こうして見る時、トランプ「アメリカファースト」は、覇権の最後のあがきと言えるのではないだろうか。

■国民が求める「国」を実現するために
 日本は戦後、アメリカに従うことにより今日まで覇権国家を続けてきた。
 安倍自民党政権の政策はすべて覇権のための政策である。国を守る防衛でなく覇権のための防衛、外交は自主独立国家としての外交ではなくアメリカの覇権に従う外交、経済は国の経済ではなくアメリカに組み入れられる経済、教育・社会福祉は国家として国民に責任おう教育・社会福祉ではなく、自助による切り捨ての教育・社会福祉となっている。どの分野においても国民の生活と運命に責任を負う国家としての政策ではない。
 国としての政策が行われていないから、人口減と地方消滅、格差拡大、長時間労働と児童虐待などが深刻化し、モリカケのような不祥事が繰り返される。したがって、覇権国家ではなく、国民の生活と運命に責任を負う真の国こそが、今、国民が求めているものではないだろうか。
 これまで反安倍勢力が安倍自民党政権に十分に対抗できないのは、国としての政策を打ち出せないでいるからだったと思う。
 国民の生活と運命に責任もつ国家としてのビジョンと政策を打ち立て、国民の力を総結集して新生日本国をめざす闘いを繰り広げることが切実に求められている。


 
投稿

沖縄県知事選挙で想う事

釜日労・三浦俊一


 確か故翁長県知事の誕生日は10月2日だったと記憶している。享年68歳、政治家としては最も知性・経験・未来を読み説く力で現実政治を変革しうる成熟した歳とも言える。 その遺志を引き継いで玉城デニ―氏が当選した。闘いの継承を立派に果たされた翁長氏に対して深い感謝の気持ちが湧きあがってきた。
 当選確実の速報に喜びながら、闘いの継承を立派に果たされた翁長氏に対して深い感謝の気持ちが湧き上がってきた。その信念「勝つまで諦めない」が現実のものになった。
 デニ―氏の勝利の分析記事は既に多く公表されているので、重なる事は書く必要もないだろう。対立候補であった佐喜真氏の敗因はどうだろう。そこから見て行く事にする。

■佐喜真氏の敗因
 佐喜真氏の敗因を簡潔に表現すれば沖縄の民意軽視と蔑視といえる。しかし、この「軽視・蔑視」は同氏のアイデンティティーはあまり関係ない。安倍政治の対米従属イデオロギーがその根幹にある。皮肉なことに「総力戦」と称して、菅官房長官、小泉進次郎自民党筆頭副幹事長、二階幹事長、岸田政調会長、竹下総務会長、塩屋選対委員長更に小池都知事 松井大阪府知事、山口公明党代表まで沖縄入りさせた。「来なかったのは全国機動隊と自衛隊だけ」と揶揄される始末だった。基地再編一括交付金3100億円もちらつかせた。ここに至って知事選挙は其の様相を変えてしまった。安倍首相より表立って厳しい姿勢を沖縄にとり続けていた菅官房長官が現地入りし、進次郎と一緒に演説すれば、積年の沖縄差別の更なる固定化と誰でもが想う。これが失敗だった。辺野古のへの字も言わず、携帯電話の値下げの話などを延々と喋り、「帰れ!」と怒号まで飛び交う始末だった。琉球処分以降の歴史に堆積されたヤマトへの不信と恨み、平和への希求は戦後の反基地闘争で培われていた力を辺野古新基地建設阻止に凝縮させているのだ。
 負けたのは佐喜真ではない、アベ政治が負けたのだ。余談だが、知事選の最終番で自民党選対が出した指示は「沖縄戦緊急事態」「全国から猛攻撃を」だった。もはや言葉を失う。

■朝鮮半島情勢と沖縄知事選
 今回の知事選に於いてデニ―氏勝利の要因の中にアジアの平和・東北アジアの緊張緩和の動きがある。
 この事は翁長氏の発言が如実に物語っている。6月23日の沖縄全戦没者追悼式での平和宣言で、同氏は米朝首脳会談・南北首脳会談の実現を踏まえて、東アジアの安全保障環境が大きな変化をもたらしているとの認識に立っていた。「平和を求める大きな流れの中にあっても20年以上も前に合意した辺野古への移設が普天間飛行場問題の唯一の解決と言えるのでしょか。日米両政府は現行計画を見直すべきではないでしょか、民意を顧みず工事が進められている辺野古新基地建設は、沖縄の基地負担軽減に逆行しているばかりではなく、アジアの緊張緩和の流れにも逆行していると言わざるをえない」。この氏の発言は平和を希求する日本民衆はもとより沖縄の人々に大きな勇気を与えた。「辺野古新基地建設阻止の闘い」は、沖縄の平和・日本の平和、ひいてはアジアの平和へと繋がっていると言う誇りに満ちた確信へとなっていた。
 7月27日、遂に翁長氏は「辺野古埋め立て承認取り消し」を明確にした。その際の記者会見で「今の日本のアメリカに対しての従属は、日本国憲法の上に日米地位協定があって、国会の上に日米合同委員会がある、この二つの情況の中で日本はアメリカに対してなにも言えない情況がある」と言われた。この12日後に翁長氏は亡くなった。
 恐らくアジアを俯瞰し、その平和と南北朝鮮の自主的・平和的統一への熱い想いを胸にし、自からの故郷・沖縄が、辺野古新基地が、その最大の阻害物になる事を危惧していたのだろう。その中から、より深く日米安保の本質を掴み「日本国憲法の上にある」との認識へと至ったのだと思う。戦後政治における理不尽な沖縄差別の仕打ちの根幹は日米安保だ!
 トランプの自国第一の覇権主義とそれに従属するアベ政治との闘い。今回の知事選挙の最大の争点はここにあったといえる。沖縄の自己決定権獲得への闘いが日本の自己決定権自主日本に連動する事を強く望みたい。



闘いの現場から

ヘイト犯罪者を議会へ入れるな

平 和好


■川西市の中曽千鶴子さんをご存知ですか?
 今月14日から始まり、21日投開票の川西市議選に中曽千鶴子さんと言う妙齢の女性が出馬する。何と3回目の挑戦らしい。そして「女傑」なのだ。日の丸行進なる、73年前なら時の権力が大絶賛してくれたに違いない、しかし今では奇異の眼で見られてしまうデモ行進に麗しい着物で参加したり、大阪の難波など大繁華街で「韓国人は!」と攻撃演説、「辻元清美を射殺しろ」と事務所前でシュプレヒコールもした。徳島県の教職員組合事務所を襲って女性事務員を脅しあげ、110番しようとした事務員さんの手を押さえたり耳元で大声やハンドマイクで怒鳴り散らした在特会の連中の共犯として現場で活躍したのである。この事件では有罪と損害賠償の判決が確定した。そういう勇猛な面もありながら「キリスト教会のオルガニスト」を自称する一方、朝鮮学校への補助金を切るよう、自治体へ圧力をかけて、生徒たちをさらに迫害して泣かそうとする情熱は日本で10本の指に入る極右・ヘイト勢力の1人だ。朝鮮総連本部に今年2月、銃弾を撃ち込んだ事件の犯人として逮捕された右翼と親しいカンケイもある。

■拉致問題を自身の選挙に政治利用する根性は日本第一
 さらに地元高校の卒業生が行方不明なのは朝鮮が拉致したのに違いないと(物証などは無いが、そう決めているようだ)救出運動を川西能勢口というメインターミナルでコツコツ行い、そのノボリに自分の氏名を刷り込み、自身の市議選に政治利用した。そんな事をする「拉致被害者を救う会」会員など他にいないから、救う会や家族会が聞いたら怒るのではないだろうか?ルックスでだまされそうになるが、中身はヘイト満載の中曽千鶴子氏は議会にもったいない、入れてはいけないという事で市民有志が落選運動に立ち上がっている。その中には「中曽さんが全てのヘイト犯罪の前歴を悔い改めるなら選挙応援してもいい」などと言う優しい人もいるようだ。
 ※公選法では「落選運動」を禁止していない。また市議候補を目指す人は公人であるので、その経歴などについてありのままに市民に知らせるのは公益にかなうから、名誉棄損なども成立しない。

■ヘイト勢力の地方議会入り込み策動が続々
 選挙が始まる10月14日までに反省してくれたら中曽さんの応援に駆けつけてもいいのだが、反省しないみたいだからそんなヘイトな人物が21日、3回目の敗戦になるよう川西市民の良識を祈りたい。なお、これを皮切りに来年4月の自治体選挙で枚方市議選に川東大了、八尾市議選に村上利一、奈良市議選に松村和則、京都市議選に西山傑の各氏が「日本第一党」から出馬を図っている。党首は在特会元会長の桜井誠氏だ。身の回りの議会にこんなヘイト犯罪集団が入ってしまわないよう気を付けて、公選法で許されている落選運動に立ち上がろう。

           


時評

ボーとしてたらチコちゃんに叱られる、これは私たちの問題だ

金子恵美子


 去る9月22日(日)、「労働組合潰しの大弾圧抗議9・22緊急集会」に参加した。
 労働組合への弾圧に反対する集会だから殆どは男の人だろうなとか、いったいどれくらいの人が集まるのだろうかなどなど考えながら会場に着いた私の眼に映ったのは、女性たちの多さと壮年世代の多さだった。団塊世代の多く目立ついつもの集会とは様相がまるで違っていた。また、時間がたつにつれ参加者がどんどん増え、私もそうであったが会場は椅子に座れない人で溢れ、立錐の余地もないほどであった。壇上で話された人が「このホールってこんなに狭かったかな」と言うほどにびっしり人で埋まっていた。
 主催者側も、呼び掛けてからの期間がたったの二週間の、まさに「緊急集会」だったので、200人集まれば良しと考えていたそうだが、集まった人数は350人。この中には弾圧を受け逮捕、勾留されている人達の家族も多くおられたようだ。女性たちが多く見られたのはそのせいかもしれない。家族ごとの闘いというのも、労働者の闘いならではの光景かも知れない。何だろう、懐かしいような、新鮮な感動を覚えた。また、どのような人々が参加したのかは分からないが、たった二週間で、これだけの人が、連帯のため、応援、激励のために駆け付けたことに対しても、すごいなと率直に感じ、勇気づけられた。

■空前の組合つぶし、いま何がおこっているのか
 テレビや新聞ではほぼ報道されず、ごく一部のメディアのみが伝えている全日建運輸連帯労組関西生コン支部への大弾圧。猛暑が日本を覆っていたこの7,8,9月の三カ月の間に、関西生コン支部委員長の武建一氏をはじめ副委員長、役員・組合員など19名と滋賀県の湖東生コン共同組合の理事長及び理事7名が「強要未遂・威力業務妨害容疑」で次々と逮捕、大掛かりな家宅捜査が行われたのだ。
 「強要・威力業務妨害」とされた中身は何か。近畿一円の生コン業者に対して労使間の約束を守って輸送運賃の引き上げを速やかに実施すること、また大阪広域生コン共同組合の組織運営の民主化をストライキ闘争で要求したというものである。憲法28条には労働者の団結権、団交権、団体行動権が認められている。通常の組合運動が「強要」「威力業務妨害」とされたのだ。労働者から言葉と手足をもぎ取るに等しく、「憲法無視」「無法」もいいところだ。
 壇上にあがった永島弁護士が、今回の弾圧の特徴について@委員長・副委員長・役員、理事など幹部を根こそぎにしている。異常である。A組織犯罪対策課が動いた。これまでは警備公安が担当していた。これも異常。Bレイシストと一体になってやっている。家宅捜査の時に早朝であるにも関わらず在特会関係者とマスコミが警察と一緒に現場に来ていたCマスコミが加担。レイシスト、マスコミが関西生コン支部に対して「反社会的勢力」とのレッテル貼りをし、孤立させる。全てが連動して行われている。弾圧の質が違ってきている。独自の目的をもって刑事弾圧が始まったと言える。その目的とは何か。一言で言ったら権力にとって目障りな存在は潰せということ。よってこの闘いは関西生コンだけの闘いではない、すべての労働組合、市民運動に関わる問題であると分析される。
 この後、壇上に上がった多くの発言者の共通の訴えも、これは関西生コンだけの問題ではない、全ての闘う者への見せしめであり、攻撃である。絶対に後には引けない。共に闘う。関西生コンから受けた支援には支援で返す。などなど熱い決意と連帯の発言が続いた。
 関西生コン支部はこれまで大企業の収奪と闘い、沖縄基地撤去、原発再稼働阻止、戦争法・共謀罪阻止、憲法改悪反対を求め安倍政権と真正面から闘ってきた。また、伝統的に一貫して南北朝鮮との友好・連帯運動を担ってきた。
 今回の質の違う大弾圧は、天皇の代かわり、オリンピック開催などで「新しい日本」を演出し、これに見合う「新しい憲法を」と改憲を狙い、東北アジアの新しい幕開けを歓迎せず、これに逆行する時代錯誤安倍政権の暴走と妄動のなせる業と言わざるを得ない。
 私たち「アジア新時代研究会」は、東北アジア新時代にあって、その頼もしい推進者であり、労働者・市民の権利の徹底した擁護者、どんな弾圧にも屈しない不屈の隊伍である関西生コン支部に連帯し、微力ながら、日本国民のためにある日本、アジアの友として生きる日本を目指し共に闘っていきたいと思う。


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