研究誌 「アジア新時代と日本」

第183号 2018/9/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 平和と繁栄の東北アジア新時代、アジアと共に

議論 日本経済の抜本的改革を提議する

時評 自然災害モードに入った日本

読者から ニュージーランド滞在記(2)

寄稿―水資源は未来を拓く

第10回勉強会案内




 

編集部より

小川淳


 総裁選、新保守対新自由主義の「闘い」
 一つの党の政権が長く続くと権力は腐敗すると言われる。自民党は戦後政治において与党であり続けてきたが、国民の一定の支持を得たのは総裁選を通じて疑似的な「権力の交代」がなされてきたからだ。今回、安倍首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなった。
 反安倍の立場から言えば、安保法制を強行採決し集団的自衛権の行使に踏み切り、国民不在のまま改憲に突き進む安倍首相に、専守防衛論の流れを汲むいわば自民党内の保守本流の潮流がもしかしたら生まれるかもしれないと、若干ではあるが今回の総裁選にそう期待したのは事実だ。しかし見事に裏切られてしまった。憲法を巡っても、自衛隊違憲論を封じ込めるため、9条1項と2項はそのままに第3項で自衛隊明記を主張する安倍首相と、平成24年の自民党改正案に忠実に2項を削減の上、国軍の創設とシビリアンコントロールを明記すべきとする石破氏と、「改憲」そのものでは一致している。「憲法改正」よりもまずは「日米地位協定」の見直しをのべるなど「違い」をだそうとした石破氏 だが、これでは対決点になりようがない。
 経済問題では、量的緩和、成長戦略などアベノミクスは日本経済に何をもたらしたのか。企業収益の増加や株価の上昇など大企業の恩恵は明らかな一方で、個人消費の低迷、デフレからの脱却、社会保障費の削減、勤労者の賃金の減少など、国民生活は大きな打撃を受けている。アベノミクスの失敗こそ明らかで、そこからの転換と、少子化、人口減など、日本の現状に立脚した長期的で骨太の経済政策こそ急務の課題なのだが、具体的な政策論争がなされることはなかった。
 石破氏はかつて「秘密保護法」に反対する国会前のデモに対し「テロと同じ」と発言し、東電からの多額の献金を受け、安倍首相のバックグランドである「日本会議」の会員でもある。とりわけ地方への外資導入にも熱心な新自由主義者だ。今回の総裁選、言い換えるなら、安倍の新保守主義対石破の新自由主義の闘いであり、この総裁選に国民の関心が盛り上がらないのはある意味、当然のことだった。
 安倍首相の三選が確実な情勢で、私たちは戦後最悪の安倍政権にあと3年は付き合わされることになる。「アベノミクスがあと3年続けば、日本の産業衰退が一気に加速する」(金子勝)。アベノミクスによる異次元緩和は、原発などゾンビ化した旧産業を生き残らせるだけに機能している。もし期待するとすれば自民党内からも従米保守政治と一線を画する真の自主派、アジア派の登場だ。



主張

平和と繁栄の東北アジア新時代、アジアと共に

編集部


 この間、朝米関係が膠着状態にあり、元の敵対関係に戻るのではないかという見方もあった。しかし、第2回朝米会談への動き、南北首脳会談の開催、さらにプーチン大統領の日ロ平和条約の提案など、6月12日史上初めての朝米会談で開かれた平和と繁栄の東北アジアの新時代は、今、動いている。
 このなかで、日本がこれまでの朝鮮敵視政策を捨て、日朝関係を改善し、日朝国交正常化にすすんでいくことは、歴史の流れだといえる。
 このとき、「平和と繁栄の新時代」は、各国の主権保証と自国経済、社会主義建設に寄与する経済協力強化という意味なのか、アメリカが企図している「改革開放と資本主義化」による「平和と繁栄」という意味なのかでまったく異なってくる。
 いわば、相異なる目的をもって共に「平和と繁栄の新時代」と言っている。
 日朝関係の正常化に際し、日本がただアメリカに言われ朝鮮の「改革開放」「資本主義化」をめざすアメリカの手先として日朝関係を築いていこうとするのか、これまでの侵略と敵視の歴史を反省し真の友として新しい日朝関係を拓いていくのかが異なるのと同様だ。
 歴史的な平和と繁栄の東北アジア新時代を迎えることを契機に、朝鮮をはじめとするアジア諸国の真の友として生きていくことこそが、新しい日本を創造し、アジアと世界に寄与していく道ではないだろうか。

■事態は今、動いている
 国連軍(在韓米軍)を通じて送った「二度目の朝米会談をおこなおう」という金正恩委員長の親書にたいし、「温かい書簡だ」とし、「金正恩委員長がトランプ米大統領との2回目の首脳会談を要請し、米外交当局者が既に会談の設定に向けて取り組んでいる」と、サンダース報道官が9月10日に明らかにした。「すでに(朝鮮側と)調整をしている段階にある」という。
 第2回朝米首脳会談の前には、18日から3日間、南北首脳会談が平壌でおこなわれる。200名の訪朝団だ。
 ここで、戦争終結宣言と非核化の問題とともに、鉄道連結工事の開始、道路工事、空路設定などの交流活発化の措置、すでに行われているスポーツ交流、芸術団交流、離散家族面会などなど交流と経済協力において大きな進展があるということは疑いない。
 それは南北の力で戦争終結宣言の推進、ひいては平和協定を実現させていこうとするものであり、南北の融和と協力を促進させ民族統一におおきな前進をもたらそうとするものだといえる。
 南北首脳会談が、第2回朝米首脳会談に大きな弾みをつけることになると予想される。朝鮮半島の非核化の行程表と戦争終結宣言において進展があると考えられる。
 これまで、朝鮮は核実験場を破壊し、ミサイル発射台の解体をすすめ、アメリカは米韓合同軍事演習を中止した。共同声明の一つの項目であった米兵遺骨の最初の返還が7月28日に行われた。
 しかし、その後、朝鮮側はアメリカに戦争終結宣言を要求し、アメリカ側は朝鮮側に非核化の対象となる核兵器などのリストと非核化行程表の提出を求め駆け引きが続いていたといわれてきた。
 8月24日トランプ大統領はポンペオ国務長官の訪朝を中止させ、米韓軍事演習の再開をちらつかせた。これにたいし朝鮮は、労働党新聞論評でアメリカの姿勢を非難した。
 この膠着状態を見て、中国牽制のため関税強化に力を入れ朝鮮にたいしては核・ミサイル凍結の現状維持をおこなうためだとか、トランプ大統領の金正恩委員長にたいする信頼は依然としてある一方、米韓軍事演習をちらつかせるなど、朝米関係が「先行き不明」だという見方が大半だった。そこには朝米合意が後戻りするのではないかという観測も一部であった。
 しかし、その後9月5日金委員長が韓国特使訪朝団にたいし、「非核をかならずやる。トランプ大統領の一期任期中におこなう」と述べたことにたいし、トランプ大統領は「ありがとう」と答えた。
 そして、9月9日朝鮮民主主義人民共和国創建70周年の軍事パレードにICBMを登場させなかったことにたいしても、「金委員長ありがとう」とのメッセージを送った。
 朝米関係が進展している一方、9月12日プーチン大統領が東方経済フォーラムの会議で安倍首相に前提条件なしの日ロ平和条約を提案した。これまで北方領土問題で平和条約が結ばれてこなかった経緯を踏まえての発言だ。前提条件なしの平和条約締結は、平和条約で信頼にもとづく協力関係を築き、そのなかで懸案の領土問題の解決をはかっていくというものだ。
 日ロ平和条約の締結は、もともと東北アジア共同体形成において不可欠な問題と言われてき、この提案は平和と繁栄の東北アジア新時代の流れに合致し、その流れを加速化させるものだといえる。
 事態は停滞し先行き不明だったのではなく、「平和と繁栄の新時代」という目標に向かって大きく動いているのだ。

■経済協力をめぐり覇権を捨てアジアと共に
 しかし、平和と繁栄の東北アジア新時代は、一方で主権擁護と新たな覇権との闘いの始まりでもある。
 トランプ大統領が対朝鮮交渉責任者をフォード自動車会社の副社長を任命したことにも表れているように、「朝鮮は金のなる木だ」と言いながらアメリカの意図はこれまでの核戦争恫喝の力の政策を横におき、投資をテコに「改革開放と資本主義化」をはかるということにある。投資をテコにした「改革開放と資本主義化」は、表面的に「友好と協力」を掲げ、実際は朝鮮を経済的に呑み込もうとする新たな覇権策動だといえる。
 これに対し朝鮮は主権を堅持し、自強力を強化し自力経済を建設していくことを基本にし、あくまで社会主義建設をおこなおうとしている。それゆえ、新たな「改革開放と資本主義化」の覇権策動は破綻を免れることはできない。
 この覇権策動に日本が利用されようとしている。トランプ大統領が「金は日本がだすべきだ」と述べたように、日本が賠償金支払いや投資をしなければならない。
 すでに、6月朝米会談直前に訪米した安倍首相はトランプ大統領との会談後の記者会見で、「日朝首脳会談をおこない、日朝国交正常化に取り組む」ということを表明せざるをえなかった。同じ席でトランプ大統領は「金を出すのは日本だ」と述べた。
 その後、7月に日朝間で高官の接触がおこなわれただけだ。朝鮮側は、まず植民地支配の謝罪と賠償、国交正常化だという立場だ。これにたいし、拉致問題解決を前面にかかげれば日朝関係を改善できないのは明らかなことだ。
 いずれにせよ朝米関係が進展すればするほど、日本政府は日朝国交正常化に取り組まなければならなくなる。
 日朝関係を改善するに際し、朝鮮に対してどういう姿勢でいくかが重要だと思う。
 日本がアメリカの指示通りに、アメリカが狙う「改革開放と資本主義化」という新たな覇権策動の手先となって朝鮮に対していくのか、それとも、アジアの一員として相手国の主権を尊重して経済協力をおこない、アジア全体の平和と繁栄をはかっていくのかというので大きく異なってくる。
 前者の場合、朝鮮には通用しない。それでもそれに固執すれば、アメリカに利用され、朝鮮から反発を受けるだけだ。後者の場合、相手国の自立的な経済発展に寄与し、相互信頼を深めるようになる。
 平和と繁栄の東北アジア新時代はさらに東北アジア共同体向かって成熟していっている。このとき、日本はこれまでの脱亜入欧、従属覇権の立場から脱却し、日本の自主的立場、そこからアジアの真の友人として「アジアと共に」の立場にたつべきではないだろうか。
 自分の精神で生きアジアの友人として歩むとき、日本にとって平和と繁栄をともに享受することができ、アメリカとの関係も正常化していくことができると思う。また、東北アジア、アジア全体の平和と繁栄に大きく寄与することができるだろう。
 そのために、民族自主派、アジア派の旗を明確にし、力を強化し、その主導のもとで日朝関係の改善に取り組み、東北アジア新時代の流れに合流していくことだと思う。



議論

日本経済の抜本的改革を提議する

K・T


 今問われているのは、アベノミクスの批判一般ではない。それに代わる新しい日本経済の抜本的改革案だ。

■外資主導の日本経済のアメリカ化
 アベノミクスの目的についてはいろいろ言われている。その本当の狙いが日本を「米国とともに戦争できる国」にすることだと見る見方など、的を射ていると思う。だが一方、アベノミクスそれ自体に経済的狙いがあるのも事実だ。
 安倍首相が自らの経済政策の目的について言う時、それは周知のように、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にするというものだ。
 事実、量的緩和、財政出動、成長戦略、アベノミクス三つの矢は、いずれも、企業、それも大企業のためのものだ。利益は大企業、富裕層から低所得層へとしたたり落ちて行くという「トリクルダウン理論」がこの政策正当化のための根拠にされていること自体、その何よりの証拠だ。
 この間、アベノミクスによって大企業が受けた恩恵は大変なものだ。その収益と内部留保の倍増、それにともなう高級マンションなど富裕層向け市場の活況などにそれは現れている。他方顕著なのは、個人消費の停滞、勤労者の収益減少など、絶対多数「99%」の貧困化だ。
 実際、量的緩和に基づく円安と財政出動、法人税大幅引き下げ、雇用、農業、医療など各種構造改革、そして自助、共助を増やし、公助を減らす社会保障改革、等々が経済活動と国民生活にもたらした影響はかつてなく甚大だ。
 その上で、この「改革」には黙過できない特徴がある。それは「アメリカ化」だ。
 「働き方改革」での「高プロ制」導入、種子の開発、供給に民間の参入を認める「主要農作物種子法」廃止、水道事業など各種事業の運営権を民間に売却する「コンセッション方式」導入、等々、この間の事業方式のアメリカ化とそこへの米系外資の参入は、すでに外資主導になっている日本経済のアメリカ化をさらに一段と促進するものだ。
 「世界で一番外資が活動しやすい国」。まさに「アベノミクスの正体見たり」ではないだろうか。

■「トロイの木馬」
 今日、戦争と敵対から平和と友好、繁栄へ、東北アジア新時代の到来が、南北朝鮮の平和と繁栄、統一への希求、そしてグローバリズムからファーストへ、覇権のあり方転換への米国の企図をともに中にはらみながら、その「同床異夢」のせめぎ合いを通して実現の運びになってきている。
 この歴史の新時代にあって、米国が「平和」とともに前面に押し出してきているのが「繁栄」だ。ポンペオ米国務長官は、朝米関係改善の証として、米国企業の朝鮮経済への参入を大きな「プレゼント」であるかのように強調した。
 だが、それは「プレゼント」ではない。「トロイの木馬」に他ならない。朝鮮経済の繁栄ならぬ改革開放と資本主義化、アメリカ化。そこにこそ「米国企業参入」の狙いがあると思う。
 トランプは、その大統領就任演説で、各国の国益第一(ファースト)を認めると言った。ただし、その国の国益が米国の国益と合致するという限りでだ。「各国経済のアメリカ化」は、この「詭弁」成立のための大きな要件になっている。
 世界中の国と国益を否定したグローバリズム覇権から各国の「ファースト」を肯定しながら、それを「アメリカファースト」と一体化させるファースト覇権へ。トランプ米国は、この覇権転換劇の舞台を東北アジア、それも朝鮮に設定した。朝鮮経済のアメリカ化は、まさに新覇権の成否を問う大きな鍵となるものだ。
 ところで、その朝鮮経済のアメリカ化促進のため、アメリカ化された日本経済を国ごと「トロイの木馬」として朝鮮へ送り込むのは、弱体化し自分はカネを出したくない米国にとって切実だ。
 トランプが日朝関係の改善、それに向けた拉致問題の解決に少なからぬ関心を寄せているのは、そのために他ならないのではないか。

■自立、均衡、革新の日本経済の構築を!
 朝米の「同床異夢」のせめぎ合いに動員される利用物、アメリカ化された日本経済は、日本と日本国民にとってはいかなる意味を持つか。
 それを知るために、何よりもまず問われるのは、アベノミクス自体の検証だ。この5年間、アベノミクスが生み出したのは何だったか。それは、累積された大企業の内部留保と日銀が購買した国債の山、そして何より深刻な日本経済の極度の不均衡だ。大企業、大都市へ、富の一極集中と広がる一方の格差と貧困。打ち続く技術革新力の低落。そして急速な少子化、人口減と人手不足。等々。個人消費、設備投資の低迷など、日本経済長期停滞の要因に満ちている。
 問題の根因は明確だ。それは、アベノミクスが経済政策としての体をなしていないからだ。
 もともと経済政策の目的は、自分の国と国民のため、自国の経済をどうつくるかに置かれなければならない。なぜなら、経済の基本単位は、どこまでも人々の生活単位である国であり、国を基本単位に世界が連結し協同しながら、その下で、ヒト、モノ、カネが国を基本単位に地域や世界全体を回っている生き物、それが経済だからだ。
 アベノミクスは、この基本中の基本に基づいていない。その目的が日本を「世界で一番外資が活動しやすい国」にすることに置かれているところ自体にそれは明瞭に現れている。
 経済の基本単位を国に置かず、その目的を自分の国と国民のため、自国経済をどう築くかに置いていないため、アベノミクスには日本経済を築く上でもっとも重要な原則が欠けている。
 一つは自立の原則だ。「自国の経済は自分の頭、自分の力で」。この原則がなければ、国の経済を築くという意思自体が生まれてこない。米国と米系外資に振り回されていること、ここにこそアベノミクスのもっとも根本的な問題点がある。
 もう一つは、均衡の原則だ。先述したように、ヒト、モノ、カネが自律的に回転する生き物である経済にとって、均衡は生命だ。富が遍く行き渡り、消費と生産がうまくかみ合って、すべての経済要素が円滑に連携して回るようにすることにこそ、最大の神経、力が注がれなければならない。拡大する格差と不均衡が野放しにされ、経済が回らなくなっていること、ここにもう一つの致命的問題点がある。
 最後にもう一つ、革新の原則だ。経済を活性化させ、発展させるためには、科学技術の革新が不可欠だ。次世代の基幹産業を興すような技術、さまざまな産業分野にまで波及していく力をもつ「コア技術」を生み出すため、「効率」を犠牲にしてでも取り組む革新第一の原則が問われている。
 これらもっとも基本的な原則が欠落したアベノミクスを果たして経済政策だと呼べるだろうか。

■国民主導、東北アジア協同で!
 国の経済を築く上でもっとも重要な問題の一つは、誰の主導で築くのかという問題だ。
 アベノミクスにおいてそれは、米系外資に委ねられた。しかし、いくら外資にカネがあり、世界的なネット網やノウハウがあるからと言って、それは完全に誤りだ。日本経済の今日の惨状がそれを何より雄弁に物語っている。
 では、誰が主導すべきなのか。日本の大企業、財界か?それは無理というものだ。これまでアベノミクスに加担し、追随するだけだった彼らにそんな大役が務まるはずがない。では、中小企業か?それもまた、別の意味で無理なのではないか。
 ならば一体誰なのか。それは、日本経済を自らの生活の切実な要求とする日本国民以外にないと思う。国の経済の主体は国民だ。企業ではない。企業も、人間として、国民として、その一員になってこそ、経済の主体になることができる。
 国民主導で地域や職場末端から国民皆の意思を発揚、集大成して国の経済政策を立て、それを企業と地域、中央と地方一体となって執行していく、一つの国民的運動として経済を動かし発展させる。この言葉の真の意味での民主主義によってのみ、経済の抜本的改革もあり得ると思う。
 今日、日本経済の抜本的改革案を考察する上でもう一つ重要だと思うのは、東北アジア新時代という時代認識に立つことではないかと思う。
 もはや時代は、米覇権の時代ではない。トランプの「アメリカファースト」が全世界の反発、排撃を受けているのはその何よりの現れだ。
 この覇権崩壊の時代、「同床異夢」で進む東北アジア新時代にあって、米「ファースト」新覇権を支えるため、南北朝鮮、東北アジアに敵対するのは論外だ。日本は、「新時代」当事国として、当然、東北アジア協同の道に進むべきだ。そこにこそ、日本経済抜本的改革の道があると思う。



時評

自然災害モードに入った日本

平 和好


■台風・大雨・地震
 この8月9月と日本は次々自然災害に見舞われた。これまで考えられなかったような被害も多い。台風による風と雨、休火山噴火、地震、水害で列島が大揺れになった。関西国際空港が一挙に休業に追い込まれるなど、考えもしなかった事態が起こった。北海道の地震では泊原発の冷却電源が失われたがディーゼル発電機が作動し、核燃料の温度上昇がかろうじて「執行猶予」となった。しかし、本電源が危うい状態である事はずっと継続中だ。
 アブナイと言う予測を無視した結果に過ぎない。
 この「危機」は仕方のない「予測不可能」事態ではない。自然災害は大昔から日本を襲い続けて来たし、多くの犠牲者を出し続けて来た。近代になってからも一緒である。ところが政府と自治体が「減災」に巨額の税金を使う事は無かった。「ミサイルが発射されたので、頭を抱えてうずくまりましょう」などという愚かな「訓練」に巨額の国費と自治体財政が使われたのに。
 関空は「3メートル」の津波・高潮を想定しているという。冗談としかいえないではないか? 南海トラフ大地震では5〜10mの津波すら予想されている。泊原発のある泊村は震度がたった2だったという。それなのに地震直後、冷却設備が停電で止まってしまった。使用済み核燃料が冷やせなくなれば爆発するし、原子炉の様な強固な入れ物ではないので、一層外へ強力な放射能が放出されてしまうところであった。これも自然な事ではなく、心ある原子力専門家が「こうなるから危ないですよ」と言うのを無視した電力会社・政府・自治体・司法の責任である。

■自衛隊の給水車・入浴車
 自宅を追われて投げ出された避難者たちは突然、衣食住もままならなくなった。給水や入浴で自衛隊の車両が活躍したのは事実だ。気の早い極右達が「自衛隊さんありがとう」とはしゃいでいるが、保有台数は数台でしかないし、本来の「戦闘任務」に常時備えておく必要があるから、動けるのは一部でしかなかったはずだ。また自衛隊の本務ではない。従って給水車や調理車や入浴車は国と自治体が常に多数保有・準備しておくべきものであるが、そんな態勢に全く無い。ロシアへの当てつけでウクライナに安倍首相は5千億のプレゼントをしたが大地震の北海道にはその10分の1しか出さない。
 その他、災害に備える姿勢は全般にお粗末なものである。災害モードに入りつつある日本列島は政府と自治体の「防災」「減災」にこそ努めなければならない。それこそが実際の「安全保障」だ。
 また、松井一郎大阪知事は陸の孤島と化している関空やこの悲惨な舞洲を尻目に、「万博(と一体の博打場)誘致」に旅立ってしまった。もしもし、忘れものですよ。台風一発で悲惨な事になった「予定地」の写真持って行かな〜 何かあったらこんなことになりますけどそれでもやってほしい・・・と言わなければ。



読者から

ニュージーランド滞在記(2)

 


 近年、老後や子供をいい環境で育てたいとニュージーランドに移住する日本人も多いと聞きます。上で述べた日本とは違う魅力の他にも、医療費が無料、年金受給のしやすさ、学費の安さ、起業のしやすさなどさまざまなメリットがある(永住権を持っている場合)のでそれも頷けます。原発事故以降、福島などからの移住者も多いと聞きます。
 ここまで見ると、日本より過ごしよい国と思われるかもしれませんが、その一方でさまざまな問題もあります。中国人の移民増加による地価暴騰、失業率の増加、貧富の格差などの重大な問題も抱えています。全体的な物価も高く、再生可能エネルギーを使っているので光熱費も高いです。ニュージーランド人の特徴である、のんびりな良い面もありますが、いい加減なところや時間にルーズなど、人にもよりますが、マイナス面も多くあります。
 ここまでニュージーランドの生活で僕が感じたいい面・悪い面を書きましたが、あなたはニュージーランドについてどう思われましたか。自分自身も海外に出てから、すごく考え方が変わった気がします。日本は、生活が豊かで世界の中でも先進国であるにも変わらず、幸福度は低く、過労死や自殺の問題が絶えません。僕が、海外で生活して思ったのは、ニュージーランドでは自分のやりたいことを社会が許容しているように、自分らしい生き方がしやすい環境だと思いました。また、自分の意見をはっきり言えて、また言うことをためらわないことについて本当に驚きました。自分より年もはるかに上で、上司である人に平気で自分はこう思うとか主張するのは、僕も見習いたいと思いました。
 世界には日本にない魅力的な部分もあります。僕は、日本の良い所をしっかり押さえたうえで海外にも目を向け視野を広げることで、自分の可能性もひろがり、自分らしく生きることを考えるのに役立つと考えています。自分がどう生きたいのかを悩んでいるとき、海外に出てみていろんな経験をすることも良いと思います。(了)



寄稿

水資源は未来を拓く

こうへい


 近年の気象の変化は 異常気象と言われるほどに変化に富んでいます。 今年の夏も台風による豪雨や局地的雷雨などで被害が発生しました。 世界に目を転じれば 雨不足による山火事など日本とは反対の被害が多数出ています。
 水資源の偏在が言われて久しいのですが、砂漠化の拡大など水が今世紀の不安要因だと指摘する研究者が多くいます。 戦略物資とも!
 国交省の資料によると地球にある水は海水が97.4%、淡水が2.53%の割合になるそうです。 淡水の内訳は氷河など1.76%、地下水0.76%、河川湖沼0.01% 。すぐに使えるのは0.01%だそうですが、それでも量としては足りるとしています 。
 人類はこの100年爆発的な増加を見ました。それを可能にしたのが食料の増産です 。インドのパンジャブ州は地下水を使って稲作の大生産地となり、アメリカでは湖沼や地下水を使って小麦や大豆などの量産を可能にし農作物輸出大国になりました。 しかしこの地下水や湖沼を使用した大規模農業も水位の低下が著しく、気の遠くなるような歳月をかけて貯めてきた大地の恵みをあと数十年で使い切ってしまうだろうと予測されています 。「土地にそぐわない農法と人々の貪欲が招いた帰結」と辛口の指摘もあるようですが・・!
 この水不足に挑戦し海水から真水を作る技術は既に各国で実用化されています。 報道によるとイスラエルでは海水から1000Lの真水を作るのに60円のコストで1日6億トンを作る大規模施設も稼働しているとか?
 因みにパン1kg製造に2トン、牛肉1kg 生産に22トンの水が必要だそうです。 日本人は炊事、洗濯、風呂などで1日に224リットルの水を使っていて世界で6番目に位置するというデータがあります。 我々の水に対する意識は世界的に見て低いレベルと言わざるを得ません。水も買う時代です。もう少し水に対する意識を高める時かもしれません!



 

第10回勉強会案内

 


ビデオ上映会
「東日本大震災 東北 朝鮮学校の記録」製作 コマプレス

日時:10月14日(日)午後2時
場所:国労大阪会館3階
入場料:700円
連絡先:古賀090-3272-1542 小川090-9880-6175


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