研究誌 「アジア新時代と日本」

第177号 2018/3/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 朝鮮とどう向き合うか

議論 日本をアメリカと共に戦争する国にする従米改憲策動を破綻させよう!

寄稿 沖縄・辺野古の現状と課題

現場から 官僚残酷物語




 

編集部より

小川淳


 「非核化」ではなく「自主権」こそテーマだ
 米朝首脳会談が実現するという。もし実現するなら歴史的快挙と言えるだろう。平昌オリンピックを契機に始まった南北和解の動きはついにトランプ大統領まで巻き込んで最高の舞台を演出した。どういう結果になるのかは不透明だが首脳会談そのものは歓迎したい。
 米国は朝鮮戦争以来、朝鮮を外交上認めてこなかった。というより、国家そのものの存在を認めてこなかった。状況が劇的に変わったのは朝鮮が核・ICBM実験に成功した昨秋からだ。トランプ氏が首脳会談に応じるとは、朝鮮という国を米国が認めたことを意味する。朝鮮戦争以来の米朝対決の歴史の中で初めてで、画期的なことである。
 ここ一年、核を巡る米朝の緊張が続いてきた。核・ミサイル実験を繰り返す朝鮮に、忍耐力が尽きた米国がいつ軍事的手段に訴えるか、米朝の緊張関係は極限状態にあった。いつ戦争が起きてもおかしくない状況が続いてきた中で、私たちが注目したのはアメリカ・トランプ政権の出方だった。アメリカの選択肢は二つしかなかったからだ。
 核を認めるのか、それとも戦争かの二つである。しかしトランプ政権に戦争の選択肢はない。朝鮮が核を保有したからだ。では朝鮮を核保有国として認めるのか。もし認めるなら、世界の核体制は崩壊するからそれもできないだろう。トランプ政権は大きなジレンマに陥っている。時間をかければかけるほどアメリカにとって情勢は不利になるからだ。トランプ大統領の心境はじりじりしていたに違いない。
 首脳会談のテーマは「非核化」だとされている。多くのメディアは朝鮮が核を手放すはずがない、「騙されるな」「首脳会談は無意味だ」と騒ぎ立てている。特に面目がつぶされた安倍政権などはそうだ。
 多くの人が誤解しているのだが、朝鮮が核を持つに至ったのは、アメリカに朝鮮という国の存在を、つまり自主権を認めさせるためのもので、核保有そのものが目的ではなかった点である。アメリカ(トランプ)に朝鮮という国を認めさせること、言い換えるなら米朝対決の解消ができれば、核はいらない。「非核化」とはそのような意味ではないか。最も重要なことは、米朝対決が解消するかどうかだ。
 朝鮮戦争以来、朝鮮が闘い、求め続けてきたことは朝鮮という国の自主権だ。朝鮮側にとってそれこそが米朝首脳会談の最大、最終のテーマとなる。「核」ではないのだ。
 朝鮮戦争の最終的終結と米朝の国交正常化、首脳会談がその契機になればと思う。もしそうなれば日本にとってこれほどの朗報はないはずだ。



主張

朝鮮とどう向き合うか

編集部


 世界が驚いている。この間の朝鮮半島をめぐる情勢の急転は普通でない。
 ピョンチャン・冬季オリンピックを同じ民族の慶事としてともに祝おうと、選手団、芸術団などとともに別格の高位級代表団が送られ、南北首脳会談の早期実現を呼びかける親書が文在寅大統領に直接手渡されたこと。オリンピック閉会式に再び「北」の高位級代表団が派遣されたのに続き、親書を携えた「南」の高位級代表団がピョンヤンを訪問し、金正恩委員長との会談に基づいて、4月末の南北首脳会談など5項目の確認を明らかにしたこと。さらに、その結果が米国へ伝えられ、トランプ大統領が即席で5月までの朝米首脳会談を表明したこと。このわずか一ヶ月の一連の出来事が、これまで一触即発の危機に直面していた国際政治の様相をがらりと変えたように見える。

■急転する朝鮮情勢は、「制裁効果」なのか?
 トランプ大統領は、朝鮮半島で起きた世人の想定を超える激動を「世界にとって素晴らしいこと」と激賞しながら、それを引き起こしたのは自分だと胸を張って見せた。すなわち、米国主導の世界的包囲と制裁、それが朝鮮に手を上げさせたということだ。
 日本でも評価は判を押したように右へ倣えだ。「制裁が効いてきている証拠だ」、等々。その上で、「北の制裁逃れ」「包囲網破り」「時間稼ぎ」「騙されるな」などといった声がしきりだ。
 だが、本当にそうなのだろうか。朝鮮に行って来た人の話によると、ガソリン代は上がっているものの、交通量はさほど下がっていないという。電力事情にも大きな変化はないようだ。貿易量が下がっており、海上での物の受け渡しなどがやられるようになっているのは事実だろう。だが、全世界200近い国々で、制裁を真面目にやっている国は10ヶ国に満たないという。そして何より、朝鮮が元来、外に頼らない自立的民族経済の国であり、特にこの間、自力自強、国産化の運動を強めていることを忘れてはならないだろう。

■「米国言いなり」の誤りを問う
 米国に倣っているのは、何も今回の評価だけではない。日本の対朝鮮政策を見た時、それが米国に倣うどころか、米国言いなりになっているのは一目瞭然だ。
 何よりもまず、ものの見方自体が米国言いなりだ。朝鮮の核とミサイルが日本を対象にしていると言われれば、それをそのまま受け入れている。ミサイル開発が日本を遙かに超えた射程で米国に向けて進められているにもかかわらずだ。
 見方だけではない。ものごとへの対処の仕方も完全に米国言いなりだ。「攻撃能力の一部を担え」と言われれば、朝鮮のミサイル基地への攻撃を検討しているというが、正気の沙汰か。そんなことをすれば、朝鮮の核ミサイルによる対日報復は避けられない。その時、日本が身を捨てて守った米軍は、一体何をしてくれるというのか?
 朝鮮を封鎖し孤立させるための安倍外交もそうだ。核とミサイル問題は、あくまで朝米問題だ。なのに安倍首相は、米国に言われるまま、広く世界各国に出向いては、「米国の敵」である朝鮮の圧殺を説き、貴重な国費をばらまいている。
 こうした日本のためでない、米国のための米国言いなりの対朝鮮政策が日本にもたらしている事態は重大だ。中でも深刻なのは、今、朝鮮が日本の「国難」、最大の「脅威」とされ、日本が米国と共同で戦争するための「改憲」「新防衛大綱」の根拠にされていることだ。
 「改憲」「新防衛大綱」によってその完成が目論まれる日米共同戦争体制の構築。それは今日、弱体化し揺らいでいる米国中心の国際秩序、米覇権秩序を支え補強するため、日本の軍事力を米軍事力に全面的に組み込み、その補完力量として使い捨てるためのものに他ならない。
 日朝関係が「米国言いなり」で悪化し、それがまた、対米従属をさらなる新たな段階へと引き上げる。それは何も今に始まったことではない。
 明治維新から間もなく、日本が「脱亜入欧」に踏み切った時にも、第二次世界大戦の惨劇から戦後復興に立ち上がった時にも、隣国、朝鮮との関係は、日本にとって大きな意味を持った。朝鮮への対応をめぐって明治6年の政変が起き、それを契機に、欧米を背に負ってのアジア覇権への道筋がつけられたこと。朝鮮戦争での特需と「参戦」が、対米依存、対米従属の日本の復興と再軍備、アジアへの再膨張を決定づけたこと。対朝鮮政策 と対米、対欧米政策との関係は、日本の近現代史に深々と貫かれている。

■制裁の破綻としての「朝米首脳会談」
 朝鮮半島をめぐる激震、「南北対話」と「朝米対話」にどう向き合うか、それは今日、日本でもっとも切実に問われている問題の一つだと思う。
 そこで問われているのが「米国言いなり」からの脱却だ。
 今回の「激震」で、米国が言っていることの核心は、先述したように「制裁効果」だ。
 普通、にらみ合いの勝負では、先に動いた方が負けだ。今回、先に動いたのは朝鮮の方だ。だから、「制裁効果」だというのがトランプの言い分だろう。しかし、今回の「勝負」に限っては、そうとは言えないと思う。なぜなら、今回は朝鮮の方から米国へ助け船を出してやったという側面が濃厚だからだ。
 今回、困っていたのは米国の方だ。昨年末、朝鮮は「国家核武力完成」を宣言した。これで米国は、自国本土への核攻撃を覚悟することなしに、朝鮮を核や戦争で脅して支配することができなくなった。後は、時間が経てば経つほど、核による米覇権力の衰退はより決定的になるだけだ。
 覇権国家としてこの苦境を乗り切るため、米国には、朝鮮を制裁で屈服させ、核を放棄させるしか方法はなかった。朝鮮は、それに「朝米首脳会談」と「朝鮮半島の非核化」で応えてあげたのだ。
朝鮮がそれによって得るものは大きい。米国との間での「平和協定」と「国交正常化」、そして何より、「南北統一」への大きな前進だ。これは、明らかに、制裁の「効果」ではなく、「破綻」だと言えるのではないだろうか。

■脱米自主、日朝友好の時が来た
 朝鮮半島で起こった激震は、これで終わりではない。と言うより、これはまだ予震に過ぎず、本当の揺れはこれからだと言える。
 この朝鮮をめぐる大激動にどう対するかが日本に問われている。そこでまず言えるのは、「米国言いなり」からの脱却ではないだろうか。
 今日、事態を掌握し主導しているのは米国ではない。朝鮮だ。そうした中、今回の事態を米国言いなりに「制裁効果」と見、河野外相のように「今こそ制裁強化の時だ」などとトンチンカンにはやり立つのは禁物だと思う。これからの事態発展に対応する過程は、日本にとって、米覇権崩壊の実相を学ぶ学習の過程とならねばならず、これまでの対米依存・従属の呪縛から抜け出、脱米自主へと飛躍する突破口になるべきではないかと思う。
 今回の事態に向き合う上で、次に問われていると言えるのは、朝鮮を蔑視し軽視する意識から脱却することではないかと思う。
 朝鮮が米国に勝てるはずがない。屈服するのが当然だ。いや、屈服してくれなければ困る。でないと、日本の立つ瀬がない。こうした意識がわれわれの中に全くないと言えるだろうか。
 蔑視は、「南」にも向けられている。今回、朝米の間を仲介した韓国を単なる「使い走り」だと蔑むところにもそれは端的に現れていると思う。
 南北朝鮮への蔑視、軽視は、また何よりも、両者の「統一」に向けた民族的な意思と要求がまるで尊重されていないところに如実に示されているのではないか。首脳会談で注視されているのは、「朝米」であり「南北」ではない。後者は、せいぜい「北」の体制維持のため、「南」がどれだけ援助させられるか、それをなんとか食い止めねばと言われているだけだ。
 「アジア悪友論」に基づく「脱亜入欧」、欧米の覇権の下、アジアに覇権してきた150年近く、われわれ日本人の意識に広く深く浸透し沈殿してきたアジア、中でももっとも近い隣国、朝鮮に対する蔑視の思想、意識と今こそ闘い、そこから脱却する絶好の時が来たのではないだろうか。
 朝鮮は、「北」はもちろん「南」も、昔の朝鮮ではない。これから、南北朝鮮の統一に向けた闘いが、日本も含めた周辺諸大国の様々な妨害に抗して推し進められていくだろう。そこで問われるのは、彼らに一目も二目も置いた連帯、新しい日朝友好だろう。それが脱米自主と一体になること、この「自主」と「友好」こそがこれからの闘いのスローガンになるのではないだろうか。



議論

日本をアメリカと共に戦争する国にする従米改憲策動を破綻させよう!

東屋 浩


 安倍首相は3月25日の党大会までに自民党改憲案をまとめようと急いでいる。ここでは、戦力不保持・交戦権否認の九条二項を維持し、三項に自衛隊を明記する安倍案、二項削除の石破案などが論議されている。
 一方、国会の憲法審査会には、立憲民主党が国民は改憲を要求してないとして参加を拒否している。
 衆参院とも改憲派が三分の二以上を占めるので、いつでも改憲発議を決議することができる。安倍首相は今年中に改憲発議をし、来年夏に国民投票をおこなうことをめざしている。 しかし「朝米首脳会談の開催」により、情勢は一転し緊張緩和に向かっている。安倍首相の朝鮮の核・ミサイルの脅威を理由にした改憲策動もその根拠がなくなり、改憲すること自体がおぼつかなくなった。
 にもかかわらず、安倍首相は核廃棄の具体的措置が検証されるまで、制裁と圧力を続けていくとしており、改憲をめざす日程をそのまますすめると思われる。安倍首相の手法は改憲の意図を隠し、世論の動向を見ながら、国民に受け入れやすい方法で、改憲をすすめるというものだ。このままでは公明党を含め大半の国民が「(この改憲を)特別、危険ではない」として賛成し、改憲がなされる可能性がある。
 安倍改憲案は、集団的自衛権容認の自衛隊を、憲法で認めるという改憲である。それは、今年末の防衛大綱での敵基地攻撃容認、専守防衛見直しなどの集団的自衛権拡大解釈と合わせ、実質的に九条二項を形骸化し、完全に日本を「アメリカと共に戦争をする国」にしていくことを意味する。
 しかし、南北首脳会談、朝米首脳会談の動きにより、改憲の根拠である朝鮮の核・ミサイルの脅威という安保環境が緩和しつつあるもとで、なぜ改憲をしなければならないのか。

■改憲の理由を言わない安倍首相
 安倍首相は、昨年の総選挙を「改憲の是非を問う選挙」と位置づけ、今年に入って、改憲論議、 防衛論議をすすめよう、今年は改憲のための「勝負の年」だと言っていた。そのために、国会での憲法審査会も再開させた。
 いざ改憲論議が始まると、安倍首相は、「自衛隊違憲説」があるから「自衛隊の合憲化」をはかると言ってきたのに、なぜ自衛隊を明記するだけの改憲なのかと問われれば、九条二項削除では国民が認めないからだという。国民の「戦力不保持と交戦権否認」にたいする支持と自衛武力をもつことの是認の世論を考慮すればこうなるという。安倍首相は「二項をそのままにして三項で自衛隊を明記するだけだから、改憲しても何も変わらない、安心して下さい」と強調している。
 これでは、改憲のための議論は必要でなくなってくる。 この間の推移をみれば、自民党案は第三項を「最小限の自衛力をもつ自衛隊の保持」とし、第二項でいう戦力に当たらないという従来の解釈を明文化する方向だ。
 では、その改憲案が否決されれば、首相は自衛隊が合憲でないことを認めるのかという質問にたいし、「否決されても自衛隊は合憲だ」とつじつまの合わない回答をおこなう。 「否決されても自衛隊が合憲なら、改憲する必要がないではないか。なぜ改憲しようとするのか?」と問いつめられると、安倍首相はまともに答えることができない。  これではまるで論議にならない。論議を呼びかけながら、論議にもならない対応の安部首相。
 安倍首相は改憲してもしなくても良いような改憲をしようとしているのだろうか?

■安倍改憲の目的は?
 安倍首相は昨年の総選挙で、国民の要求と無関係に改憲を争点にした。そのうえで今年1月、施政方針演説では改憲問題を述べながらも前面にはとりあげなかった。世論の動向を慎重に見極めて改憲を成し遂げようとしているのが見てとれる。九条以外の緊急事態条項や高校無償化などいくらでも法律で定めることができる他の問題を入れるのも、九条改憲の目くらましと言えるのではないだろうか。
 こうしてみると、安倍首相は改憲の理由がなくて答えることができないのではなく、本音を言えば国民の反発を受けるから黙っているということのようだ。「これまでと変わるところはありません」と言いながら、実は、憲法を大きく変えようとしていると言える。
 中谷元・自民党憲法改正推進本部長代理、元防衛相は、改憲の理由として「日本をとりまく情勢の変化」をあげている。すなわち、アメリカが弱体化したため、アメリカを助けるために日本が軍事的にも大きな役割を果たさなければならないという。 
 また、朝鮮の核・ミサイルが大きな脅威となっていることをあげている。アメリカの新安保戦略では、米軍の劣化と同盟国の役割強化を挙げており、朝鮮の核・ミサイルが一番問題だとしている。それに対応するものだ。
 三年前の集団的自衛権容認に基づく安保法制がまさに、アメリカと共に戦争をする体制の確立をめざしたものだった。
 今回の改憲策動は、その延長上に更にそれを進めるものだということが言える。改憲発議の国会決議→年末の朝鮮の脅威を口実にした敵基地攻撃を盛り込んだ新防衛大綱→来年夏の改憲を問う国民投票という日程でこれを推し進めようとしている。
 アメリカと共に戦争する体制確立の上では、憲法九条、とくに第二項の交戦権否認が依然として大きな制約となっている。かつての改憲策動は、天皇の元首化、二項の削除と国防軍の明記であり、それが「軍国主義的改憲」だとすれば、現在の安倍改憲は、アメリカの要請に応え、集団的自衛権行使容認の安保法制に憲法を合わせる「従米改憲」だと言うことができる。 従って安倍首相の目的は、九条二項「交戦権否認」を空文化するための、「交戦できる自衛隊」の明記であると言える。
 だから、三項に明記される自衛隊の保持が大きな意味をもつようになる。その自衛隊は、これまでの交戦権否認の制約をうけた専守防衛の自衛隊ではなく、集団的自衛権を行使してアメリカと共に戦争をおこなう自衛隊であるからだ。
 この第三項を加えることにより、実質的に第二項の交戦権否認を空文化することができることになる。
 安倍首相は朝鮮の核とミサイルの脅威を大々的にとりあげながら、アメリカ本土へのミサイル防衛体制と敵ミサイル基地を攻撃できる巡航ミサイルと朝鮮に侵入できるステルス戦闘機の購入をすでに決定している。専守防衛の見直しをはかり、日本の自衛隊がアメリカの対朝鮮戦争で最前線攻撃部隊としての役割を果たす態勢を整えていっているのが実相だ。
 そのための改憲であり、第三項の自衛隊明記だと言えるのではないか。
 従って、安倍改憲は「何も変わりません。安心して下さい」というのは真っ赤な嘘であり、平和憲法を従米戦争憲法に替えるものだと言える。

■朝鮮半島の緊張緩和の流れに合流し、安倍政権の改憲策動を破綻させよう!
 朝米関係が正常化され、北と南の統一が促進されれば、朝鮮半島における緊張状態がなくなり、北東アジアの平和が保障される。朝鮮は以前から日本を射程内においたミサイルをもっているが、それは日本に向けられたものではなく在日米軍に向けられたものだ。朝米が対立しなければ、日本が戦争に巻き込まれることもなく、敵基地攻撃論も不要となる。
 安倍首相は世界のどの国にもまして「制裁と最大限の圧力」というアメリカの忠実な番犬のような役割を果たしてきた。制裁と圧力は、最後には戦争に行き着くしかないが、もはやアメリカに戦争する力もない。それゆえ、対話による解決は必然だったといえる。
 安倍首相は「対話のための対話は意味がない」と首脳会談にブレーキをかけているが、今や「制裁と圧力」政策の破綻が誰の眼にも明白になったのではないだろうか。
 「アメリカと共に戦争する国」の改憲は、東アジアの緊張を高め、日本の安全と平和を危うくする、時代の趨勢に逆行するものだ。
 日本が平和国家として生きていくためにも、朝米関係改善と朝鮮の統一に寄与し、アメリカと共に戦争する国とするための改憲を阻止することが大事だと思う。

         

 
寄稿

沖縄・辺野古の現状と課題

釜日労 三浦俊一


 昨年の衆議院選挙での自公の圧勝、そして今年2月4日沖縄名護市長選挙での辺野古基地建設反対を掲げる稲嶺氏の敗北、直近ではオ―ル沖縄会議共同代表の呉屋会長(金秀グループ)の辞任、さらに今年2月からは一日300台以上の工事資材の搬入が始まり、辺野古新基地建設を巡る情勢は目まぐるしく動いています。
 これら一連の動向を規定しているのは、「国難」選挙で安倍政権が掲げた朝鮮脅威論とそれらを口実にした改憲・防衛(抑止力の強化)=戦争の出来る国創りと連動していることは明らかです。
 沖縄はあの琉球処分以降常に日本の中央政治に翻弄され、差別と犠牲を強いられて来ました。時代がどう変わろうと本土・沖縄、ヤマト・ウチナーのこの差別の構造は変わりません。辺野古新基地建設もその視点から見ていくことが極めて重要だと思います。しかし、差別を告発しつつもその時々の国内・国際政治環境を基礎としていなければ沖縄の現状を変えることは出来ないでしょう。

■トランプの覇権主義と辺野古新基地
 現代世界を見て行けば、アメリカ・トランプの『アメリカンファースト』覇権主義の登場と日本の関係変化が見えてきます。振り返って見れば2011年版防衛白書で尖閣諸島の領有権をめぐる中国の対応を初めて「高圧的」と批判し「中国脅威論が語られます。これが後の日本の防衛戦略の中心となってきました。所謂「沖縄基地の必然性を防衛上『地政学的』の語るそれでした。ところが米国トランプが登場するや否やこの脅威論の対象が防衛白書(2017年)では、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発について新たな段階の脅威と明記して朝鮮脅威論がその主要な課題とされています。
 こうして『北朝鮮脅威論』を口実とした改憲、抑止力の強化が着々と進められていきます。防衛予算は今年度当初比1.3%増の5兆1911億円で、過去最高を更新しました。長距離巡航ミサイルは、対艦ミサイル「JSM」(射程約500キロ)を購入して最新鋭ステルス戦闘機F35Aに搭載する。最大射程900キロの2タイプの導入の可否も調査する。そして護衛艦いずもの空母への改造と事態は進んでいます。軍事的にはこのようにトランプの北朝鮮軍事行動を補完する装備を充実させながら、これらと並行して現憲法9条及び憲法前文の空洞化を狙っています。
 戦後70年の日本の防衛思想の転換は、「北朝鮮脅威論」を基礎に今や実態として作られています。専守防衛から敵基地攻撃能力保有、交戦権肯定へ、です。
 ここに至って辺野古新基地建設は明らかにその政治的、軍事的意図が変わっています。
 2017年4月25日、辺野古新基地は「本格着工」されましたが、辺野古新基地建設は破綻する米国覇権主義を補完し、対朝鮮出撃基地の様相を強くしています。この事は今日の沖縄・辺野古を語る上で重要な意味を持っています。
 その事の確認の意味も込めて少し経過を振り返って見ると様々な問題が明らかにされてきます。
 普天間移設の決定は何時何処で誰が決定したのか?1995年の少女暴行事件を背景に盛り上がった反基地運動の過程で確かに「普天間移転案」は出てくるのですが、その後紆余曲折を経て最終辺野古に決まったのは2010年と判断する事が正しいと思われます。この当時は野田内閣の時でした。前任の鳩山政権下での「日米関係は平等」発言をマイケル・グリーン(ブッシュ政権下の国家安全保障会議上級アジア部長)は「鳩山政権は反米政権だ」と批判しています(2009年)。野田政権はこの日米関係の綻びを普天間基地の辺野古移転の実現で旧来の日米同盟関係への引き戻しを計ったのでしょう。そのような背景を持っての辺野古移転でした。この移転に関して「理解は求めなくてはいけないが、合意が取れないと物事を進められないものなのか。日本の安全保障にかかわってくる問題だ」と述べ、日米安保体制維持の為には沖縄県民の同意の必要性はないとの認識を示しています。
 2010年2月24日には、沖縄県議会で県内移設反対・県外国外への移設を求める旨の決議が全会一致でなされており、こうした沖縄県民の強い反基地の意思とも合まって民主党政権下では現実的で具体的な基地建設に着手することは出来ませんでした。
 ところが、その二年後の第二次安倍内閣が発足するや否や辺野古新基地建設は加速度的に進められて行きます。「我が国防衛力の実効性を更に高める努力を不断に行い抑止力の維持、強化を計ります」そして具体的な内容として「日米合意に基づく普天間飛行場の名護市辺野古への移転を推進し、在日米軍の再編を着実に進めます」と今にいたる基地建設強行を基本政策としているのです。

■建白書からオール沖縄へ
 この施策に沿って新基地建設は新たな段階へ入って行きますが、それに対抗するかのように、2013年1月28日、41市町村長・議会議長、県議会各会派の代表者などが署名して、安倍首相に建白書を提出しました。その時、既に辺野古新基地の全体像とその持つべき機能は「安倍の辺野古新基地」言い変えれば民主党時代の「日米関係」の修復はもとより更に強力な日米軍事一体化を実現する政治的目的を持つものとして書き上げられていたのです。
 2014年夏には新基地建設の為の海底ボーリング調査が再開されるのですが、この年、沖縄県知事選挙において、「辺野古新基地建設反対」を掲げた翁長知事が誕生しています。この勢いをもって第47回衆議院議員総選挙においても選挙協力を実施し、沖縄1区を共産党の赤嶺政賢、2区を社民党の照屋寛徳、3区を生活の党の玉城デニー、4区を保守系辺野古移設反対派で無所属の仲里利信で候補者の一本化に成功。その結果全ての選挙区で基地建設反対派の勝利と言う歴史的な事態を作りだします。
 これらの成果が2015年年12月の「辺野古新基地を造らせないオ―ル沖縄会議」の結成へと上り詰めて行きます。新基地建設反対闘争が全島化し沖縄の政治地図と民衆が結び付き戦線は広がり、高江ヘリパット建設は反対行動の為に工事の遅延を余議なくされ、遂には工事に自衛隊ヘリまで動員し全国機動隊の沖縄派遣と言う前代未聞の状態に入って行きます。

■安倍政権の反撃
 安倍政権は、こうした事態を黙って見ていた訳ではありません。2013年に膨大な沖縄振興資金と引き換えに当時の仲井眞知事に「埋め立て容認」を承認させ、その事を持って以降の基地建設の工程表が作られて行きます。この工程表には二つあります。一つは実際工事用のものと、他方は地元民意の懐柔と買収用がそれです。
 まず工事用では14年6月からの海底ボーリング調査の強行でした。しかし問題なのはどのような調査を行っても其の地域に漁業権を持つ組合の同意が無ければその後の工事、具体的には岩礁破砕と埋め立ては出来ません。そこで当該組合の買収に着手します。
 2014年5月24日、名護漁協は漁業補償金36億円でその権利を放棄します。2015年秋に今度は辺野古地元3区(久志、豊原、辺野古)の買収(3600万)に取りかかります。だが、この3区は自地体として通常考えられる「区」ではありません。町内会と呼んだ方が正確です。そこでこの年11月27日「再編関連特別地域支援事業補助金」を新設してまで根拠法を作り、久辺3区に国が直接金をばらまいた訳です。買収と言う以外にありません。更に、2017年4月1日、辺野古漁協が漁業権を六億円の保証金で放棄します。組合員は僅か8名です。これで工事工程表正式には(埋め立て承認願書)に記載されていた名護漁港周辺を作業ヤードとして使う事を可能にしたのです。そして、同年4月25日に大々的に「辺野古新基地本体工事着工」が公表され、シュワブ内の浜でセレモニーが開催されます。
 それでも、新基地の工事は大幅な遅れを取り戻す事は出来ていません。既に当初計画から約3年半の遅れとなっています。
 基地建設反対の運動が長引けばその分建設の大義名分が必要となります。ところが2017年9月、興味深いインタビュー記事が9月14日付沖縄タイムス、琉球新報の両紙に掲載されました。普天間返還の日米合意に米国防長官として関与したウィリアム・ペリー氏は、米軍基地の配置について「米国がここに移設しなさいと決定する権利はない」と断言。基地移転先を決めるのは安全保障の観点でも軍事的な理由でもないとして、米軍基地の配置を決めるのは日本政府の政治判断だと言い切っています。
 <沖縄基地問題の当事者はいったい誰なのか>という真相に迫る決定的な発言です。これが真実ではないのだろうか。「安部政権の政治判断」、これが辺野古新基地建設の真の根拠です。それはまたトランプの対朝戦争の際には其の防波堤となる事を意味しています。



現場から

官僚残酷物語

さかい一郎


■「佐川が、佐川が」
 ここへ来て森友学園問題が大きくクローズアップされるようになった。地元・豊中の木村真市議がこつこつ調査し、開示請求をしたり、各方面に呼びかけてきた内容が国・政府によって「公認」されたのである。その間、安倍政権は一貫して(一貫していないが)関与否定を強弁してきた。今それが身内から暴露されるに及んで、安倍首相と麻生財務相の人間性が赤裸々になった。全てを近畿財務局のせいにしようと躍起なのだ。プレッシャーと良心の呵責に耐えられず、自ら命を絶ったと思われる近畿財務局職員の事を問われて佐川前国税庁長官は「誰が亡くなったか聞いていないし、内容も聞いていないのでお答えできない」などと、辞任会見でとぼけた。佐川前理財局長は東大を出てから36年間、大蔵〜財務省に勤務し、近畿財務局や大阪国税局など税務・財務の超ベテランだし、政府答弁を一手に負う立場なのだから、近畿財務局の誰が森友にどう関り、どうなったかは把握する立場のはずだ。
 その点では麻生も安倍首相も同じで、他人事のような発言に終始した。職員の死を知った時点で「書き換え関与」の情報は得ていたはずなのに。
 そして今や、私人となった佐川氏と20人弱の現場職員に改ざんの責任を負わせようとする、その姿に人間性の微塵も感じられない。麻生大臣の「佐川が、」「佐川が」と言う冷酷ぶりを全ての公務員の皆さんはよく聞いておくべきだ。そして命を絶って無言の告発をした職員に続き、生きて今こそ市民・納税者と一緒にたたかってほしい。

■腐敗の責任も原因も安倍首相だ
 財務省決裁書には「日本会議」「安倍晋三」「安倍昭恵」「極右議員」「当時維新の杉田水脈・三木圭恵ら」などが列挙され、同じく籠池氏が日本会議役員であり、愛国教育を目指していると褒め、だから小学校設立へ進めてほしい旨書かれている。現に安倍夫婦も極右議員達も、極右団体も、維新も森友学園を訪問・講演・懇談し、麻生大臣も一緒に仲良く記念写真に写っているのだ。籠池氏が勝手に言っていたと首相・財務相がみにくい言い訳をしても通らない。財務相担当者の意向と違うなら公式文書にその様な文言が明記される事は無いはずだ。そして、何を改ざん文章で隠したかったかも明らかだ。麻生財務相は「佐川の答弁に合わせるため、職員が書き換えたのだろう」と言うが、その言い訳は通らない。佐川氏の国会答弁は3月だが、書き換えは2月に行われている。「私や昭恵が関与しているなら、首相も議員も辞職する」と大見得を切った直後から改ざん作業が行われている。首相夫妻をはじめ政界要人多数が出てくる重要文書を職員個人が消すのは単なる改ざんでなく、公文書偽造だから公務員としてものすごい勇気がいる。それはどんな常識をもってしても考えられないし、消されているのは安倍夫妻の関与の痕跡である事が明らかにされた今の事態に麻生大臣も安倍首相も、取るべき道は議員辞職しかない。

■今立たなくて、いつ立つのか
 国会と首相官邸前には数千の人達が集まり、「安倍も麻生も辞めろ」の声を大きく上げている。動員力のある組織が動いているわけでもないのに。これをマスコミも報道し出しているし、全国各地で市民が自発的に立ち上がりつつある。「民主主義を返して!」の叫びはたぶん万の単位に膨れ上がるだろう。フェイスブックやブログで情報を得て、各地での行動に参加しよう。パソコンで「森友学園問題を考える会」「シールズ」「社会運動情報・阪神」などを検索してほしい。なお、森友の10倍ともいわれる加計でも文書改ざん疑惑がこれから明らかになるだろう。連続疑獄事件だ。なお、財務省文書に明らかなように維新議員の関与もはっきりしている。その本丸は松井一郎知事であり、認可申請基準に達しない森友を厚遇し、認可寸前まで行った共犯は維新府政と教育行政だ。
 日本最大最悪の「国難」である安倍暴政と維新を倒す事が市民に取り一番の「自衛」になる。


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