議論 日米安保は日本を防衛するための条約か、日本が日朝戦争を行うための条約か
朝鮮半島の緊張がかつてなく高まっている。米国のティラーソン国務長官は、朝鮮に対するワシントンの「戦略的忍耐」は終わった、と宣言した。核兵器開発への野心を鈍らせるため、「あらゆる選択肢が検討されている」と警告している。
今号「主張」にも書いているが、朝鮮の核、ミサイル問題は、米覇権を脅かす最大の障害であり、米国にとって「越えてはならない一線」をすでに越えている。米国がそう認識していることは間違いない。その「超えてはならない一線」を越えたらどうなるか、シリアへのミサイル攻撃は、そのメッセージだった。米中首脳会談後、シリア攻撃は北朝鮮に対するメッセージかとの質問に対し「国際的な規範や合意に違反したり、約束を守らなかったり、他者を脅かしたりすれば、いずれ対抗措置がとられる可能性が高いという全ての国へのメッセージだ」(同国務長官)は答えている。シリアへの軍事行動は、トランプ大統領の「警告」が決してハッタリではないことを示す狙いがあったに違いない。
では、米トランプによるミサイル攻撃など軍事的オプションはありうるのか? 1994年に、クリントン政権は朝鮮への攻撃を真剣に検討したことがある。その時のシミュレーションの結果は、「開戦90日間で米軍5万2千人、韓国軍49万人の死者、戦争費用は610億ドル、最終的に戦費は1千億ドルを越す」という衝撃的なもので、結局、軍事的オプションは取れなかった。ブッシュ政権下でも「悪の枢軸国」と決めつけ核で威嚇したが、この時も実行はできなかった。最大の危機であった1994年の時と違い、今では核とミサイルを保有している朝鮮に対し、武力行使はますます難しいものになっている。
注目したいのは、朝鮮の核・ミサイル問題を議題とする米中首脳会談の最中にシリアへのミサイル攻撃が敢行されたという事実だ。直後には空母の朝鮮半島への派遣を決定している。中国が朝鮮の核開発阻止に協力しなければ、米国の単独の軍事行動もありうるという、中国への警告だったと言ってもよい。軍事的手段が使えない米国にとって、朝鮮の核開発を阻止する手段は二つしかない。米朝の直接対話か、中国による朝鮮への制裁、コントロールかだ。しかし中国による制裁はこれまで効果はなく、これからも効果があるとは思えない。このように見ると、唯一最善の解決策は米朝の直接対話しかない。誰が米朝の和解を仲介するのか。日本こそがその役割をはたすべきなのだが・・・。
主張
去る4月7日未明、米駆逐艦から巡航ミサイル59発がシリア・シャイラート空軍基地に向け発射された。この突然の武力行使は、中国国家主席習近平を米国に招き行われていた米中首脳会談の最中に引き起こされた。この暴挙をどうとらえ、どう対処するのか。それは、今後の日本政治にとっても、極めて重要なことだと思う。
■巡航ミサイル59発とファースト覇権宣言
まず問われるのは、国際慣例から見ても無礼の極みと言えるこの暴挙が一体何を意味しているのか、それについて考えることだ。そのために、いくつかの要素を併せて分析する必要がある。
まず第一に、暴挙が、そのわずか二日前の空爆でシリア政府軍が化学兵器を使用し、幼児を含む一般市民多数を殺害したという情報に基づいて強行されたという事実だ。この化学兵器使用に関しては疑問点が多い。アサド政権側はそれを強く否定しており、戦いを圧倒的に有利に展開していた政府軍が、それも和平交渉の真っ最中、なぜ自らを不利にするのが分かり切ったこうした行為をとる必要があったのか、国連による真相究明が行われようとしていた。その矢先、米国は、真相が明らかにされるのを待つことなく、あわただしくそれをシリア政府軍の犯行と断定、非難声明を出し、直ちに行動に及んだのだ。
第二に考慮されるべきは、米中首脳会談の最重要議題の一つが朝鮮の核とミサイル問題に置かれ、その解決に消極的な中国に対し、米国が単独でも強硬手段に訴えると大統領トランプ自らが公言していたという事実だ。これに関しては、米国務長官ティラーソンも後日、「朝鮮に対する警告の意味を持っていた」と認めている。
もう一つ、これが決定的だと思うが、第三に、暴挙を決めた米安全保障の最高会議、NSCの構成メンバーが直前に変えられていたということだ。すなわち、大統領選当初からの第一側近、トランプに多大な影響を与えてきた首席戦略補佐官バノンが構成員からはずされ、会議が軍関係の覇権主義者たちで固められるようになったということだ。
このほぼ同時に起こった三つの事象は互いに密接に連関している。すなわち、暴挙自体、対朝鮮強硬策を想起させるものであり、朝鮮を脅すという以上に、中国を対朝鮮制裁に引き入れるのを狙ったものであり、第一、第二の事象推進の主体がNSC改編によって「ファースト覇権」の方向で固められたということだ。今回の事態の展開に接して、少なからぬ親米派識者たちが、「非ワシントンが、ようやくワシントンに戻った」と安堵と喜びの表情を隠せないでいたところにそれは雄弁に物語られていると思う。
以上、今回の巡航ミサイル59発の暴挙は、一言で言って、これまでの「グローバリズム」による覇権ではなく、「強いアメリカ」を前面に押し出した「ファースト」による覇権開始の宣言だったと言えるのではないだろうか。
■ファースト覇権は、何より主権に対する敵対だ
元来、自国の国益を第一にする「ファースト」は、主権の上に君臨する覇権とは相容れない。トランプ大統領自身、その就任演説で、「すべての国々が自己の国益を第一に考える権利がある」と言いながら、「私たちは、米国の生き方を誰にも無理強いしようとはしない」と、「ファースト」が覇権ではないとことわっていた。
しかし、この間の「アメリカ・ファースト」を見ると、「看板に偽りあり」のそしりを免れない。難民や移民の入国に対して、彼らがなぜ自分の生まれ故郷を捨てざるを得なくなったのか、それに対する米国など先進国の歴史的責任にはふれることなく、ただ米国の国益第一に移民、難民の受け入れを大幅に制限する一方、メキシコやイスラム、アフリカなど特定の国々に対しては、テロを口実に、全面排斥するやり方は、大国のエゴを感じさせるものだった。まして、すでに入国している長期定住者の追い出しを図るに至っては、もはや「差別」「排外主義」そのものだと言える。
その上で、今回の暴挙はどうだったか。化学兵器使用に関する完全な独断と決めつけに基づくミサイルのシリア域内への打ち込みは、横暴きわまりない主権の侵害そのものであり、自らの覇権的企図を満天下に露呈したものだった。
国を否定する究極の覇権、グローバル覇権が破綻し、覇権そのものがもはや通用しなくなった今日、「アメリカ・ファースト」を掲げ、「強いアメリカ」の下、でっち上げと脅しで、主権を屈服させようとしても、それは不可能というものだ。
今回の暴挙に、G7とその周辺諸国しか支持と理解を示さなかったところに、それは端的に現れている。わずか十数年前、「大量破壊兵器」を口実としたブッシュのイラク侵攻が、それでもまだ、「世界的認定」の下に強行されたのに比べ、今回のトランプのシリア侵攻が露呈した覇権力の零落は、覇権そのものの最終的滅亡を予告しているのではないか。一方、朝鮮がシリアへの主権侵害を糾弾しながら、自らの核ミサイル開発の意義と正当性を確認し、カールビンソンなど米空母二隻の北上、ステルス戦闘爆撃機の沖縄・嘉手納基地への配備、等々の脅しを受けながら、そんな脅しなどどこ吹く風と核とミサイルのさらなる開発を宣言したのは、覇権時代の終焉を告げるもう一つの現実だと言うことができると思う。
■自主・平和・民主、そこに日本の国益がある
主権侵害を弾劾する世界的趨勢に逆行するかのように安倍首相は、米ファースト覇権によるシリアへの制裁を支持し、その武力行使に理解を示した。それは、安倍政権自身の主権放棄を端的に示していると思う。そしてそこにこそ、日本を破滅に追い込む、危機の根源があるのではないか。
今日、米国は、朝鮮の核とミサイル問題を自らの覇権を脅かす一大障害ととらえ、その圧殺に狂い立っている。この問題を米中首脳会談の最重要議題にしたのも、問題解決に向け暴挙をやってのけたのも、そのためだった。だが、その結果、共同声明が出されることはついになかった。
ならば、トランプがほのめかしたように、米国単独での武力行使か。しかしそれは、十中八九、あり得ないだろう。なぜなら、それが意味するのが朝米の熱核戦争以外ではほぼないからだ。
そうした中、この間言われているのが日本による敵基地攻撃だ。この「敵基地」が朝鮮の核ミサイル基地を意味しているのは言うまでもない。そのための「検討チーム」が立ち上げられ、それが政権課題にまで引き上げられている。
もとより、朝鮮の核とミサイル問題は朝米問題だ。米国が朝鮮との間の停戦協定を平和協定に変え、国交を正常化して、戦争状況を終結させれば解決する問題だ。ところが今日、この問題がいつの間にか日朝問題にすり替えられ、米国はそれを横から支援するというスタンスになっている。
これは、明らかにおかしい。日朝間の懸案の問題は、どこまでも拉致問題だ。日本に向けられているわけでもない朝鮮の核とミサイルの問題ではない。今、問われているのは、この二つの問題を切り離し、拉致問題をまず解決し、日朝関係を敵対から友好へと転換させることを通して、今生まれている戦争への危機的状況をなくすのに寄与することではないだろうか。
そのために何よりも大切なのは、世界の趨勢にそって、自国の国益第一に主権をしっかりと確立し、国の自主を実現することだと思う。今、朝鮮の核とミサイルではなく拉致が問題なのも、それが日本と日本国民にとって何よりも切実に解決が待たれる国益問題だからだ。主権を立てるとは、他国の利益、他国の要請を先立てるのではなく、自国にとって重要な国益問題を第一とし、その解決を優先させるということだ。覇権の時代でもない今日、米国の要請を先立てることは、日本の国益でないばかりか、百害あって一利なしだ。
今日、朝鮮との関連で、拉致とともにもっとも切迫した国益問題は、言うまでもなく平和の問題だ。「朝鮮との敵対・戦争か友好・平和か」が切実に問われている。この友好による平和実現の鍵が対話による拉致問題の解決にあるのは言うまでもない。まさにここに、日本が世界平和の前に負った大きな役割がある。
米ファースト覇権の意向に抗し、自主、平和への日本の国益を実現するためには、主権に力がなければならない。力がなければ、巡航ミサイルを撃ち込まれ、主権自体がうち倒されてしまう。
今日、日本において、主権の力、それは一にも二にも、民主の力だ。拉致と平和、切実な国益問題を解決する主権に対する圧倒的な国民的支持、それを実現する主体も国民大衆自身だ。既成の政党に頼らず、国民自身が政治を決める新しい民主の力こそが問われていると思う。
議論
今日、米韓合同軍事演習の開始とともに、トランプ大統領の「武力行使も選択肢の一つ」「単独で行動する用意がある」という発言によって、アメリカの斬首作戦、核施設空爆などの先制攻撃がとりざたされ、朝鮮半島の緊張が極度に高まっている。朝鮮の核・ミサイル開発をこれ以上、許さないというのがアメリカの姿勢だ。
その中で、日本においてミサイル防衛体制の構築や朝鮮ミサイル基地反撃態勢を作るべきだという声が高まっている。日本に朝鮮が攻撃対象とする米軍基地があるからだ。そのため、朝鮮の核・ミサイルにたいする対応策が、日朝問題のもっとも重要な問題とされ、朝鮮有事に日本が参加していくことが現実的な問題となっている。
その根拠は、日米安保条約第五条にある。
日米安保条約は日本にとって日本の防衛のためにあるとしていたが、実は、日本のおける米軍基地を守り、アメリカの対朝鮮戦争の前面に立っていくためのものになっているではないか?これについて、議論を提起したいと思う。
■安保条約第五条が本当に重要だとマティスが言った意味
2月マティス国防長官は就任するや最初の外国訪問を日韓にした。対朝鮮問題を最優先課題としているからだ。そして、安倍・トランプの日米首脳会談での道筋をつくるためだった。
日本側は、トランプ政権の要人の初めての訪日で、トランプがアメリカに頼らず自分で核を持てとか、在日米軍基地の費用を更に負担せよとか発言していたので、無理難題を吹っかけてくるのではと緊張して迎えた。
マティス国防長官は安倍首相との会談冒頭で「日米安全保障条約第五条は本当に重要だと明確にしたい。5年先、10年先においても変わることがないだろう」と強調した。
第五条は、日本領土内で日本かアメリカかどちらかへの他国からの武力攻撃があったとき、自分の国への攻撃と同様にみなして、それぞれの国の憲法の規定と手続きに従ってただちに反撃するという内容だ。
そして、日米同盟の強化と、在日米軍基地への日本の貢献にたいする賛辞を述べ、日本側はアメリカから見放されるのではないかという不安から解放され狂喜するほどだった。マティスの第五条の発言にたいし安倍首相は、「尖閣列島防衛でも五条が適用される。米軍関与の言質を引き出した」と小躍りした。しかし、尖閣列島など日本領土に他国から武力行使がなされた場合、アメリカが必ず防衛するというとは限らない。議会の承認がなければアメリカは防衛戦に参加することができないからだ。アメリカが日本の無人島を守るために中国と戦争することがありえるだろうか。
同じように日本本土への他国の攻撃があったとしても、アメリカが日本を防衛するかどうかはアメリカ議会がどう判断するかにかかっている。日本防衛を義務づけたとする第五条には、抜け穴が用意されている。
では、なぜマティス国防長官は「第五条が本当に重要だ」と強調したのだろうか?
第五条の条文内容にある「日本領土内での日本とアメリカへの武力攻撃があったとき」の「日本領土内のアメリカ」とは、在日米軍基地を指している。
アメリカにとっての最大の関心事は在日米軍基地の防衛にある。もし朝鮮戦争が起これば、前線司令部である在日米軍基地がもっとも重要で、かつ朝鮮の攻撃にさらされる虞がある。
結局、第五条は日本領土内でのアメリカへの武力攻撃、すなわち在日米軍基地への攻撃があった場合、日米で反撃するという条文だと言うことができる。つまり、第五条は在日米軍基地の防衛のために日本が相手国と戦争するという規定となっているといえる。
しかも、日本国内で戦争状態になったとアメリカが判断した瞬間、自衛隊は在日米軍の指揮下に入ることが密約で合意されている。(古関彰一獨協大学教授により発見されたアメリカ公文書)
この第五条をマティス国防長官がもっとも強調したというのは、緊張が激化する朝鮮半島情勢を念頭においているからだ。
したがって、マティスが第五条を強調した意味は、アメリカが日本を守るのだというのではなく、日本にたいし対朝鮮戦争において自衛隊が米軍の指揮下で前面に立って戦闘しなければならないということ他ならない。
数日後のこうげきこうげきい安倍トランプの日米首脳会談において、朝鮮の在日米軍基地に向けたミサイル実験にたいし安倍首相が非難声明を行っているとき、当事者のトランプ大統領が非難することもなく、「日本を100%支持する」とだけ述べたことが象徴的だ。アメリカが後ろで控え、日本を朝鮮との軍事的対決の前面に立てるという姿勢を示している。
マティス国防長官の訪日、安倍・トランプ日米首脳会談、ティラーソン国務長官の訪日、米中首脳会談とシリアに対するミサイル攻撃という一連の動きを見ると、米軍による先制ミサイル攻撃と対朝鮮戦争勃発、日本の戦争参加というシナリオが見えてくる。
まさに、このマティス国防長官の発言からトランプ政権の対朝鮮政策(すなわち対日政策でもある)が開始されたといえる。
■核・ミサイル問題が日朝問題とされ、対朝鮮戦争に前面に日本が立たたされるのは、日米安保条約のため
朝鮮の核・ミサイル問題は朝米間の問題であり、日朝問題ではない。
1953年の朝鮮戦争休戦以来、64年間、朝鮮人民軍と米軍は軍事分界線を挟んで一触即発の対峙状態を続けてきた。いわば、朝鮮とアメリカはずっと戦争状態にあったということだ。
朝鮮半島の戦争状態が継続している要因は、朝鮮が「挑発」しているのではなく、アメリカが朝鮮を屈服させようとして軍事的圧力をかけ続けているところにある。この朝米間の戦争状態を終わらせることは、アメリカが朝鮮の主権を尊重し、停戦協定を平和協定に変えることに取り組めば解決する問題だ。
従って、朝鮮の核・ミサイル問題は、アメリカが責任もって解決すべきことだ。
もし朝鮮の核・ミサイルが日本の脅威になるというなら、それは日本に米軍基地があるからだ。朝鮮の核・ミサイルはアメリカに向けられたものであり、日本自体を攻撃対象にしていない。だから、朝鮮の核・ミサイルに対し日本が前面に立って対処しなければならない理由は一つもない。
にもかかわらず、安倍首相はこれまで、朝鮮の核・ミサイル開発を非難することに最大限の力を注いできた。
一昨年の国連総会での演説がそうであり、今回の日米首脳会談でも朝鮮のミサイル実験を安倍首相だけが声をあげて非難している。
日本政府はアメリカ本土へのミサイル攻撃を日本上空で迎撃する態勢、さらに朝鮮ミサイル基地攻撃体制を整えようとしている。
稲田防衛相は「敵ミサイル基地攻撃能力を自衛隊が持つことを検討する」と国会で述べている。また、自民党検討チームがミサイル基地攻撃能力早期検討の提言を政府に提出している。
秋田県でミサイル攻撃からの避難訓練がおこなわれ、それを全国に拡大していく考えを政府は明らかにしている。
日本が朝鮮の核・ミサイルにたいし、日本の安全問題としてとらえ、戦争態勢をとろうとしているのは、安保条約第五条により、在日米軍基地が攻撃を受けたときには日本が反撃しなければならないからだ。
安保条約が「戦争の抑止力」ではなく、アメリカの対朝鮮戦争の前面にたたなければならない「戦争の要因」となっているのではないか。
もし日朝戦争になれば、日本も壊滅的損害を免れないだろう。50数個の原子力発電所をもつ日本が壊滅する可能性は高い。
核・ミサイルという朝米問題を日朝問題としていくのか、それとも本来日朝間の懸案問題を日朝問題にしていくのか、どちらが日本の国益となり、国民の要求となっているのか。それは今日、戦争か平和か、どちらを選択するかの深刻かつ重要な問題として提起されていると思う。
それゆえ、核・ミサイルという朝米問題が日朝問題とされ、在日米軍基地を守るために日本が前面に立って戦争をしなければならないという日米安保条約とは一体、何なのかを、深く考えるときにきていると思う。
現場から
この原稿を書いている段階では、宝塚市長選の結果が出ていない。だから断定はできないが、応援行動に入って1ヶ月の実態を見ると「勝てる!」
中川ともこ市長はまさかの初当選を8年前に果たして以来、市の財政を黒字に転換した。箱もの作りに熱中して利権の為のお金をひねり出すことをまず止めたからだ。その代わり、福祉・医療・子育て・教育に税金を合理的に使った。人件費も職員組合との真摯な話し合いでかなりの削減に努めた。市立病院は維新が執拗に主張した民営化をせず、逆に診療科目の充実、全国へ市長自ら出向いて「良いお医者様、ぜひ宝塚へ来て、その腕を振るってよりよい医療をしてださいお願いします」と呼び掛けて、実際医師数を1.5倍に増やした。その結果病院は多くの患者でにぎわった。
■民営化の幻想打ち破り
給食も民営化を断って、逆に経費が節減できたので、副食費や減価償却費にたくさんお金を回せた。宝塚の給食がおいしいと全国でも評判になったらしい。筆者も市内全域を駆け巡る途中で子どもたちに出会うと車を停めて、「給食おいしいですか」と聞くと全員が明るく大きな声で「おいしいー」と叫ぶ。全員がお世辞を言う事は考えられないから真実なのだろう。
また、今村復興大臣のとんでもない暴言で有名になった放射能汚染地からの避難者の住宅が全国的に3月末で打ち切られつつあるが、宝塚市だけは「いつまでもいてください」と言っている。利益優先になりがちな民営化ではなく、行政サービスを目いっぱい行いたいという中川ともこ市長のポリシーが市民に浸透しているのだ。
■全盛期の維新をはねのけ
4年前、これに立ちはだかり、維新植民地にして大阪のようにしてしまおうと橋下徹が刺客を送り込んだが、市民の良識が勝ち、維新の若手市議が惨敗した挙句、維新を掲げた号泣県議がいた隣接市に夜逃げ同然で去っていった。そこで市議選に出たがこれまた惨敗で、維新の芽は阪神間でぼろぼろになった。全盛だった橋下維新が調子悪くなったのはこの宝塚と5か月後の堺市での惨敗以後だ。
■政権党に負けはしない
さて今回の選挙は自民党が相手だ。元タカラジェンヌを売り物にする女性と右寄り男性市議が立った。どっちも自民党票が頼りであるから、保守分裂と言っていい。しかし内容は二人とも近い。元タカラジェンヌは日本会議系の団体に入っている。もう一人の男性市議も「憲法1条の会」というからどちらも教育勅語崇拝主義者。在特会元関西支部長が応援に来たが、票を減らすだけの効果しかなかっただろう。
これに対して中川ともこ市長の応援団は層が厚い。共産党、社民党、民進党、自由党の議員が選挙演説に顔を揃えた。「穀田恵治、福島みずほ、辻元清美、阿部知子、山本太郎」の応援演説を聞くために1千人の(実数)聴衆が宝塚駅前を1時間埋め尽くす事態になった。政党だけではない、障害者団体、手話グループ、コーラスグループ、医療生協、宗教者に加えて、企業経営者、そして医師会・歯科医師会など保守支持が多いはずの団体も中川市長についたのは実績を率直に評価されての事だっただろう。
■はみ出し市長
中川ともこ市長は衆議院議員もしていたが、その頃も首相官邸に、小泉厚生大臣(当時)に夜遅く直訴に行って成果を上げた突撃精神の持ち主だ。非自民で市長になってからもそのパワーで国の予算をしっかりとっている。つまり、強いものにはしたたかに立ち向かい、弱者には温かく寄り添う市政だったのだ。宝塚が属する兵庫県内で2位の人口増加率というのもうなずける。各地の選挙によく参画する筆者も、街を回ってこれほど温かい声援に毎日包まれる候補に出会ったことがない。給食も病院も民営化してしまえ、福祉より観光・企業誘致に財政を使い街おこしを!と叫ぶ対立候補に絶対市政を渡してなるものか、と筆者は応援の身でありながら実感してしまった。あとはその分厚い支持層が投票に行ってくれたら勝利は間違いない・・・。
投稿
皆さんはフィリピンと聞くと、どんなことを思い浮かべるのでしょうか。
治安の悪い発展途上国、最近何かと話題のドウテルテ大統領、日本人に人気の語学留学国などなど、人それぞれいろんなイメージを持っていると思います。
私自身はフィリピンという国に対して、特別マイナスなイメージもなく、フィリピン人の友人がいるので、フィリピンについてある程度わかっているつもりでいました。しかし、実際行って見て、いろんなことに驚かされました。
フィリピンは基本的に農業国で、バナナやココナッツ、サトウキビ、たばこなどが有名です。林業、工業なども盛んで、ビジネス・プロセス・アウトソーシング?(BPO) =自社の業務のプロセスの一部を継続的に外部の専門的な企業に委託すること=は観光と並び、今後フィリピンで最も成長するであろう産業と見られています。
特にコールセンター業が有名で、労働力が安価であることと教育水準が高いことに加えて、元々アメリカの植民地で(1898年―1946年)公用語が英語ということもあり、欧米企業に人気で、インドを抜いての委託先になっているそうです。
そのほかに、看護師、英語教師なども人気です。経済成長が続いているにもかかわらず、東南アジアの中でも貧しい方であり、「万年出遅れ組」と呼ばれることもあります。
実際にインフラなどが整っておらず、水などはそのままでは絶対飲めず、インターネットは普及していますが、スピードが日本と比べると格段と遅く、ページ一つ開くのに数十秒かかります。車などは、古いマニュアルの中古車が多く走っていて、トラックなどを改装したジプニーと呼ばれる車がバスに代わる主な交通手段となっています。高速道路は一部区間のみで、道はほとんど整備されていません。
マニラは渋滞が日常茶飯事で排気ガスによる大気汚染がすごいです。また、格差がものすごく、都会には高層ビル、マンションが連なっている一方で、郊外に出ると古く修繕もされていない家が狭いところに密集して、テントみたいな家もあります。
またマニラは危険な都市で、外国人が一人で出歩くことができません。フィリピン人でさえ車の運転の際、窓は開けず鍵もかけます。歩きスマホなんてしていたらいつひったくりにあうか分かりません。日本がどれだけ安全か実感しました。そのほかに驚いたのは、仕事中におしゃべりをしながら、スマホをいじる従業員をよくスーパーで見かけたり、売り上げを全然考えない商品の陳列などです。
その一方で、良い部分として家族をほんとうに大切にし、親しみやすい人柄です。家族とのつながりが非常に強く祝日には親戚が全員集まり、食事をしたりします。フィリピン人の4人に1人が海外に出稼ぎに行っていて、フェイスブックを利用して自分たちの近況を知らせます。毎日更新する人も少なくないと聞いています。フィリピンが世界でインターネットの一日平均利用時間が一番長いのもこのためかもしれません。
そして、私がフィリピン人の方の家にお世話になった時には、こっちが逆に負担に感じるぐらい何でもしてくれます。食べた食器を片付けるのさえ許してくれません。また、初対面でも積極的に話しかけてきて、フィリピン人には人見知りの人がいないのではと感じた位です。とてもノリがよく、歌とダンスが大好きで各家庭にカラオケがあるほどです。
フィリピンに来て、日本とのギャップに驚くと同時に、苦しい状況の中でもポジティブで、家族のために一生懸命な姿を通して学ぶことが多くありました。いつかまた、訪れたいものです。
緊急 講演会のお知らせ
何なのですか? トランプ大統領。
全然違うじゃありませんか?
親ロ、親プーチンではなかったのですか?
北の指導者とも話す用意があったのでは?
世界の警察官の役割はもう果たさないと言ったのでは?
これを言ったのはたった3カ月前ですよ。
何の客観的検証もなしに化学兵器・サリンによるアサド政府軍の仕業と決めつけ、「人道的怒り」からシリアにミサイルを59発落とし、親アサドのロシアとは「史上最悪な関係」と言い、「北朝鮮は問題だ。中国が動かないならアメリカが単独でも行動に踏み切る」と原子力空母を朝鮮半島近海へ向かわせる。
原爆以外の兵器ではその破壊力が最大級の大規模爆風爆弾「モアブ」をISの地下施設の破壊のためとしてアフガンで初めて実戦使用。
「この8週間で起きたことを見れば、過去8年間(オバマ政権)と比較して、とてつもない違いが分かるだろう」と記者会見で誇ってみせる。
この「何でもあり」トランプ政権の下、朝鮮半島情勢が一触即発の緊迫した情勢に置かれている。これは言うまでもなく日本にとっての平和か戦争かの危機でもある。
報道で指摘されているように、シリアやアフガンへの攻撃は、「北朝鮮へのけん制」が本来の目的と言われている。なぜなら、アメリカの覇権戦略にとって「北朝鮮」の「核とミサイル」が最大の脅威・障害になっているからに他ならない。シリアの科学兵器・サリンを理由にした攻撃に対し、真っ先に「支持と評価」を表明し、「北の化学兵器とサリン弾頭の着弾能力」について発言したのは安部首相と菅官房長官だ。即ち「北」への攻撃の正当性の下地作りが行われている。
また、アフガンに投下された「モアブ」は、トンネルや洞窟などの地下施設が狙われたが、「北」の要塞としての地下トンネル網は有名だ。ノドンやスカッドなどの弾道ミサイルを搭載した移動式発射台などが運用されている。「北朝鮮を念頭においた政治的メッセージ」(FOXニュース)と指摘される所以である。
一言でいって最大級の軍事的圧力が「北朝鮮」にかけられており、それに対し一歩も引かない「北朝鮮」。軍事的衝突が起きた時には、沖縄の米軍基地をはじめとする日本国内にある米軍基地がその「核・ミサイル」攻撃対象になるという事態が招来しているということである。
沖縄の問題も原発の問題もすべて巻き込んでいく、この朝鮮半島事態に対し、私たちは何をなすべきなのか。その答えを得るためにも、先ずは知らなくてはならないと、緊急講演会を開くことにしました。講師は「文化・学術・市民交流を促進する日朝友好京都ネット」の理事・佐々木道博氏。訪朝経験も豊富な佐々木氏から、@米朝関係の歴史、A「北朝鮮」の核とミサイルの本質、B中朝関係の真実と現住所、C「北朝鮮」の今、D日本の国益は「敵対なのか友好なのか」などの視点から直近の韓国大統領選挙の分析なども合わせお話を聞きたいと思います。多くの方の参加を呼びかけます。
講演会案内
「緊迫の朝鮮半島情勢―日本の国益は」
講師:佐々木道博氏(日朝友好京都ネット理事)
日時:5月13日(土)18時30分〜
場所:大阪東成区民センター602号
(地下鉄今里駅、2番出口 徒歩2分
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