研究誌 「アジア新時代と日本」

第152号 2016/3/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 朝鮮戦争の危機、日本の平和を守る道は何か

議論 <依存>と<自立>をめぐって

寄稿 戦争の危機に直面する東アジア情勢

時評 新電力への契約切り替えが日本を救う




 

編集部より

小川淳


 立憲主義は保守的平和運動か?
 「成立したら下火になる」と言われた反安保法制の闘いが続いている。反安保法案だけでない。沖縄辺野古の基地移転に反対する「オール沖縄」の闘い、そして原発再稼働に反対する脱原発の闘いも「反アベ」の闘いとして一つになった。それは昨年の反安保闘争が新しい闘いの「地平」を切り開いたからだ。60年安保、70年安保に比類しうる闘いを作り上げたことを誇っていいし、あの闘いを、2015年安保と呼んでもおかしくないと思う。
 「学者の会」などデモの先頭に立ってきた中野晃一(上智大教授)は「個人の尊厳、自由をあくまでも重視していて、どこかにドグマがあったり、従わなければならないリーダーがいるわけではない。普段の生活をしながら主権者の一人として政治にかかわっていく。そういう人たちが集まった運動は、戦後の日本で初めてのことだ」と高く評価している。
 私たちも同感だ。これまでの運動(たとえば70年安保)とは「違う」内実を持った運動という印象を持つ。SEALDsに代表される若者の登場とその運動スタイルの斬新さは衝撃的ですらあった。彼らの登場によって運動の局面はがらりと変わった。道行く仕事帰りのサラリーマンや主婦などが足を止めて何重もの人垣ができてSEALDsの訴えに耳を傾ける。そのような光景を私も何度か目にした。これまでの「左翼運動」は大衆から遊離したものだった。大衆が支持する左翼の運動、それを左翼と呼んでよいのかわからないが、昨年はこれまでにない形、新しい左翼(リベラル)の運動が登場した画期的年だったと思う。
 今回は保守やリベラル、左や右を超えた「幅の広さ」でもこれまでとは決定的に違った。学生や高校生、ママさん、全共闘経験者、学者、文化人、俳優や芸能人まで幅の広い人々が声を上げ、一つになった。
 70年安保世代の中には、この闘いを「保守的平和運動」と見る人が少なくない。反安保法案の闘いは、つまるところ「立憲主義」の闘いだ。では「立憲主義」は保守的平和主義なのか。そうは思わない。日本の政治の流れには憲法と安保の二つが絡み合っている。しかし自民党政治の軸足はこれまでずっと憲法でなく安保にあった。それは沖縄の基地問題をみれば明らかだ。だから安保から憲法に政治の軸足を変えるだけでも日本は劇的に変わる。「立憲主義」に多くの普通の人々が共感を示しているのは、そこに社会を変える(変革する)力があるからだ。「現状変革的な平和運動」、それこそが立憲主義なのだと思う。



主張

朝鮮戦争の危機、日本の平和を守る道は何か

編集部


 現在、朝鮮問題が政治の中心問題の一つになっている。
 朝鮮の水爆実験、人工衛星打ち上げをめぐって、日本政府はアメリカ・韓国とともに独自制裁を決定した。さらに国連での航空燃料輸出禁止、鉱物輸入禁止などの厳しい制裁決議が決まった。
 核実験について言えば、朝鮮は核拡散防止条約(NPT)を脱退しており、違反や制裁もないはずだ。事実、インドやパキスタン、イスラエルは核保有しても制裁を受けていない。人工衛星打ち上げも各国に宇宙開発する権利があり、国際機関に通知したうえで行っている。人工衛星を打ち上げで制裁を受けた国は他にない。
 したがって、アメリカなどの独自制裁や国連安保理の制裁決議になんら正当性はない。要は、朝鮮が軍事的力をもつのは許さないという覇権勢力の要求から出たものだということができる。
 そのうえ、アメリカは3月7日から4月末まで、米軍1万7千、韓国軍30万人が参加する史上最大の米韓合同軍事演習を開始した。すでに核弾頭を搭載したB52戦略爆撃機、原子力空母、F22ステルス戦闘爆撃機、中距離ミサイル部隊の展開などをおこなっている。この演習は朝鮮にたいする核先制攻撃を想定したものであり、その中には「斬首作戦」(暗殺作戦)があり、そのための海兵隊特殊部隊「シールズ」(ビンラデインを暗殺した部隊)が投入される。
 毎年、行われる米韓合同軍事演習は恒常的に朝鮮に脅威を与えるものであり、今年は規模が最大だけでなく、質的に首脳部、ミサイル基地などを先制的に侵攻するという極めて攻撃的なものとなっている。
 これにたいし、2月24日朝鮮最高司令部声明では、「斬首作戦」「ピンポイント作戦」のわずかな動きでもあれば第一に青瓦台、第二にアジア太平洋の米軍基地とアメリカ本土を先制攻撃すると、かつてない激しい姿勢を明らかにしている。また、配備している核弾頭を任意の時刻に発射できるようにし、これまでの防御から先制核攻撃態勢に転換するとしている。
 最高司令部声明に応え150余万名の労働者、青年たちが人民軍入隊を嘆願したことは、朝鮮国民が自国の主権を守ることをいかに死活的に考えているかを物語っている。
 一方で、自国の主権と安全を守るための核開発とミサイル、他方で、それにたいする制裁強化と軍事演習の繰り返し、これではいつ正面衝突、全面戦争に事態が発展してもおかしくない。
 一言で、朝鮮半島は、戦争前夜の様相を呈していると言って過言ではない。

■今日、朝鮮問題は、朝米全面対決の中で日本がどういう立場にたつかの問題
 朝鮮半島で朝米対決が戦争直前に至っていることは、日本にとって必然的に戦争当事者となることを意味し、これにどう対処するのかを突きつけられている。
 日本にはアジア最大の米軍基地が置かれている。在日米軍基地は、アジア全域の前進司令部、海兵隊などの即戦能力をもつ部隊の発進基地、兵站基地、中継基地、訓練基地などの重要な役割を担っている。
 昨年来、安保法制を成立させ、米軍とともに戦争をおこなう体制を確立し、日韓慰安婦問題の合意を契機に、米日韓の軍事一体化がすすめられた。
 この下での米韓合同軍事演習であるため、日本も必然的にこれに大きく関与する当事者になっているということだ。
 したがって、朝鮮最高司令部が言明している米軍基地への先制攻撃は、当然、日本にも向けられる。これは日本が核攻撃対象になったことを意味する。
 今や、日本はアメリカの戦争に加担し、その戦場になるか否かの事態に至っているということだ。朝鮮戦争が勃発すれば、日本は再び広島・長崎の核の悪夢に見舞われるということだ。この事態を直視すべきなのではないだろうか。
 現在、朝鮮をめぐるこの一触即発の戦争への危険性に対し、日本がどう対応するかが、もっとも重要な問題として提起されている。

■日本の平和と安全の保障は、「日米同盟」の抑止力なのか、平和憲法の主権尊重なのか
 安倍首相は「日米同盟が抑止力」だと述べている。日米同盟が戦争抑止力なら、日本が戦争に引き込まれるようなことにはならないはずだ。しかし今日、朝鮮敵視政策にしがみつくアメリカ主導による制裁と、史上最大規模の核先制攻撃や指導者の暗殺を想定した軍事演習により、朝鮮半島の緊張はかつてないほどに高まっている。
 これまで朝鮮は制裁や軍事的圧力にたいし、一度も屈服したことはない。「日米同盟」の力で制裁と圧力を強めれば強めるほど、朝鮮は戦争を辞さない姿勢で主権を守る立場を鮮明にしている。
 「対話を引き出すための制裁だ」とアメリカは言っているが、「制裁」で対話を引き出せたことがあったのか。緊張を高めてきた元凶ではないか。
 今日の事態は、「日米同盟」こそが日本とアジアの平和を脅かす戦争の根源となっていることを示している。
 菅官房長官は「あらゆる事態に対応できるようにしていく」と述べているが、防衛態勢をとるわけでもない。日本政府が事態の深刻さを直視しえず、対応できないでいるのは、アメリカの朝鮮敵視政策に追随してきたツケのあまりの深刻さに、当惑しているからなのだろうか。
 日本の平和と安全を保障する唯一の道は、平和憲法を実現し、日本を平和国家として世界に率先垂範していくことだと思う。
 かつて侵略戦争をおこなった教訓から、自衛権を有しても、自衛戦争を放棄し、戦力保持と交戦権を否認したのが、九条だ。
 在日米軍と自衛隊は、世界でも有数の「戦力」となっており、在日米軍が朝鮮人民軍と戦闘を繰り広げれば、日本が交戦権を米軍に委ねて行使したことになる。これは違憲だ。
 「日米同盟」は結局、戦争と破滅の道であり、憲法九条の率先垂範の平和国家として朝鮮との友好関係を築いていくことが日本とアジアの平和に寄与していく道だ。
 憲法前文で「われらは、いづれの国家も、自国のことのみ専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信じる」というのは、各国の主権と自主性を尊重することによって、自国と世界の平和を実現していく途を明らかにしている。
 戦争の危険を除去し日本の平和を実現していこうとすれば、朝鮮を無視、圧迫せず、対話による相互理解を深め、敵対的関係から友好関係に転換させることである。
 しかも、朝鮮はかつて35年間も植民地支配をした国であり、戦後70年経っても戦争責任の清算と国交正常化をおこなっていない隣国だ。

■求められる主権尊重、主権確立
 戦争前夜までに至った朝米関係の根本原因は、アメリカが朝鮮の主権を認めず尊重しないところにある。日本もアメリカに従って朝鮮を主権国家として認めず、制裁や軍事的圧力に手を貸してきた。
 したがって、日朝友好関係を確立する大前提は、なによりも相手国の主権を互いに尊重することだ。
 核保有しミサイル開発していても、主権を尊重し敵対の芽をなくしていくなかで、核脅威がないようにすることができる。
 朝鮮の主権を尊重していくためには、日本の主権を確立しなければならない。主権の尊重と主権の確立はメダルの裏表の関係だ。
 これまで金丸訪朝での三党合意、小泉訪朝での平壌宣言が覆されたのも、アメリカの圧力が働いている。ストックホルム合意も安倍政権がアメリカに追従して独自制裁を行い、破綻に至らしめた。アメリカの意のままであれば、日朝友好に向けた外交も主見をもって行なっていくことができない。
 朝鮮問題で主権を確立するとは、アメリカの朝鮮敵視政策に追随しないことだ。
 日本の平和と安全のために重要なのは、「日米同盟が抑止力」という古い思考方式から脱し、平和憲法を具現していくことであり、主権尊重、主権確立で日朝友好関係を確立することではないだろうか。



議論

<依存>と<自立>をめぐって

 


 2月号の「現代・老人の貧困」<依存できてこそ、自立できる>に対して、いくつかの疑問や感想が寄せられました。ここに紹介し、議論が更に深まっていくことを願うものです。

※        ※        ※

 K・E氏「筆者も<この一見矛盾した考え方>と書いていますが、<依存>と<自立>は対極にあるものではないでしょうか? <依存>とは人に頼って生きていくことだから<自立>とは相いれないのでは。また、<薬物依存>であるとか<依存体質>など、<依存>という言葉にはマイナスなイメージがあります。」
 筆者「<依存>という言葉ですが、元来、社会的、共同体的存在である人間にとって、<依存>は大前提であり、それを自覚しそれに感謝して、自らが担った位置で踏ん張り、役割を果たしていくのが人間本来の生き方なのではないかと思います。その「依存」が何か悪いことでもあるかのように、<自立><自己責任>を心がけさせられているのがこれまでの社会だったのではないかと思います。それであえて<依存>という言葉を使いました。他にも、こういう言葉は多々あると思います。」
 K・E氏「人間にとって<依存>は大前提? 今まで聞いたことのない言葉で<ハッ>とさせられるところがあります。そう言えば、人間生まれてから死ぬまで人に依存しないで生きられる人は誰もいませんね。でも、子供時代と老人になってからは別として壮年期と言われる時代は<依存>してはいけないのでは?<自己責任>という言葉も冷たくて良いとは思いませんが<依存>という言葉に対してもやはり後ろめたさのような感情がつきまといます。日本語には<人様のおかげを被って生きる>という言葉がありますが、これだと<おかげに報いる>となりますが、<依存>では頼る一方というイメージがあります。言葉の問題ではなく、人間の存在様式についての問題提起、人間の存在様式にあった社会とはどのような社会なのかという問題提起と感じました。」
 筆者「その通りです。私が提起したかったのは、人間の存在様式、あり方の問題です。人間のあり方を個と集団の関係性の見地からとらえるということです。すなわち、個を個としてではなく、集団の中の個としてとらえ、社会的存在としての人間のあり方を見ていくということです。これまでこの見地が弱く、ただひたすら個のあり方の問題として人間のあり方、生き方を追求するという傾向が強かったのではないでしょうか。意識的に個と集団を対立させ、集団そのものを否定する新自由主義、グローバリズムはその極致だと言えますね。これは、本来、支え合って生きていく人間生活の真理をその根本から否定するものだと言えます。<老人の貧困>ばかりでなく、子どもや女性の貧困、ひいては、出口の見えない世界的な長期経済停滞や果てしないテロと戦争、難民問題など、今、世界中に広がっている混迷、混乱と不幸、すべての根底にこの国や民族などあらゆる集団を否定する誤りが横たわっていると思います。
 もちろん、それは、<お家>や<お国>第一のいわゆる<日本型集団主義>の昔へ戻れと言うのではありません。その誤りは、すでに歴史的に検証されていると思います。ではどうするのか。K・Eさんが言われるように、<依存できてこそ、自立できる>は、そのための一つの問題提起だと考えていただければと思います。<依存>とか<自立>とか、といった言葉をあえて使ったのは、その方が読む人の思考を喚起するのによいのではと思ったからです。元来、新しいことを提起するためには、新しい言葉や言葉の新しい使い方が必要だと思います。そういうところから言えば、老人が自らの生活や介護を国や社会、家族などに<委ねる><託す>などといった言葉を使った方が適切でしょうね。また、<自立>というのも、個人として誰にも従属しない、頼らないというのではなく、自身を委ね託した自分の集団における自らの位置を自覚し役割を果たすということになるのではないかと思います。国や社会、どんな集団にも、老人には老人の、その人にはその人の位置と役割が必ずあり、それを守り果たして生きていくところに社会的存在としての人間のあり方、生き方があり、人としての喜びも幸せもあるのではないかと思います。
 今、日本においても世界においてももっとも切実に問われているのが、一人一人、誰もが皆、自身を託し、自身の位置と役割を守り果たしていくことのできる自分の国、自分の社会、自分の集団を持つことにあるということが見えてくるのではないでしょうか。それがない、いや破壊されていっているところに現代日本と世界の混迷と不幸の根源があるのではないかと思います。日本においてその要求に応える上で、何よりもまず、米国言いなりに新自由主義、グローバリズムを全面化する安倍政権の退陣が必要なのですが、その政権交代を実現すべく登場してきている<新しい民主主義>がこれまでの古い民主主義とは異なり、人間のあり方、生き方の問題を個と集団との関係性の見地からとらえる新しい視点、<質>とでもいうべきものを持ってきているのが重要だと思います。言い換えれば、これまでの民主主義が人間の個としてのあり方を追求した民主主義だったとすれば、新しい民主主義は、個と集団の関係性の新しい見地から人間のあり方を追求する民主主義だと言えるのではないかと思います。それは、SEALDsなどが一人一人の尊重や「個人としてどうなのか」を問い強調しながら、一方で<立憲主義>を掲げ、日本のあり方、進路を追求しているところにも現れているのではないでしょうか。少し問題が大きく広がりました。しかし、これが今、新自由主義、グローバリズムとの闘い、米覇権回復戦略との闘いで、全世界共通のものの見方、とらえ方になってきているという時代的な視点こそが今もっとも問われて来ているのも事実ではないかと思います。」

※        ※        ※

 Y・Y氏「『アジア新時代と日本』152号の<現代・老人の貧困 依存できてこそ自立できる>というKT氏の論文を読んだ。うん?、と思った。依存・自立、という言葉は日常的に良く使っている。「他人に依存せずに、自立しろ」と一般的に言われている。<生活保護を受けるなんて最悪の人生だ>ってのは、<常識>。しかし、身近な所に生保を受けている人間がいる。働こうにも就職先が無い。あっても、非正規・低賃金で、病気や怪我をすれば、貯えが出来ていないので、生保に逆戻り。高齢者であれば尚更のこと。親の支えが無い若者も同じ。KT氏の言うことに頷くしかない。という思いの下で、再度考えることにした。
 <依存>とは何か?<自立>とは何か? 滅多に開かない辞典・大辞泉(小学館発行)で引いてみた。その結果、<依存>は、他に頼った存在、又は生活すること。<自立>は、他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに存立すること、となっていた。因みに、<寄生>を調べると、他の働きなどに頼り、生きていること、となっていた。依存と寄生は、他に頼るという点で、よく似ている。では、どこで区別すればよいのだろうか? 私が思うに、その生命体がどのような存在か、によるのではないかということ。例えば<寄生虫>は、生まれてから死ぬまで、全生活を寄生体に委ねていて、寄生体と共存することはない。では、人間はどうか? 人間は社会的存在である。故に<個>では生きていけない生物だ。だからこそ人間は、<助け合い><扶助><相互依存>をする。それが<当り前>なのだ。こんな<当たり前>のこと=<依存は大前提>を、余り気にもせずに過ごしてきたことが恥ずかしい。
 <依存は大前提>と見ると、高齢者や生活困窮者だけでなく、障害者(敢えて<害>を使う)の持つ様々な問題も見えてくるように思う。歴史的にも障害者は、差別され、劣悪な生活環境に置かれてきた。支配層や裕福な家庭の子弟だけが、生存を許される状況でもあった。ドイツ・ナチスのヒットラー政権では、計画的に<処理=虐殺>されてきた。<社会に『迷惑』をかけている存在>として。だから、高齢者も生活困窮者も障害者も、<社会に『迷惑』をかけないように>と努力している。でも<依存は大前提>となると、そんな努力はいらない。必要なのは、<人間としての尊厳>の奪還であり、依存して生き合える集団を持つことだ。そこでは、ただ生きるのではなく、自らの位置を見出し、役割を果たそうと生きて行く。それが、<自立>と言えるのではないだろうか。<依存できてこそ自立できる>読み、そんな思いがした。」 


 
寄稿 核実験と人工衛星の成功に恐れをなす米韓日

戦争の危機に直面する東アジア情勢

M・S


■朝鮮の衛星(EMP核爆弾)にロックオンされたアメリカ
 2月7日産経新聞報道によると米大統領選挙演説で、クルーズ上院議員が、朝鮮の人工衛星の打ち上げにあたって「北朝鮮が人工衛星に核兵器を載せ、EMP(電子パルス)攻撃により米国の送電線をまひさせる可能性がある」と指摘し警戒を呼びかけた。
 12年4月、「アジア新時代」の論評で、過去の朝鮮の核実験がEMP爆弾の実験ではなかったのかという元CIA幹部ピーターフライ氏の検証が紹介されていたが、同年12月12日の人工衛星実験では極軌道に衛星と見られる物体を侵入させた。高度約500kmである。今もその衛星は地球を周回しているとハーバード大学の教授は明言している。
 極軌道では毎日アメリカ上空を周回し続けているのである。しかも上空500qといえばEMP(電子パルス核爆弾)に最適の距離である。ここで爆発があれば、アメリカ全土の送電線だけでなくすべてのコンピューター、通信、産業機械もすべて動かなくなりアメリカ全土が石器時代に戻ると言われている。人を殺傷せず兵器体系、産業、農業、通信、電気などすべての文明機器が動かなくなる。まさに恐怖の武器である。そして同時に宇宙空間に浮かぶ衛星の大半も破壊され世界の通信、衛星放送、GPSも無力化される。当然誘導装置の装備されたミサイルなども全く役に立たない。
 今回の大統領選挙に立候補しているクルーズ上院議員は、共和党の中枢にも近くトランプ氏のような政治素人ではない。アメリカ国防総省やCIAなどの機密情報も知っている。今回の人工衛星もまた極軌道上に2個の衛星らしき物体が周回しているという。前回のものと合わせて3個が周回し、いつ爆発があってもおかしくない状態である。クルーズ上院議員は大統領選挙の演説で本音を漏らし米国民に警戒を呼びかけたのである。既にアメリカ全土が朝鮮の衛星(EMP電子パルス核爆弾)によってロックオンされている状態である。アメリカ自身が恐怖におののいているというのが実態であろう。
 今後、3月の米韓軍事演習などで緊張は高まるが、既に勝負はついた。アメリカに自国の壊滅を覚悟して朝鮮と戦争する覚悟はない。朝鮮と米国の停戦協定から平和協定への話しあいは早晩開始されるだろう。韓国朴政権の焦りと恐怖は極限化している。開城工団閉鎖に突き進む異常行動もこうした事が背景にある。
 アメリカは、日米戦争(1945年)勝利より戦後70年一度も戦争に勝ったことがない。こんな国がなぜ世界一の軍事力と宣伝されているのか?敗戦の果ての対米従属の結果であり、全くの幻想である。アメリカは、太平洋戦争(日米戦争)以来、朝鮮戦争では、引き分けの停戦協定の状態。ベトナム戦争では、10年戦ったが完敗。その後、湾岸戦争やアフガン戦争イラク戦争といずれも途中で撤退。シリアにおいてもロシア任せ。こんな国がなぜ世界最強の軍事力と宣伝されているのか、これは日本の対米従属の結果であり事実とは大きく異なるのである。近年はアメリカの力の源泉はドル支配だけとなっていた。このドル支配も今年正月以来制御不能の金融危機に陥っている。今年はアメリカ支配の終焉を告げる年になるであろう。アメリカ大統領選のトランプ旋風やサンダース現象が表すようにかつてのアメリカの姿はそこにはもう存在しない。
 アメリカは08年10月にテロ支援国指定解除、09年に戦略的忍耐方針を出した。これはアメリカが朝鮮との全面対決を避ける方針を確定したということだ。06年7月のミサイル実験、同10月の核実験に衝撃を受けたブッシュ政権は、政権最後の時期08年10月、朝鮮へのテロ支援国指定解除を決定した。そして09年、オバマ政権誕生直後、朝鮮による2回目の核実験とミサイル実験に直面し、朝鮮に対し「戦略的忍耐」を政策とした。
 既にこの時点でアメリカは朝鮮とは関わりたくないし戦争もしたくないと表明したに等しい。またこの頃より朝鮮労働党や軍の幹部も公然と「我が国一国だけでアメリカ帝国主義を倒せる」と明言し始めた。
 10年以降には度々哨戒艦沈没やヨンビョン島砲撃事件などあり、その都度韓国軍が「北」にスクランブルを掛け空爆の準備をしたが、米軍は全面戦争を恐れて、スクランブルを阻止してきた歴史がある。だが12年12月、朝鮮の人工衛星の成功と翌年の核実験に対する国連制裁決議に朝鮮が反発し一気に全面戦争の危機を迎えた。
 そして今回の核実験と人工衛星に対し同様に国連決議がなされ、かつてない危機的状況が再現されている。今回ばかりは小さな衝突が一気に全面戦争・核戦争へ向かう危機さえ孕んでいる。朝鮮の戦略は「戦わずして勝つ」であり、米軍の南朝鮮からの撤退と南北統一の実現ではあるが、いつ戦争が起こってもこれに対処する覚悟をしていると見てよいだろう。

■今年は停戦協定を平和協定に転換する画期の年になる
 朝鮮は既に、核とICBMを保有し米、露、中、に並ぶ世界4大軍事大国になっている。(イギリスやフランスは核とSLBM=潜水艦発射型)。 朝鮮とアメリカが開戦すれば、かつてない規模の第3次世界大戦となることは確実だ。だがアメリカに自国の滅亡を覚悟して戦争をする度胸はない。朝鮮側から発せられる日々の恫喝にも黙ってやり過ごすしかないのが現状である。
 昨年アメリカは、65年ぶりにキューバと国交正常化をした。また、イランとも36年ぶりに関係改善をした。今年が朝鮮との和解の最大の機会である。アメリカ経済も既に世界を制御する力もないし、なおさら軍事的には敗北続きで、世界の「警察官」役の辞退を宣言している。今年が、朝鮮とアメリカの和解へ、朝鮮敵視政策放棄、停戦協定を平和協定に転換する年になるであろう。

■朝鮮とアメリカの対決と和解は日本の政治に決定的な影響を与える
 弱体化したアメリカにしがみ付き対米従属を深めようとする安倍政権はなんと惨めな存在であるか。アベノミクスは破綻し、TPPはアメリカ大統領候補の1人も支持していないし、破綻確実。また拉致問題も頓挫、沖縄基地問題も時間稼ぎの和解協議。安倍政権の掲げた目標はすべて頓挫し、末路は見えた。参院選に向けて野党連合も進んでいるようではあるが、こと朝鮮問題については、共産党まで大政翼賛会に入り朝鮮への制裁に賛成している。まさに安保法制の集団的自衛権の対象が朝鮮半島危機であり、その仮想敵国は朝鮮民主主義人民共和国である。その朝鮮を自民、公明、民主党などと一緒に攻撃して制裁を要求している。こうした態度で安保法制反対や集団自衛権反対などできるはずもない。(人類史の中で核実験は、2000回、人工衛星打ち上げは9000回あった。朝鮮以外に制裁など1度も無かったが、こうした事に疑問も持たない政治家たちは異常としか言いようがない)山本太郎(その他1名の)議員はこうした朝鮮糾弾決議を棄権したそうである。これは至極当然の事である。民主維新や共産党が連合して参院選では今よりましな議席を取れるかもしれないが、この激烈なアジア情勢に対処できるはずもない。また、かつてないマイナス金利をやらざるを得ないほど危機が進行している金融情勢に有効な経済政策も持てずして政権獲得など到底できないだろう。今、アメリカで進行中のトランプ旋風やサンダース現象を良く研究すれば回答は出る。既成の政治に国民がほとんどノーを突き付けている。トランプ氏、サンダース氏は、立場は違えども本当の事を言っている。トランプ氏は、アメリカの国の借金は90兆ドル(政府発表17兆ドル)日本円で1京円である。また政府は失業率5%と言っているが、実は28%〜42%であると暴露している。対外政策もグローバリズムに異を唱え海外への軍隊派遣にも「警察官」をやめ仲介者になれと主張している。またサンダースは、自ら社会主義者を名乗り1%の金持ちの為の政治に対し革命を主張している。既にこうした傾向は、ヨーロッパのスペインやイギリスでも見られ最左派の伸長も著しいし、また難民排除の政党も急伸している。まさに左右の激突である。しかしどちらもグローバリズム反対では一致しているように見える。アメリカ・ヨーロッパの国際金融が進めたグローバリズムに反対する機運が世界に満ちている。朝鮮のように自主、自立、自衛の国の方針がいずれ世界から大きな評価を得る事だろう。日本においても対米従属を脱し、自主、自立の道が求められる日が来る事だろう。



時評

新電力への契約切り替えが日本を救う

平 和好


 このところ日本の原発を取り巻く大きな動きが連続した。まず、政府と関電が大きな反対の声を押し切って高浜原発を再稼働させた。しかし、高浜4号機は再稼働のスイッチを入れたとたんに警告ブザーが鳴り響き、緊急停止した。原発の緊急停止は火力・水力と違い、それ自体が大変危険である。「トラブル」と関電は発表するが、緊急停止は原発史上でもめったに無いらしい。日本での前回は5年前の福島第一原発。4号機は9日前にも冷却水漏れの重大事故があったばかりで、対策もそこそこに慌てて再稼働させた結果がこれだ。取りあえず3号機だけを運転したが、3月9日、大津地裁が高浜3・4号機の運転差し止め決定を出した。画期的な住民勝訴の決定だ。法的拘束力が直ちに発生するので関電は翌日すぐ3号機も停止させざるをえなかった。昨年の福井地裁樋口裁判長に続く勇気ある判決を山本裁判長が出された事に深い感動と敬意を表したい。

■大チャンスを逃がしてはならない
 大株主と関電の利益しか頭にない経営者、年間何千万円もの実質の献金をせしめていた甘利汚職大臣をはじめ、電力業界と癒着する政府はこれからも原発再稼働を進めようとするだろう。金と権力に対応するすべが集会やデモ以外になかなか見当たらなかったが、かっこうの大チャンスが4月1日にやってくる。言うまでもない、電力自由化だ。消費者の6割は「原発やめて」と頼んでいるのに関電は聞く耳を持たない。お客さんの声をきっぱり拒否する会社の品物を買うことはできない、当たり前の事だ。

■新電力の申し込み具体編
 切り替えは電話一本で申し込める。「電気使用量のお知らせ」2月分を用意して新電力会社に電話しよう。いくら位の料金になるかすぐに教えてくれるし、約10分ほどのやり取りで契約が成立する。関電にはお断りの連絡をしなくても新電力が手続きをしてくれる。送電線は関電のものを使うし、その電気託送料金も含んでいるにも関わらず、ここでお勧めの大阪ガス、大阪いずみ市民生協とも関電より安くなる。関電も「うちも安くしまっせ」と言って顧客引き留めをしようとしていたが、「原発差し止めなら値下げは中止」と関電・八木社長が傲慢にも叫んだせいで、できなくなった。新電力はマンションや集合公営住宅でも契約できるし、新メーターをはじめ、初期費用などかからない。携帯電話会社のプランもあるがセットで割引になり、2年以内の解約は何万円もの解約金を取られることになるので要注意だ。(大阪ガスは2年契約の違約金が2千円だけ。)なお、電力会社から買った電気を使っている所もあるので全く意味がない。上記2社は原発の電気を不使用。

■命と平和のために力を行使する時だ
 4月1日にどれだけ関電の契約を減らせるかどうかが日本の破滅を防ぐカギとなる。原発がある限り必ず将来事故が起き、放射能汚染で犠牲者が生まれ、飲み水・食料が無くなる。それでもいい人は関電の契約をそのまま続ければいい。しかし過半数は原発がいやなのだから市民の義務として新電力に切り替えるべきだろう。いろいろ調査した結果、大阪の人は大阪ガス0120-000-555か、大阪いずみ市民生協0120-810-093がお勧めである。兵庫のコープも電力事業登録はしているが事業開始が準備できていないので大阪ガスしか選択肢が無い(3月5日時点)。大阪・兵庫以外の近畿圏は現状ではやはり大阪ガス。 さあ、電話一本で出来る効果的脱原発行動にあなたも決起しよう!あなたの電話が地球を救う。


ホーム      ▲ページトップ


Copyright © Research Association for Asia New Epoch. All rights reserved.