研究誌 「アジア新時代と日本」

第133号 2014/7/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 情勢発展、総括と展望 どうする、日本のこれから

時評 なかったことにしてはならない

時評 栄えある日本を取り戻す

案内 高作正博講演会 法改悪と集団的自衛権を考える




 

編集部より

小川淳


 示された反安部の民意、流れは変わった

 7月13日の滋賀県知事選で安倍政権が推した候補が敗れるという波乱があった。
 昨年の参院選で滋賀比例区の自公は5割近くを獲得し圧勝している。自公候補は元経産省官僚、内閣参事官という有力候補だった。嘉田知事が推す前民主党衆院議員の三日月氏との一騎打ちとなった。自民党本部の秘書6名が張り付き、人気者の小泉進次郎や公明党代表も応援にかけつけた。自公にとって「普通にやれば負けない選挙」(自民幹部)だった。
 こうした楽勝ムードの空気を一変させたのは、7月1日の集団的自衛権行使を認めた閣議決定だった。地元の自民議員は街頭の多くの人から問い詰められるようになった。7月1日を境に三日月陣営も集団的自衛権批判へと戦術を変えていく。
 三日月氏の勝因は、自公支持者が離反したからだ。閣議決定後の世論調査で安倍政権への支持率も下落した。公明党幹部は「集団的自衛権への支持者の反発が強い」と分析、菅官房長官も「安全保障が引き金になった」と認めている。
 原発再稼動批判も鮮明になった。「安全性」が確認された原発は無条件で再稼動を認める安倍政権にとって、それに真っ向から異を唱えた三日月氏に敗北した意味は限りなく重い。民意に反して再稼動を強引に進めれば支持率が下がるのは避けられないからだ。原発政策でも安倍政権は大きなジレンマを抱えることになる。
 10月の福島知事選では原発政策の是非が争われる。11月の沖縄知事選では普天間移転の是非が争われる。
 滋賀県知事選が安倍政権への評価をそのまま反映するものではない。しかし、自民支持者の21%がなぜ三日月氏に投票したのか。また公明党の期日前投票比率が参院選の10%から4%になぜ激減したのか。そこに集団的自衛権行使容認を認めない、原発の再稼動を許さない、はっきりとした「民意」を見ることができる。
 安倍政権は集団的自衛権行使容認に踏み切ることで、日本の安保政策の転換を「果した」つもりかもしれないが、決着がついたわけではない。閣議決定という9条否定、「戦争のできる国」への転換を許してはいけない。ワールドカップの熱い戦いは終わったけれども、安倍政権対民意の長い闘い、一次リーグ戦は始まったばかりだ。福島や沖縄で勝利すれば安倍政権に致命的となる。
 これ以上、暴挙を許してはならない。



主張 情勢発展、総括と展望

どうする、日本のこれから

編集部


 名護市長選勝利で明けた今年も、上半期が過ぎ去った。終わってみれば何とやら、結果は「一強多弱」、数にものを言わせた安倍強権政治がまかり通った。本誌が訴えた民意対安倍政権の闘いも、日本を二分する大闘争にはまだまだほど遠い。
 しかし、闘いはまだ始まったばかりだ。焦ったり落胆したりする必要は少しもない。事実、昨年末見られた、特定秘密保護法反対の闘いなど、新たな民意の高揚は、今年上半期、さらなる高まりへとつながった。そればかりではない。その民意を体現する主体の形成が、いまだ萌芽ではあるが、目に見えてきた。
 今、世界は、紛争の蔓延、「大乱」の様相を呈している。だがそれは、かつて世界を席巻した覇権抗争とは全く異なる。覇権の時代は終焉して久しい。今展開されているのは、民意の世界的、全面的な勝利か、覇権の回復への悪あがきかの闘いだ。この乱世にあって、安倍政権との闘いで問われているのは何か、議論を提起したい。

1 進んだ米覇権回復戦略の先兵化

 今年上半期情勢発展の特徴は、何よりもまず、米覇権回復戦略(リ・バランス戦略)のための日本の先兵化が急速に推し進められたことだ。それは、日米の軍事、経済一体化が決定的段階に達したこと、「日米隙間風」論など、日本の「対米自主化」印象づけが行われたこと、そして安倍政権のファッショ独裁化が進んだことに現れた。

■決定的段階に至った、日米の軍事、経済一体化
 日本の米覇権回復戦略の先兵化は、何よりも、日米の軍事、経済的一体化として進められた。言い換えれば、日本の軍事、経済の米国のそれへの組み込みだ。弱体化した米国・覇権力の日本の軍事、経済力による補強。一昨年夏、アーミテイジ・ナイ報告で集団的自衛権を行使できる「強い日本」が要求され、それから安倍政権樹立への流れが一気につくられたのは、記憶に新しい。
 集団的自衛権行使容認は、十数年前の米軍再編、自衛隊再編以来、指揮体系の統一、基地の共同使用、軍事演習の合同と進められてきた日米軍事一体化の総仕上げだ。これで実際に、米軍指揮の下、日米共同戦争ができるようになる。
 一方、経済の一体化は、アベノミクス、TPPなどを通して完成されようとしている。アベノミクスの三本の矢は、円の大増刷と公共事業大投資、雇用、農業、医療などの規制撤廃、等々、米超巨大独占の日本への全面進出と日本経済の新自由主義、グローバル化、アメリカ化、それにともなう国民国家、国民経済の解体を画期的に促進するものであり、TPPはそれをさらに全面的に加速するものだ。それらの一環として全国に開設される全面規制撤廃の国家戦略特区は、日米経済融合、一体化の先取りした姿になるだろう。

■「日米隙間風」論と「対米自主化」印象
 今年上半期、日米一体化の全面的進展とは裏腹に、「日米隙間風」論が流された。
 安倍首相の靖国参拝に対し、中韓などアジア諸国から激しい反発が巻き起こったとき、米国は「失望」を表明した。また、従軍慰安婦問題を否定する日本政府への猛反発で揺れる韓国への訪問に際しては、大統領オバマによる異例の「理解」言明があった。こうした歴史認識における米国の中韓などへの「理解」と日本への「失望」は、「日米隙間風」論を引き起こした。
 「隙間風」論は、歴史認識だけに止まらない。オバマ来日に夫人の同伴がなかったこと、TPP交渉での日米の激突、等々、今年上半期、とかく日米間の食い違い、不協和音が絶えなかった。その上、今回の日朝合意では、「安倍独走」説まで飛び出した。
 この「日米隙間風」論には、「食い違い」という意味合いと同時に、「対米自主化」という意味合いがある。それは、この間問題になっている集団的自衛権行使容認が、米国の要請を受けて日本がそれに受動的に応えているのではなく、どこまでも日本の方から進んで提起したものであるかのように描かれていること、また、TPP交渉で日本の独自性が強調され、昨年、安倍訪米時に、関税撤廃が「聖域なしではない」というオバマの言質を取ったことがあたかも戦後初の「自主独立外交」であるかのように喧伝されたこと、等々にも現れている。米国は明らかに、日本の「対米自主化」を宣伝している。
 なぜそうするのか。それは他でもない。日本を米覇権回復戦略の先兵にするためだ。日本が米国の言いなりになり、属国だと言われたのでは、米覇権回復戦略のため、いかにも使い勝手が悪い。日本が米国とは相対的独自の対米自主であってこそ、日本のアジア諸国への経済浸透はうまくいき、また、日本がアジア諸国と対立したときには、米国によるそれへの介入、覇権回復もより効果的に行えるようになる。

■民意を愚弄する安倍政権のファッショ独裁
 日米一体化と「隙間風」、この一見矛盾する米覇権回復戦略の先兵化については、本誌でもこれまで見てきた。しかし、先兵化はこれに止まらない。この上半期、安倍政権による民意を愚弄するファッショ独裁が顕著だった。
 民意の時代の覇権で特徴的なのは、民意を愚弄し利用してのファッショ独裁だ。ナチスに典型的だったこの特徴は、安倍政権にも顕著に現れた。
 戦後歴代政権でも、安倍政権ほど民意を気にしている政権はない。政権を奪回した最初から、安倍政権の合い言葉は、「(参院選まで)経済以外は口にするな」だった。景気回復を切実に求める民意に対し、この政権は、ただひたすら「アベノミクス三本の矢」で応えた。それもすぐ効果が現れる第一、第二の矢、円大増刷の量的緩和策、復興など公共事業への大投資策だった。他の政党がこれと言った経済政策を打ち出せないでいるのをしり目に、参院選は衆院選に輪をかけた安倍自民圧勝だった。安倍政権が特定秘密保護法や集団的自衛権などを持ち出してきたのはその後だ。
 こうした中、この政権がやったのは、「官製春闘」だ。ときの政権が労働者の賃上げ闘争の先頭に立ったのだ。アベノミクスで収益を上げた大手大企業に首相自ら頭を下げてベースアップを要請した効果は絶大だった。消費税引き上げ、社会保障の自己負担増など、国民生活を圧迫する一連の民意に敵対する政策にも関わらず、内閣と自民党への支持率は下がらず、「一強多弱」は、ますます揺るぎないものになった。
 特定秘密保護法や集団的自衛権行使容認など、国の命運を決める重要問題が、閣議決定という密室の採択で決められている、このファッショ独裁の現実は、米覇権回復戦略の先兵化のもう一つの重要な現れになっている。

2 民意体現の主体、その萌芽的形成

 今年度上半期、情勢発展の第二の特徴は、第一とは真逆の方向への発展だ。それは、民意を体現する主体の形成が、いまだ萌芽的にではあれ、始まったことに他ならない。
 もちろんそれは、日本維新の会やみんなの党の分裂、民主党内部の動きなど、野党再編への動向を指しているのではない。それが民意の受け皿づくりなどでは全くなく、その真逆の意味を持っていることなど、今さら断る必要もないだろう。

■平和、友好へ、かつてない民意の高まり
 この間、集団的自衛権行使容認など、「戦争できる国」に向けた安倍政権の政治があからさまに推し進められたのに対し、民意はそれに賛同していたのではもちろんない。逆に危険視し反対していた。数年来、減少傾向にあった改憲反対の世論が、逆に急増し、60%を超えたのは、何よりもその証左なのではないだろうか。
 また、国家間の友好を求める志向も高まった。日朝合意後の世論調査で、それに賛成が60%に達したのはその現れだと言える。  こうした平和や友好を求める民意の高まりは、それを体現し実現する主体の形成を要求する。

■民意を体現する主体の登場
 一昨年末の衆院選、昨年夏の参院選、ともに民意の受け皿の不在が指摘された。そこに安倍自民圧勝の第一の要因があった。問題は、民意を体現する、その受け皿をつくることだ。
 だが、言うは易しだ。その後の都知事選などでも、受け皿は生まれて来なかった。細川・小泉連合もそれたり得なかった。以後の選挙がすべて安倍自民の圧勝だったのはそのことを示している。
 では、日本の政治はお先真っ暗なのか。そうではない。真っ暗な中に光明が見えている。安倍政治に対して、政策を持って真っ向から対決する勢力が現れている。しかも彼らは、大胆にも、安倍政権に代わる新政権の樹立まで掲げている。それをこれまでの古い民主主義ではなく、新しい民主主義で実現しようというのだ。
 彼らは、すでに昨年、特定秘密保護法反対の闘いの中、「3年後には政治をひっくり返すぞ!」と叫んだ。叫んだだけでなく、今年、参院有志とともに「特定秘密の保護に関する法律を廃止する法律案」を参院議長宛に提出したし、参院の内でも外でも、脱原発など懸案の政策を持って広範に闘いを繰り広げた。「新しい民主主義」にしても、ただ掲げているのではない。来春の統一地方選挙では一万人の立候補擁立を宣言し、資金とボランティアの全国からの募集を開始した。さらに先の鹿児島2区の補選には積極的に打って出、新しい選挙のかたちを打ち出し存在感を誇示した。彼らが今、日本政治の暗闇に輝く一つの光明になっているのは確かだ。安倍政権による、マスコミを動員しての「山本太郎つぶし」がその悪辣さを増せば増すほど、民意を体現し実現する主体としてのその輝きは倍増、倍々増していくだろう。

■政治、経済、国防の新しいあり方を求めて  民意を体現する主体の形成は、日本の政治や経済、防衛の新しいあり方を模索する運動の中にもはっきりと見て取ることができる。
 これまで、ときの政権に反対する運動の中に、日本の政治、経済や安保、防衛の新しいあり方について模索し提起するということは絶えてなかった。専らときの政治、経済、安保、等々のあり方に反対するのに止まっていた。これでは、もはや民意に応えられない。それが今日、民意の受け皿の不在として現れるようになっている。
 世界と日本のあり方の根本的な転換、見直しが求められている今、民意が求めているのは、あらゆる部門、領域にわたる新しいあり方だ。これに応える運動が、いまだ萌芽的にではあれ、生まれてきている。そこに、民意を体現する主体形成への限りない可能性が秘められている。
 新しい民主主義、来るべき民主主義など、古い米国式民主主義を乗り越える、新しい政治への生き生きとした模索と実践がすでに始まっており、経済でも、資本主義の終焉を見据え、交換から贈与、競争から協力、等々、文明史的転換まで視野に入れた、原発ゼロの経済、「里山資本主義」、等々、これまでとは全く異なる発想の経済が追求され、大企業を見限り過疎の地域に飛び込む若者たちの流れまで生まれてきている。一方、日本をどう守るのか、具体的展望も方策もなく、ただ交戦権否認、戦力不保持の9条理念を唱えているだけでは許されない、そのような風潮が若者たちの間に生まれてきている。
 これは明らかに、改正国民投票法で選挙権年齢を18歳に引き下げた安倍政権ではなく、民意を体現する主体の側に無限の未来を約束している。


3 民意対安倍政権、闘いの展望を問う

 上半期情勢発展の総括でもう一つ必要なのは世界の情勢発展だ。日本の情勢発展の特徴が世界の情勢発展との関連でどのように展開され、それによってどのような問題が提起されるようになるか。

■深まる「世界大乱」と集団的自衛権
 紛争、内戦の蔓延。今、世界中至る所で血が流されている。これは今日、世界情勢発展を見たとき、もっとも大きな特徴の一つだと言える。安倍政権による集団的自衛権行使容認の重要な根拠もここに置かれている。このような乱世に国をどう守るのかということだ。
 東アジアの領土争奪戦。南シナ海、尖閣、竹島。中国内部のウィグル、チベットなど民族問題。タイ内紛とクーデター。中央アジアから中東へ、アフガン、パキスタン、イラク、シリア、クルド、パレスチナ、そしてエジプトの内紛とクーデター、慢性的内戦状態に陥ったリビア、等々。さらに、ウクライナ、アフリカ諸国の内戦・・・。もう、枚挙のいとまがない。
 民族的、宗教的、紛争の火種は全世界に満ちている。この火種を最大限に利用し、紛争、内戦を焚き付け、「世界大乱」へと煽っているのが米国だ。今日、盛んに言われている「Gゼロ」や「G0・5」など「世界無極化」とその結果生まれるとされる世界的大混乱。米国は、そうした状況を実際つくり出していっている。それは何のためか。安定した米一極覇権、「G1」への世界的志向と合意を醸成しその気運を利用して、覇権回復を成し遂げるためか。それとも、「世界大乱」「世界戦争」をつくり出し、それに介入することを通して、世界軍事支配を実現するためか。
 日本はそのための格好の先兵にされている。それは、尖閣や靖国、歴史認識問題など、紛争、確執を生み出すだけに止まらない。その延長上には戦争を引き起こす役割まで待っている。集団的自衛権行使容認は、まさにそのためのものだ。

■世界を動かす脱覇権の民意
 安倍政権は、今、米国の手の平の上だ。そこで意のままに動かされている。それについては、すでに見てきた。しかし、世界は米国の手の平の上にはない。世界を手の平に載せ、「大乱」を自在に操るなど、今の米国には決してできない。事実、アフガンでもイラク、シリアでも、世界中のどの紛争、内戦でも、米国の思い通りになったものなど一つもない。
 世界は、今、民意によって動いている。米国の意思で動いているのではない。ウクライナの運命を決めるのは、米国でもロシアでもない。決めるのは民意だ。クリミアがロシアに編入されたのは、クリミア住民の意思による。東部ウクライナがどうなるかは、東部住民が決めることだ。ウクライナ大統領がロシアの顔を見てあれこれ言っているのはおかしなことだ。見るところを間違えている。
 それは、東アジアでも、中東でも、どこでも同じことだ。尖閣でも、西沙、南沙でも、竹島でも、紛争当事国双方の民意を尊重し、それに基づいて決めるしかない。アフガン、イラク、シリア、等々、どこでも、どんな問題でも、皆同じだ。そこに米国など大国が首を突っ込んだり、民意に反し、戦争の方法で解決しようとしたりすると、解決できる問題もできなくなる。泥沼化した紛争、内戦がそのことを嫌と言うほど教えてくれている。
 今や世界は、覇権国家の意思で動いているのではない。脱覇権の民意で動いているのだ。もういい加減、そのことに気付くときが来ているのではないか。

■「政治をひっくり返すぞ!」実現のために
 今、日本は非常に危険な状況にある。米国の手の平で踊る安倍政権によって、米覇権回復戦略の先兵化が抜き差しならないところまで来ている。このままいけば、「世界大乱」に巻き込まれ、大変な役回りをさせられるのは確実だ。
 戦後69年、いや明治維新以来146年の歴史にあっても希に見るこの未曾有の危機を前にして、どうするかが切実に問われている。
 それへの回答は、今年上半期の情勢発展にはっきりと示されている。民意を体現する主体の形成、それによってのみ、今日の危機の克服はあり得る。今、世界は民意に従って動いており、民意にこそ、問題解決の正しい方針も力もある。
 今、民意は、山本太郎さんや三宅洋平さんたちに代表される運動の中に、未来を体現する新しい政治、新しい民主主義の登場を見ている。昨年、参院選、彼らの「選挙フェス」に集まった万余の群衆の輝く目が、ついに出会った自分たちの政治への興奮と共感の熱気が、その何よりの証左だ。政治を楽しく、面白く、皆のものに。皆が知を集め、力を集め、一人一人がメディアになって。相手を言い負かすのではなく、互いに尊重し、学び合い、よりよい方針を皆でつくり出す。そして、他の脱原発候補にも、「皆で国会に行こうよ」。この姿勢、このスタンスは、これまでの政治にはなかったものだ。
 皆がメディアになり、全国が一つのネットに結ばれた、民意を体現する主体の形成、その知の集合、技の集合からは、超巨大独占体や、東京などへのカネの集中、格差と不均衡、それによるヒト、モノ、カネの循環の滞りを打ち破る地域や中小企業、内需産業など、民意の要求に基づく新しい経済のあり方の創出は可能になるのではないだろうか。それは、経済だけに止まらない。安保、防衛のあり方も、教育や医療・社会保障、そして地方、地域のあり方も、民意を基準に、民意に基づいて、全く新しく打ち出していくとき、この民意に基づく、新しい民主主義、新しい政治のあり方は絶大な力を発揮していくのではないか。政治は楽しく、面白くなくちゃ。この皆で行う楽しく、面白い政治からのみ、これまでの枠をすべて取り払った新しい経済、安保・防衛、教育、医療などのあり方が民意を基準に、地に足のついた方案として打ち出され、実践されていく。
 ここにこそ、民意の受け皿、民意を体現する主体の形成も、それにともなう民意対安倍政権の闘いの全国を二分する闘いへの発展もあり得るだろう。来春、統一地方選への1万人立候補の擁立、そして、次の衆院選へ。その実現の日は、決して遠い未来ではない。「3年後には政治をひっくり返すぞ!」あの叫びを実現するために。



時評

なかった事にしてはならない

金子恵美子


 最近の出来事で一番衝撃的だったのは、安倍内閣による「集団的自衛権」の内閣決議に抗議して、焼身自殺(未遂)をした男性の事件。遂にこのような人が出たなと思った。どうしたら安倍内閣の暴挙を止められるかと考えた時、政権にも世の中にも大きな衝撃を与えるものとして行き着いた結論だったのだろうと推測する。思っても実行になかなか移せないものだ。このような方法が本道ではないと思うが、その行為の重さは受け止めなばならないと思う。なぜ男性はこの行為にまで至ったのだろうか。
 唯一続報を取り上げた「東京新聞」の記事によれば、男性は「70年間平和だった日本が本当に大好きでした。集団的自衛権で日本が駄目になってしまう」などと訴え、与謝野晶子の「君死に給うことなかれ」の一部を朗読した後に準備してきたペットボトルのガソリンを自分にまき焼身自殺を図ったとのことだ。激情に駆られての突発的な行動ではなく、周到に準備しての覚悟の行動だと思われる。その冷静な行動に悲しみの深さをしる。
 男性は埼玉に住む63歳の一人暮らしで、駅で雑誌などを集めてそれを売って暮らしの足しにするような決して豊かとは言えない生活をしていたようだ。周りの人によれば、無口で毎日決まった時間に自転車で出かけていたという。
 では何も失うものがなかったからあのような行動がとれたのだろうか?断じてそうではないだろう。男性は「平和な日本が大好きだった」と言っていた。平和を守り続けてきた日本に対する愛。それは日本国憲法の下でかろうじて維持されてきたもの。平和な日本の空の下に平和な家族の営みがあり、つつましやかな人々の日常がある。それを知る男性だったからこそ、それを破壊する「集団的自衛権」=解釈改憲に危機感を募らせ、自分の命と引き換えにしてでも、それを止めさせようとしたのだと思う。
 「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」という吉田松陰の句があるが、男性の心情はこれに似たものだったのかもしれない。松陰は25歳の時に死刑を覚悟で黒船に乗り込む。松陰はこの時こう言い残している。「今ここで海を渡ることが禁じられているのは、たかだか江戸の250年の常識に過ぎない。今回の事件は、日本の今後3000年の歴史にかかわることだ。くだらない常識に縛られ、日本が沈むのを傍観することは我慢ならなかった」。もちろんここまでの遠望な志がこの男性にあったかどうかはわからないが。
 男性が準備した抗議の文章や一部テレビ局へ送ったという文章などぜひ読んでみたい。と言うより私たちはそれを読まねばならないのではないだろうか。男性が命と引き換えに安倍内閣と世間に訴えたかったその思いを。だが、この出来事にたいする報道を一切しなかったNHKの姿勢に明確に表されていると思うが、安倍内閣はこの出来事をなかったことにしようとしている。
 なぜあれほど泣きわめく見苦しいどこかの県議のニュースを取り上げ続けるのか?それに引き換え焼身自殺(未遂)男性について、きちんと取り上げた番組は一つもなかった。こちらの方がよほど大きな意味をもっている出来事なのに。見たくもない映像を連日見せつけられて、(当然この顔がでたらすぐにチャンネルを換えていたが)本当に知りたいことは知らされない。新聞も唯一「東京新聞」が続報を伝えたのみである。ネットの書込みにもあるが、本当に「ありがとう東京新聞」という気持ちである。(関東地方に住んでいたら絶対に「東京新聞」に切り換える)。今に始まったことではないが、マスコミはこんな報道姿勢で良いのか。「秘密保護法」に「集団的自衛権」そして「マスコミの大本営追随」。本当に準備は万端だ。
 安倍政権にとってこの事件はなかったことにしたい出来事であろうが、私たちは絶対になかったことにしてはならないことだと思う。多くの事件が、起きては報道され、また次の事件が起きて報道されと、物のように次々に消費されていく。まるで頭の中を他人に動かされているベルトコンベアーが回っているようだ。でも人間は機械ではない。操縦権は自分が握っているのだ。他者の思いのままにはならないのだ。
 男性は火傷のダメージが大きいと聞く。なんとか支援していきたいものだ。


 
時評

栄えある日本の未来を取り戻す

林 光明


 集団的自衛権の行使を、限定とはいえ認める事は武器を手に戦闘に参加する事だ。7月1日の閣議決定の意味は、国民広範の了解を得られたと仮決定した上で、正式決定の手続きに国会を利用するつもりだろう。姑息な安倍政権の狙いはここにあった。政府会見で実に手短に集団自衛の理屈をクリップボードで解説し、「自分を守ってくれようとする仲間が攻撃されても、その援護射撃は出来ない現状は道義的に通らない。こちらも助けて然るべき」と、それは国民に「中途半端な正義感」を駆り立てるような"一方的な告知"であった。
 そもそも、アメリカが日本を本気で助けようとするだろうか。自国合衆国の兵士にさえも犠牲を強いて、湾岸・イラク戦争、直近の中東対テロリスト戦争などで、既に何十万人のアメリカ軍兵士が戦死し、多国籍軍を含むとその3倍は下らない。この21世紀にまで、侵略制覇の野望をぎらつかせ、自業自得で軍隊は損耗、戦闘力や士気は低下、米国世論もうるさい、ならば代わりに日本にしてもらおう、「やり方」は徐々に教えるから…そんな感じが実際のところじゃないか、と疑われて余りある、過去から今に至るアメリカのきな臭さがある。
 イラク戦争当時、海軍の空母から発進する攻撃型爆撃機の様子が、事あるごとにTV中継されていたが、「こんな形で日本も守ってくれるんですね?」という現地リポーターの質問に、爆撃から帰還した兵士は何も答えなかった。民主党政権とアメリカ・ブッシュ政権が沖縄米軍基地撤退に揺れる中、沖縄の夜間飛行訓練を終えた駐留空軍兵士に対し、リポーターが「沖縄基地は日本を防衛する為にあるのか、又はアメリカの戦略のためか?」と聞くと、この兵士は答えた。『そのどちらとも言えない。あなた方がそう理解するのも自由だし、アメリカの利害の為と捉えるのも。だが、言える事は…』その時、背後から『Hey! No Risky answer、More no answer!』(まずい答えをするな、もう話すな!)という、上官らしき怒号が背後から飛んでいた。
 詰まるところ、日頃「お世話」になっているアメリカが度重なる不当な侵略的戦争に疲弊している為、日米安保を一歩進め、個別的自衛権から集団的それへ脱皮せよという事としか受け取りようがない。中国の台頭を忌々しく思おうアメリカは、アジア周辺国との間に不協和音を偶さかである様に作り出し、「いよいよ日本の出る幕だ、役者も装備も揃えた、舞台の袖から声援をおくる、もう脇役じゃない、これで主役を張れたら地位協定は対等だ」とばかりに唆されて張り切る安倍政権は、国民から見れば途方も無くいい迷惑な好戦的内閣に過ぎない。
 そもそも、日本国憲法に抵触どころか真っ向否定となる9条・96条の解釈変更で、戦闘機会と要素が増大する戦後の一大事の決め事が、なぜ密室協議で行われるのか。まこと大義名分正義の立法ならば、与党も全て巻き込み、その協議の一部始終を公開中継すべきであろう。渋谷スクランブルの巨大スクリーンだけでなく、携帯機器の充実したこの時代、公開会議を発信し、その地域ごとに国民から意見集約し、それを元に再協議を重ねるのが筋道だ。最小公倍数ではなく、最大公約数としての意見を煮詰め、少なくとも2〜3年は時をかけるべき内容だ。行使容認を国連決議が急いでいる訳ではない。身勝手なアメリカが急かしているだけで、全国には国政が至急に取り組むべき政治課題が、北から南まで国内津々浦々に山積みされている。
 今回、閣議決定を追認した公明党支持母体・創価学会の罪も殊更に大きい。一部に、行使容認に微妙な立場の公明党批判は避けるべきとの声もあったが、それは断じて違う。政教分離を根拠に政党政治に参画し、ましてや与党会派の奥深くに食い込むかの党は、違憲政治に加担すれば衆目の痛烈な批判・非難を免れる立場にない。これを機に護憲・平和の看板を掛け替えるべきだろう。国際学会員の「中国の同志たち」に何と釈明するつもりなのか。習 近平国家主席はお門違いで、不要な不安を抱いているとでも述べるつもりか。
 記者会見の発言通り、もしも公明党がこの決定でさえ自民の暴走を抑えたと言うなら、今も国会を取り巻いてデモ抗議する数千人の国民を前にして、公明閣僚たちは堂々とその「成果」を説明すればいいだろう。更に、言うならかつて政権交代を余儀なくされた民主党の批判も、本紙はするべきではなかった。今回の方が、日本国民にとってよほど被害は甚大である。あの時、鳩山政権は捨て身の覚悟が今ひとつではあったが、戦時からの沖縄住民の苦痛削減と日本の未来の為、本気で提案した事は事実である。結果、まるでボイス・オブ・アメリカの様なマスメディアの総攻撃によって"沈没"してしまったにせよ、今回の公明党に比べたら批判の対象にはならない。
 『何でいつの間にこんな事になったんやろ〜って感じです。日本やったら平和貢献のやり方とか絶対あるはずやのに、それが受け入れられへんままに、何かどんどん世界のテロとか紛争とか、戦争に日本が入ってまいそうで、イヤやな〜ってゆう感じです』
 『首相は国を守るためとか言っているけど、逆に日本が攻撃される可能性も高まると思う。(行使容認で)自衛隊に入る人がいなくなったら徴兵制になるのでは…これだけ反対をしている人がいるのに、与党だけで決めるなんて滅茶苦茶です』
 前者は、閣議決定前夜に大阪西心斎橋の路上で街頭インタビューに答える19歳女子短大生のコメントであり、後者は短文投稿サイト(ツイッター)で国会前抗議行動があると知って横須賀から参加し、ニュース記者のインタビューに答える23歳フリーター女性のコメントだ。特定秘密保護法の抗議デモより、今回は一層、20代〜30代の若い世代、それも女性に参加者が増えている。男性よりも平和思考がより強いといわれる女性が、危機感を真剣に訴え始めたということだろうか。
 根を張らぬ経済政策を演出し、多少の株価の利ザヤで好況を操作した途端、人口比率が減少気味の若い世代を"アメリカ付き添い戦争"に駆り立てる法律根拠を無理やり作り出す。そこには立憲の精神など、カケラも無い。権力は、監視しなければ確実に暴走する。原発再稼動策動、特定秘密保護法、そして集団的自衛権行使容認と終戦記念日を控える中、国民の「無知」と「弱み」に平然と付け込む安倍内閣は、まこといい度胸である。戦前の日本を取り戻さん、と目論むわずか数十人の与党閣僚にこの国の未来を渡してはならない。美しいニッポンを創出するには、品位に欠ける内閣を早急に退陣・総辞職させて、日本国憲法に更に磨きをかけるよう、より一層の努力が望まれる。



案内 高作正博講演会 憲法改悪と集団的自衛権を考える

もしあした 憲法が変えられるとしたらあなたは、どうしますか !?

 


日 時 7月26日(土) 18時〜
場 所 尼崎女性センター・トレピエ
     3階ホール(阪急「武庫之荘」)
資料代 700円

 安倍政権は多数の国民世論を押し切って、7月1日に集団的自衛権容認の閣議決定を行いました。戦後70年間、とにもかくにも戦争をすることの無かったこの国のあり方を、戦争をする国に作り変えることを決めたのです。しかしこの過程の論議は極めて不十分で、国民の理解・合意は得られていません。記者会見で「戦争はしない」と言っていましたが、それはウソです。ベトナム戦争・湾岸戦争・イラク戦争の時、集団的自衛権があったなら、自衛隊は確実にこれらの戦争に参加し、殺し殺されていたでしょう。戦争で死ぬことのリアルな現実を考えずに、既成事実の積み重ねで、ズルズルとアジア・太平洋全域での愚かな全面戦争を行った歴史を繰り返してはなりません。
 この動きを止めるために、高作正博関西大学教授の講演会を開催します。高作さんは新進気鋭の憲法学者で、「主権者である国民には憲法制定の権利があり、主権者より低位の有権者から選ばれた国会議員・首相が勝手に解釈で憲法を変えることはできない」と判りやすく、「お任せ民主主義」でない立憲民主主義を説いてくれます。
 是非、ご参加下さい。


ホーム      ▲ページトップ


Copyright © Research Association for Asia New Epoch. All rights reserved.