研究誌 「アジア新時代と日本」

第127号 2014/1/10



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 民意と安倍政権、ねじれから闘争へ

投稿 日本とアジアと世界

「辺野古移設中止を」海外識者29人が声明

時評 忍び寄る放射能と秘密法資料




 

編集部より

小川淳


 今年こそ、「反安倍」で反転攻勢の年に
 年が明けた。昨年の日本は政治的にも経済的にも大きく二分されてしまった。原発をめぐっては推進派と脱原発派とに二分されたし、秘密保護法をめぐっても国論は二分された。TPPをめぐってもそうだ。自公政権が広範な反対を抑えて強行する政策と民意との間にほとんど妥協の余地がないほど大きなギャップがある。これほど民意からかけ離れ、対立点が鮮明になった年はめずらしいのではないか。
 アベノミクスをめぐっても同じだ。アベノミクスに賛成か反対かというより、アベノミクスによって恩恵を受ける一部の人とそうでない圧倒的な階層に二分されてしまった。円安や株の高騰で潤う大企業や資産家など恩恵を受けている階層がある一方で、勤労者や中小自営の収入は減り、地方は疲弊し続けている。本来、所得格差があればその格差を無くすのが政治の役割のはずだが、逆に格差を広げているのがアベノミクスだ。
 これらの「対決点」は過去の政権や民主党政権下でも無かったわけではない。しかし、安倍政権になって「対決点」は際立って鮮明となった。その意味で、「安倍的なもの」と「反安倍」との対決と言い換えても良いのかもしれない。
 これら問題の根底にある「安倍的なもの」とは何か。それは靖国参拝など侵略戦争を認めない歴史観に象徴されている。安倍首相はなぜ靖国に参拝したのかではなく、戦争を肯定する靖国だから参拝したのだろう。靖国に代わる国営追悼施設に安倍が反対しているのもそのためだ。
 この思想の核、それは覇権の思想だ。原発やTPP、沖縄普天間、秘密保護法、集団的自衛権などなど、安倍政権が強行する政策は、人が人を支配することを是とする、そのような覇権の思想をベースとしている。
 一方、アジアから日本を見る目は厳しい。中国からも韓国からも安倍首相はまったく相手にされていない。このような歴史認識をもつ政治家をアジアは決し容認しないだろう。アジアからの日本の孤立、これも昨年の一つの特徴だった。中国や韓国との対立が深まれば深まるほど安倍政権はアメリカの後ろ盾(覇権)が必要となる。安倍政権が集団的自衛権や秘密保護法、沖縄基地拡張にのめりこむのはそのためだろう。
 反原発、反秘密法とバラバラに闘うよりも反安倍でひとつに!。今年こそ、反転攻勢の年にしたい。



主張

民意と安倍政権、ねじれから闘争へ

編集部


 「安倍自民を一人勝ちさせすぎた」、これが多くの日本国民の思いなのではないだろうか。秘密保護法から沖縄・普天間基地移設と辺野古埋め立てへと、安倍政権の数と力にものを言わせ、民意に敵対する暴政が続いている。  衆院選に続く参院選での圧勝、二度にわたる国政選挙での安倍自民圧勝は、民意と政権のねじれを生み出し、今、それを極限にまで至らせている。民意とますます露骨になる民意への敵対、極限化したねじれは、民意と安倍政権の対立、闘争へと行き着く以外にない。選挙公約になかった民意だまし討ちの特定秘密保護法の廃案を求める全国民的怒りの声と数千のデモ、仲井真知事を抱き込んでの辺野古への基地移設合意で火がついた沖縄の闘い、それは、昨年度情勢発展の帰結であり、新年度に貫通される新しい情勢発展の出発だと言うことができる。

1 極まった民意と安倍政権のねじれ

 昨年、2013年度の情勢発展について言えば、一言で、「民意と安倍政権のねじれの極まり」と総括することができるのではないだろうか。アベノミクスをめぐる経済の動きもあった。参院選、安倍自民の圧勝もあった。世界的に見れば、シリア情勢など米国覇権崩壊の一段と顕著な進行もあった。しかしそれらも結局、日本にとっては、民意と安倍政権のねじれが極まったところに集約されると思う。そのような視点を持って昨年度情勢発展を総括してみたい。

■参院選、安倍自民圧勝とねじれ極限化
 昨年当初から、安倍政治はそのすべてが7月参院選に向けられていた。衆院選での圧勝の直後、自民党首脳が「真の勝利は参院選で勝つこと」と口をそろえていたのはその予告だった。
 そのために前面に押し立てられたのはアベノミクスだった。「今は経済だけを言え」、これはそれと関連した麻生副総理の言だ。参院選までは「改憲」や「集団的自衛権」など「複雑」なことは言うな、ただひたすら経済で実績をあげ、安倍自民圧勝を実現しようということだった。
 作戦はどうやら当たりだったようだ。参院選の焦点は経済になり、アベノミクスというはっきりした路線らしきものを提起し実践していた安倍自民党の圧勝だった。
 これで当初の目論み通り、衆院と参院のねじれはなくなった。安倍政治の邪魔者はなくなったのだ。だが、彼らにとって一つやっかいなものが生まれた。と言うより、明確になったと言う方が正しい。新手のねじれがはっきりしてきた。民意と政権のねじれだ。もちろん、このねじれは今にはじまったものではない。民意を正しく反映できない議会制民主主義に付き物の矛盾だと言える。だが、安倍政権の場合、それはどの政権にも増して甚だしい。
 史上3番目に低い投票率(52・6%)、全有権者の20%にも満たない得票での改選、非改選、自公合わせて過半数を大きく超える議席獲得という圧勝は、民意と政権のねじれがいかに大きいかを示している。衆院選で生まれた民意と政権のねじれは、この参院選圧勝で一層はっきりした。だが、ねじれの拡大はそれに止まらない。それにも増して何よりも、この間の民意に敵対し民意を踏みにじる安倍政治によって、ねじれはこれ以上にないものになっている。
 9月、首相の私的諮問機関、「安全保障と防衛力に関する懇談会」(安防懇)の設置とそこでの「国家安全保障戦略」(NSS)の討議、そのキーワードとしての集団的自衛権行使容認を前提とする「国際協調主義による積極的平和主義」の提起と安倍首相の国連総会でのその提唱、そして10月、日米外相、防衛相会議(2プラス2)と2014年末までに新たな「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を策定するとした共同声明の発表、会議で出された国家安全保障会議(日本版NSC)の設置や集団的自衛権解釈の見直しを歓迎する米国側の意向表明等々、集団的自衛権の行使を容認し、日本を米国と共同で戦争することのできる国にする動きが参院選後、堰を切ったように流れ出し、国会での審議もないまま、あれよあれよという間に推し進められた。
 特定秘密保護法の制定はこうした流れの中での極め付きだ。国政に関する情報をめぐりネット上で見たり発信したりすることにまで脅しをかけ恐怖を与え制約するこの法律が、公務員だけでなく国民全体を対象に、民意に敵対し民意を抑え込んで日米共同の戦争を敢行するためのものであるのは間違いない。ことここに至って民意と安倍政権のねじれは極まった。
 極まったねじれは、普天間基地移設をめぐる仲井真知事との合意や安倍首相靖国神社参拝で一層強まった。まさにここに、昨年度情勢発展の本質が端的に集約されているのではないだろうか。

■活性化しない経済と格差・貧困の拡大
 民意と安倍政権のねじれは、政治、軍事的にだけ極まったのではない。経済的にも強められた。その主因はアベノミクスにある。
 アベノミクスへの評価は紛々だ。確かに円安、インフレ効果で一部産業、企業に利益と活気をもたらしたのは事実だ。そうした中、株価も上がった。今後、各種特区への大手外資の進出も見込まれている。
 だが、言われている経済効果が大したものでないのも事実だ。GDP伸び率年率換算は、当初の3・8%から1・9%へと鈍化した。しかも、そのうち1・4%は公共事業投資によっている。より深刻なのは、最初から低かった個人消費、設備投資伸び率の大幅減だ。それぞれ0・6%から0・1%、1・1%から0・2%と減っている。貿易赤字も過去最長の17ヶ月連続を記録した。輸出が伸びず、輸入額が大幅に増えているためだ。
 さらにより問題なのは、格差、貧困の一層の拡大だ。米意を基準に、米国とグローバル大企業に手厚いアベノミクスによって潤っているのは彼らだけだ。雇用、賃金は増えず、地方地域、中小企業、内需産業にまでその恩恵は届いていない。日銀短観など景況感は上向きながら、消費や設備投資が横這いなのはそのためだ。
 活性化されない経済、拡大する一方の格差と貧困、それが民意と安倍政権のねじれの極限化をさらに一層促進した。

■進んだ米国覇権の崩壊と日本ねじれの拡大
 昨年度情勢発展を世界的範囲で見たとき、もっとも特徴的だったのは、一段と顕在化した米国覇権の崩壊だ。
 圧倒的な軍事力、経済力による米国覇権は、もはやそれが通用しなくなって久しい。この米国覇権崩壊の象徴は、イラク、アフガン戦争の泥沼化であり、ドルの基軸通貨としての権威の失墜だった。昨年は、それらが一段と進展した年だったと言える。アフガニスタンではタリバンの勝利と米軍の敗退が誰の目にも明らかな決定的段階に入ったし、BRICSでは途上国のための開発銀行がドルと関係なく開設され、ドルを決済通貨としない経済領域のまた一層の広がりとドルによる覇権崩壊を新たに印象づけた。
 一段と弱化した米国の軍事、経済的覇権力は、昨年、他の様々な領域でも顕在化した。シリアに対する化学兵器の使用を口実とする戦争の脅しは、それに反対する米本国や英国、そして世界の民意の高まりによって、撤回を余儀なくされた。10年前、大量破壊兵器の存在を口実にイラク戦争を引き起こしたことを考えれば、その覇権力の弱体化には隔世の感がある。米覇権力の崩壊は、スノーデン事件やドイツ・メルケル首相の携帯傍受事件などでも顕著だった。CIAによる盗聴を暴露したスノーデン氏の引き渡しを求める米国の要求に中国もロシアも応じず、ベネズエラなど氏の受け入れを表明する国も現れたこと、ドイツが米国による自国首相の携帯電話への盗聴に抗議しそれを公然化してきたこと、等々、以前、米国覇権全盛期には考えられなかった「事件」が続出した。
 こうした米国覇権崩壊の急進は、民意と安倍政権のねじれの極まりにも少なからず作用した。
 これまで米国は、失われた覇権回復のため、アジアを重視し、領土問題などで中国包囲、朝鮮敵視などアジア諸国間に緊張と対立をつくり出し、それに介入することにより自らの指導権の確立を図ってきた。集団的自衛権行使の容認など、日本が米軍の指揮の下、日米共同で戦争できる国になることを求める米国の要求がそれと関連しているのは間違いない。日本の軍事力を米覇権回復のために動員するということだ。そうした中、昨年、予想を上回る速度での米国覇権の崩壊が、特定秘密保護法制定や集団的自衛権解釈の見直し、新たな日米防衛協力のための指針(ガイドライン)策定など、一連の動きを急がせたのは容易に想定できるのではないだろうか。

2 民意対安倍政権、新年は闘争の年だ

 民意と安倍政権のねじれの極まり、昨年度情勢発展の帰結を受けて、新年、2014年は、一言でいって、「民意対安倍政権、闘争の年」だ。

■反安倍政権の闘争はすでに始まっている
 民意と政権のねじれ、その極限化が両者の対立と闘争に行き着くのは必然だ。事実、安倍政権に反対する闘争はすでに開始されている。
 昨年末、特定秘密保護法制定に抗議し、その廃案を求める広範な国民の声は全国に満ち、東京では数千人規模の大デモも行われた。
 秘密保護法だけではない。普天間基地移設問題、原発再稼働問題、そして、集団的自衛権行使問題、憲法改悪問題、TPP問題と広範な国民的闘争が全国至る所で噴出する兆しが満ち満ちてきている。沖縄・名護市長選をめぐる熱気もその現れの一つに過ぎない。
 民意対安倍政権、闘争の年である新年、これまで、反原発、反TPPと個別に闘ってきた人々の間からも、これからは、「反安倍政権」の闘いとして一つにまとまって闘う方がよいのではないかという声が上がっている。これは決して偶然ではない。参院選後、満を持していたかのように一斉に開始された民意を無視し民意に敵対する安倍政権の暴政は、それら一つ一つの暴政、悪政の根が一つであることを誰の目にも明らかにしてくれた。
 秘密保護法に反対する東京大デモに掲げられたスローガン、「3年後には政治をひっくり返すぞ」は、そのことをはっきりと教えてくれている。秘密保護法を廃案にする闘いも、原発再稼働をやめさせる闘いも、集団的自衛権の行使に反対し、改憲を阻止する闘いも、すべては安倍政権を退陣させ、日本の政治を変えてこそ実現される。民意に敵対し民意を踏みにじる安倍政権の暴政は、そのことを白日の下に教えてくれた。

■民意対安倍政権の対決を国民中心、民意基準で
 反安倍政権の闘いで決定的なのは、民意対安倍政権の対決軸をはっきりさせることだ。
 残念ながら、今、民意を体現し安倍自民党政権と真っ向から対決する政党、政治勢力は一つもない。この間の衆院選、参院選はそのことを胸痛く教えてくれた。民意を体現し、民意の受け皿になる政党、政治勢力がなかったこと、そこにこそ、安倍自民圧勝を許した最大の要因があると言うことができる。
 民意対安倍政権、その対決と闘争の様相が深まってきている新年、安倍政権との対抗軸形成への動きが活発化しているのは事実だ。みんなの党の分裂と民主党や維新の会などへの連携、結合の呼びかけなど、政界再編への動きは急だ。しかし、これまでの経緯からして、それらが民意の受け皿になることはほぼあり得ない。それどころか、それらが民意対安倍政権の対決軸を曖昧にする方向で作用する可能性の方がはるかに大きい。
 民意対安倍政権の対決軸を鮮明にすることにより、民意敵対の安倍政権を退陣させ、真に国民のための政治を実現する上で、今一番問われているのは、国民中心、民意基準だ。
 これまで日本の政治の中心には米国、大企業が置かれ、政治の基準はどこまでも米国の意思、米意だった。2009年、民主党による政権交代は、これを国民中心、民意基準に転換するチャンスだった。しかし、焦点となった普天間基地移設問題で、鳩山政権は沖縄県民、日本国民を中心に置くことができず、基準にしたのも米意だった。
 今、安倍政治の中心に置かれているのは徹頭徹尾米国、グローバル大企業であり、その運営は米意基準に終始している。アベノミクスも日本を「戦争のできる国」にする一連の政策も、そこからはずれているものは一つもない。
 これと対決し、政治をひっくり返す上で決定的なのは、政治の中心と基準を米国、グローバル大企業から国民へ、米意から民意に転換することだ。だが、一言で「国民中心、民意基準」と言っても、それを実践するのは容易でない。何よりもまず、そうしようとすれば、米国による圧力と妨害を覚悟しなければならない。鳩山政権には、そもそもその覚悟がなかった。圧力に耐えきれず、早々に腰が砕けたのはそのためだ。
 しかし、容易でないのはそれだけではない。それよりも何よりも決定的なのは、それが国民を信じ国民とともに進む前人未踏の道だということだ。国民中心、民意基準の経済、安全保障とはどんなものか、その雲をつかむような未踏の道をあくまで国民を信じ、国民とともに豊かなイメージを膨らませながら進む信念と意志、楽観がなければ、国民中心、民意基準の新しい政治を実現することはできないと思う。今、民意の受け皿がないもっとも大きな要因もこの辺りにあるのではないだろうか。

■民意の力で安倍政権を退陣へ
 米国、グローバル大企業中心、米意基準の安倍政治は、欧米の覇権の下でアジアに覇権してきたこれまでの政治、脱亜入欧、従属覇権の政治の延長であり、その極致だと言うことができる。
 明治以来百数十年、日本のあり方を決めてきたこの政治は、覇権時代の終焉とともに、今日、完全に行き詰まってきている。
 米国覇権の崩壊は、新興覇権国家群の登場やそれらによる新たな覇権抗争の発生を意味していない。それは、覇権そのものの崩壊であり、覇権時代そのものの終焉に他ならない。覇権自体が許されず、通用しなくなっている今日の現実はそのことを雄弁に物語っている。
 今日、民意の時代、覇権と向き合い、覇権を許さない力はどこにあるか。それは民意以外にない。覇権国家、米国によるイラク、アフガン戦争を底なしの泥沼に引きずり込んだのは、いかなる覇権をも許さない不屈の民意に他ならなかったし、昨年、シリアへの軍事介入を許さなかったのもやはり英米をはじめ世界の民意だった。もはや、世界を動かしているのは、覇権国家、米国の意思、米意ではない。覇権に反対し自主を求める国民の意思、民意こそが世界を動かしている。
 それは軍事ばかりではない。経済もそうだ。経済も弱肉強食の市場原理、競争原理で動いた覇権経済の時代は終わった。もはや、市場が良いと言うことが良いことだと、市場に任せておけば万事がうまくいく時代ではない。極度のグローバル化、寡占化の下、ヒト、モノ、カネは国民経済、地域経済の中を循環するのではなく、その多くが外に出て行き、大企業に留保されカネ余り現象を引き起こす。所得や地方地域、企業や産業の格差と不均衡には歯止めがかからず、カネ余りと経済の投機化、産業空洞化など、経済自体が壊死、崩壊の危機に直面している。それが覇権経済が陥っている今日的現実だ。この人類史的苦境を打開する力は、他でもない民意にしかない。民意が良いということが良いことであり、愛国、愛郷、愛民、自主、自治、自決の民意を基準に民意に依拠し任せていってこそ、国民経済、地域経済の新しい循環も、均衡的発展も可能になり、世界経済の新たな発展も実現するようになると思う。
 民意の力による古い覇権の政治、経済の打破と新しい脱覇権の政治、経済の創造、これは、古い政治、経済の延長であり、その極致である安倍政権の政治、経済をひっくり返し、新しい政治と経済をつくり出す力が民意にこそあることを教えてくれている。
 「民意の力で安倍政権を退陣へ!」。スローガンは明確だ。問題は、これをどう実現するかにかかっている。
 国民中心、民意基準はそのための指針だ。あくまで国民のため、国民の利益を中心に置き、その実現のため、そこから出発して闘うこと、そしてそのための基準をどこまでも民意に求め、民意が良しとするものを良しとして闘うこと、そうしてこそ、民意の力で安倍政権を退陣へ追い込んでいける。
 そのために、ソーシャルネットは不可欠だ。民意を支える新しい次元の先端科学技術に依拠してこそもっとも広範で活力ある民意の形成も活用も可能になるだろう。ネット選挙として展開された韓国大統領選、「アラブの春」や「ウォール街占拠」など、ソーシャルメディアを駆使したこれまでの闘いの成功は、これからの民意に依拠した闘いの貴重な先駆け、豊かな経験となっていくだろう。
 その上で何より重要なのは、民意の中心の形成だ。今、日本には民意の受け皿がなく、民意の中心となるような政党も政治勢力もない。民意対安倍政権の闘いでこれが一番大きな問題ではないだろうか。中心なしに団結はなく、団結のないところに勝利はない。だからここは、皆が中心形成の重要性を肝に銘じ、そのために尽力していくことだと思う。だが、これは簡単ではない。これが良くできなかったため、隊伍が四分五裂し敗北してきたのがこれまでの歴史だ。しかし一方、闘いの中で中心がつくられ勝利してきたのも、また、歴史の真実だ。今、日本の歴史に根本的転換を起こす民意と安倍政権の闘いにあって、中心形成の闘いもまた、民意の力にかかっている。



投稿

日本とアジアと世界

平 和好(たいら・かずよし)


あえて問題提起させていただきたい。日本人は政府もマスコミも国民も、とかく「高みに立つ」傾向がある。どの国の政治体制がとか、国民生活がとか、評価しがちだ。戦後の復興と経済成長がめざましく(確かにかなりめざましい)、「成功した日本、豊かな日本」「経済大国」「民主主義的な選挙制度」という自覚からアジアの国々に優越感を抱いているのだろう。ただ、欧米には滅法弱気で、卑屈で、左翼すら西欧の社会制度には無批判な憧れを抱いている。フランスやイタリアの思想家の「信者」もたくさんいる。どんな人かもわからない「※※氏がこう言った」ことが得意げに吹聴されたらそれが左翼社会の権威になったりもする。反スターリン主義と言いつつ、かつてのコミンテルン(ソ連を総本山とする国際共産主義指導体制)崇拝が形を変えただけのような例もある。
 一方でアジアの社会主義=中国・朝鮮・ベトナムの思想家・指導者には頭から馬鹿にして否定するのが日本人。革新的な人でもそうであるから、マスコミやそれを信じ込んでいる人はもっとひどい。中国・朝鮮の政治・社会・経済については神様かレフェリーのような「審判」を平気で下す。ベトナム・タイ・カンボジア・フィリピンなど東南アジア諸国国民への差別意識・侮蔑感情は相当なものがある。日本人がどれだけ偉いと思っているのか、あきれてしまう。
 中国で大気・水の汚染、毒入り食品が蔓延していると騒いで「こわいね、嫌だね」と言うが、自国の放射能汚染が周辺諸国にも多大な被害を与えている事には全く無関心だ。釣魚台(日本名・尖閣)の小島には大騒ぎするが、その何百倍の沖縄・岩国・座間・厚木などを米軍に思うがまま支配されている事には黙っている人も多い。中国・朝鮮の司法制度が非民主的で、言論統制があり、国民への迫害がひどいように言うが、では日本の裁判で被告が無罪になる率が1%以下であることを知っている人がどれくらいいるのか?芸能人やスポーツ選手のことはよく知っているが、国民の利益を侵害する政治についての情報や放射能汚染についての情報は隠しまくり、それでも足りなくて、秘密保全法なる危険きわまるものを作ってしまった。
 第二次安倍内閣の去年一年だけで8人もの人が「秘密裏に」処刑されてしまったのをあなたは知っているだろうか。他国の処刑を非難する資格があるのは、人権の観点から死刑を廃止した国だけであろう。
 また日本の現憲法下でも、「内乱・外患誘致」をした人への最高刑は極刑なのである。他の国で「国家転覆」を企てた人への刑に口をはさむ資格は日本には、明らかに無い。完全なでっち上げで処刑されてしまったイタリア系移民「サッコとバンゼッティ」事件などの事例に事欠かないアメリカも同様。中国で起こった天安門事件を非難する声があった。国会横の日比谷公園やニューヨークのタイムズスクエアを何十日、何万人という人達が占拠して居坐り続け、焚き火を炊き、気勢を上げ続けたらどうなるのだろう。警告にも従わず、実力行使を続けていたら、ただで済むかどうか。
 アメリカや日本の政府・マスコミは朝鮮の政府が「国民を飢えさせている」と非難する。国民を飢えさせているという点ではアメリカ・日本ともに大いに身に覚えがあるはずだ。それを省みもせず一方的に非難された当事国は「片腹痛い」または「ちゃんちゃらおかしい」と言うに違いない。
 もちろん国民と国家権力の理非曲直については様々な内情があるだろう。しかし、それは当事国の当事者の国民が自身で判断し、実行するしかない。少なくとも日本人がアジア各国の政治・社会・法制度に口をはさむ資格が限りなくゼロであることは確かだ。良いことわざがある。
 「人のふり見てわがふり直せ」と。


 
 

「辺野古移設中止を」
海外識者29人が声明


 米国やカナダ、オーストラリアほかヨーロッパの世界的に著名な有識者や文化人のグループが8日午前(米国時間7日)、「沖縄への新たな基地建設に反対し、平和と尊厳、人権、環境保護のために闘う県民を支持する」との声明を発表する。声明には名護市辺野古への普天間飛行場の移設中止と、同飛行場の即時返還の主張を明記する。
 呼び掛け人には言語学者のノーム・チョムスキー氏や、アカデミー賞受賞の映画監督オリバー・ストーン氏、北アイルランド紛争の解決に尽力したノーベル平和賞受賞のマイレッド・マグワイア氏ら29人が名を連ねた。普天間問題について、世界的な識者らが連名で声明を発表するのは異例だ。
 呼び掛け人はほかに終戦直後の日本の民主化に焦点を当てた「敗北を抱きしめて」でピュリツァー賞を受賞した歴史学者ジョン・ダワー氏、アカデミー賞受賞映画監督のマイケル・ムーア氏、国連のパレスチナ問題特別報告者でプリンストン大名誉教授のリチャード・フォーク氏、琉球新報社の池宮城秀意記念賞を受賞したガバン・マコーマック氏、ジャーナリストで「ショック・ドクトリン」著者のナオミ・クライン氏らが名を連ねる。
 声明文は、安倍晋三首相の求めに応じ、仲井真弘多知事が普天間飛行場の辺野古移設に向けた埋め立てを承認したことに対し「人間と環境を犠牲にして沖縄の軍事植民地状態を深化し拡大させるための取り決めに反対する」と表明する。
 辺野古移設について、近年の県民世論調査で7?9割が反対していることに触れ、県外移設を公約に掲げた知事が埋め立てを承認したことを「県民の民意を反映したものではない」と指摘、「県民に対する裏切り」と批判する。普天間飛行場について「終戦後返還されるべきだった」と述べ、普天間の返還について「条件がつくことは本来的に許されない」と主張する。
 米平和団体アメリカンフレンズ奉仕委員会のジョセフ・ガーソン氏は声明の目的について、「沖縄の約70年にもおよぶ軍事植民地化を終わらせ、自らの尊厳と人権を守り、平和と環境保護を確保するための非暴力運動への国際的支援を集める」と述べている。



時評

忍び寄る放射線と秘密法

林 光明


 1984年、台北市に建てられた「民生アパート」の入居約5年後に身体に異変を感じたある女性は遂に呼吸困難に陥って、何と甲状腺ガンに侵されていた。甲状腺ガン罹患者は増え続け、16年目に異常を訴えた30人中の14人に上った。甲状腺ガンの発生率は1/1万程度だが、民生アパートの発生率はその4万7千倍の4・7%に及んだ。このガンの発生原因は遺伝子異常かヨードの摂取不足である。甲状腺は栄養素ヨードを取り込み、必要な成長ホルモンを生成分泌するが、極度に不足すれば甲状腺異常からガンになる事がある。
 アパートの住民の検査結果は、放射能被曝だった。放射能(Radioactivity)は、ウランやラジウムが放射線を放つ性質や現象であり、放射線は放射性物質から出る電磁波や高速粒子のα線・β線・γ線・x線・中性子線であり、放射線の人体被曝量をシーベルトという単位で表す。放射量1500 mmシーベルトを超えると二日酔いに似た《放射線宿酔い》という症状になり、4000 mmシーベルトを浴びると細胞が変異死滅して致死率50%、7000mmシーベルトになると100%死亡する。
 放射線は、細胞を構成する原子から電子を引き離し(電離作用)、電子を失った原子は細胞性質が変化し、活性酸素を作り出して酵素機能低下、細胞分裂の遅滞、遺伝子損傷を起こす。X線検査等の被曝線量が少量なら、細胞の修復機能で回復するが、大量だと修復機能が出来ず細胞は死滅する。骨髄内の造血細胞の死滅により、白血球が生産されず細菌感染が起こり、血小板が減少して出血が止まらなくなる。
 強い放射線が甲状腺ガンを引き起こす例が内部被曝である。原子力施設の事故により飛散した放射性物質を吸い込めば、甲状腺にそれが溜まり、甲状腺ガンになる。
 又、放射線を放つ物質に接近する事による、外皮からの甲状腺細胞の損傷が外部被曝である。白血球の染色体を検査して被曝量を推測すると、民生アパートの被曝者全員の白血球に染色体異常が見られ、推定最大被曝800mmシーベルト以上という原発事故並みの数値であったが、近年に台湾で原発事故は起きていなかった。
 放射性物質による被曝は特殊なエリア外でもある。87年にブラジルでは、100gが致死量の放射性物質セシウム137が廃品業者から広まり、92年に米国では医療ミスからイリジウム192が総勢21名に拡散した。
 民生アパートの真相は隠蔽工作だった。アパート完成の翌年、既に建物内に放射線漏れが確認されていた。「放射能安全促進会」の調査で、83年に建立の中国商業銀行社員寮の鉄筋に被曝放射能が検出された為に寮は未使用で取り壊されたが、発覚を恐れた"台湾原子力委員会"の一部が揉み消した事実を掴んだ。
 「放射能安全促進会」が民生アパートの鉄筋を放射能測定した結果、放射性物質コバルト60が検出された。完成時に年間1000mmシーベルトの放射線が放たれていた民生アパートの鉄筋は、中国商業銀行社員寮の鉄筋と同一の工場で作られていたのである。
 90年に「放射能安全促進会」が独自調査した所、民生アパート完成翌年の85年に放射線測定員がアパートの鉄筋からかなりの放射線が出ている事を突き止めたが、放射線測定会社の社長指示でその危険な事実を住民に告知せず、曖昧な対策指導で誤魔化した。
 中国商業銀行社員寮の鉄筋被曝が判明した時、"台湾原子力委員会"の所長だった社長は、寮に続き民生アパート事故も明るみに出て責任が及ぶのを恐れ、調査打ち切りと隠蔽工作を指示していた。この関係者は全て有罪判決となった。
 当時の台北市は、他にも放射能の汚染鉄筋と思われるビルが約140棟、一般家屋で約1500棟あり、台湾政府は汚染ビル家屋の補償取り壊しを決めたものの、未だに放置建物があるというが、果たして、被災地以外のわが国の建築材料はどうだろう。実は日本の原子力安全委員会のデーターでは、1958年から2000年までの間に100件以上もの放射性物質紛失・流失事故が発生している。
 強引可決された特秘保護法なら、上記の事例など、特定秘密指定を根拠に政府が隠蔽する事など実に容易になるだろう。因みに、東日本大震災の折、飛散する放射能粒子の風向きを最初に告知されたのは、米軍駐屯地であった。気象庁は、特定秘密の指定権団体に列挙されている。次は原発再稼動が強行採決されて南海トラフの様な、とてつもない津波や地震を察知して最初に通知する相手が、もし国民大衆でなく米軍・中央省庁・閣僚等に決められている事が特定秘密なら、「特定」になる決定事項は誰が決めるのか。
 正義感から入手した「特定」内容を公開した公務員や、情報を掴んで報道したジャーナリストも厳重に処罰対象にするというのか。「国家権力者」の保護を最優先し、一般国民大衆を置き去りにする悪意を正当化する法律に何の意義があるというのだろう。
 ロシア亡命中のE・スノーデン氏の証言で、英国の政府通信本部(GCHQ)と米国の国家安全保障局(NSA)が、ユニセフ、WHO、「世界の医療団」、欧州委員会等の国際機関を含む60ヶ国以上の施設や個人・団体を通信傍受していたと判明した。米国の後押しを受ける特秘保護法が、国家利益を名目にこれに追従するのは火を見るより明らかであろう。
 政府内にしか設置を認めないような監視機関を通過した特定秘密など、認める必要は全くない。日本国憲法を読まずに暴走した「選ばれた与党議員」を監視し、断罪するのもまた、国民に課せられた義務であり、権利でもあるのである。


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