研究誌 「アジア新時代と日本」

第105号 2012/3/5



■ ■ 目 次 ■ ■

編集部より

主張 震災復興を巡る闘い 問題はどう提起されているか

投稿 田中宇氏の朝鮮従属化論を批判する 京都総合研究所 佐々木道博

「議論」の場 「覇権国家」をめぐって、橋下への評価をめぐって

国際短信




編集部より

 

 東日本大震災から一年経った。だが、原発事故はいまだ収束されず、瓦礫の処理さえほとんどできていない。これが科学技術大国、経済大国日本、先進国日本の現状だ。 文明のあり方自体を省みさせる歴史的な大事故を起こしておきながら、原発廃絶の勇断を下せず、未曾有の地震・津波災害には震災復興の大設計図を示すこともなく、つかみどころのないドジョウ政治が続けられている。この曖昧模糊とした政治の裏には、被災地、被災民の利益を顧みるどころか、国民の目を欺き、米国の要求、大企業の要求をかなえようとする下心が透けて見える。
 原子力、核を覇権のための道具として固持しようとする米国、そして大企業などこの国の支配層、彼らは、地震・津波災害に対しては「ピンチをチャンスに」「創造的復興」「新しい日本の創造を」などと騒ぎ立てた。
 そして、彼らの意に添うように採用されたのが本号・主張で取り上げた特区方式だ。これは、一見、自治体の自主性を尊重した、自治体主導の復興方式に見える。しかし、土地利用の規制緩和を第一メニューにしながら、税財政上の優遇策、復興交付金の支給を認定するのは復興庁など国の省庁だ。企業、それも大手企業、外国企業の参入など、徹底した規制緩和の計画、制度が認められるようになるのは火を見るより明らかだ。
 これが特区、すなわち被災地全域のなし崩し的自由化、新自由主義化でなくて何であろう。この震災復興が例外なき関税撤廃のTPPと結びついたとき、日本全体の自由化、新自由主義化、アメリカ化が一気に推し進められて行くようになる。
 同時に注目すべきは、橋下・維新の会を中心とする政界再編の動きだ。彼らが掲げる「維新八策」に道州制やTPPとともに集団的自衛権の容認、憲法改正などが入れられるという。これは、政治、経済のあり方だけでなく、日本そのもののあり方まで変える動きだ。
 米国の覇権の下での覇権を選択した戦後日本が、大震災を契機に、さらなるアメリカ化と日米一体化、それに基づく新たな覇権の道に踏み出す危険が高まっている。  これは完全な歴史の反動だ。新たな覇権へと逆行する日本のあり方の新自由主義的見直し、これを打破し、国民の要求に真に応える、本物の日本見直しこそが求められていると思う。

小川淳




主張

震災復興をめぐる闘い
問題はどう提起されているか 

 あれから一年、「3・11」が巡ってきた。未曾有の大震災からの復興、それは日本再生、新しい日本創造の闘いでもある。この復興をめぐって、今、激烈な闘争が繰り広げられている。原発事故をめぐっても、地震・津波災害をめぐっても。この小文では、後者に焦点を当てて考えてみたい。

■復興の中心はどこに置かれたか

 震災復興で中心に置かれるべきは何か。それは被災民の利益以外にあり得ない。阪神淡路大震災が長らく「七割復興」と言われていたのも、被災民の住宅復興や個人補償などが滞っていたためだ。
 被災民の利益と言ったとき、その最優先課題は「雇用の確保・創出」だった。震災後3ヶ月、生活再建の見通しが立たない中、被災民42名中29名の答えはそれだった(福島県では、15名中13名が「原発事故の早期収束・安全確保」を挙げていた)。この雇用の確保と創出でカギとなるのは漁業や製造業といった地場産業の再生だ。問題はこれが大幅に遅れたところにある。
 大企業の生産復旧は急ピッチだった。部品供給不能で正常の2割にまで落ち込んだトヨタ、ホンダなど大手自動車企業の生産は、震災後3ヶ月の時点でほぼ正常化された。それと比べ、水産加工業など沿岸部地場産業の復旧は遅れた。岩手、宮城、福島の被災三県で、仮設の工場、店舗など165カ所の建設計画中、9月22日までに完成したのは19カ所、4割は未着工のままだった。
 一方、復興建設でも、地元業者には仕事とカネが回らなかった。仮設住宅建設で自治体は、大手プレハブメーカー中心の「プレハブ建築協会」(東京)などと協定を結び、地元業者に発注することはほとんどなかった。宮城県などは、2万3000戸中わずか300戸だけで、地元業者は大手の下請けに入り込むしかなかった。
 被災民の生活再建で切実なのは、また、37万戸が失われた住の再生だ。震災復興当初から高台移転が叫ばれ、国の負担による元の土地の買い上げ、それを元手とした被災民の分譲地購入が図られたが、問題は買い上げ額だった。建物に移転補償がない中、元のローンとの二重ローン問題が生まれた。そこで余儀なくされたのが持ち家から公営住宅への転換だが、自治体が用意する災害公営住宅の数は少ない。1月現在、11万戸以上の仮設住宅で被災民が命をつなぐ中、宮城、岩手両県合わせ今後5年で、1万6千戸 7千戸だという。
 これら復興の現実が浮き彫りにするのは、その中心に被災民の利益が置かれていないという事実だ。それは、今、これから行われる震災復興の方式により鮮明になっている。

■特区方式の復興は何を意味するか

 震災復興は、被災した11道県の222市町村すべてを対象とする特区方式で行われる。被災自治体は、国が特区制度で認める特例のメニューを盛り込んだ自らの復興計画をつくり、国の認定を受けてそれを推進するようになる。
 国が認める特例のメニューとしては、大きく分けて三つある。@農地など土地の用途ごとに分かれる土地利用手続きの一本化を図る規制緩和、A税財政上の優遇策、B道路整備など40事業に使える復興交付金、の三点だ。被災自治体は、地域の実情に合わせ、この三つのメニューにそった自前の特区制度、復興計画をつくることができる。  この被災地全域を特区化しながら、被災自治体の自主性を尊重して推し進められるかに見える復興方式は、一体何を意味しているだろうか。
 一つは、復興が地域主体、コミュニティ主体というより、企業主体、特に大手企業主体のものになるということだ。三つのメニューは、確かに、地域、コミュニティにも便宜をはかるものとなりうる。しかし、それ以上に土地利用手続きの規制緩和など、これまで様々な規制で営利事業の対象にならないよう守られてきた農業や漁業、医療や教育などの分野への企業参入の道を大きく開くものとなっている。特に、この間の復興事業で見られた国や自治体の企業優先、大手企業優先の姿勢は、この特区方式による復興が誰の便宜をはかり、誰を主体にするものになるかを予告している。
 もう一つは、この特区方式の復興が例外なき関税撤廃をうたうTPPと連動して、外国企業の震災復興への参入など、日本の自由化、新自由主義化を大きく促進するものになるということだ。「TPP参加で復興を」。これは、米国の有力シンクタンク、戦略国際問題研究所主宰の有識者会議「復興と未来のための日米パートナーシップ」が発した提言だ。その心は、「あらゆる垣根、規制を取り払い、米日一体で震災復興を成し遂げよう」ということらしい。関税撤廃など、経済交流でのあらゆる規制の緩和と撤廃を求めるTPPへの参加は、そのための道を開くものとしてある。規制緩和、撤廃の特区方式の復興は、まさにそれと連動し、被災地全域、あらゆる分野への外国企業の参入など、その自由化、新自由主義化に拍車をかけるものとなる。米国が震災復興を戦後復興と重ね合わせ、これを通して日本の自由化、アメリカ化を促進しようとしているのは公然の秘密だ。

■震災復興のあり方を問う

 だからといって、震災復興への企業、外国企業の参入自体を否定するわけではない。それどころか、企業の参加は復興にとって有用かつ切実だ。  問題は、震災復興を、誰を主体に行うかだ。企業か、それとも地域、コミュニティか。
 これまで一年間の復興の現実は、すでにその答えを出してくれている。営利第一の企業が主体では、被災民の利益は守られない。被災民の利益中心に考えたとき、主体は被災民がそこで生活する地域、コミュニティになるべきだ。企業はそれを助ける存在としてこそ有力だ。
 地域、コミュニティ主体の復興の威力は随所で発揮されている。震災当初、避難所での生活は、主としてコミュニティを単位に行われ、コミュニティの力で維持された。仮設住宅での生活や復旧復興事業もコミュニティ主体のところが多い。そこには、コミュニティをないがしろにして失敗した阪神淡路大震災時の教訓がある。そうした中、住居の高台移転構想づくりで建築家と学生のプロジェクトチームが数日間、コミュニティに泊まり込み、住民と一体に自治体に提出する提案書を書き上げたなどということも生まれている。
 そこで発揮されているのは住民同士、国民同士皆で助け合う協力、協調の精神であり、自分たちの生活は自分たちで築く自治、自立の精神だ。これは明らかに、企業が市場での勝ち抜き、生き残りにかける競争精神や市場の流れにまかせ一喜一憂する精神とは異質のものだ。被災民の利益が前者によってこそ守られ、その主体的行動が前者からのみ生まれるのはあまりにも当然だ。被災地全域を特区化し、規制が撤廃された自由競争市場にして行われる企業主体の復興から被災民の救済がなされないのは、震災から一年の現実が十二分に暗示してくれている。
 東北が日本国内にある植民地だと告発する「東北学」の提唱者、赤坂憲雄さん(福島県立博物館館長)は、福島に原発から自然エネルギーに転換する特区をつくり、そこに最先端の科学技術を生かした自然エネルギーの研究や電力生産の施設、放射能関連医療拠点などをつくれば、世界に貢献すると同時に、地域の経済を活性化できるとしている。その赤坂さんが警告を発しているのが、福島県内に自然エネルギーを軸にした大規模プロジェクトを持ち込もうとする東京の企業連合体の動きがあることだ。  震災復興や自然エネルギーへの転換をめぐり、地域主体か企業主体か、共同体的事業なのか市場競争なのかの闘いがすでに現実に展開されている。それは、震災復興を被災民の利益中心に、被災地自身の力と全国民的、国家的支援で推進し、それを通して、新しい日本創造への道を切り開くのか、それとも企業の利益、米国の要求中心に、日米企業の力を頼みに推し進め、日本の自由化、新自由主義化、アメリカ化を促進するのかという闘いだ。
 今日、米国は、貿易、ひいては経済そのもののあり方、政治のあり方など、あらゆる領域にわたる転換と見直しを要求し、世界的範囲でその新自由主義化、「民主化」を強要してきている。TPPの日本への押しつけや震災復興への介入はその一環だ。その覇権的な性格は、被災民の生活を一顧だにせず、他者の不幸を自分らの目的達成のための利用物にしているところに端的に現れている。
 覇権から脱覇権へ、大きな転換の時代に、あくまで米国に追従し、覇権・アメリカ化の道を深めるのか、それとも被災民、全国民が求める新しい日本創造の道に進むのか。震災復興をめぐり、問題はこう提起されていると思う。

編集部




投稿

田中宇氏の朝鮮従属化論を批判する
中国共産党、朝鮮労働党の成り立ち、歴史の無理解、無知から生ずる誤謬
                       京都総合研究所 佐々木道博  

 田中宇氏が、国際ニュース解説(2012年1月13日)に、「北朝鮮の中国属国化で転換する東アジア安保」と題する論評を発表している。日頃、アメリカやヨーロッパの政治や金融危機、中東情勢など一般紙では見られない論調を展開し、対米従属の日本を鋭く批判し、多くの読者を獲得していると聞いている。しかし、田中氏の最大の弱点は、日本にとって地理的にも、歴史的にも最も関係の深い中国と朝鮮半島の現状についてほとんど西側メディアのプロパガンダ情報しか持ち合わせていないかのような情報分析である。これでは、国際情勢の分析の信頼性も怪しくなり、田中氏の為にも敢えてこの論考で批判を試みる事とする。又、田中氏の論評を読み、間違った東アジア情勢を認識することは、多くの人々にとって不幸なことなので、紙面の制限上、幾つかの論点に絞って批判するものとする。
 まず、論点は、田中氏が何を根拠に北朝鮮が中国の属国になっているのか、本人は何も根拠を示していないが、この点について論を進めてみる。
 此処20年の中朝関係を米朝関係に絡めて見てみよう。前回この論考で触れたように92年中国指導者ケ小平氏は、89年天安門事件、そしてそれに続くソ連、東欧の崩壊に直面し、いわゆる南巡講和を行い、一層の改革開放を進めることを内外に宣言し、同時に朝鮮をはじめ世界の共産党労働党との関係見直しを始めた。その結果中国は韓国との国交正常化に踏み切った。これに対し朝鮮側は強烈な反発を示したのである。以降8年間双方の首脳会談は行なわれなかった。こうした朝鮮孤立化を見て取ったアメリカは、93年朝鮮に対して核疑惑を仕掛け圧力を強め、いわゆる核危機が起こったのである。米朝の緊張が高まり戦争前夜の様相の中、朝鮮側が日本の上空を越えるミサイルをハワイ沖、グァム沖に打ち込み、アメリカ軍を威嚇した。この事実は、5年後テポドン騒動のときまで日本側には知らされなかったということである。
 この、ミサイルに衝撃を受けたクリントン大統領は、カーター元大統領をピョンヤンに派遣し事態収拾を図り、これが米朝合意となったのである。この合意の中には、核開発の停止の見返りとして2002年までに軽水炉型原子力発電所2基を日米韓の負担で建設するとの約束もあった。総額6000億円の大型施設であった。そしてその後、94年金日成主席の逝去、2年連続の大水害に遭遇した朝鮮の国内危機を見て、アメリカは再度圧力を加え始め、「偽ドル問題」や「麻薬疑惑」「よど号問題」等あらゆる問題を蒸し返し、タイで田中義三氏をデッチ上げ逮捕したのもこのときである。この時期金正日総書記は3年間の喪に服していたが97年より本格的に先軍政治を掲げ、苦難の行軍を乗り越えようと国民に呼びかけたのである。このアメリカの攻勢も、結局テポドン事件(人工衛星打ち上げ)と、最後は金昌里(クムチャンリ)に核施設査察と称して拝観料3億ドルを朝鮮側に支払ってアメリカ側は恥を掻いて終結したのである。結局アメリカ側は軽水炉用の穴を掘っただけで、94年の約束をなんら果たすことはなかった。
 この10年間、朝鮮は中国やロシアの力も借りず、唯一の超大国となっていたアメリカと対峙してきたのである。いまや、核も長距離弾道ミサイルも保有している朝鮮がやすやすと中国の属国になったなど100%有り得ない事である。それを田中宇氏は朝鮮自らが属国化を認めたかのような事を言っているのである。日本による植民地支配に36年間戦い、その後、朝鮮戦争以来アメリカと60年間対峙し続けて、民族の独立と尊厳を何にもまして大切に考える国なのである。
 話しを戻すと、朝鮮は2000年より中国主席の江沢民氏を迎え、南の韓国大統領金大中氏、日本の小泉首相をピョンヤンに招き積極外交を展開し始める。国内的にも各地に市場を建設し不足する日用品などを中国などからの輸入を開始し、経済改革に本格的に取り組み始めた。
 一方、アメリカは、ブッシュ政権に変わり、それまでのクリントン政権のオルブライト国務長官時代の雪解けムードはなくなり、アフガン、イラク戦争の初期、意気が上がるアメリカは、再度朝鮮に圧力をかけ始めた。2002年までの軽水炉建設の約束を果たさなかったのは、朝鮮側が核開発を秘密裏にやっているからだとの言い分は、いつものアメリカ側の常套手段であるが、こうした経緯をへて新たに2003年から6者協議が開催されることとなり、2005年9・19共同声明が成立し、一定の妥協がはかられたのである。
 その後、執拗なアメリカの核疑惑攻勢に、朝鮮側は2006年7月にミサイル実験に踏み切り、また10月には核実験を敢行したのである。これに対し国連安保理はこれを非難し、中国・ロシアも含めて制裁に乗り出した。しかし、この頃から中国では朝鮮との関係を自国の有益な資産とみる「資産派」と外交部を中心とする「国際派」の間で激しい論争が繰り広げられていたのである。
 そして、2009年4月の人工衛星発射と5月の第二回核実験で、いよいよ長距離弾道弾と核を保有した朝鮮と対峙した中国は、党、人民解放軍、政府入り乱れての論争の末、いわゆる「資産派」が大勢を占め、2009年8月、対外連絡部部長王家瑞をピョンヤンに派遣し、そして10月には温家宝首相を訪朝させ、17年ぶりの中朝同盟の再締結に至ったのである。
 その後、中国共産党と朝鮮労働党の蜜月ぶりは胡錦涛・金正日両首脳の度重なる会談を見れば明らかである。中国にとっては国内経済成長最優先で、朝鮮が米日韓の軍事的圧力を一手に引き受けてくれているのであるからこれ程有り難いことはないのであって、少しぐらいのエネルギーや食糧支援は安いものなのである。こうした経過と事実関係を知らずして朝鮮属国化などと語っているのが田中氏である。毎日膨大な西側資料をよんで情勢分析を行なっておられるのだろうが、いつの間にか完全のアメリカや韓国情報部のプロパガンダに染まりきっているのである。あまりにアジアの事について無知であると断定せざるを得ないであろう。
 さて、最近の朝鮮経済については前回の論考で触れたが、ごく最近、ピョンヤンを訪問した人から聞くと、この一年の変化も大きく人々のライフスタイルも町並みもどんどん変わっていると聞く。携帯電話も3年間で100万台を突破し、大学だけでなく小、中、高校にもPCが完備し、知識集約型の経済体制に突き進んでいるようである。それにはエジプトやイタリア、そして最近では中国の投資の影響も見逃せないものがある。10年前は中国との貿易は7億ドルであったが、2009年17億ドル、2010年35億ドル、そして昨2011年は56億ドルという貿易統計が出ている。中朝同盟再結成以来急速な伸びである。
 朝鮮の貿易額が約100億ドルとして、その56%が中国との貿易だから属国化したと田中氏は考えているのだろうか。日本の貿易の対中貿易は対米貿易の倍以上となり、同様に韓国の貿易の最大の相手国は中国であるが、果たして日本も韓国も中国の属国といえるのか。属国とは経済関係でなく政治軍事上のことを言うのであり、日本、韓国のように駐留米軍に指揮権まで奪われている状態を指すのである。この点からしても田中氏の見解は、全くの的外れであるばかりか非常識である。
 さて最後に急速に進展する米朝合意とその後の継続的な話し合いについて述べたい。すでに先月にはアメリカの遺骨収集船が朝鮮に入り、AP通信がピョンヤン支局を置くことになった。今回の合意の最大の眼目はアメリカが敵視政策をやめ、文化スポーツ交流も進めるとある。停戦協定を平和協定にかえ、国交正常化への長い道のりの第一歩を互いに踏み出したということである。食糧支援は前回6者協議の際、50万トンの支援約束のうち20万トンしかしなかったので、残りの未履行分を今履行させられているに過ぎないのである。
 さて、これに焦る韓国、日本はどうして良いかわからず思考停止状態。今後の東アジア情勢は、この中朝同盟に日本、韓国、アメリカがどう対処していくのかが基本であると私は見ている。アメリカは日米戦勝利の太平洋戦争以来、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争そしてアフガン戦争と停戦か敗北かのどちらかであり、戦後一度も戦争に勝ったことがない。しかしマスコミは世界最強の米軍など恐米論を煽っている。今や米英や一部の金融グループの力で世界が動いているなどあり得ないことである。田中氏も、もう少し現実を直視して国際情勢の分析にあたって貰いたい。今後の活躍を期待するものである。

 



 
「議論」の場

「覇権国家」をめぐって、橋下への評価をめぐって

 お二人の方からご意見が寄せられた。
 一つは永沼さんの手紙「 覇権国家がなくなれば世界は無秩序になり、混乱するだけではないのでしょうか」はそのまま掲載しました。
 二つは「 国民の意思と要求に基づく政治を」と言いながら、その国民の圧倒的支持を受けている橋下氏をなぜ批判するのでしょうか」という一読者からの問題提起です。これについては反論を掲載しました。今後、この誌面を借りてさまざまな問題で議論を巻き起こして行きたいと考えています。読者からの積極的な意見をお待ちしています。

■「議論」(1)「 覇権国家がなくなれば世界は無秩序になり、混乱するだけではないのか? 」

 あなた方は、覇権時代は終わったと言っていますが、覇権国家、指導的な大国がなくては、世界は無秩序になり、紛争が多発するような状況に陥ってしまうのではないですか。
 パクス・ロマーナ、パクス・ブリタニカ、パクス・アメリカーナと歴史は覇権国家の下での平和と安全を教えています。
 これに関して、米国の安全保障政策に大きな影響力をもつブルックリン研究所のブレジンスキー元米大統領安全担当補佐官がこの1月、雑誌「フォーリン・ポリシー」に載せた論文で要旨次のように述べています。
 ・・・米国の凋落は国際舞台での混乱と大国間の摩擦の激化、公然たる無秩序などを招来する可能性があり、そうなれば、世界は民主主義ではなく権威主義と民族主義などに基づく「国家安全モデル」が勝利することになるだろう・・・と。
 ここで権威主義というのはロシアのことであり、ロシアは、米国の「不透明な将来」を前に空想にふけっており、まちがいなく以前のソ連加盟共和国に関心を払うであろうと分析しています。また、民族主義というのは中国を指しており、中国の頑迷な民族主義が頭をもたげる場合、隣国との関係が悪化するだろうと分析し、米国が凋落する場合、21世紀のアジアは残忍性と暴力で特徴づけられる20世紀のヨーロッパのようになるであろうと指摘しています。
 そして、海上通路、宇宙、サイバー空間、環境など、国際共同体の統制が弱い分野では、まだ米国の優勢と力によって秩序が維持されていることも忘れてはならないことだと指摘しています。
 ブレジンスキーは、以上のような分析をしながら、米国の凋落は、世界の破局的な危機をもたらすのだから、他の諸国は米国の政策を尊重し従うべきだと主張しているわけです。
 確かに現実の国際政治舞台では、ブレジンスキーが言うような状況が生まれているのではないですか。
 覇権国家と言えば、聞こえが悪いですが、欧米の用語ではヘゲモニー国家です。米国のオバマ大統領はリーダーシップなどという表現を使っていますが、米国のリーダーシップが弱まれば、世界は混乱するだけであり、いずれロシアや中国が台頭してくるようになるでしょう。それは日本のためにもならないと思います。
 あなた方は、この現実をどのように考えるのですか。それでも、「覇権の時代は終わった」と主張し、非現実的な方向へ日本が進むことを説くのでしょうか。回答をお願いします。(永沼豊)

■「議論」(2)「国民の意思と要求に基づく政治を、と言いながら、その国民の圧倒的支持を受けている橋下氏をなぜ批判するのか? 」 (反論)

 確かに今や橋下人気は絶大です。この2月、朝日新聞が大阪で行った市民調査でも橋下支持は70%(不支持17%)にもなります。
 そこでまず、橋下さんの人気の原因はどこにあるのか、見てみたいと思います。
 何よりもまず彼は「変える」ということを強烈に打ち出しています。「国のシステムを変える」「地方自治のあり方を変える」「教育制度の抜本的改革」「職員の意識を変える」…。
 そのために既成の枠ややり方に挑戦する姿勢も強烈です。「国会議員が教育基本法を作れるのに、地方議会が何故教育基本条例を作れないのか?文部科学大臣の指揮下の文科省が教育内容を定められるのに、なぜ地方の首長が大きな教育目標を定めることができないのか?」などと。
 そのための指導力、行動力も大したものです。
 大阪都構想を進めるために、昨年11月には、府知事を辞めて一級下の市長選に打って出、ダブル選挙を行い勝利しました。そして、構想実現のためには国政を動かさねばならないと維新政治塾を作り議員候補を大量に養成しています。
 大衆の要求もよく見ています。まず、ネーミングがうまいです。大阪維新の会、大阪都構想、関西広域連合・・・。大衆の関心事へのアプローチでも沖縄普天基地の移転問題や震災復興でのガレキ処理問題でも、大阪が引き受けてもよいと敏感に反応します。
 教員、職員などを「既得権層」として叩くやり方も庶民の味方という感じがします。
 大衆との討議を多く組織し、ツイッター(政治家のツイッター・アクセス数、一番の62万)の活用など大衆の声に耳を傾けようとする姿勢も感じられます。
 府知事の退職金を自ら減らす率先垂範、清廉潔白さ。はっきりしたもの言いで論争しながらも、謝罪も譲歩もして、反対者にも「憎めぬ人柄」と言わしめるところもあるようです。
 一言でいって、橋下氏は、今日の閉塞状況の中、それを打破し、なにかやってくれるのではないか、そのような期待を国民に抱かせる政治家です。そこに橋下氏の人気の秘密があるのではないかと思います。
 しかし、橋下氏の政治が本当に民意に応えるものなのか? ということについては、慎重に見ていくべきです。
 ジャーナリストの斉藤貴男さんが「橋下氏を選んだのは確かに民意でしょうが、その中身はきちんと見ていくべきです」と述べていますが、橋下人気とその政策支持とは区別して考えるべきだし、問題は、政治姿勢も含めた政策の中身だと思います。
 橋下氏が民意をどのように考えているかということについて見ると、氏は、「選挙で選ばれたこと自体が民意」だとしながら、その民意を実現するための政策立案と執行では、「ある種の白紙委任が必要だ」ということを強調しています。
 これは、選ばれたことが民意なのだから、選ばれた者に一任すべきであり、選ばれた者が決定権も持つということです。
 民意ということに関して言えば、民衆が主人であり、その意思と要求を集大成して政策を作らねばならず、その政策を民衆が自らのものとして、自らの意思で実現していくというものでなければならないと思います。
 そのように考えれば、橋下氏の選ばれた者への白紙委任、その者に決定権があるという考え方には問題があると思います。そして、そうなると、その手法にも疑問がわきます。
 橋下氏が2005年に出した「図説・心理戦で絶対に負けない交渉術」(日本文芸社)という本では、「仮装の利益」ということを強調していますが、それは、まず実現不可能な高い課題を提示して譲歩を演出しながら、実際は何もないのに相手に利益を得たと思わせる手法だそうです。その他色々なテクニックがあるのでしょう。しかし、それは大衆操作の手法、テクニックであって、それでは本当に民意に応えることはできないのではないでしょうか。
 この2月、大阪維新の会が、国政選挙に打って出るということで、「維新八策」の骨格を明らかにしました。それは、「日本再生のためのグレートリセット」をスローガンに掲げ、8項目で構成されたものですが、そこには、日米安保を基軸にした外交、TPP賛成、憲法改正、首相公選、参院廃止、道州制、教育制度の抜本改革、掛け捨て年金制度、公務員人件費の削減などが盛り込まれています。
 これを見ると、やっぱり、橋下氏は米国覇権の下で米国の要求する新自由主義改革をさらに進める立場なのだなあという思いを禁じえません。
 米国に強要され追随して行った新自由主義化改革の結果、地方が疲弊し、格差が拡大し、雇用は不安定化し、生活苦が増し、未来も見えない閉塞感の中で、切実に変化を求める人々の民意に応える道は、これまで米国覇権の下で覇権を追求してきた日本の生き方を変えることにこそあるのではないかと思います。
 橋下政治に対する関心が高まり、それを巡っての論争が巻き起こっている今、そうした議論の中で本当に民意に基づく政治はどういうものでなければならないのかということが深まり、はっきり姿を現していくことを期待するものです。

編集部





 

国際短信

■アジア太平洋地域を緊張させる米国の軍事演習

 2月6、7日に行われた「ヤマザクラ」米日合同軍事演習が終わったのに続き、これまでで最大規模という「コブラ コルト」多国間軍事演習が始まった。ここには米国、韓国、日本だけでなくマレーシア、インドネシア、タイ、シンガポールが参加した。
 2月下旬には、「半島情勢に対処する」として「キー・リジョルブ」「イーグル」米韓合同演習を行っている。
 米国の狙いは、日韓などの国々の人々に、米国の「強大さ」を誇示しつつ、軍事的緊張感を与え、戦争が始まれば、米国は自分たちを守ってくれる英雄だと思わせることにある。
 軍事演習は、これらの国への圧力を維持するための手段でもある。もちろんアメリカ人はそうは言わないが、実はそれが米国の真の狙いだ。
 日本のマスコミは「ヤマザクラ」合同軍事演習を報道しながら、それは「東アジア情勢の新しい挑戦に対処して日米同盟をさらに強化するためのものだ」と解説している。  日本は、実に米国の尻尾について回る国だ。地域情勢の安定をまったく考えず、また中日関係が安定している状況の中で「新しい挑戦」とは一体何のことか。  合同軍事演習はまさに、米国が同盟諸国の敵を作り、同盟国をして常に「地域情勢の緊張」を感じるようにすることによって、「誰も代行できない米国の重要性」を認めさせるところに目的がある。
 米国は、軍事演習を突破口にしてのみアジアでの自身の存在価値を見せることができ、緊張状態に依拠してのみアジア太平洋の同盟諸国を引き付けておくことができ、その手に握ったムチを通じてのみ自身の影響力を維持できると見ている。
 軍事演習は米国の世界再編戦略に基づくものなのだ。
 ワシントンにとって冷戦思考は、捨て去ることのできない「貴重な財産」になっている。
 ワシントンは、まさに軍事演習を口実にして、緊張した情勢を作り出し、自身の主導的役割を維持・強化して世界再編の「戦略的野心」を実現しようとしている。(新華社)

■世界最大の原油取引会社社長、イラン制裁によるイランの損失は少ないだろうと予測

 世界最大の原油取引会社の一つであるビットル(スイス オランダ系)社のテイラー社長がロイター通信との会見で次のように述べている。「原油価格が1バーレル当たり120$水準に上昇すれば、イランは西側の制裁で受ける損失を十分に穴埋めできる。今、イラン人はその上昇を注視している」
 その前にテイラーは、英国新聞「ファイナンシャル・タイムズ」との会見で、「中近東情勢の緊張で今年の原油価格は記録的な水準に達するだろう」と予測し、「年平均で見れば、今年はすでに1バーレル当たり109$となっており、過去最高の08年の98・4$を超えている。可能性は少ないが一時的には、これまでの最高である08年9月の150$を超えるかもしれない」と述べている。(イタル・タス)

■米国で富裕層と貧困層の子供の成績と教育水準に格差増大

 1960年から2007年までの米国の12の標準試験の成績を分析した結果、富裕層と貧困層の子供の成績格差が49%以上拡大した。
 これまでは、黒人白人の間の差が大きかったが現在では、家計所得の差による格差が大きくなっている。また、大学卒業率の差も80年代以来50%以上広がっている。
 富裕な家庭では、子供の教育に多くの時間とカネを投入しており、その傾向は年々強くなっている。子供の週末の運動、舞踊、数学などに莫大な時間とカネを投資しているが、貧困層の子供はそういう機会をもてないのが原因だ。(VOA)

 



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